知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ 3
知られざる名曲も「シリーズ3」を迎え、いよいよ佳境に入ってきました。
このサイトをいつもご覧いただきありがとうございます。
これからも、当サイト独自の選曲で「心に残る名曲」をご紹介したいと思いますのでお引き立てお願いいたします。
第101回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
梅林 茂(うめばやし しげる、1951 - )は、北九州市出身の日本の作曲家です。
今回は、梅林 茂が音楽を担当した 映画「2046(ニーゼロヨンロク)」の Polonaise(ポロネーズ)を聴いてみたいと思います。
■ 映画「2046」ストーリー
映画の舞台は1967年・香港。ひとりの<男>が、2046年を舞台にした近未来小説を書いている。
そのタイトルは、『2046』。
小説の中の登場人物たちは<2046>という謎の場所を目指し、ミステリートレインに乗り込む。
この列車の客室乗務員は、美しい女の姿をしたアンドロイドだ。
<2046>に行けば、失われた愛を見つけることができる。
そこを目指す人々は、そう信じていた。だが、それが真実なのかどうかは、誰も知らない・・・。
なぜなら、<2046>から帰ってきた者は、いないからだ。
ただひとり、その<男>を除いては。 ※(c) Kinema-Junposha.Co.Ltdサイトより一部転記
劇中の現実世界の主人公をトニー・レオン、劇中劇の主人公を木村拓哉が演じています。
■ 2046-Polonaise / 梅林 茂
一度聴いたら忘れられないメロディです。101回目を飾るに相応しい名曲です。
梅林 茂は、旋律美が特長です。例えば ↓
https://www.youtube.com/watch?v=so63i4Mlr0w
日本のニーノ・ロータと呼んでも良いと思います。
第102回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
■ かそけき音
現代人は騒音の中に生きています。
もう静けさは何処にもないように思えます。
サントリーホールの音響設計で有名な 永田音響設計事務所の永田穂氏(2018年没)は、著書「静けさ よい音 よい響き」の中で、
「現代の我々は、古代の人々が大切にしてきた小さな音、かそけき音に対しての感性を失いつつある。静けさの中でしか感じ取れない美しい音や響きがあることを忘れてはならないように思う。」 と述べています。
詳しくは当ブログ静けさ よい音 よい響き
ソビエト連邦の作曲家 ショスタコーヴィチ( Dmitrii Dmitrievich Shostakovich, 1906 - 1975 )の、ピアノ協奏曲2番の第2楽章(Piano Concerto no.2, II)を聴いていて、ふと、「かそけき音」を思い出しました。
このアンダンテの楽章は 静寂に包まれています。
■ ピアノ協奏曲2番より/ショスタコーヴィチ
わが宿のいささむら竹吹く風の 音のかそけきこの夕べかも。 大伴家持(万葉集)
第103回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
この時期、世界の音楽ファンの話題は「ショパン国際ピアノコンクール」に集中しています。
(最近はどのコンクールもライブ配信で楽しめますが、ヨーロッパのコンクールの場合、時差の関係でリスナーの寝不足は避けられません)
今回は、今話題のショパンにスポットを当てました。
ショパン(1810-1849)は、「ピアノの詩人」と称されましたが、少しの室内楽作品も書きました。
どの作品も10代に書かれたもので、甘美で抒情的なメロディに満ちています。
この曲もショパン19歳の作品で、もともとは、ロッシーニのオペラ「シンデレラ( ラ・チェネレントラ)」のアリア「悲しみよ去り行け」を ピアノ三重奏曲 として発表したものです。
オペラが大好きなショパンは、ワルシャワでロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニ、モーツァルトなどのオペラ上演に必ず足を運んでいました。その中でもショパンが最も愛したオペラ作曲家はロッシーニでした。
1829年、ショパン1回目のウィーン訪問中に、このオペラ「シンデレラ( ラ・チェネレントラ)」を見たと言う記録が残っています。
■ ロッシーニの「シンデレラ」の「悲しみよ去りゆけ」による変奏曲 ホ長調 /ショパン(Fryderyk Chopin)
フルートとハープによる二重奏(ノーラ・メルツ Nora Mercz編曲)
とても愛らしい旋律です。
■ ご参考 この曲の原曲(ロッシーニ、悲しみよ去り行け)https://www.youtube.com/watch?v=AaAVHNywH4M
第104回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、1976年公開のポーランド映画「Tredowata(ハンセン病)」より、劇中使用曲のワルツを取り上げました。
ハンセン病を題材にした映画は多く、「砂の器」「もののけ姫」、海外では「ベンハー」などがありますが(Wikipedia 当該項目)どの映画も音楽が素晴らしいと言えます。
この曲を書いたのは、ヴォイチェフ・キラール (1932 - 2013)、ポーランドの現代音楽・映画音楽の作曲家です。
交響曲、管弦楽曲、協奏曲、室内楽、声楽曲、ピアノ曲などクラシックの他、ハリウッド映画の主題曲なども多く手がけました。
■ 映画「Tredowata(ハンセン病)」ワルツ/キラール(Wojciech Kilar)
女性指揮者の流麗な指揮が印象的です。
どこかのユースオーケストラでしょうか、指揮と一体化した優雅な演奏です。
↓ 是非ご覧ください。よりこの曲が楽しめます。
■ 映画のワンシーン
https://www.youtube.com/watch?v=737uVSj3gJQ
■ ピアノによる演奏(ワルツ映像付き)
https://www.youtube.com/watch?v=tM4w9aNrl80
第105回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
2回連続で、ヴォイチェフ・キラール (Wojciech Kilar、1932 - 2013)の映画音楽を選びました。
1976年のポーランド映画「Smuga cienia」は、海洋小説で有名なイギリス作家 ジョセフ・コンラッド(1857-1924)の小説『シャドウ・ライン(The Shadow Line)』を原作とした映画です。
若き船長の極限状態での試練を描く、ジョセフ・コンラッドの自伝的傑作と言われています。
ジョセフ・コンラッド
この動画の映像は映画とは関係ありませんが、国際宇宙ステーションから見た美しい地球が、キラールの感傷的な音楽にマッチして素晴らしいコラボレーションを感じます。
■ 映画「Smuga cienia」音楽/ヴォイチェフ・キラール
「かけがえのない地球(Only One Earth)は、ストックホルム会議の公式スローガンです。
■ 映画に関心のある方は ↓ (日本語字幕なし・1時間40分)リンク切れご容赦下さい
https://zaq2.pl/video/pyffz
第106回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ポーランドで最も尊敬されているクラシックおよび映画音楽の作曲家 ヴォイチェフ・キラール (1932 - 2013) の3回連続の登場です。
彼は、ドビュッシー、ラヴェル、そして同胞のシマノフスキーの作品に触発され、クラシック作品を多く作曲しましたが、作風はポーランドの民謡とカトリック教会音楽を取り入れた親しみ易い音楽が魅力です。
今回は、映画「パン・タデウシュ物語(1999年ポーランド/フランス)Wikipedia 」の挿入曲「ポロネーズ」をお聴き下さい。
■ ポロネーズ/ヴォイチェフ・キラール
演奏はポーランドの美人ヴァイオリニスト AgnieszkaFlis さんです。
ドレスの模様が照明によって変化する映像が実に美しく斬新です。
↓ オーケストラによるフルバージョン版
https://www.youtube.com/watch?v=_PpfJUDGyBI
第107回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
海に向かう小径は
私たちが通った名残り
手折った花と、木々の下にこだました
私たちふたりの明るい笑い声
ああ、幸せの日々
やがて光り輝く喜びは過ぎ去り
心のなかに幸せの痕跡すらない
あの愛の小径を歩き
私はあなたを探す
だが、迷い道にあなたはおらず
あなたの声が響くことはない
この「愛の小路」は元々は、フランスの著名な劇作家ジャン・アヌイの「レオカディア」の劇中歌としてプーランクが作曲した歌曲(シャンソン)です。
■ 愛の小路/ プーランク
演奏は、Harriet Krijgh (ハリエット・クリーフ 1991- )。オランダの女性チェリストです。
前半の憂いを含んだ演奏から歌曲のストーリーが連想されます。
下記の解説付き動画を見ると、作品が良く理解できます。本当に便利な世の中になりました。
■ 参考YouTube
ピアノソロバージョン(解説付き)
https://www.youtube.com/watch?v=f27XuoaZ6KY
牛田智大(ショートバージョン 48秒)
https://www.youtube.com/watch?v=1xDt2a_UctU
第108回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
エフゲニー・ドガ(EugenDoga 1937 - )はモルドバの作曲家です。知られざる名曲は2度目の登場です。
モルドバ風景 写真提供ACワークス(株)
彼には、交響曲、オペラ、バレエ、教会音楽、映画音楽など多くの作品がありますが、特に「ワルツ」には定評があります。
YouTube動画の中から美しい映像を見つけました。
一つの曲で二種類の動画をUPすることはありませんでしたが、あえてご紹介したいと思います。
■ ブラックヴェール/エフゲニー・ドガ
映像美その1
蝶の舞いが、本当にワルツを踊っているようです。優雅そのものです。
映像美その2
黒いヴェールをまとった謎の女性。水中ダンスの妙。
この映像もロマンティックです。
この曲を書いた エフゲニー・ドガ 。きっとあなたもファンになったのではないでしょうか。
ご参考 知られざる名曲第16回 バラのワルツ(エフゲニー・ドガ)
■ 第109回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
エルダル・マンスロフ(Eldar Mansurov 1952- )は、アゼルバイジャンの作曲家です。クラシック、伝統音楽からポップ系まで幅広いジャンルで評価されています。
※アゼルバイジャン共和国は、旧ソ連の構成国で、アジアとヨーロッパにまたがるコーカサス山脈とカスピ海に囲まれた自然豊かな国ですが、アルメニア勢力との間で支配権を巡り抗争を繰り返していることは周知のとおりです。
アゼルバイジャンの首都バクーの街並み ACワークス(株)
日本ではなじみの薄い作曲家エルダル・マンスロフですが、幅広い作品には、交響曲、オペラ、バレエ、器楽、室内楽、歌など、クラシックジャンルの作品も数多く含まれています。http://eldarmansurov.com/classic-music
そして、インストルメンタルや映画音楽にも創造的な作品を多く残しています。
その中から今回は、ピアノをフューチャーしたオーケストラ曲を選びました。
■ 私の運命(Taleyim )/エルダル・マンスロフ
クラシックと言うよりイージーリスニング的ですが、ボレロのリズムに乗って展開する音楽を聴くと、壮大な自然の中で「人生の意義」を感じて前向きに生きる力が湧いてくるのです。ただの心地良さだけでない強いメッセージが内在した音楽です。
■ 第110回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回取り上げた エルネスト・ブロッホ(Ernest Bloch)は、ヨーロッパ・アメリカ各地を駆け巡る音楽生活の中で作曲技法を高め、ユダヤへの深い精神的な憧れを表現した作曲家です。
彼は、1880年にジュネーブで生まれ、ブリュッセルで学び、1916年にアメリカに移住し、最終的にオレゴン州ポートランドに定住し、1959年に亡くなりました。彼は火葬され、彼の灰は瑪瑙(めのう)ビーチ(オレゴン州の北海岸)の家の近くに撒かれました。
オペラ「マクベス(1910)」などの大規模な作品で有名ですが、チェロとオーケストラのためのヘブライ狂詩曲「シェロモ(1916)」は、今日でもコンサートのレパートリーの一部です。
マーラー、ドビュッシー、そして彼の教師であるヴァイオリニストのウジェーヌ・イザイを含む彼の時代の主要な作曲家の影響を受けたにもかかわらず、彼の音楽は本質的にロマン派を継承したものです。
ブロッホは、ユダヤ人の信仰を強く認識し、ユダヤ人の文学と民俗学に直接影響を受けたいくつかの作品を書きました。そして、その傾向は年を追うごとに顕著になっていくのです。(参照記事 https://makerandson.com.au/pages/music)
この「祈り( Prayer)」は、ブロッホの組曲「ユダヤ人の生活から」(1924年)の第2楽章が原曲です。その深い音楽性をお聴き下さい。
■ 祈り( Prayer)/エルネスト・ブロッホ(1880-1959)
演奏は、Harriet Krijgh (ハリエット・クリーフ 1991- )さん、オランダの女性チェリストです。5歳からチェロを始め、2004年からウィーンへ移り、ウィーン音楽院でチェロの研鑽を積みました。
指揮のギエドレ・シュレキーテ(1989- )氏は、リトアニア出身の指揮者で、オペラを中心にヨーロッパで活躍しています。2021年には東京文化会館でモーツァルトの『魔笛』を指揮しました。
二人は同年代です。この精神性はどこから来たのでしょう。それにしても最近、クラシック界では若い演奏家の活躍が目立ってきました。とても楽しみです。
■ 第111回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
久しぶりにピアノの小品をご紹介します。
プッチーニ「小さなワルツ(Piccolo Valzer)1894年作曲 」。イタリアのオペラ作曲家 ジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini )の作品です。
どこかで聴いたことのあるメロディですが、オペラファンならよくご存じのプッチーニの名作「ラ・ボエーム」の第2幕に歌われる ムゼッタのワルツ「私が街を歩けば」と同じです。
ヒロインのムゼッタが、元恋人であるマルチェッロに向けて歌う美しいアリア。実は原曲はピアノ曲でした。
プッチーニは有名なオペラだけでも、「トスカ」「トゥーランドット」「蝶々夫人」など十数作品を作りましたが、ピアノ曲は生涯に6作品しかありません。その貴重な1曲が「小さなワルツ」です。是非お聴き下さい。
■ 小さなワルツ/ プッチーニ(1858ー1924)
演奏は熊本マリさん。愛らしくお洒落な演奏です。
ご参考
■ 熊本マリ 公式
■ 第112回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
令和4年が明けました。今回は新しい年に相応しい曲をご用意しました。
どうしても覚えて欲しい作曲家 ジェラルド・フィンジ(Gerald Raphael Finzi, 英国)の 作った "ノクターン" です。
この曲はサブタイトルにもあるように、1年を振り返り新年 (New Year) を迎える曲です。
1925年の大晦日、フィンジは、イギリスのチャーチダウン村のコテージで開かれたパーティーに参加しました。
その夜、フィンジと彼の友人たちは外に出て、満天の空を見上げるのでした。遠くには教会の鐘の音が聞こえます。
この音楽は、その時のインスピレーションで作られました。
■ ノクターンop.7(Nocturne -New Year Music)/フィンジ(1901 - 1956)
心静かに1年を振り返りましょう。
パンデミックで傷ついた人々を慰めるかのように、音楽は優しく心に響きます。音楽の奥に深い愛情を感じます。
そして、希望に満ちた輝ける新年を迎えるのです。
映像の美しさも特筆に値します。
令和4年が皆様にとって幸多い年になりますよう祈念いたします。本年も宜しくお願いいたします。
■ 第113回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
クラシック音楽が衰退した原因は数多く考えられますが、一番の原因は「現代音楽の失敗」にあります。
現代音楽は、メロディや和音を否定した無調音楽が中心です。
メロディやハーモニーを否定した「心地よくない音楽」が聴衆に支持されるわけがありません。
吉松 隆(よしまつ たかし、1953 - )は、そんな現代音楽に反旗をひるがえした勇気ある日本の作曲家です。
彼は現代音楽の「非音楽的傾向」に対し「現代音楽撲滅運動」を展開して、調性やメロディを復活させるべく「新抒情主義」を提唱しました。
交響曲、管弦楽曲、協奏曲、室内楽、ピアノ曲などクラシック作品をはじめ、邦楽作品、ポップス、またNHK大河ドラマ「平清盛」の音楽を担当(2012年)するなど多方面に活躍しています。コンサート活動、著書の多さからも、日本の誇るべき音楽家であることは間違いありません。
2013.京都で録音 画像ACワークス(株)
当「知られざるクラシック名曲シリーズ」でご紹介出来ることはとても光栄です。
今回は、吉松 隆にスポットを当て、「孤月(Kogetsu)」を聴いてみたいと思います。
■ “ 孤月(Kogetsu )” 三つの水彩画より/ 吉松 隆
連綿たる日本の情緒を感じさせる音楽が静かに流れます。
吉松 隆 公式サイト
■ 第114回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回はチェコの作曲家 ユリウス・フチーク(Julius ・ Fučík, 1872 - 1916)を選びました。
フチークと言えば、行進曲「剣士の入場 」が代表作ですが、この行進曲は世界各地のサーカスで今なお、「ピエロ登場のテーマ曲」として用いられていますので、ご存じの方も多いと思います。
彼は300曲以上の行進曲やポルカ、ウィンナ・ワルツを作曲していますが、どの曲も親しみ易く楽しい作品です。
今年(2022年)生誕150年を迎える フチークのワルツ「理想的な夢(Traum-Ideale, Op. 69)」を聴いてみたいと思います。
■ 第114回 理想的な夢 Op. 69/ フチーク
短調のワルツはどこか物悲しく哀愁を帯びていますが、そのメロディがとても印象に残ります。
演奏は、本場チェコフィル、指揮は巨匠ノイマン(1920-1995)です。
■ 第115回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
私が幼い頃、母はテノール歌手 五十嵐喜芳の歌ったイタリア民謡のLPレコードをよく聴いていました。母が好きだった歌は「マンマ(Mamma)」という愛らしい歌でした。
今から思うと、母はいわゆる「ハイカラ」だったのでしょう。おかげで私も洋楽が大好きになりました。
※ちなみに、今は亡き母は大正生まれ(若い頃は東京にいて)、二二六事件も関東大震災も、もちろん太平洋戦争も経験しました。激動の時代にあって、音楽は心の拠り所だったかも知れません。
その「マンマ」を作曲した人が今回の主役 フランコ・ビクシオ (イタリア ローマ出身)です。
前置きが長くなりましたが、そのビクシオのもう一つの名曲が「風に託そう私の歌(La Mia Canzone Al Vento)」です。実に爽快な歌です。是非お聴きください。
「Vento」はイタリア語で、日本語に訳すと「風」です。歌の中に何度も出てきます。
■ 風に託そう私の歌/ フランコ・ビクシオ(Franco Bixio 1950- )
オペラ歌手ルチアーノ・パバロッティが1991年にロンドンのハイドパークで行った伝説のコンサートを、5.1chデジタルリマスターで映画化(公開日 2022年1月14日)した最新映像(予告編)をご覧下さい。
パバロッティの魅力と、「風に託そう私の歌」の魅力が余すところなく伝わり心が躍るようです。風(Vento)が心地よく吹き抜けます。
■ 第116回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
作曲家 アベル・コジェニオフスキー(Abel Korzeniowski 1972- )は、ポーランドの古都クラクフで生まれましたが、母親がチェロを弾き、二人の兄弟もミュージシャンという音楽一家に育ちました。
器楽研究(専門:チェロ)を卒業した彼は、2000年にクラクフの音楽アカデミーで ペンデレッキの作曲クラスを優秀な成績で卒業しました。
そして、作曲学、指揮、音楽理論の助手を務めました。
その間、彼の作品はポーランド、ドイツ、スロバキア、ウクライナ、ベラルーシなどの最も重要なフェスティバルで上演されました。
写真 クラクフ市内 ACワークス(株)
また2001年に彼の交響曲「催眠術」はベルリンで初演され(オーケストラはペンデレッキが指揮したシンフォニエッタ・クラコビア)、ドイツのラジオで生放送されました。
2004年に彼はフリッツラングの「メトロポリス」の新しいスコアを作りました。90人のオーケストラ、60人の合唱団、2人のソロ歌手のための記念碑的な147分の曲は、1927年の無声映画を野心的に表現して高評価を受けました。
■ メルティング ワルツ(Melting Waltz)/ アベル・コジェニオフスキー
コジェニオフスキーの音楽を聴く限り、現代音楽作曲家ペンデレツキに師事したという痕跡は全くなく、魅惑の甘いメロディが心地よく感じられます。
癒し系の音楽としてBGM的にお聴きください。
尚、バレエの好きな方は Dance For Me Wallis もお勧めです。
■ 第117回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
映画「シテール島への船出」(1983年/ギリシャ映画)
あらすじ(映画.comより)
ひとりの映画監督が父の映画を撮ることになるが、父役がなかなか決まらない。
そこへひとりの花売り老人が通りかかり、思わず後を追う監督。「エゴイメ(私だよ)」、
劇中、映画と父の人生が交錯していく。
家族を捨ててソ連へ亡命した父が年老いた姿で帰ってきた。
かつての同志たちからも政府からも拒絶されて・・・
雨の桟橋にひとり打ち捨てられる老父。
歩み寄る妻を一緒に乗せて小さな桟橋は暗い海をどこまでも流れて行くのだった。
政治への望みを失った時代を語ったアンゲロプロス監督の叙情傑作。
この映画の音楽を担当した女流作曲家が今回の主人公 エレニ・カラインドルー(Eleni Karaindrou、1941- ギリシャ)です。
彼女は幼少よりピアノの才能を発揮して、ついに10歳でギリシャ音楽院に入学、17年間在学しました。そして、オーケストレーションを学び、やがて民族音楽学も学びました。映画、劇場、バレエ音楽を始め多彩な音楽作品があります。
テッサロニキ映画祭で最初の音楽賞を受賞した後、彼女は映画監督テオドロスアンゲロプロスに出会いました。今回の音楽はその縁で生まれました。
■ By the sea / エレニ・カラインドルー
メランコリックで美しいピアノソロです。
前半はとても抒情的、中間部はドビュッシーの月の光を思わせ、後半は感情が高揚して終曲します。
ピアノと編曲は Manolis Neophytouさん、モスクワ音楽院出身のピアニストです。(詳しい経歴は分かりません)
■ 第118回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ハチャトゥリアン(Khachatrian 1903 -1978 グルジア=ジョージア)が当シリーズで初めて登場します。
彼は「剣の舞」(バレエ ガイーヌ)でとても有名ですが、「剣の舞」は、演奏時間が2分少々と短く、アンコールピースとして、クラシック入門曲としてよく演奏されます。また非常にテンポが速くインパクトの強い曲です。
しかしその陰で、ハチャトゥリアンのもう1曲のバレエ「スパルタクス」はあまり演奏されません。
そこで今回は、バレエ「スパルタクス」から「スパルタクスとフリーギアのアダージョ」を選びました。
バレエ「スパルタクス」は、ローマに対して反乱を起こした奴隷たちの指導者・スパルタクスの偉業を題材とした作品で、この「アダージョ」は第2幕に、スパルタクス(トラキアの王)と妻フリーギアによって踊られる最も感動的なシーンの音楽です。
■ スパルタクスとフリーギアのアダージョ/ハチャトゥリアン
スパルタクス役は、カルロス・アコスタ(キューバ生まれのバレエ・ダンサー。白人系が圧倒的地位を占めるバレエ界において、黒人系として初めて英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル・ダンサーとなった逸材。Wikipedia)
妻フリーギア役は、ボリショイバレエ団のプリマバレリーナ 、ニーナ・カプツォーワ。
まさに愛のアダージョ、情愛がほとばしるバレエです。ご堪能下さい。
音楽を純粋に味わいたい方は、お勧めのオーケストラ演奏はコチラ です。
■ 第119回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ミハウ・クレオファス・オギンスキー(Michal Kleofas Oginski 1765-1833)は、ポーランド生まれのリトアニア人作曲家です。
同時に、ポーランドの外交官兼政治家であり、リトアニアの財務官であり、皇帝アレクサンドル1世の上院議員として活躍した異色の音楽家でした。
彼は音楽の分野では、ヴァイオリニストであり、クラヴィコードとバラライカ奏者でもありました。そして作曲家として ポロネーズ、ピアノ曲、マズルカ、行進曲、ワルツなど、初期ロマン派作品を数多く残しました。
オギンスキー記念碑 Wikipediaより
中でもショパンのポロネーズの源流ともいえる彼のポロネーズ曲は20曲を数え、特にこのイ短調の作品は、ポーランド映画「灰とダイヤモンド」のラストシーンで使われ有名です。
■ ポロネーズ「祖国への別れ(Farewell to the Homeland)」/オギンスキー
演奏は、ミハイル・プレトニョフ(ロシア)の指揮、 ロシア・ナショナル管弦楽団 (Russian National Orchestra) 。
多分アンコールとして演奏された時のライブと思われます。
この郷愁がたまりません。モーツァルトより6歳年下のオギンスキー、彼が29歳の時のロマンティックな作品です。
■ 第120回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
この深い哀愁をたたえたヘ短調のノクターンを書いたのは、ロシアの作曲家 ミハイル・グリンカ(Mikhail Ivanovich Glinka、1804-1857)です。
裕福な家に育った彼は、同時代の詩人や画家らと交友関係を結びました。なかでも詩人プーシキンは彼の目標であり、彼におけるロシア人としての意識を覚醒させ、ロシア的な作品を書きたいと願う原動力となったのです。
彼は、国外で名声を勝ち得た最初のロシア人作曲家と言われ、「近代ロシア音楽の父」と呼ばれました。
しかし、良く演奏される有名な曲は 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲くらいしかないのが残念です。
※余談ですが、「ルスランとリュドミラ」序曲はコンサートで超高速で演奏されることでも有名です。グリンカの指定したテンポは、♪=140ですが、ロシアを代表する指揮者ムラヴィンスキーは、♪=160以上で演奏して脚光を浴びました。
(参考動画)https://www.youtube.com/watch?v=jMvOLepoBO8
さて、ノクターン(夜想曲)「別れ」は、グリンカが円熟期だった1839年、35歳の時に作曲され、妹のエリーザヴェタ・イワノヴナ・グリンカに捧げられました。
■ ノクターン(夜想曲)「別れ」/ グリンカ
この曲の物悲しい導入部に、手紙の写真があります。
中世まで手紙は重要な通信手段でした。「別れ」も手紙に書いて送ったのでしょう。
それにしても、落ち葉の舞うような憂いのある曲に何故チェロの音色が似合うのでしょうか。
出会いよりも別れのシーンに何故チェロの音色が似合うのでしょうか。
このことはいずれ触れたいと思います。
■ 第121回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、ギリシャの作曲家 エヴァンシア・レブツィカ(Evanthia Reboutsika 1958- ) の「鉄道駅」を選びました。
彼女はどの作品も心を震わせるような感傷的なメロディが特長です。前回の当シリーズ番外編14「ヘレニズム」の作曲も エヴァンシア・レブツィカ氏です。
この作品「鉄道駅」は、映画「タッチ・オブ・スパイス(2003年 ギリシャ映画)」の挿入曲として作られたものです。
画像 映画.comより
映画「タッチ・オブ・スパイス」
トルコ、ギリシャの政治対立により国外退去命令となったギリシャ人家族の少年は、やがて成長して大学教授になり故郷に帰り、そこで初恋の女性と再会するのです。
ひとりの少年の成長とトルコギリシャの現代史を絡めて描くノスタルジックで心温まる人間ドラマ。ギリシャ料理の色々な種類のスパイスの調理法が登場する。本国ギリシャでは、観客動員数の記録を塗り替えて国民的映画となった。
■ 鉄道駅 (タッチ・オブ・スパイス)/ エヴァンシア・レブツィカ
詩情あふれる曲です。
別れのシーンでは感傷的な音楽が涙を誘います。
■ 第122回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
坂本 龍一(さかもと りゅういち、 Ryūichi Sakamoto、1952 - )は、日本の作曲家であり、ミュージシャン、音楽プロデューサーとしても有名です。
今回は、その坂本龍一の作品から、1990年公開のイギリスの映画「シェルタリング・スカイ(The Sheltering Sky)」のテーマ曲を選びました。
誰もが良く知っている坂本龍一ですが、Wikipediaによると彼の音楽人生の出発点はクラシック音楽だったようです。
通っていた幼稚園が「全員ピアノを習う」所だったため、3歳からピアノを習い始める。自由学園幼児生活団に準じた世田谷幼児生活団において作った「うさぎのうた」が最初の作曲。10歳で東京芸術大学教授の松本民之助に師事し作曲を学び始める。なお、作曲を勉強し始めて最初に興味を持った作曲家はストラヴィンスキーであった。この頃は特にピアノが好きではなく、むしろ苦痛だったという。しかし14歳の頃は「自分はドビュッシーの生まれ変わりだ」と半分信じていて、サインの練習までしていた。人生で最も影響を受けた音楽家も、ドビュッシーとバッハである。1974年東京芸術大学音楽学部作曲科を卒業、同大学院音響研究科修士課程に進む。1976年修了。(Wikipedia)
映画「シェルタリング・スカイ」は、アカデミー賞9部門に輝いた「ラストエンペラー」のスタッフが再び集結し、サハラ砂漠を舞台に描いたヒューマンドラマ。原作は、アメリカ人作家ポール・ボウルズのベストセラー小説。
1947年、ポートとキットは冷えた夫婦関係を見つめ直すため、ニューヨークから北アフリカに降り立つ。しかし、現地についた早々夫は女を買い、妻は同行するジャックとベッドを共にする。(映画.comより)
■ シェルタリング・スカイ/ 坂本 龍一
映画の中で原作者のポール・ボウルズ(Paul Frederic Bowles) 自身がナレーションで次のように語っています。
The sky hides the night behind it, and shelters the people beneath from the horror that lies above.
空はその背後に夜を隠している。そして、空の下で暮らす人々を夜の恐怖から護っている(訳)と。
■ 第123回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」と言えば、あの浅田真央さんのフィギアスケートで一躍有名になった曲です。
作曲家アラム・ハチャトゥリアン(1903 - 1978)は、旧ソビエト連邦時代のグルジア出身のアルメニア人です。当シリーズは2回目の登場。
彼は、1941年に劇音楽「仮面舞踏会(全14曲)」を作曲しましたが、そのうち5曲を選んで管弦楽のための「組曲」に再編成(1944)しました。
組曲「仮面舞踏会」
I ワルツ、II ノクターン、III マズルカ、IV ロマンス、V ギャロップ
その中の1曲が、浅田真央さんがフリープログラムで使用した「仮面舞踏会」の “ワルツ” です。
そして今回ご紹介する曲が、同じ組曲の "ロマンス”です。
■ ロマンス「仮面舞踏会より」/ハチャトゥリアン
音楽はもちろん素晴らしいのですが、この動画「ドリームウォーカー」があまりにファンタジックで素敵なので、動画(映像作品)を作った監督:アレクサンドラ・クラフツォヴァ氏はじめスタッフに感謝したいと思いました。
お子様の見える方は、是非この動画を見せてあげて下さい。
■ 第124回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、日本ではかなりマイナーなブラジルの作曲家 ペドロ・サルガド( Pedro Salgado 1890- 1973)にスポットを当てました。
サルガドは1歳の時に父親を亡くし、母親に連れられて家族はアパレシダの街に引っ越しましたが、その街は宗教音楽が盛んでした。
彼は音楽グループに入り、早くも6歳から音楽の勉強を始めました。
そして10歳の時、彼は近所の男子グループを率いて音楽バンドを作り、15歳で記譜法を学び、さらにトロンボーンを演奏しました。
サルガドは、ワルツ、行進曲、マズルカ、ポルカなどを多くの作品を残しましたが、最も有名な曲が今回ご紹介する「二つの心(Dois Corações)」です。
■ 二つの心/ペドロ・サルガド
ついウキウキしてしまうような軽快な曲です。
行進曲風ですが、流れるようなメロディラインが特長です。
■ 第125回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
アルカンジェロ・コレッリ(又はコレルリ ) はイタリアの作曲家、ヴァイオリニストです。
コレッリはバロック期を代表する作曲家として名声を博し、後にバッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディなどにも影響を与えました。
さらに、近代ではラフマニノフが「コレッリの主題による変奏曲」を作曲しており、音楽史に重要な足跡を残しています。
しかし作品数が極端に少なく、ヴァイオリン・ソナタ 『ラ・フォリア』、合奏協奏曲集の 『クリスマス協奏曲』が知られている以外は、聴く機会の少ない作曲家でもあります。
今回は、ソナタニ短調 作品5 No.7「サラバンド」(Sarabande in D minor Op. 5, No. 7) を、弦楽演奏で心静かにお聴きいただきたいと思います。虚飾を廃した美しい曲です。
■ サラバンド/アルカンジェロ・コレッリ(Arcangelo Corelli, 1653 - 1713)
この絵画は、レンブラントの「瞑想する哲学者」(ルーブル美術館蔵)です。Wikipedia
柔らかい日差しを浴びて窓際に座った「瞑想する哲学者」。画面右の炉に火をくべる老婆(妻らしき女性)。二人の間には螺旋階段が描かれております。
※3番目の人物、つまり螺旋階段の上にいる女性は、18世紀と19世紀に刻まれた絵画の複製で見ることができますが、現在の状態ではほとんど見えません。
この油絵を見ながらこの曲を聴くと、相乗効果でしょうか、音楽も絵画もより深く鑑賞できるのです。
■ 第126回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ポーランドの作曲家 ヴォイチェフ・キラールの4度目の登場です。この人の音楽は本当にきれいです。
曲は、ポーランドのテレビ番組「ポリャネツキー家」の挿入曲です(1978年制作)。
※「ポリャネツキー家」の原作は、ノーベル文学賞作家 ヘンリク ・シェンキェヴィチ氏です。
ヴォイチェフ・キラール ヘンリク ・シェンキェヴィチ (画像出典 共にWikipedia)
マクシム・ジェミンスキ (Maksym Rzemiński) のピアノと弦楽器による演奏でお聴き下さい。
■ ポリャネツキー家より / ヴォイチェフ・キラール (Wojciech Kilar 1932-2013)
■ キラール アンコール
知られざる名曲 第104回 Tredowata(ハンセン病)ワルツ/キラール
知られざる名曲 第105回 映画「Smuga cienia」 /キラール
知られざる名曲 第106回 ポロネーズ /キラール
■ 第127回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
何故かクラシック音楽の作曲家は男性ばかりです。バッハ、ベートーヴェン、ショパン・・・。
残念ながら女性のクラシック作曲家の名前が言える人は少ないでしょう。そんな希少価値ともいえる女性作曲家を発掘するのが当シリーズの得意とするところです。
今までも、アッラ・パブロヴァ(Alla Pavlova 、1952-)、エヴァンシア・レブツィカ(Evanthia Reboutsika 1958- )、エレニ・カラインドロウ(Eleni Karaindrou、1941-)などをご紹介してきました。日本では無名の作曲家です。
画像 ACワークス(株)
今回は年代をさかのぼり、ブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルザークなどの後期ロマン派時代に生きたドイツの女性作曲家 ルイーゼ・アドルファ・ル・ボー(Luise Adolpha Le Beau, 1850 – 1927)に焦点を当てることにしました。
ルイーゼ・アドルファ・ル・ボー Wikipedia
■ ピアノ三重奏 ニ短調 op.15 第2楽章「アンダンテ」/ ル・ボー
落ち着いた色彩の音楽です。ホッとするような安心感に包まれます。
この音楽は下手な精神安定剤より効きそうです。
■ 第128回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ロシアがウクライナに侵攻し戦争が始まりました。戦争は言うまでもなく兵士と市民が犠牲になります。
アメリカがイラク(2003)やアフガニスタン(2001)に侵攻した時も、たくさんの人命が奪われました。
今回は美しくも悲しいロシアの愛唱歌 「鶴(邦題)」を聴いて、平和への思いを新たにしたいと思います。
この曲は、ウクライナ(キエフ出身)の音楽家 フレンケリ(1920-1989) が作曲しました。
そして歌詞は、ソビエトの詩人 ガムザートフが広島の原水禁大会に参加した際、被爆者 佐々木禎子の千羽鶴の話に感銘を受け、戦争で亡くなった人々を追悼する意味で作りました。
“あなたはきっと空を飛ぶ鶴となって生きている、美しい鶴の群れの中に・・・そして私を待っている”
■ 鶴 (Журавли) / ヤン・フレンケリ
考
「鶴」
作詞:ガムザートフ (ナウム・グレブニェフ ロシア語訳) /日本語訳詞:中村五郎
※ロシア語訳詞は フェオクチーストフとの表記もありますが、当記事はWikipediaを参考にしました。
1.空とぶ鶴の群れの中に
あなたはきっといる
きっと このわたしを待っている
激しい戦いの日も 空に群れてとぶ
美しい鶴の群れ あなたはそこにいる
ルルル・・・
2.いくさにいのち捨てても
死んではいない
あなたはきっといる きっと生きている
このわたしを待っている
激しい戦いの日も 空に群れてとぶ
美しい鶴の群れ あなたはそこにいる
ラララ・・・
素晴らしい歌唱は、スビトラナ・ロボダ(SvitlanaSerhiivna Loboda)さん。ウクライナの歌手兼作曲家です。
この歌は愛唱歌であり反戦歌でもあります。またロシア民謡として、日本でもダークダックスなどのコーラスグループで歌われました。少し年配の方ならお聞きになったことがあるかも知れません。
一日も早い戦争の終結を祈りながら聴きたいと思います。
■ 第129回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は長い名前ですが、フランスの作曲家 ジョゼフ・ブローニュ・シュヴァリエ・ド・サン=ジョルジュ(Joseph Boulogne Chevalier de Saint-Georges, 1745 - 1799 )の初登場となります。
サン=ジョルジュは、グアドループ島(フランス領)の裕福な農園主を父に、セネガル出身の黒人女性を母に生まれました。
父はフランスの国会議員でもあり、サン=ジョルジュは幼い頃より英才教育を受けましたが、特に音楽はゴセック(ガヴォットで有名)に学び、作曲ばかりかヴァイオリン奏者としても才能を発揮しました。
生涯に、交響曲(7曲)、協奏曲、ソナタ、オペラ、バレエ、弦楽四重奏などを作りましたが、モーツァルトと同時期の作曲家であり、混血であることから「黒いモーツァルト」と呼ばれていました。
また、作曲家、ヴァイオリニストと同時に、フェンシングの名手でもありました。
フェンシングの試合をするサン・ジョルジュ(左)(Wikipediaより)
演奏は、南アフリカのオーケストラ 「The Buskaid Soweto String Ensemble」 です。とても音楽性の豊かな弦楽アンサンブルで、若々しくしなやかな演奏をお楽しみ下さい。
■ 協奏交響曲ト長調-アレグロ / サン=ジョルジュ
音楽史にも名前が見当たらない サン=ジョルジュですが、近年になって再評価されYouTube動画もたくさんUPされています。
■ 第130回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ロマンスS.169 ホ短調は、1848年にハンガリーの作曲家 フランツ リスト(1811 - 1886) がモスクワを訪れたときに書いた曲です。
原曲は「O、pourquoidonc(ああ何故そうなのか=直訳)」と呼ばれる歌曲でしたが、リスト自身の手によってピアノ独奏曲になり、「ロマンス」と名付けられました。
ピアノの魔術師と言われ、ショパンと並び称されるリストですが、「愛の夢第3番」「ラ・カンパネラ」の2曲は超有名でも、それ以外は聴く機会が少ないと言えます。ショパンと比べると圧倒的に有名曲が少ないのです。
それでも → ハンガリー狂詩曲 第2番、「パガニーニ大練習曲」より第6曲“主題と変奏” 、メフィスト・ワルツ第1番(村の居酒屋の踊り)、「3つの演奏会用練習曲」より“ため息” 、「巡礼の年」第3年より“エステ荘の噴水” 、コンソレーション (慰め) 第3番などはコンサートのプログラムに組まれることが多いようです。
その意味で今回の「ロマンス」は、マイナーな曲です。しかしとても美しい名曲です。もっと演奏機会があっても良いと思います。
是非、今日からリストの名曲に「ロマンス」を加えて下さい。
■ ロマンス S.169 ホ短調 / リスト
この祈りに満ちた演奏は、中国の世界的ピアニスト ランランです。絶品だと思います。
■ 第131回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
伝説的な天才ヴァイオリニスト パガニーニの初登場です。
ニコロ・パガニーニ(Niccolò Paganini, 1782 - 1840)はイタリアのヴァイオリニスト・作曲家ですが、特にヴァイオリンの名手としてヨーロッパ各地で絶大な人気を博しました。
そのヴァイオリン演奏のあまりの上手さに、「パガニーニの演奏技術は、悪魔に魂を売り渡した代償として手に入れたものだ」と噂されたという。そのため彼の出演する演奏会の聴衆には、本気で十字を切る者や、本当にパガニーニの足が地に着いているか確かめるため彼の足元ばかり見る者もいたという。(Wikipedia)
イタリア ジェノヴァ ACワークス(株)
24の奇想曲やヴァイオリン協奏曲1番、2番が有名ですが、何と言っても「パガニーニの主題」を用いた変奏曲や練習曲、狂詩曲など、当時から後世に至る多くの作曲家(シューマン、リスト、ブラームス、ラフマニノフなど)に影響を与えたことは特筆に値します。
特に、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」はコンサートプログラムの人気曲です。
■ ヴァイオリンソナタ No.6(Sonata No. 12 in E Minor, Op. 3, No. 6)/ パガニーニ
ヴァイオリン演奏は、イスラエル人の世界的ヴァイオリン奏者、ギル・シャハム(Gil Shaham 1971- )氏。
クラシック・ギターは、スウェーデン出身の イェラン・セルシェル(Göran Söllscher, 1955 - )氏。
■ 第132回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回はフランスの女性作曲家 Mel Bonis (メラニー・ボニス 1858-1937)の ピアノ三重奏曲 Soir-Matin, Op. 76 より 「Soir(夜). Andante cantabile」を選曲しました。
メラニー・ボニス、初めて名前を聞く方も多いと思います。
忘れ去られていた 作曲家メラニー・ボニス ですが、近年再評価され、その美しい音楽が YouTube でも視聴できるようになりました。
画像 ACワークス(株)
彼女は数奇な運命をたどった作曲家です。
親から勧められた結婚生活は3人の子供に恵まれたものの、夫は音楽に全く興味がなく、ボニスは家事と育児に追われる毎日でした。
その頃ボニスは、かつてのパリ音楽院時代の恋人 エティシュ と再会します。
二人は愛し合い、遂にボニスはエティシュの間にマデレーヌという女の子を出産します。
マデレーヌは隠し子としてエティシュによって育てられましたが、マデレーヌが、ボニスの長男 エドゥアールと恋に落ちるという事件が起こります。
異父兄妹の道ならぬ恋、ボニスはマデレーヌに出生の秘密を打ち明けます。
マデレーヌは大きな心の傷を抱えながら、それでも母娘の親密な関係は生涯に渡って続き、寡婦となっていたボニスとマデレーヌはマデレーヌが結婚するまで共に暮らしました。
晩年のボニスは芸術家として募る孤独と病気に脅かされながらも、いっそう作曲に励んだといいます。(一部Wikipediaより)
■ ピアノ三重奏曲 Soir-Matin, Op. 76 より 「Soir(夜). Andante cantabile」/メラニー・ボニス
作曲家 ボニスの波乱に富んだ生涯を全く感じさせない穏やかな音楽。
彼女は作曲に没頭することで心のやすらぎを得ていたのだと思います。
■ 第133回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
レオン・ミンクス(Léon Fedorovich Minkus, 1826- 1917)は、19世紀を代表するバレエ作曲家です。
オーストリア帝国出身で、ロシア帝国で活躍しましたが、20年近くにわたってペテルブルクのロシア帝室バレエ(現マリインスキー・バレエ)の舞踊音楽を担当しました。「ドン・キホーテ」(1869年)は彼の代表作です。
画像 ACワークス(株)
本作は、スペインのバルセロナを舞台に、主人公のカップルが親の反対を乗り越えて結婚に至るまでを描いた喜劇ですが、ドン・キホーテは主人公ではなく脇役として登場します。
全編にあふれるスペイン情緒の中で、クラシック・バレエの高度なテクニック、スペイン舞踊やコミカルな演技が取り入れられた華やかな舞台が特長です。(一部Wikipediaより)
■ バレエ音楽「ドン・キホーテ」 第2幕「ジプシーの踊り」 /レオン・ミンクス
演奏は、ソフィア国立歌劇場管弦楽団/ナイデン・トドロフ(指揮)。
バレエ音楽らしい躍動感に満ちていますが、中間部は抒情的です。
表情豊かなバレエ音楽の一級品と言えるでしょう。
しかし、彼はチャイコフスキーと同世代の作曲家であることが不幸でした。知名度はありません。
ロシア政府からの年金に不満を持っていたミンクスは、ウィーンに移りその地で生涯を閉じました。
■ 第134回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
「瞑想のピアニスト」として活躍中の作曲家 ウォン・ウィンツァン氏(黄 永燦、Wong WingTsan )の二度目の登場です。
ウォン・ウィンツァン氏は、1949年日本の神戸市生まれ。お父さんは香港出身、お母さんは日本人と中国人のハーフです。
画像 ACワークス(株)
画像 教育出版 植物ずかん より
タイトルの白詰草(シロツメクサ)とは、ヨーロッパ原産のマメ科の植物で、英語名のクローバー(厳密にはホワイトクローバー)の名前でもよく知られています。
3枚1組の葉と、まるく集まった白い花の穂を次々と出しながら地面を這うようにのびていきます。(野田市サイト参照)
道ばたや公園で見かけますね。
■ 白詰草の丘で / ウォン・ウィンツァン
演奏はクラシックスタイルですが、とても心地よいサウンドで、イージーリスニングとも言えます。
古くはヴィヴァルディも、バッハ、モーツァルトも、シューベルト、チャイコフスキーも、そして近代ではラフマニノフも、イージーリスニング(ムードミュージック)のような曲を作っています。
■ イージーリスニング的なクラシック曲の例
1.ヴィヴァルディ 四季「冬」第2楽章
2.モーツァルト ピアノ協奏曲21番より
3.チャイコフスキー 感傷的なワルツ
クラシックの大家もかつては現代でいうイージーリスニング的な曲をたくさん作っています。
クラシックとイージーリスニングを区別することは意味がありません。
ストレス充満の現代社会では、音楽は心の休日であり、安らぎの聖地です。
当シリーズはこれからもその観点から名曲をご紹介して参ります。
■ 第135回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
「音楽を聴き、演奏するのは楽しいが、それをゼロから創ることは、もっと楽しい」天野正道
http://www.adnet-sakigake.com/kyo/interview/amano/amano.html
久々に日本人の作曲家にスポットを当てました。
天野 正道(あまの まさみち、1957 - )は、日本の作曲家、編曲家。秋田県秋田市出身。国立音楽大学に進学し、在学中よりクラシック音楽、現代音楽はもとより、ジャズ、ロック、民族音楽から歌謡曲まで幅広い活動をはじめる。1982年に同大学院作曲専攻創作科を首席で修了。(Wikipediaより)
具体的な作曲ジャンルは、アニメ・ゲーム・映画音楽から、交響曲、管弦楽曲、協奏曲、室内楽などです。
この曲は横山光輝原作のアニメ『ジャイアントロボ -地球が静止する日』の音楽です。
演奏はポーランドのワルシャワ弦楽四重奏団です。
■ 弦楽四重奏「豪傑たちの黄昏」String Quartet No. 1 "Twilight of the Heroes/ 天野正道
悲しいけれども、ため息が出るほど美しい。
悲しいけれども、高貴な光に満ちている。
■ 第136回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
英国生まれの作曲家 カール・ジェンキンス(Karl Jenkins 1944- )の再登場です。
※(前回は→知られざる名曲 第5回 )
ジェンキンスは、ウェールズ人の父とドイツ人の血を引く母との間に生まれ、幼少期に教会の聖歌隊長を務めていた父の影響で、ピアノやオーボエを習い始める。その後、ウェールズ国立ユース・オーケストラの首席奏者となる。
ロンドン王立音楽院卒業後は ジャズロックグループ、ニュークリアスのメンバーとなり、多くの作曲と演奏に関わる。1990年代には彼がプロデュースするアディエマスのデビューアルバム『聖なる海の歌声』が世界的にヒット。
また日本でも女子フィギュアスケート 村主章枝のために書き下ろした「ファンタジア」が、2006年 - 2007年のフリープログラムで使用された。(Wikipediaより)
2015年にはナイトの称号を授与され、英国を代表する巨匠作曲家として現在に至っています。
■ アベルヴァンの惨事
この曲は、1966年イギリスの南ウェールズのアベルヴァン村で大雨により炭鉱のボタ山が崩れた事故を悼んで書かれました。
■ 嘆きの谷 Lament For The Valley /カール・ジェンキンス
「Cantata Memoria – For The Children」より
指揮はカール・ジェンキンス自身、ヴァイオリンソロは、韓国生まれの英国人ヴァイオリニスト、ジュヨンサーさんです。
ヴァイオリンのオブリガート(助奏)が悲劇的な感情を表し、子供たちの愁いを含んだ合唱が深い嘆きを表しています。
どの作曲家も到達し得なかった「祈りの境地」を私たちは聴くことができます。
■ 第137回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
クリス・ピルスナー(Chris Pilsner 1986- )は、アメリカの作曲家兼指揮者です。
セントラルミシガン大学で作曲の修士号を取得し、ノーザンコロラド大学で作曲の音楽学士号と音楽教育の学士号を取得しています。
彼のオーケストラ曲、吹奏楽曲、室内楽曲は、近年、世界中の聴衆、演奏者、指揮者から高く評価され、まさにクラシック音楽界の新星のような存在です。
今回は クリス・ピルスナーのファーストアルバム「Elements」 から The Lost Relic (失われた遺物=直訳)をお聴き下さい。
演奏は、Marton Barka 指揮/ Johannes Winkler Orchestra(弦楽オーケストラ)です。
■ The Lost Relic (失われた遺物)/ クリス・ピルスナー
いわゆるスケール感のある「カッコいい」曲です。
最近のNHK大河ドラマのテーマ曲のようなストーリー性も感じます。
中間部は、過ぎ去った日々を回想するかのような感傷的な音楽が素敵です。雄大な曲です。
クリス・ピルスナー 公式サイト
さて、現代音楽が失敗したことで、1950年頃で西洋クラシック音楽は止まったままです。
ピルスナー氏のような若い作曲家が、クラシック音楽の手法を継承しながら新しい音楽の世界を切り開いていくことを切に願うものです。
■ 第138回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
チャイコフスキー(1840-1893)のピアノ曲は意外と知られていません。今回は「ロマンスヘ短調」に焦点を当ててみたいと思います。
この美しい曲は、ベルギーのソプラノ歌手で女優の デジレ・アルトー(Désirée Artôt 1835 - 1907)に献呈されています。
画像 ACワークス(株)
チャイコフスキーは後年、弟に宛てた手紙の中で アルトーについて「非常に美しい仕草、上品な所作、芸術的な身のこなし」を身につけていると語っています。歌手・女優としての彼女に強く魅かれており、ホモセクシュアルの彼も一時期は彼女と婚約していました。
アンダンテ・カンタービレで歌われるロマンティック旋律は、チャイコフスキーの熱い恋心を表していますが、どこか哀しいメロディが心に響きます。
原曲のピアノではなく、ヴァイオリンとオーケストラの演奏(アレンジ)でお聴き下さい。
■ ロマンス Op.5 ヘ短調(Romance f-moll Op.5) /チャイコフスキー(Tchaikovsky)
チャイコフスキーの音楽は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、いわれのない迫害を受けています。
日本のコンサートでも多くのチャイコフスキーの作品が演奏されない事態が続いています。演奏家の来日中止も相次いでいます。
歴史あるチャイコフスキー国際コンクールも、除名処分を受けました。
音楽やスポーツには民族や言葉の壁がないはずです。何故、わざわざ壁を作るのでしょう。
“ロマンス ヘ短調” 世界の分断を嘆くチャイコフスキーの心の叫びが聞こえてきませんか。
■ 第139回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
クラシックの原曲をアレンジすることで全く印象の変わった楽曲になります。
この「糸をつむぐグレートヒェン Gretchen am Spinnrade 」も、元は声楽曲(ソプラノ)としてシューベルト(Schubert - 1828)が作曲したものです。(ゲーテ詩)
今回は、チェロとオーケストラによる演奏でお聴き下さい。
画像 ACワークス(株)
オーケストラ編曲: マックス・レーガー(Max Reger 1873~1916)
チェロパート編曲: カミーユ・トマ(Camille Thomas 1988 - )
演奏は、カミーユ・トマ(チェロ)、ブリュッセルフィルハーモニー管弦楽団。
尚、映像の後半はドローンによる撮影です。
■ 糸をつむぐグレートヒェン / シューベルト
この曲は、声楽ファンならご存じの方もあると思います。
それでも カミーユ・トマのチェロで聴くと、その成熟した音楽性に圧倒されてしまうでしょう。
彼女の情念が曲の本質に迫ります。
■ 第140回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
偶然見つけたYouTube動画。どうやら angelo vullo(直訳=アンジェロ・ヴッロ)という作曲家の、Into the past(直訳=過去へ)という曲のようです。
安らぎと癒しの音楽です。今までに聴いたことのない感銘を受けましたので、当知られざる名曲シリーズの第140回に加えることにしました。
angelo vullo
angelo vullo氏は、自身の YouTube動画の登録者が5万人を超える人気の作曲家(兼編曲家)ですが、不思議なことに経歴は不明です。メールの登録地は、ドイツでしたがやはり詳細は不明でした。
したがって今回は、作曲家についても作品についても解説はございません。音楽が全てです。
■ Into the past(直訳=過去へ)/ angelo vullo(直訳=アンジェロ・ヴッロ)
過去へとさかのぼる男の胸に去来する思いとは・・・
■ 第141回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
シャコンヌと言えば、バッハの「シャコンヌ」が一番有名です。
※正確には、バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番BWV. 1004」の 終曲「シャコンヌ」
今回登場するヴィターリ(Tomaso Antonio Vitali、1663- 1745 伊)のシャコンヌは、バッハと並び有名な曲ですが、演奏機会も少なく、意外と知られていないのは残念です。
しかし一方で、このシャコンヌはバロック期の作品にもかかわらず、ロマン派のような表情豊かな音楽に溢れており、もしかしたら偽作ではないかという説もあります。
真偽のほどは定かでありませんが、それほどヴィターリのシャコンヌは魅力に満ちた名品と言わねばなりません。
■ シャコンヌ(chaconne)/ ヴィターリ(vitali)
演奏は、フィラデルフィア出身の韓国系アメリカ人 サラ・チャンさん。
演奏はもちろん、美しい映像も魅力です。
■ 第142回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
北欧デンマークを代表する作曲家 カール・ニールセン(Carl Nielsen 1865 - 1931)の二度目の登場です。
彼は、同い年のシベリウス(北欧フィンランド)に比べると、はるかに知名度は低いものの、交響曲を始めとする多くの作品には、メッセージ性があり、推進力と活力に富み、旋律は豊かな表情を見せます。
ニールセンは、死後30年以上も経ってから、著名な指揮者 レナード・バーンスタインが彼の「交響曲第5番」をニューヨーク・フィルハーモニックと録音したことがきっかけで国際的に評価されるようになりました。
今回は、劇音楽「母」 より「Dimman lättar Op. 41」を取り上げました。珠玉の小品です。
F. ラスムッセン指揮、地元 南デンマークフィルハーモニー交響楽団の演奏ですが、フルートの 自然に溶け込むような優しいメロディが特長です。
■ Dimman lättar (霧が晴れていく)/ カール・ニールセン
晴れていく霧の中で、何が見えたのでしょう。
詩情あふれる曲です。
■ 第143回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
日本人にはどこか懐かしく、それでいて音楽は新鮮で刺激的。
聴いていて不思議な感覚に襲われました。
作ったのは中国系アメリカ人作曲家 クリストファー・ティン(Christopher Tin 1976年- )。
主な作品はオーケストラと合唱曲であり、多くの場合、ワールドミュージックの影響を受けています。彼はクラシックなクロスオーバーアルバム「CallingAll Dawns」で、2つのグラミー賞を受賞しています。(一部Wikipediaより)
画像(曲とは関係ありません) 明月院 鎌倉わかみや写真部より
これ(青字)は俳句です。日本語が実に美しい。4人の俳人は、服部 嵐雪 、正岡 子規、 加賀 千代女、 山口 素堂です。
演奏は、ロサンゼルスの エンジェルシティ合唱団(構成160人)。指揮は、創設者兼芸術監督のスーフィンクです。
4人の歌手は、それぞれが子供「春」、大人「夏」、そして年配者「秋」を表しており、そして合唱が「冬」、最後に子供が再度「春」を歌い、人生のサイクルと輪廻転生を表しています。
■ Mado Kara Mieru(窓から見える)/Christopher Tin(クリストファー・ティン)
人生は出会いの連続ですが、知らなかった音楽との出会いもまた人生に彩りを添えてくれます。
窓から見える彩り豊かな人生に感謝です。
■ 第144回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
大抵の交響曲は4楽章まであり、演奏時間は30分から、長いものは60分を超えることもあります。
しかし、目まぐるしい現代社会に於いては、長時間の演奏は敬遠される傾向にあります。
「クラシック音楽は長くて退屈」という人は増えています。
例えば、ベートーヴェンの「運命」は、冒頭の部分「ジャジャジャジャーン」は知られていますが、第2楽章や第3楽章はあまり知られていません。「運命」は最後まで聴いてもわずか30分ですが、やはりその時間が惜しいのかも知れませんね。
そこで当「知られざる名曲」では、有名な交響曲の中から「あまり知られていない楽章」を選んでみました。もちろん驚くほど美しい名曲です。
画像 ACワークス(株)
今回は、わずか3分40秒ほどの短い楽章です。曲はメンデルスゾーン(Mendelssohn , 1809 - 1847)の交響曲第5番「宗教改革」です。
この曲の美しい第3楽章はあまり知られていません。
■ 交響曲第5番「宗教改革」第3楽章/メンデルスゾーン
ト短調の美しくも悲しい旋律が第1ヴァイオリンによって奏されますが、メンデルスゾーンの旋律美が心に響くとてもロマンティックな音楽です。
そして切れ目なく第4楽章へ続いているので、序奏または間奏曲ともいえる楽章です。ほとんど単独で演奏されることは無いようです。
■ 第145回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
Mitten im Schimmer der spiegelnden Wellen
Gleitet、wieSchwäne、der wankende Kahn;
Ach、auf der Freude sanftschimmernden Wellen
Gleitet die Seele dahin wie der Kahn;
きらめく波のかすかな光の中を
白鳥のように揺れる小舟がすべって行く
ああ、優しくきらめく波の喜びにのって
この魂も小舟のようにすべって行く
シューベルト(Schubert 1797– 1828 ドイツ)が作曲した歌曲「水の上で歌う Auf dem Wasser zu singen」の歌詞の一部です。
作詞:シュトルベルク(Stolberg 1750–1819 ドイツの詩人でゲーテとも交流があったとされる)
もう30年近く前ですが、買い求めたCD「心の四季~功芳の女声合唱」の中に入っていたこの曲を聴いて、私はシューベルトのこの歌曲が大好きになりました。宇野功芳氏の瑞々しい感性とシューベルトの美しい旋律が忘れられません。(演奏:宇野功芳 指揮/日本女声合唱団)
声楽ファンならご存じのこの歌曲を、今回はアルペジョーネ(arpeggione)という楽器の演奏でお聴きいただこうと思います。
画像 Wikipediaより
※アルペジョーネは、ウィーンのギター製造者ヨハン・シュタウファーにより発明された弦楽器で弓で演奏します。チェロを小ぶりにしたような形ですが、弦は6本ありギターの要素もあります。このため「ギター・チェロ」という別名でも呼ばれましたが、外見はバロック時代のヴィオラ・ダ・ガンバに似ています。(一部Wikipediaより)
尚、シューベルトの作曲した「アルぺジョーネソナタ」は有名。
■ 水の上で歌う D774 作品72 (アルペジョーネ版)/シューベルト
水の上で歌う~夕暮れの舟遊び
ピアノの表す水面のきらめきの上を、甘い音色のアルペジョーネが情感豊かに歌います。
アルペジョーネ演奏は、アンヌ・ガスティネル - Anne Gastinel(仏) 、ピアノは クレール・デゼール - Claire Désert(仏) 。
■ 第146回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、ポーランドの作曲家で、クラシックから映画音楽まで手掛ける クシェシミル・デプスキ (Krzesimir Dębski 1953 - )にスポットを当てました。この作曲家、あまり名前は知られておりません。
曲は ポロネーズ「フサリア」"Polonez Husarii" です。「フサリア」とは、16~18世紀にポーランドで活躍した騎兵隊を指します。
騎兵隊「フサリア」は頭に羽を付け、装飾性のある鎧(よろい)を付けていました。ポーランドの人たちは「フサリア」を英雄として讃えていたと言います。
ポロネーズと言えば、ショパンの英雄ポロネーズや軍隊ポロネーズを思い浮かべますが、この曲も勇壮で堂々としています。
■ ポロネーズ「フサリア」/クシェシミル・デプスキ (Dębski)
指揮は、ウクライナ出身の ハーマン・マカレンコ(Herman Makarenko)。オーケストラはキーウクラシックオーケストラ (Kyiv-Classic" Orchestra)です。公式サイトhttps://www.kyivclassic.com/
ウクライナは音楽どころではないでしょう。コンサートホールや歌劇場は大丈夫でしょうか。
一日も早い戦争の終結を願わずにはいられません。
■ 第147回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
曲名の「irreplaceable」は、Googleで直訳すると「かけがえのない」と表示されます。
この YouTube動画の説明には「深呼吸をして、あなたの人生でかけがえのないものに感謝してください。あなたの心の中にいつもいる人、あなたがゆっくり時間を過ごすことができる場所、そしていつも笑顔になれる最も大切な思い出」と書いてあります。
作曲家 チャド・ローソン(Chad Lawson 1975- 米国)は Wikipediaによると、ある意味スピリチュアルな作曲家です。
画像 ACワークス(株)
彼は、不安や自殺などのメンタルヘルスの問題に取り組みながら、呼吸と瞑想のテクニックをリスナーに案内して、現代生活のストレスからの脱却を目指すと同時に、思考を処理するために前向きで建設的な方法を提供することを自己の目的としているというのです。
彼の音楽、経験、瞑想のテクニックを組み合わせることで、ローソンはメンタルヘルスと感情的な幸福への情熱をさらに多くの聴衆にもたらすことができます。チャド・ローソン自身のピアノで究極のメンタルヘルスを感じてみては如何でしょう。
■ irreplaceable/チャド・ローソン
この音楽を聴きながら、あなたの人生で最もかけがえのないものに感謝して下さい。
■ 第148回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
この曲を作ったのは、トルコ出身の作曲家 ファジル・サイ ( Fazıl Say 1970 - )です。
日本でも良く知られたピアニストで、度々来日して観客を沸かせました。テレビ出演も果たしています。
彼はトルコのアンカラ国立音楽学院でピアノと作曲を学び、その後シューマン音楽院に留学。さらに1992年からはベルリン音楽院で学びました。正統的なクラシックジャンルの音楽家ですが、卓越した才能の持ち主として絶賛され、「天才」「鬼才」と評されました。
画像 ACワークス(株)
華麗で超人的なピアノテクニックで、世界中の主要オーケストラと共演するなど、演奏家として活躍する一方、作曲家としてもピアノ作品、室内楽、オーケストラ曲など多彩な才能を発揮しました。
今回は、作曲家としての彼の作品をご紹介します。
タイトルの「Kumru(トルコ語)」は、「鳩」の意味ですが、現地では女の子の名前でもよく使われているとのことです。
■ 3つのバラードOp.12 No.2 Kumru (クムル = 鳩)/ファジル・サイ
演奏は、ファジル・サイ - Fazıl Say (ピアノ)、カザル四重奏団 - Casal Quartet によるピアノ五重奏です。
中世イスラムの恋愛古典文学を題材に作曲されたとされますが、何とも愛らしい小品です。
■ 第149回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、どなたも良くご存じの 久石譲(ひさいし じょう、Joe Hisaishi、1950 - )の作品です。
久石譲は言うまでもなく、「風の谷のナウシカ」、「天空の城ラピュタ」、「となりのトトロ」、「千と千尋の神隠し」などアニメの音楽で有名ですが、クラシック音楽はもちろん、映画音楽、テレビ音楽、ポップス、CMなどあらゆるジャンルの音楽シーンを手掛けています。
久石譲 Wikipedia
映画『時雨の記』(しぐれのき)は、1977年発表の中里恒子の小説(文藝春秋刊)、それを元にした1998年製作の日本映画。吉永小百合、渡哲也主演、監督澤井信一郎。
久石はこの映画の音楽を担当しました。
あらすじ
大手建設会社の専務・壬生孝之助(渡哲也)は、20年前に心に留めた女性・堀川多江(吉永小百合)に偶然再会し、翌日、鎌倉を訪ねる。夫を亡くし華道教授をしながらひっそりと暮らしてきた多江は、戸惑いながら壬生の少年のようなひたむきさに惹かれてゆく。世俗の価値観を離れて、同じものに響き合える人と残りの人生を生きてみたい、二人で西行や定家のように隠れ住みたいと願う。しかし新しい生活を決意した壬生には病魔が迫っていた。京都嵯峨野で発作を起こした壬生を抱きしめる多江。二人に時雨が降り注いで過ぎてゆく。
古都・鎌倉、紅葉の京都、晩秋の飛鳥路を舞台につつましく揺るぎない大人の愛の物語を描く名作(Wikipediaより一部抜粋)。
■ la pioggia / 久石譲 (映画「時雨の記」より)
■ ご参考
時雨の記 YouTube動画(1分34秒)
その恋はしぐれのように 私の胸に舞いおりました
■ 第150回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
当シリーズ150回目の今回は、タンゴの巨匠アストル・ピアソラ(Astor Piazzolla, 1921 - 1992)を取り上げることにしました。昨年が生誕100年に当たった アルゼンチンの作曲家・バンドネオン奏者です。
ピアソラは、伝統的なタンゴを活かしながら、クラシック、ジャズの要素を融合させた独自の演奏形態を生み出し、タンゴの革命児として数々の名曲を生み出しました。
画像 ACワークス(株)
この曲は、「天使のタンゴ」という劇の付随音楽として書かれた 組曲(3曲)のうちの一つです。
※ 「天使の死」(1962)、「天使のミロンガ」(1965)、「天使の復活」(1965)。
ミロンガは、タンゴの源流となるリズムで、テンポは速いとされますが、ピアソラは情感を込めて美しく仕上げました。
クラシック・ギター演奏は、イェラン・セルシェル(スウェーデン出身)、チェロ演奏は、ジャン・ワン(中華人民共和国出身)。しっとりとした演奏です。
■ 天使のミロンガ (Milonga del ángel) / ピアソラ(Piazzolla)
静かな夜に聴く珠玉の一曲です。
- 知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ 1
- 知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ 2
- 知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ 3
- 知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ 4
- 知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ 5
- 知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ 6
- 知られざる名曲の宝庫を開ける 番外編
- 知られざる名曲を考察する