知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ 1
第1回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
クラシック音楽の歴史は、バロック音楽(17世紀)から数えて約400年が経ち、多くの作曲家によって数えきれない音楽が作られましたが、現在、私たちが聴くクラシック音楽は何故か数百曲に限られています。
これらの曲は「名曲」と呼ばれ、今日まで何度となく繰り返し演奏されてきました。
しかし、無数の音楽の中には、まだまだ「名曲」がたくさん隠れているのです。
人生100年時代、その隠れた「名曲」を聴かずにいるのは、とても勿体ないと思います。
そこで、私が個人的に感じた「知られざる名曲」を、当ブログ上で公開させて頂こうと考えました。
題して、シリーズ「知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける」です。
実は、当ブログが独断で「知られざる名曲」と認定した曲のリストは500曲を超えますが、その中から、YouTubeで聴くことが出来るクラシック曲を厳選して順次公開いたします。
ただ、もちろん「名曲」と言っても主観によるものですから、気に入った曲だけお聴き頂ければ幸いです。
また音楽の感じ方は、リスナーの「心境」が大きく影響しますので、その時自分が「ああ、良い曲だなぁ」と感じた曲が「名曲」です。「名曲」に定義などありません。
初めて耳にする作曲家もいるでしょうが、クラシックのジャンルを超えて「映画音楽」など洋楽全般を見渡し、メロディが美しい曲、心に沁みる曲、一度聴いたら忘れられない曲を選びました。
尚、選定に当たり、クラシック曲220万曲を配信するナクソス・ミュージック・ライブラリー (NML) のサイトを参考にさせて頂きました。
記念すべき第1回は、ポーランドの作曲家でピアニスト、指揮者だった Waldemar Kazaneck が作曲したワルツです。もとは映画「昼と夜」に使われた曲です。
■ 「昼と夜」ワルツ ヴァルデマール・カザネッキ(1926-1991)
コロナ禍で気分がすぐれない毎日ですが、この曲を聴くとパーッと心が晴ればれします。
実際にワルツを踊る動画をYouTubeから見つけました。
第2回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、ギリシャの作曲家 ヴァンゲリスが1992年に作った「1492 パラダイスの征服」です。
1492年と言えば、コロンブスのアメリカ大陸発見の年ですが、この曲はその映画音楽「新大陸発見/コロンブスのテーマ」としてヨーロッパで大ヒットしました。その意味で、「知られざる」とは言い難いのですが、日本では演奏機会も少なくあまり知られていません。
クラシック音楽と映画音楽には何の隔たりもありません。
もしベートーヴェンの時代に映画があったら、ベートーヴェンも映画音楽を作っていたと思います。
実際、20世紀のソ連時代を代表する作曲家 ショスタコーヴィチ は、分かっているだけでも38曲もの映画音楽を作っています。
そして、イタリアの映画音楽作曲家 エンニオ・モリコーネ や ニーノ・ロータ は忘れられない名曲を作りましたが、どれもクラシックの名曲に勝るとも劣らない素晴らしい曲ばかりです。
ヴァンゲリスのこの曲も、立派な合唱付きの管弦楽曲です。是非聴いてみて下さい。
■ 「1492. CONQUISTA DEL PARAISO(パラダイスの征服)」
VANGELIS ヴァンゲリス( 1943- )
この曲は、以前当ブログ で一度紹介しております。
高揚感を引き出す3拍子ボレロのリズムに乗って、合唱が厳かに歌い出しますが、このメロディには高い格調を感じます。世界中でコロナが猛威をふるう中、この曲を聴いていると、「人類の尊厳」にも似た崇高な意識が芽生えてくるのです。
■ ヴァンゲリス氏は、2022年5月17日に亡くなりました。死因は明らかではありませんが、ギリシャ紙によると、新型コロナウイルスの治療を受けていたフランスの病院で亡くなったとのことです。享年79歳。ご冥福をお祈りします。
第3回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ギター発祥の地スペインの作曲家 サルバドール・バカリッセ は、ピアノ曲、室内楽、オペラ、ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲などクラシックの曲を数多く残しましたが、この「ギター小協奏曲イ短調」(1952年)が代表曲と言えます。
日本では、ギター協奏曲と言えば「アランフェス協奏曲(ロドリーゴ曲)」(特に第2楽章)が人気ですが、この曲も旋律の美しさでは際立っています。
■「ギター小協奏曲イ短調」サルバドール・バカリッセ (1898 - 1963)
もし時間の無い方は、頭から1分30秒ほどの箇所から視聴して下さい。
もう、ムードミュージックのような感傷的な音楽です。
第4回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ロシア人作曲家 ゲオルギー・スヴィリードフは、日本ではあまり知られていませんが、ロシアでは国民的作曲家として人気があります。あのソチ五輪開会式でも彼の作品が世界に披露されました。ご参考 当ブログ 音楽から見たソチ五輪開会式
尚、作曲はショスタコーヴィチに師事していたとのことですが、スヴィリードフ独特の甘美な旋律には誰もが魅せられると思います。
■ The Blizzard (吹雪)より No,4 Romance Sviridov スヴィリードフ(1915-1998)
ヴァイオリンの切々とした旋律にチェロが絡み、ロマンティックな曲想は木管楽器に引き継がれます。
やがて金管のトランペットに旋律が移りクライマックスを作りますが、静かに回想するかのように終曲します。
心に残る名曲です。
第5回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
カール・ジェンキンス(Karl Jenkins 1944年- )は、英国ウェールズ生まれの作曲家です。
教会オルガニスト・聖歌隊長だった父親から音楽の手ほどきを受け、ウェールズ国立ユース・オーケストラでは首席オーボエ奏者でした。
作曲では、ニューエイジ的なサウンドが世界各国で人気を博し、日本でもNHKスペシャル「世紀を超えて」のテーマ曲が有名になりました。
さらに2014年、これまでに作曲した声楽曲・宗教曲を新たに無伴奏合唱用に編曲した「Motets」を発表し、英国クラシック・アルバム・チャートで第1位を獲得。2015年にはナイトの称号を授与され、英国を代表する巨匠作曲家として現在に至っています。
■ Palladio (コンチェルトグロッソ パラディオ第1楽章) Karl Jenkins カール・ジェンキンス(1944- )
この曲は、イタリア中世の大建築家アンドレーア・パッラーディオを称える作品として書かれた弦楽合奏曲です。
低弦のリズムの刻みに乗って、非常にインパクトのある音楽が展開されますが、これは一拍目が16分休符になっていることで緊張感が増すことに起因します。一糸乱れぬ弦楽合奏をお楽しみ下さい。
尚、この第1楽章は、元はデビアスダイヤモンドのコマーシャル用に作られたものです。
■ ご参考 https://www.youtube.com/watch?v=3PJzDL0F5_c
当ブログ人気記事 テレビCMで聴くクラシック曲あれこれ
第6回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
アルフレート・シュニトケ(Alfred Schnittke) は、ソ連で生まれたユダヤ系作曲家です。
彼はクラシックの定番である、交響曲、管弦楽曲、協奏曲、室内楽、オペラなどを書きましたが、多くは現代音楽の技法を取り入れました。
↑ 全休符にフェルマータ記号のついたシュニトケの墓石。まさに永遠の眠りについたことを意味します。終止線もありません。
あの世とつながっているので終止線は書いてないのでしょう。
fffは全力で生きたことを表しているかのようです。
シュニトケは「生涯の目標は、芸術音楽と軽音楽の統一である。」と語り、新しい作曲様式を模索しましたが、今回ご紹介する「Tango」も、ヴァイオリンとピアノの軽快なタンゴが魅力です。
■ Tango (Arr. by Andriy Rakhmanin for Violin and Piano) Alfred Schnittke(1934-1998)
このお洒落な小品は日本ではあまり知られていませんが、浅田真央選手のフィギュアスケート曲として記憶にあるのではないでしょうか。
音楽と同時に、浅田真央ちゃんの5種類の衣装を楽しんで下さい。↓
https://www.youtube.com/watch?v=_a_N5qWw1X4(リンク切れはご容赦ください)
第7回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ウィリアム・バードは、イングランドで活躍したルネサンス時代(15世紀後半~17世紀初頭) の作曲家です。
カトリックの礼拝堂の一員として教会音楽の名作を残しましたが、エリザベス1世の庇護のもと、イギリスの音楽の父として国民から敬愛されてきました。
数多い作品から、今回はアレンジの優れたオーケストラ曲を選んでみました。
■ 第7回 ソールズベリー伯爵「パヴァーヌとジーグ」 ウィリアム・バード/William Byrd(1543-1623※諸説あり)
ソールズベリー伯爵(英:Earl of Salisbury)とは、イングランド貴族の伯爵位の一つ。過去に5回創設されています。
「パヴァーヌとジーグ」とは舞曲の一種です。
この動画は、「音の魔術師」の異名を持つ。レオポルド・ストコフスキーが編曲・ 指揮をして、ロンドン交響楽団が演奏(1974年)したものです。
弦楽器の重厚なハーモニーと柔らかい管楽器が織りなす極めて「格調の高い音楽」が私たちの傷ついた心を満たしてくれるのです。
第8回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
アンリ・ヴュータン( Henri Vieuxtemps ) は、フランスで活躍したベルギーのヴァイオリニスト・作曲家です。
ヴァイオリン工房の家系に生まれたヴュータンは、幼い頃から楽才を発揮。6歳で公開デビューを果たし神童と呼ばれます。
晩年のヴュータンは決して幸せではありませんでした。病床の彼は、同居していた娘夫婦に先立たれ、娘たちの二人の子供と共にこの世に残されることになったのです。
そして経済的に困窮する中、失意のうちに自らも息絶えるのです。61歳の生涯でした。
■ ヴィオラとピアノのためのエレジー Op. 30 アンリ・ヴュータン (1820 - 1881 )
エレジーとは、悲歌とか哀歌の意ですが、この曲は悲しさの中に洗練された美しさがあります。
数少ないヴィオラ曲の名品と言えるでしょう。
第9回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
あの東日本大震災からちょうど10年が経ちました。
今は穏やかな三陸の海を心で眺めながら、この曲で鎮魂したいと思います。
■ 映画「赤いテント」より ワレリヤの恋 アレクサンドル・ザットセイン(Aleksandr Sergeyevich Zatsepin 1926- ロシア作曲家)
日本では無名の作曲家ですが、この曲はご存じの方もあると思います。ハープと弦楽器・コーラスによる哀愁に満ちた音楽を聴くと、不思議と心が安らぐのです。
第10回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
第10回目の今回は、日本の作曲家で最もロマンティックな旋律を書いた 横山菁児(よこやま せいじ)を選びました。ここで初めて日本人作曲家の登場です。
国立音楽大学作曲科卒業後は、テレビドラマやアニメ音楽を多く手がけましたが、スケールの大きなオーケストラ曲、合唱曲も多く、旋律の美しさは定評があります。
交響組曲「宇宙海賊キャプテンハーロック」は、松本零士原作のアニメで、1978年から79年にかけて放映されました。
甘いメロディは、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」の 第18変奏曲や、ポールモーリアの「蒼いノクターン」に匹敵するほどです。
第11回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回はメキシコの現代音楽「ダンソン・
メキシコシティでは午後になると、広場で年配の男女がゆったりとしたダンスを踊る姿を目にすることがありますが、「ダンソン」とは、キューバ発祥のダンスで、今メキシコでとても人気があるそうです。
作曲は、メキシコの現代音楽作曲家 アルトゥロ・マルケス(Arturo Márquez Navarro )で、この曲はメキシコ国立自治大学の依頼を受けて作られましたが、娘のリリーに捧げる曲でもある、と語っています。
動画のピアノ演奏は、指揮者のアロンドラ・デ・ラ・パーラさん、メキシコ出身。フィルハーモニック・オーケストラ・オブ・ジ・アメリカスの創設者および芸術監督を務める傍らメキシコ観光省文化大使です。(観光大使の名の通り、その美貌と華麗な指揮ぶりが世界中で人気です。)
クラシックバレエは、メキシコの舞踊家 エリサ・カリージョ・カブレラさんです。
■ 「ダンソン・
どこか郷愁を誘うメロディ、心に響く心地よいリズムが魅力の名曲です。
第12回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ジョージア(元グルジア)はヨーロッパとアジアの境にあり、あのコーカサス山脈や黒海の絶景など自然豊かな国です。
そのジョージアに生まれたのが、今回の作曲者 ヴァーシャ・アザラシヴィリ(Vazha Azarashvili)です。初めて名前を聞いた方も多いかも知れませんね。
指揮者の山田和樹氏は、高校1年生の時、アザラシヴィリの曲を飛行機のなかで聴いて涙するほど魅了されたといいます。
アザラシヴィリの感傷的な旋律に、ついジーンと来たのだと思います。
■ ノクターン ヴァーシャ・アザラシヴィリ(1936-)
ヴァイオリン演奏は、髙木凜々子さん。とてもチャーミングな実力派ヴァイオリニストです。
心が洗われるような優しい旋律に、あなたも魅了されると思います。
第13回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
NHKのテレビ番組 ~ Eテレ「こころの時代」。
私もよく見ることがありますが、テーマ曲を聴くだけで自然に心が落ち着くのです。
作曲したのは、ウォン・ウィンツァン(別名 瞑想のピアニスト)。
神戸市出身の作曲家・ピアニストですが、ご両親は香港出身の父親と、日本と中国のハーフの母親とのこと。国籍はイギリスだそうです。
テレビ番組のテーマ曲ですが、素敵なクラシックの小品です。
そして、 “瞑想のピアニスト” の名に相応しく、深遠ともいえる音楽性豊かな曲想が特徴です。
作曲者自らの演奏による動画でお聴きください。
■ 心のこころの時代 〜Eテレ「こころの時代」テーマ曲〜 Wong WingTsan (1949- )
まるでイージーリスニングのような聴き易い曲ですが・・・
しみじみとした深い味わいの中に、淡い光が私たちを包んでいるようです。
この曲には自己主張が全く感じられません。
ただあるのは、次元を超えた包容力と慰め・・・
第14回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
若い頃、「不滅」というタイトルを見て、LPレコードを衝動買いした時、この作曲家ニールセンを知りました。
「不滅」というタイトルに惹かれましたが、このネーミングは作曲者自身が付けたものです。
聴いてみると、「運命」「未完成」「新世界」などのクラシックの定番に比べて、ニールセンの音楽は劇的な描写力と色彩感があり、私も含め当時のクラシックファンはとても新鮮な音楽に驚きました。
そこで今回は、そんな思い出深い デンマークを代表する作曲家 ニールセン(Carl August Nielsen)を取り上げてみることにしました。
ただ、交響曲第4番「不滅」は単一楽章といってもやや長い曲ですので、このコーナーでは、劇付随音楽 「アラジン組曲」全7曲から、1曲目の「祝祭行進曲 (Orientalsk Festmarch)」を選んでみました。
「千夜一夜物語」の「アラジンと魔法のランプ」を題材にしたドラマティックな音楽です。
■ 祝祭行進曲(アラジン組曲より) カール・ニールセン(Carl August Nielsen 1865 - 1931)
あまり生で聴く機会はありませんでしたが、最近は吹奏楽で演奏されることもあると聞きます。
振幅の大きな旋律、輝かしいサウンド、どこか東洋的な雰囲気を漂わせながら胸中に迫る音楽が忘れられません。
第15回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
「名曲」に定義はありませんが、当ブログは、旋律がきれいであることを「名曲」の条件と致します。
クラシック現代音楽は、その意味で「名曲」がありません。
しかし、映画音楽に道が開かれ、ニーノ・ロータやエンニオ・モリコーネなどの現代作曲家が、旋律の美しい「名曲」を数多く書くようになりました。
調性音楽で作られたこれらの作品を、このシリーズでは今後も取り上げて参ります。
今回は、ロシアの作曲家 イサーク・シュワルツが、日本・ソビエトの合作映画「白夜の調べ(1978年公開 東宝映画)」のために書いた映画音楽です。
「白夜の調べ」は、レニングラード音楽院に学ぶ新進ピアニストの矢代悠子(栗原小巻)と、ソビエトの作曲家 イリアとのラブロマンスです。
映画を見られた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
■ 「白夜の調べ」 イサーク・シュワルツ(Isaak Shvarts 1923 - 2009)
"Melodies of the White Night" Isaac Schvartz
愁いを含んだ甘く切ない音楽、ピアノの美しい響き、情感があふれます。
■ ご参考 2016年、この曲をバックに、フィギアのエフゲニア・メドベージェワ選手が絶品のエレガンスな演技を見せました。
https://www.youtube.com/watch?v=Yiyg1_5Zyuw
画像
https://www.discogs.com/ja/%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%83%84-%E7%99%BD%E5%A4%9C%E3%81%AE%E8%AA%BF%E3%81%B9/release/13429629
第16回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
例年より早く「桜」の満開を迎え、いよいよ春の花のシーズンが訪れました。
そこで今回は、花に関連する音楽を選曲してみました。
登場するのは、東ヨーロッパに位置する モルドバの作曲家 エフゲニー・ドガ(Eugen Dimitrievich Doga)です。
彼は、バレエ、オペラ、合唱曲、器楽曲、レクイエム、教会音楽、映画音楽などあらゆるジャンルの音楽を精力的に書きましたが、特にワルツのための作品は70以上を数えます。
この春に一番のお勧めです。
■ バラのワルツ(Waltz of Roses) エフゲニー・ドガ Eugen Doga(1937- )
彼はコンサート活動にも力を注ぎましたが、常にその目的は「人々を結びつけ、人々をより優しく、より寛容にし、花を咲かせ、太陽を明るく輝かせる」ことにあるという信念に基づいていました。
心躍るワルツのリズムに乗って、旋律が優雅に揺れ動きます。
皆様の心の中に、どんな素敵な花が咲いたのでしょう。
■ ご参考 花の華麗な開花シーンを集めた動画、もちろんBGMは「バラのワルツ」です。
https://www.youtube.com/watch?v=HvFaciai-Ew
第17回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、 サルスエラ の名作「くちづけの伝説」(初演1924年)から間奏曲です。
※ “サルスエラ” は人の名前ではありません。
17世紀にマドリッドで発祥した スペインの音楽劇でオペレッタに近いものです。その昔、王室の離宮、サルスエラ宮殿で行われていたので、“サルスエラ”と呼ばれるようになりました。
スペイン東北部カタルーニャ地方の郷土料理(地中海の新鮮な魚介をたっぷり使ったブイヤベースのようなもの)も、“サルスエラ” と呼ばれていますので、言葉はご存じの方も多いと思います。
作曲は、レベリアーノ・ソウトゥーリョ(Reveriano Soutullo) (1880-1932)と、フアン・ベルト (Juan Vert) (1890-1931) の二人です。二人とも日本ではマイナーな作曲家ですが、このサルスエラの大成功で郷里では有名になりました。
■ サルスエラ 「くちづけの伝説」間奏曲 ソウトゥーリョ( Soutullo)& ベルト ( Vert)
うねるような豊かな曲想が魅力の間奏曲です。
後半には大きなクライマックスを築きますが、ソロヴァイオリンが抒情的に歌って終曲します。
わずか4分弱の曲中に、スペイン音楽の持つ多様性と深い感情表現をみることが出来ます。
第18回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、シリーズ第18回目ということで初めてピアノソロ曲を選んでみました。
原曲はクラブサン(チェンバロ)のために書かれた器楽曲です。
作曲は、ジャン=フィリップ・ラモー(Jean-Philippe Rameau, )です。ラモーはフランスの後期バロック時代を代表する作曲家兼音楽理論家でした。クラブサン曲集以外にも、宗教曲やオペラ(フランス語)などが有名です。
Pixabay
演奏は ヴィキングル・オラフソン(1984- )、アイスランドのピアニストです。
オラフソンは絶対音感と共感覚の両方を持っており、それによって彼は音楽を色に関連付けることが出来ると言います。たとえば、彼はヘ短調を青色に、ロ長調を黄色に、ロ長調を紫色に関連付けているそうです。
■ クラヴサン曲集より "恋の繰り言(くりごと)" ジャン=フィリップ・ラモー(Jean-Philippe Rameau, 1683 - 1764)
この曲を聴いていると、静かでもの悲しいと同時に、心の安らぎを覚えます。
繰り言とは、「泣き事や不平などをくどくどと言うこと」ですが、曲は透明で清涼感を感じるほどです。
ピアノが美しく響きます。オラフソンさんの演奏にあなたは何色を感じられましたか。
第19回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ケテルビーと言えば、あの名曲「ペルシャの市場にて」を作ったイギリスの作曲家です。
子供の頃よく聞いた懐かしい曲です。
ペルシャの市場 など行ったことも見たこともないのに、にぎやかで楽しそうな所だと分かりました。今思うと、異国ムード満載の素晴らしい描写音楽だったわけです。
今回は、そのケテルビーが作ったもう一つの名曲「牧場を渡る鐘」をご紹介します。まさに隠れた名曲です。
ケテルビーは、1875年 、イギリスの工業都市バーミンガムで生まれました。
音楽の才能は早くから芽生え、イギリス音楽界のホープとして大きく期待されたものの、楽譜は売れず失意の日々が続きました。
しかし、45歳の時に書いた「ペルシャの市場にて」が大ヒットすると、彼は時代の波に乗って次々とヒットを生み出しました。
そして英国で最初の億万長者の作曲家になりましたが、人気は第二次世界大戦中に衰え始め、彼の独創性も低下しました。ケテルビーの戦後の作品の多くは古い作品のリメイクであったのです。
1949年に彼は避暑地ワイト島に移り、そこで悠々自適な生活を過ごしたのち人知れず亡くなりました。84歳でした。
■ 「牧場を渡る鐘」アルバート・ウィリアム・ケテルビー(Albert William Ketèlbey, 1875 - 1959)
全編に流れる牧歌的な音楽を聴くと、とても幸せな気分になります。
教会の鐘の音が、小学校の時に聞いたチャイムのようです。懐かしく気分が和みます。
ケテルビーさんのご冥福を祈ります。
※参考サイト
Wikipedia(海外サイト)
写真 ACワークス(株)
第20回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、スペイン近代音楽の作曲家 エンリケ・グラナドス( Enrique Granados )の オペラ「ゴイェスカス」(1915年)間奏曲です。
このオペラは、まさにグラナドス円熟期の最高傑作と言われていますが、もとはピアノ組曲(1911年)をオペラに改作したものです。
後に、このオペラのニューヨークでの大成功が、グラナドスの悲劇を招くことになるのです。
■ 潜水艦の攻撃で命を落とした作曲家
戦争で犠牲になった音楽家はいますが、潜水艦の魚雷攻撃で亡くなった音楽家はグラナドス一人だと思います。
1916年1月、ニューヨークでの初演は大成功となり、帰路についた グラナドス夫妻が乗船した客船サセックス号は、英仏海峡を渡航中、ドイツ軍潜水艦による魚雷攻撃を受け、夫妻はその犠牲となったのです。
このとき、グラナドスはいったん救命ボートに救い上げられましたが、波間に沈もうとする妻アンパロの姿を見て再び海中に身を投じ、二人はもつれ合うように暗い波間に消えたといいます。グラナドス48歳でした。(一部Wikipediaより)
損傷を受けたサセックス号 Wikipediaより
ご参考=当ブログ「2017年メモリアルイヤーの二人の共通点とは」
https://manriki358.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-c4a8.html
■ オペラ「ゴイェスカス」間奏曲 エンリケ・グラナドス( Enrique Granados 1867 – 1916)
「グラナドスこそ、もっとも本質的な創造者である。……ひと言でいえば、もっとも天才的で、もっとも細やかな詩情を備えた作曲家である。しかも彼は独学だった。彼は……私たちのシューベルトだ。」 パブロ・カザルス
戦争で非業の死を遂げなければ、さらなる名曲が生まれていたことでしょう。
日本でも、尾崎宗吉という作曲家が中国戦線で戦病死しています(享年30歳)。
夜の歌 YouTube 尾崎宗吉
第21回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
このシリーズでお世話になっている[ナクソス・クラシック・キュレーション #365日 Classic calendar]の中から、A・ジョイスの「秋の夢」を選びました。
アーチボルド・ジョイス(Archibald Joyce )は、イギリス ロンドン生まれの作曲家ですが、生涯に多くのワルツを書き、「イギリスのワルツ王」と言われていました。
そして彼の音楽は、当時のダンスオーケストラに絶大な人気を博しました。
イギリスの豪華客船タイタニック号の船内でも、楽団が A・ジョイスの曲を好んで演奏していたと記録があるようです。
運命の日(1912・4・15)、まさに沈没の時に演奏されていたのは、タイタニック号の無線オペレーターのハロルド・ブライドの証言によると、この「秋の夢」だったというのです。108年前の出来事でした。
■ 「秋の夢」 アーチボルド・ジョイス(Archibald Joyce、1873 - 1963)
とても上品で美しいワルツですが、タイタニック号のことを思うと、胸が痛みます。
第22回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、涙なしでは聴けないロマンあふれる音楽を選びました。
人は美しい涙を流すことで心が浄化されると言います。この曲はそんな浄化のための音楽かも知れません。
ジョン・バリー 作曲 映画「ある日どこかで」(Somewhere in Time)の音楽。
ジョン・バリーはイギリス・ヨーク出身の作曲家、指揮者です。多くの映画音楽の作曲を手がけましたが、中でも「007/ジェームズ・ボンド」シリーズは広く知られています。ゴールデングローブ賞とアカデミー賞を5回受賞しています。(wikipedia)
英国作曲家、作家アカデミーのフェローも歴任し、晩年はアメリカに移住して2011年に亡くなりました。
一枚の写真の美女に心を奪われ、彼女に逢いたい一心で68年前の世界へと旅立つ青年。
映画「ある日どこかで」は、1980年アメリカ映画、時を超えて出会う男女の運命的な愛を描いた名作ですが、日本ではあまり知られていません。
劇中音楽には、ジョン・バリーの提案により、ラフマニノフ作曲の「パガニーニの主題による狂詩曲」が使用されました。
この映画は、ラフマニノフとジョン・バリーによって至上の愛を表現し、音楽的にも不朽の名作となりました。
■ 映画「ある日どこかで」(Somewhere in Time) ジョン・バリー(John Barry, 1933 - 2011 )
しっとりとした音楽の中に、限りなくピュアな情感が、まるでさざ波のように胸に迫ります。
絵画のような映像、切々とした情愛が伝わります。
■ ご参考 ピアノ協奏曲としても純粋なクラシック音楽です。
https://www.youtube.com/watch?v=3B-8q2mq314
文中写真 https://ameblo.jp/one111/entry-10164876649.html
第23回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
「羊たちの沈黙」は、1991年公開のスリラー映画(アメリカ)。日本でも大ヒットしました。ご覧になった方も多いと思います。
この時、猟奇殺人犯で元精神科医を好演して、アカデミー主演男優賞を受賞したのが 俳優アンソニー・ホプキンスでした。
アンソニー・ホプキンスは、イギリス出身の映画俳優ですが、作曲家、画家として多方面に活躍しています。
彼が1964年に作曲したワルツ「And the Waltz Goes On」は、現代のワルツ王 アンドレ・リュウが、自身のオーケストラ(ヨハン・シュトラウス・オーケストラ)で演奏することになり、欧米に広まりました。そして、このアルバムは「クラシックFMアルバムオブザイヤー」を受賞しました。
■ 「And the Waltz Goes On(そして、ワルツは続く)」アンソニー・ホプキンス(Anthony Hopkins,CBE,1937 - )
ヨハンシュトラウスも顔負けのエレガントなワルツです。
アンソニー・ホプキンス夫妻も会場に居て、奥様は感激のあまり涙しています。
音楽のある人生、心温まるシーンでした。
第24回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は優雅なバレエ音楽を選びました。
北欧の作曲家 ゲーゼの作ったバレエ音楽「ナポリ」より ~青の洞窟で~をお聴き下さい。
© Opéra national de Paris / Laurent Philippe
ニルス・ウィルヘルム・ゲーゼ(またはガーゼ、ガーデ)は、デンマークの作曲家・指揮者・音楽教師、そしてヴァイオリニストでした。1845年には親交のあったメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の初演をしています。
バレエ『ナポリ』 は、1842年に初演された全3幕のバレエ作品ですが、音楽はゲーゼを含む4人の作曲家の共作でした。このバレエは、デンマーク王立バレエ団の貴重なレパートリーとして現在も上演され続けています。
初演は1842年3月29日にデンマーク王立劇場。
初演を観た童話作家のアンデルセンは、振付家 ブルノンヴィルに宛てて「デンマーク・バレエ界の詩人」と賞賛の手紙を送ったという逸話も残っています。
■ バレエ「ナポリ」より ~青の洞窟で~ ニルス・ウィルヘルム・ゲーゼ(Niels Wilhelm Gade 1817-1890)
愛と信仰をテーマにしたロマンティックなバレエですが、この曲には、ナポリの旅情、青の洞窟の感動が詩情豊かに描かれています。
第25回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
数年前 YouTube を聴いていて、偶然このヴァイオリン曲を知りました。上品で可憐な曲です。
曲のタイトルは、「ヴァイオリンの歌 (Das Lied Der Geige) Op. 2」
この心に残る名曲を作った人は、ヤン・シェベック(Jan Schebek)という作曲家でした。
■ 謎の作曲家
ヤン・シェベック(Jan Schebek)、初めて聞く名前でしたが、調べてみると何処にもそんな名前の作曲家はいません。
同じ名前で、 Jan Schebek( 1815 - 1889)がいましたが、チェコの鉄道建設業および起業家 で、音楽とは無縁のようです。
JanŠebek というサッカー選手もいますが違います。
世界最大級のクラシック音楽ライブラリー「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」では、44,277人(2020年7月現在)の作曲家が登録されていますが、この中にも Jan Schebek は見当たりませんでした。
発売されているCDジャケットの裏面にも、ヤン・シェベックの名前はあるものの、生年も没年も表記はありませんでした。
不思議なことに楽譜はネット上で入手できました。どうやら無伴奏(ソロ)のヴァイオリン曲のようです。
この楽譜に手がかりがありました。よく見ると、ピアノ伴奏付きにアレンジした人がいるのです。
楽譜には、アーサー・ザイボルトによって、ヴァイオリンとピアノのために編曲された(übertragung fur violine und klavier von Arthur Seybold 独語) とあります。
アーサー・ザイボルト(Arthur Seybold 1868 -1948)は、Wikipediaによると、ドイツの作曲家、ヴァイオリニストのようです。
このことから、おそらく ヤン・シェベック も同年代のドイツの作曲家ということになります。
しかし、それ以外は分かりません。
と言うことで、今回は正真正銘の「知られざる名曲」となります。
■ ヴァイオリンの歌 (Das Lied Der Geige) Op. 2 ヤン・シェベック(Jan Schebek)
この曲に込められた「慈愛に満ちたまなざし」を思うとき、ヤン・シェベックの優しい人物像が浮かんでくるのです。
第26回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、いかにもスペインらしい曲です。
アントニオ・アルバレス・アロンソ 作曲の「スペインのため息」です。
彼は、1867年にアンダルシアの小さな町で生まれ、幼いころから孤児として育ちました。しかし音楽の才能に恵まれマドリッドの国立音楽大学を出ると、作曲、指揮、ピアニストとして活躍し、生涯に20を超えるオペレッタ、讃美歌などを作曲しましたが、最も有名な曲が、今回の「スペインのため息」です。
この曲には後になって歌詞が付けられました。
あなたの青い空に
私は孤独の中で
ため息をつきます
スペイン、あなたなしでは私は死にます
スペイン、太陽と星が輝く国
私の心の奥深く
私はあなたを抱きしめたい
広大な海を渡りたい
スペイン、私の人生の花
※歌詞の一部(解釈は変えてあります)
■ スペインのため息( Suspiros de España)
アントニオ・アルバレス・アロンソ(Antonio Álvarez Alonso 1867-1903)
スペイン音楽を聴くたびに、その文化的遺産の偉大さに驚かされます。
歌唱バージョンを聴くとよりこの曲の魅力が理解できるでしょう。
ドミンゴも歌っていますが、スペインの歌姫 ロシオ・フラード の誇り高き歌唱をお楽しみ下さい。
■ ご参考 歌唱バージョン
https://www.youtube.com/watch?v=V438C9AIakE
第27回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は珠玉のピアノ小品です。
F・ドライショック 作曲の「エチュードト短調」。
とてもマイナーなピアノ曲です。
フェリックス・ドライショック(1860-1906) は、ドイツ ライプツィヒ 生まれのピアニスト兼作曲家。
ピアニストとしても人気を集め、同時に作曲家としても成功をおさめ、ピアノ、ヴァイオリン、声楽、オーケストラ曲を書きました。しかし詳しい経歴は分かりません。
ト短調の名曲と言えば、ショパンのバラード1番ト短調 や モーツァルトの交響曲40番ト短調、アルビノーニのアダージョなどが思い浮かびます。
ト短調 (g minor)という調性の持つ特徴は、一般的に憂愁で深くロマン的とされますが、ドイツの作曲家・音楽理論家 マッテゾンは、「真面目さと愛らしさを持ち合わせている最も美しい調べ」と述べています。
■ エチュード ト短調 (Etude in g minor) フェリックス・ドライショック(Felix Dreyschock )
ピアノが流麗に、まるで大気に溶け込むように歌い出します。
自然な息づかい、美しい響き、静かな高揚感 ・・・
私たちは YouTube で聴けて幸運です。
第28回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、初めてのキューバ出身のクラシック作曲家、ジョセフ・ホワイト にスポットを当てることにしました。
キューバと言えば、ルンバ、マンボ、チャチャチャなどのダンス音楽が有名ですが、それらはすべて20世紀に入ってから広まった大衆音楽です。
しかし、19世紀のクラシック作曲家も存在していたのです。
ジョセフ・ホワイト(1836-1918) はパリ音楽院で学び、第1回ローマ大賞(1856)を受賞しました。そして1870年にフランス市民になりました。
ロッシーニからも高く評価された作曲家(兼ヴァイオリニスト)です。(一部wikipediaより)
演奏スタイルは様々ですが、当ブログがお勧めするのは、ピアノ三重奏にアレンジされた動画です。
■ "La Bella Cubana" (※美しいキューバ娘) José Lafitte White (ジョセフ・ホワイト・ラフィット)
(※邦題は Naxos Japanサイトを参照)
キャンドルの明かりで奏でられる音楽を聴くと、「音楽は祈り」だと実感します。
曲想が、静から動へ変化すると、賑わいと共にフランスの香りも感じられます。
写真 ACワークス株式会社
第29回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は男声合唱です。
素晴らしい合唱は、歴史ある ステレンスキー修道院 聖歌隊(モスクワ)です。
作曲は、イゴール・マトビエンコ(1960- )、モスクワ生まれのロシアの作曲家で、2020年には「ロシア連邦の名誉ある芸術家」に選定されました。
マトビエンコは、2014年のソチ冬季五輪で、開会式 と閉会式の音楽プロデューサーを務めましたが、その時登場したのが「ステレンスキー(Sretensky)修道院 聖歌隊」です。 ※ご参考 当ブログ 音楽からみたソチ五輪開会式
この曲は宗教曲ではありません。
しかし、この荘厳さには圧倒されるでしょう。
マトビエンコは、現代の若者が好むヒップホップやラップなどのジャンルを否定し、あくまでも芸術性を求めました。
■ Позови меня тихо по имени (名前でそっと呼んで下さい) イゴール・マトビエンコ(Matvienko)
曲はバイカル湖のように深く、アカペラの合唱はフルオーケストラに匹敵する迫力です。
聖歌隊の歴史と伝統に敬意を表し、ミューズの神に感謝いたします。
第30回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回もとびきりマイナーな作曲家を選んでしまいました。
ブラジルの作曲家 ヘルミニオ・デ・アルメイダ (Herminio de Almeida) です。
曲は「愛の歌」、編曲はモスクワ生まれの イゴール・フロロフ です。
ヘルミニオ・デ・アルメイダ の生没年は不明ですが、編曲者のイゴール・フロロフ は1937年生まれですから、ほぼ同年代と考えられます。
フロロフは生まれた日から音楽で育ち、バイオリンとピアノの音で目を覚まし、眠り、両親とその生徒たちの演奏を聞きました。音楽的に豊かな環境で育った彼はモスクワ音楽院を出て、 ソビエトを代表する世界的ヴァイオリニスト ダヴィッド・オイストラフ に師事しました。
■ 「 愛の歌」 ヘルミニオ・デ・アルメイダ作曲/イーゴリ・フロロフ篇
夢見るような心地よいメロディを演奏するのは、ブラジル出身のドイツのバイオリニスト ニコラス・ケッカート。ピアノは、モスクワ生まれの クリスティーナ・ミラーです 。
クラシックと言っても、ワインが似合うモダンでお洒落な曲です。この曲を聴いて素敵な夜をお過ごし下さい。
第31回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
有名作曲家による「知られざる名曲」を探ってみました。
その最初はシューマンです。
ロベルト・シューマン(Robert ・Schumann, 1810 - 1856)は、ドイツ・ロマン派を代表する作曲家です。
ピアノ曲「トロイメライ」や、歌曲または合唱で歌われる「流浪の民」はとても有名です。
今回はシューマンの室内楽から、ピアノ四重奏を選びました。室内楽がお好きな方ならご存じの方もあると思いますが、一般的にはあまり知られていない名曲です。
■ ピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47 第3楽章 シューマン(Schumann)
この曲は、特に3楽章冒頭のチェロの弾くテーマが美しく、一度聴いただけで魅了されてしまいます。
そのテーマはヴァイオリンに受け継がれ、後半にはヴィオラ、そして終盤、チェロが回想するかのように演奏して終曲します。
終曲するとため息が漏れるでしょう。まさにロマン派の傑作です。
ブラームス国際コンクール チェロ部門2位(2014)。
のびやかで歌心のあるチェロに対し、ヴァイオリンはとても繊細です。
写真 ACワークス株式会社
第32回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
有名な作曲家による「知られざる名曲」の第2弾は、四季で有名なヴィヴァルディです。
アントニオ・ヴィヴァルディ(1678 - 1741)は、ヴェネツィア出身のバロック後期の作曲家です。
生涯に600曲を超える協奏曲と、室内楽、オペラ、宗教音楽等を作曲しましたが、余りにも「四季」が有名で、それ以外はあまり知られていないのは残念です。
■ ピッコロ協奏曲ハ長調 RV.443 第2楽章 ヴィヴァルディ(Antonio Lucio Vivaldi)
尚、ピッコロの起源は18世紀頃とされていますので、この曲は、縦笛(ソプラニーノリコーダー)で演奏されたという説が有力です。
リコーダーやギターで演奏されたCDもありますが、やはりピッコロで聴くと格別な味わいがあり、ピッコロの圧倒的な存在感に気づかされます。
中学の音楽鑑賞時間に「四季~春夏秋冬」を聴いて、日本人としても親近感を覚えたものですが、数年後にこのピッコロ協奏曲に出会い、再度日本人として、その幽玄とも言えるピッコロの音色に惹きつけられました。
どこか平安時代の月夜に戻ったような静けさの中で、横笛の音が哀しく歌います。人恋しく、侘しく、そして美しく。
第33回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、イタリアの作曲家 ジョアキーノ・アントーニオ・ロッシーニ(Gioachino Antonio Rossini, 1792- 1868)の、スターバト・マーテルから1曲選びました。
ロッシーニは、「セビリアの理髪師」や「ウイリアムテル」などのオペラ作品で有名ですが、サロン風の歌曲や宗教作品にも定評があります。
その宗教作品「スターバト・マーテル」(ラテン語: Stabat Mater、「悲しみの聖母」)の第2曲目、テノールで歌われる「嘆き憂い悲しめるその御魂は」という曲を聴いてみて下さい。私は初めて聴いた時、その親しみやすい旋律に感激しました。
「悲しみの聖母」
尚、動画で歌っているのは、盲目のイタリアのテノール歌手 アンドレア・ボチェッリです。
彼は12歳の時にサッカーボールを頭に受け脳内出血を起こしたことで先天性緑内障が悪化して失明しました。
しかし、世界最高峰のテノール歌手として知られ、アルバムの全世界売上枚数は9000万枚を超えています。
2020年4月、コロナ禍の中、ミラノ大聖堂で行われた無観客コンサートでは「アメイジング・グレイス」などを歌い、YouTubeストリーミングの同時視聴者数は、史上最大となる280万人にのぼりました。
■ 「スターバト・マーテル」より「嘆き憂い悲しめるその御魂は」 ロッシーニ(Rossini)
これはもう宗教曲と言うよりオペラアリアです。ロッシーニらしい旋律美、小気味よい行進曲風の伴奏。
アンドレア・ボチェッリの圧倒的な歌唱、ローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会のライブ映像です。
参考 Wikipedia
絵画 カルロ・ドルチ「悲しみの聖母」国立西洋美術館
第34回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(Pyotr Ilyich Tchaikovsky、1840 - 1893)は、ロシアの作曲家。今回の主人公です。
チャイコフスキーは「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」などの甘美なメロディでよく知られています。
最近の話題では、IOC(国際オリンピック委員会)が、ロシアに対し、東京オリンピックで国歌の代わりに「チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番」を使うことを承認しました。まさにロシアを代表する作曲家がチャイコフスキーだった訳です。
ロシア正教会 写真ACワークス(株)
■ ヘルヴィムの歌(「聖金口イオアン聖体礼儀」op41より第六番) チャイコフスキー(Tchaikovsky)
チャイコフスキーが1878年に完成させた、無伴奏 混声合唱の聖歌(教会スラブ語)です。ロシア正教会、ウクライナ正教会をはじめ、世界中の正教会の奉神礼で使用されますが、演奏会として歌われる事もあります。
この曲は、人知を超えた音楽です。
動画の映像のように宇宙を観ずる壮大で深遠な音楽です。
ソ連文化省商工会議所合唱団とはどんな団体なのでしょう。素晴らしいの一言です。
参考 Wikipediaより
第35回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
有名作曲家の知られざる名曲、今回はラフマニノフです。
曲は「前奏曲ト短調 」。ピアノ曲を好きな人なら、ご存じの方も多いと思いますので、「知られざる」とは言えないかも知れませんがご容赦下さい。
この曲は、20世紀初頭、ラフマニノフ自身によってモスクワで初演されていますが、技巧的かつ情緒もあり、彼の非凡な才能を発揮した傑作と言われています。作曲家でありピアニストでもあった リスト を彷彿とさせる完成度の高いピアノ曲と言えるでしょう。
今回は、敢えて電子ピアノの演奏にこだわってみました。
電子ピアノは、ヤマハ、カワイ、カシオ、ローランドなど各社がしのぎを削って販売している商品ですが、近年は各社とも一流グランドピアノに匹敵する性能を追求しています。
その結果、動画で見ても驚くほど音が良くなっています。ヘッドホンで練習できるレベルから、コンサートでも使用できるレベルに進化した電子ピアノを聴いてみるのも一興です。
■ 前奏曲ト短調 作品23の5( Prelude op. 23 no. 5) ラフマニノフ(Rachmaninov 1873 - 1943)
行進曲風の歯切れの良いリズムに乗って始まる プレリュードト短調。
色彩豊かな音楽とロシアの民族的旋律に胸がときめきます。忘れがたいピアノの名曲です。
尚、演奏は カテリーナ・ティトヴァ (Kateryna Titova 1983- )、ウクライナの女性ピアニストです。
第36回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
有名作曲家が書いた「知られざる名曲」。絶対に外せない曲が、オッフェンバックの「ジャクリーヌの涙」です。
ジャック・オッフェンバック(1819 - 1880)は、ドイツに生まれ、フランスで活躍した作曲家・チェリストです。
特にオペレッタに傑作が多く、生涯に100曲ほど作曲しましたが、中でも「地獄のオルフェ」(邦題「天国と地獄」)は日本でも人気があり、その序曲は、運動会のBGMに使われたり、カンカン踊り(フレンチカンカン)の音楽としても有名です。
ロートレックの作品、1895年 Wikipediaより
さて、チェロ曲「ジャクリーヌの涙」は、サンサーンスの動物の謝肉祭にある「白鳥」に勝るとも劣らないチェロの名曲です。
ジャクリーヌという女性が誰のことかは分かりませんが、この名曲を聴く限り魅力的で美しい女性であることは想像できます。
詳しくは、当ブログ ジャクリーヌの涙 壺中日月長 (2019・5・18)記事をご参照下さい。
■ 「ジャクリーヌの涙」 (Jacqueline's Tears) オッフェンバック(Jacques Offenbach)
この演奏は、チェリストで編曲者のヴェルナー・トーマス=ミフネ (Werner Thomas-Mifune 1941- ) が、難病で亡くなった天才チェリスト ジャクリーヌ・デュ・プレ(1945-1987 42歳没)に捧げたものです。
哀切の情をこもらせたオッフェンバックの名曲と、音楽によるメッセージが心に沁みる トーマス=ミフネの名演奏、言葉もありません。
第37回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、ソビエトの作曲家 ショスタコーヴィチ にスポットを当てることにしました。
当ブログの見解では、20世紀半ば~今日まで、新たなクラシック音楽の作曲家は登場していません。
ショスタコーヴィチが事実上最後のクラシック音楽作曲家になります。
彼は68年の生涯で、15の交響曲と15の弦楽四重奏曲を中心に、管弦楽曲、合唱曲、映画音楽など多数の作品を残しました。
最近日本でも人気の高い「セカンドワルツ」←この動画は7000万回以上再生されています。また、クラシックファンに人気のある「交響曲第5番(動画は4楽章の一部)」は、ショスタコーヴィチの代表作です。
したがって、ショスタコーヴィチの知られざる名曲は、組曲「馬あぶ」にしました。
■ 組曲 「馬あぶ」 Op.97aより第8曲 [ロマンス] ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(Dmitrii Shostakovich 1906 - 1975)
この曲は、映画音楽(ファインツィムメル監督「馬あぶ」1955年)です。「ロマンス」は、ショスタコーヴィチが作った最も美しい曲と言われ、最近はフィギュアスケートで使われたりしていますので、聴いたことがある人も多い曲です。
多くの芸術家が、戦時下の体制の影響を受けながら活動せざるを得ない時代。ショスタコーヴィチもまた例外ではありませんでした。
しかし彼は、ひと時、暗い時代の呪縛から解き放されて「ロマンス」を書いたような気がします。重く垂れさがった雲から、春の温かい陽ざしが差し込むような、そんな安ど感を彼は求めていたのでしょう。
第38回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ジョルジュ・ビゼーは、19世紀フランスの作曲家です。何といっても「カルメン」の作曲家として有名です。
ビゼーの音楽は、その親しみやすさで人気があり、「ハバネラ」などはテレビCMでよく使われています。
今回、彼の知られざる名曲は、交響曲第1番の第2楽章にしました。オーボエの旋律が美しい曲です。
ビゼーは短命で、36歳で亡くなっていますが、この交響曲はビゼー17歳の時に書かれた瑞々しい作品です。
しかし残念なことに、この曲はビゼーの生前には一度も演奏されなかったのです。初演は1935年、ビゼーの死後60年が経っていました。
■ 交響曲第1番ハ長調 第2楽章「アダージョ」 ビゼー( Bizet 1838 - 1875)
イ短調で書かれた珠玉の緩徐楽章は、その主題がオーボエによって計6回演奏されます。
まさに、オーボエのための楽章ですが、その音楽がまるで天上に昇華していくような錯覚を覚えるほど美しいのです。
写真 ACワークス(株)
第39回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
有名作曲家の知られざる名曲、真打登場と言うことで、今回は ヨハン・ゼバスティアン・バッハ の隠れた名曲にスポットを当てることにしました。
言うまでもなくバッハは、バロック時代のドイツの作曲家で、日本では小学校の音楽授業で「音楽の父」と教えてきました。
ヴァイオリン曲「G線上のアリア」や、オルガン曲「トッカータとフーガ」などは特に親しまれています。
しかし、生前のバッハは作曲家というよりもオルガン奏者として知られ、作曲家として評価されたのは、死後79年経った1829年、「マタイ受難曲」のベルリン公演(聖トーマス教会)がきっかけでした。バッハを世に出したのは、この時「マタイ受難曲」を指揮したメンデルスゾーン(当時20歳)だと言われています。バッハの原点は「マタイ」にあったと思います。
もうずいぶん昔ですが、ある音楽雑誌社が「あなたが、無人島へ行くことになったら、どんな曲を持っていきますか?」というアンケートを行い、その結果は「マタイ受難曲」が1位でした。ちなみに2位はモーツァルトの「魔笛」だったと記憶しています。
もし、世界が滅亡するので人類が火星に移住することになり、1曲だけ、その宇宙船に積み込めるCDを選ぶとすれば、クラシック音楽ファンの多くは「マタイ受難曲」を選ぶでしょう。
「マタイ」は人類の遺産です。
その中から、第2部 47曲 アルトのアリアをお聴き下さい。
■ 「マタイ受難曲」より「憐れみ給え、わが神よ」
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685 - 1750)
ヴァイオリンのオブリガート(助奏)が実に美しいのです。アルトの歌唱が祈りに満ちています。
この動画は、名演の誉れ高い カール・リヒター指揮、ミュンヘンバッハ管弦楽団・ミュンヘンバッハ合唱団。
そしてアルトは、ユリア・ハマリです。
第40回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
当シリーズ “31回~40回” は、有名作曲家が作った「知られざる名曲」と致しましたが、その最後(40回)は、やはりこの曲にしました。
シューベルト ピアノ三重奏曲第2番の第2楽章です。
チェロが優雅に歌うテーマは、そのままピアノに受け継がれ、やがてヴァイオリンが加わります。
いかにも歌曲王シューベルトに相応しい歌心があふれています。その旋律美は聴く人をとらえて離しません。シューベルト充実期のロマン派の名曲と言えるでしょう。
この第2楽章は、最近テレビCMや映画音楽にも採用されていますが意外と知られていません。
ウィーン市立公園のフランツ・シューベルト像/画像ACワークス(株)
尚、シューベルトはベートーヴェンの後を追うかのように、若くして亡くなりました(ベートーヴェンの死の翌年、31歳で死没)。
余談ですが、クラシック音楽家は短命が多く、モーツァルト35歳、ガーシュイン35歳、フォスター36歳、ビゼー37歳、メンデルスゾーン38歳、ショパン39歳で亡くなっています。
■ ピアノ三重奏曲第2番 第2楽章(Piano Trio No. 2 in E-Flat Major, D. 929: II. Andante con moto)
シューベルト(Franz Peter Schubert 1797 - 1828)
チェロは ゴーティエ・カプソン、フランスを代表するチェリストです。ヴァイオリンは ルノー・カプソン 、二人は兄弟です。
ピアノは フランク・ブラレイ、エリザベート王妃コンクール最優秀賞の実力派ピアニストです。
この3人の音楽的感性が一致して、見事なアンサンブルを奏でています。
■ 有名作曲家の知られざる名曲は、まだまだ沢山あります。ぜひ続編を楽しみにお待ち下さい。
第41回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、無名に近い作曲家 チュルリョーニスを選びました。リトアニアの作曲家で画家でもあります。
彼は35年の生涯に、約300点の絵画と約200曲の楽曲を遺しました。
国立チェルリョーニス美術館の外観 Wikipediaより
画家としてはロシア画壇からも注目され、多くの芸術家と交流しましたが、経済的に恵まれず、結婚してまもなく精神異常をきたし、ワルシャワ郊外の療養所で闘病生活の後、若くして病死しました。わが子が生まれたことを知らぬまま他界した悲運の作曲家です。
■ 交響詩 「海」 ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス (Mikalojus Konstantinas Čiurlionis 1875 - 1911)
30分ほどの大曲ですが、このYouTube動画からその一部(3分50秒)をお聴き下さい。
また、ガラス板の舞台芸術家として活動中のノーマン・ペリーマン(1933-英国)が描く「キネティックペインティング」も同時にお楽しみ下さい。
描写的で色彩感の強い音楽ですが、ペリーマンの流動的で即興にあふれた筆使いが、チュルリョーニス の音楽と融合して、彩り豊かな幻想の世界を創りだしています。
第42回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は初めてオーストラリアの作曲家を選んでみました。
バリー・マッキンム(1941年メルボルン生まれ)は、ジャズなどのトランペット奏者としてプロの音楽キャリアを始めました。
その後は、協奏曲、弦楽三重奏、金管五重奏、合唱作品、歌、ピアノ曲、そしてさまざまな非伝統的な器楽グループのための作品を書き、ビクトリアでのオーストラリア音楽のプレゼンテーションへの最も顕著な貢献に対して、AMC賞( 1988)を受賞するなど活躍しましたが、日本では知られていません。
このYouTube動画でピッコロを吹いているのは、ドイツ ゲヴァントハウス管弦楽団の首席ピッコロ奏者を務める グドルン・ヒンツェ(Gudrun Hinze)です。この奏者は知りませんでしたが、音楽性豊かな素晴らしい演奏家です。
■ ピッコロとオーケストラのための協奏曲 第2楽章「 Air 」 バリー・マッキンム(Barry McKimm 1941- )
何と言う長閑な(のどかな)曲でしょう。とても気分が落ち着き心が休まる曲です。
この曲の第2楽章「 Air 」とは、直訳すると「空気」ですが、クラシック音楽に於いては「アリア」と言い、叙情的、旋律的な曲という意味です。J.Sバッハの有名な「 G線上のアリア」は、「 Air on the G String」が訳された曲名です。
しかしこの曲に関しては、「空気」でも違和感はありません。透明で清々しい空気感が音楽にあるからです。
写真 ACワークス(株)
第43回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
ホアキン・トゥリーナ・ペレス(Joaquín Turina Pérez)(1882– 1949)は、セビリア生まれのスペインの作曲家です。
スペインには音楽史上に輝くクラシック作曲家が多く、アルベニス、グラナドス、サラサーテ、ファリャ、ロドリーゴなどが特に有名です。このシリーズでも何度も取り上げてきました。
今回は知名度こそありませんが、スペインが誇る ホアキン・トゥリーナ に焦点を当てることにしました。
彼は、セビリヤ、マドリッドで活躍しましたが、両親の死後、パリに留学します。8年間のパリの生活の中で、ラヴェル や ドビュッシーとも知り合ったようです。
32歳でマドリッドへ戻り、交響曲、室内楽、歌曲、そしてピアノ作品を創作する傍ら、 マドリッド王立音楽院で作曲の教授になりましたが、1949年66歳で生涯を閉じました。
ダンザス・ファンタスティカス(ファンタスティックダンス)は、3曲から成り、ホセ・マスの小説「ラ・オルギア」からの3つの文学的なパッセージで構成されています。この曲は、その3番目の曲です。
■ Danzasfantásticas Op.22 No.3 Orgía(ダンザス・ファンタスティカス 1919、オーケストラバージョン) ホアキン・トゥリーナ
日本の時代劇を思わせるような快活な音楽が特徴です。約50年前の東京オリンピックの年に放映されたNHK大河ドラマ「赤穂浪士」のテーマ音楽(芥川也寸志)を思い出しました。
尚この作品は、トゥリーナの妻、オブドゥリア・ガルゾンに捧げられました。
第44回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
「夜の海辺にて」 という ロマンティックなピアノ曲をご紹介します。
作曲したのは、ヘイノ・カスキ(Heino Kaski, 1885 - 1957)、北欧フィンランドの作曲家兼ピアニストです。
彼は、フィンランドの偉大な作曲家 シベリウス に師事して、シベリウスの推薦でベルリン留学を果たしましたが、、第一次世界大戦により帰国を余儀なくされました。
その後はヘルシンキ音楽院のピアノ教師などを務めながら、自身の代表作「交響曲ロ短調」の他、ピアノ曲、歌曲、ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、フルートソナタなどを書きました。
1957年、師であるシベリウスが91歳の天寿を全うして、ヘルシンキ大聖堂で大規模な国葬が営まれたその日、カスキも72歳の生涯を閉じたのです。カスキの生涯は、シベリウスの影に隠れて目立ちませんでしたが、叙情的なピアノ作品の真価に気づき、再評価への道を開いたのは、日本のピアニスト舘野泉でした。
■ 「夜の海辺にて」Nacht am Seestrand Op.34-1 ヘイノ・カスキ
カスキは、ピアノの高音域を多用して、光を感じさせる透明な響きを生み出しました。
その光は、舘野さんいわく「低く静かに射しこんできて万象を透明にみせてしまう北欧独特の光」だそうです。
本日の演奏は、「優しい音色で自然を奏でる“ピュアニスト」こと、北海道出身のピアニスト 石原可奈子さんです。
その情感をたたえた素晴らしい演奏をお聴き下さい。
ピアノの一音一音が光の粒となって夜の海辺に輝いています。
北欧の豊かな自然を感じながら、しみじみとした味わいで胸がいっぱいになります。
こんな曲が聴けて、作曲者にも演奏者にも感謝です。
※参考 Wikipedia PTNA http://www.piano.or.jp/report/01cmp/cafe_mompou/2013/06/28_16257.html
写真 ACワークス(株)
第45回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は、フランスのバロック時代の作曲家 ラモーの作品を選んでみました。バロック音楽が好きな方はご存じではないでしょうか。当サイト2度目の登場です。
ジャン=フィリップ・ラモー(1683 - 1764)は、カンタータ、モテットなどの声楽曲、クラブサンなどの鍵盤音楽、そして彼のキャリアの最後の30年間を占める「オペラ」などの舞台作品を作曲する一方で、オルガニストや理論家としても活躍しました。
しかし、ラモーの人生の詳細は、特にパリに永住する前の40年間に関しては、あまり記録がありません。彼は秘密主義であったとされ、妻でさえ彼の初期の人生について何も知りませんでした。
ラモーは死ぬまで理論家および作曲家としての活動を続けましたが、死後に部屋に残されたものは、使い古した服、一足の靴、古い家具、それに老朽化したチェンバロ一台、そして金貨少々だったと言われています。
晩年は孤独な人生を歩んだ ラモーですが、ご紹介する 舞踏歌劇「優雅なインドの国々(1735年作曲)」は、大成功を収めました。
この曲は、彼が1725年にパリで見た米国イリノイ州のミチガメア(Michigamea)族の酋長による民族ダンスに刺激されて作った曲で、「インド」はヨーロッパ以外の異国の民、異教徒、原住民の意味です。要するに「インド国」とは関係ありません。
■ 舞踏歌劇「優雅なインドの国々」より 未開人の踊り ジャン=フィリップ・ラモー(Jean-Philippe Rameau)
ビントゥ・デンベレ(Bintou Dembélé )の振付が斬新で、この動画「パリオペラ座の350周年記念公演(2019・9月)」は、ニューヨークタイムズによって2019年の最高のオペラ作品に選ばれました。
日本の歌舞伎「連獅子」の、頭をぐるぐる回して髪の毛を振り回すシーンによく似たところがあり、興味深いです。
この振付によって、300年前の作品とは思えない現代感覚のオペラに生まれ変わったのではないでしょうか。
特に、ダンサーたちの驚異的な(ヒップホップ)ダンスに、観客から熱狂的な声援が送られ、拍手は鳴りやみません。そして、ラモーの独特のリズムが頭から離れません。名曲であると同時に、歴史に残る名舞台だと思います。
第46回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
待ちに待ったイタリアの作曲家 ニーノ・ロータ にスポットを当てます。
ニーノ・ロータ(Nino Rota, 1911 - 1979)は、言わずと知れた映画音楽の作曲家ですが、本人は「本業はあくまでクラシックの作曲であり、映画音楽は趣味に過ぎない」と言っていました。
実際に、13歳でオペラを作曲し、ミラノ音楽院、サンタ・チェチーリア音楽院で学び、その後 指揮者トスカニーニに勧められ 渡米して名門カーティス音楽院に進んでいます。あのフリッツライナーから指揮を学んだとも言われています。
卒業後、当時まだ新進映画監督だった フェデリコ・フェリーニ との出会いがきっかけで、映画音楽の道に入りました。そして、ゼフィレッリ監督の「ロミオとジュリエット」、コッポラ監督の「ゴッドファーザー」の音楽を手掛け、世界的な評価を得ることになったのです。
一方、クラシック音楽の世界でも、オペラ10曲、バレエ5曲、協奏曲、オーケストラ曲、合唱、室内楽作品を遺しました。その多くはCDに録音され、リリースされています。尚、最もよく知られているのは「弦楽のための協奏曲 」です。
しかし今回はやはり映画音楽から彼の代表作「ゴッドファーザー」より メインテーマ「ワルツ」を選びました。「愛のテーマ」はご存じでも、この曲は意外と知らない方も多いと思いますが、一度聴いたら、その哀愁に満ちた音楽の虜になるでしょう。
■ ゴッドファーザー ワルツ(godfather waltz)/ニーノ・ロータ(Nino Rota, 1911- 1979)
ヴァイオリンはダニエル・ホープ(Daniel Hope)、ピアノはクリストフ・イズラエル (Christoph Israel)です。
二人は、COVID-19のパンデミックに対応して、コンサートホールやスタジオではなく、ダニエル・ホープのリビングルームから「Hope @ Home」というタイトルで「YouTube配信」を始めました。
人々の嘆きや悲しみを受け止め、優しく抱きしめるような音楽が、このアンティークな小部屋から世界中に広がっていくことを祈ります。
第47回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
今回は日本の現代作曲家 藤掛 廣幸のマンドリンオーケストラ曲「Pastoral Fantasy(パストラル ファンタジー)」をご紹介したいと思います。
藤掛 廣幸(ふじかけ ひろゆき、1949年 - )は、岐阜県出身。
日本を代表する作曲家の一人として、管弦楽、マンドリン曲、吹奏楽、オペラ、ミュージカル、バレエ、ピアノ曲、合唱曲、映画音楽等、多岐にわたる作品を書く一方、シンセサイザーやコンピューターを駆使した演奏家としても評価されています。
1977年には、世界三大コンクールの一つである エリザベート王妃国際音楽コンクール作曲部門で、管弦楽のための「縄文譜」が、日本人として初めてグランプリを受賞しました。
画像 ACワークス(株)
もう40年以上も前ですが、この曲を初めて聴いた時は感動しました。
パストラルファンタジー、まさに牧歌的な幻想曲です。
農耕民族だった日本人の原風景を感じさせる叙情的な曲想と、フーガによる躍動的な曲想が、大きな起伏をもって描かれており、マンドリン合奏曲として、不朽の名作と言わねばなりません。
この曲は、もともとマンドリンオーケストラのために作曲されましたが、今回は「ヴァイオリンとマンドリンオーケストラ用」の版をお聴き下さい。最後まで聴かれることをお勧めします。
■ Pastoral Fantasy(パストラル ファンタジー) 藤掛 廣幸
ヴァイオリン独奏の 伊藤亜美(尾池 亜美)さんはじめ、演奏家のすべてがこの曲を「演奏する歓び」を感じながら演奏しています。
この名曲に、この名演あり。この曲を聴いて日本人の原点を思い出して下さい。
第48回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
もう60年以上も前の映画ですが、アカデミー賞作品賞、監督賞を含む史上最多の11部門を受賞した 映画「ベンハー」。
Wikipediaによると、当時の配給収入(日本)は15億3000万円、昭和天皇・皇后が招かれ、日本映画史上初の天覧上映となったそうです。
私も母に連れられて映画館に行きました。小学校3年生くらいだったと思います。
この「ベンハー」は、もちろん「アカデミー賞音楽賞」も受賞しましたが、その音楽を担当したのがハンガリー出身の米国作曲家 ミクロス・ロージャ(またはミクロス・ローザ)でした。
今回は、ミクロス・ロージャ(Miklós Rózsa 1907 - 1995) に焦点を当てます。
彼は、交響曲、協奏曲、室内楽、合唱曲なども多く作り、特にヴァイオリン協奏曲 Op. 24 は、20世紀を代表するヴァイオリニストの ヤッシャ・ハイフェッツのために作曲されました。また、チェロ協奏曲 Op. 32 は、世界的チェリストの ヤーノシュ シュタルケルの依頼により書かれました。
新古典主義音楽とハンガリー民族音楽からなるクラシック作品を遺しましたが、やはり彼は映画音楽に才能を発揮した作曲家でした。
その数ある映画音楽から、「ベンハー」は余りにも有名ですので、今回は映画「エル・シド」 愛のテーマを選びました。
「エル・シド」(原題:El Cid)は、1961年制作のイタリア・アメリカ合作の映画で、監督アンソニー・マン、俳優はチャールトン・ヘストン、ソフィア・ローレンの2大俳優が主演でした。
■ エル・シド 愛のテーマ(Love Theme From El Cid)/ミクロス・ロージャ
ヴァイオリン、ダニエルホープ。アレクサンダー・シェリー 指揮/ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
詩情あふれる演奏です。ずっと聴いていたい曲です。
参考 Wikipedia
写真 ACワークス(株)
第49回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
初めて中国(中華人民共和国)の作曲家が登場します。
关峡(GUAN XIA 1957-)は、中国の現代音楽作曲家です。日本では全く名前が知られていませんが、彼は北京の中央音楽学院(東京芸大と協定校)を卒業、常に第一線で、交響曲、ピアノ協奏曲、オペラ、そして中国音楽史上初のレクイエム(2008年の四川大地震追悼)を書き上げ、最近まで中国国立交響楽団の音楽監督を務めました。
画像 ACワークス(株)
今回ご紹介する「交響曲第 1 番序曲」は、交響的バラード「悲しみの夜明け」を再構成した楽曲で、中国の発展に献身的に尽くした先駆者たちへのオマージュを情熱的に表していることから、中国ではクラシックコンサートの人気曲とのことです。
作曲家の关峡(GUAN XIA)氏についても、作品についても資料が乏しく、当ブログとしても勉強不足ですが、この曲は間違いなく「知られざる名曲」です。
■「交響曲第1番 序曲」 关峡(GUAN XIA)
悠久の時の流れを感じさせるスケールの大きな音楽と、美しい旋律。
演奏は、エン・シャオ (Shao, En) 指揮、中国歌劇舞劇院管弦楽団、一流オーケストラです。
曲は前半に、激動の時代と輝かしい発展が巧みに描かれクライマックスが築かれますが、後半はオーボエの穏やかな旋律、それに続くヴァイオリンソロに現れる中国的な旋律がゆるやかに奏でられ、やがて栄光の時を迎えるように壮大に終曲します。
第50回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
前回の中国に続き、アジアの作曲家から今回は韓国(大韓民国)の Yiruma(イルマ、1978ー )を選びました。
彼は5歳からピアノを習い、イギリスの最も伝統ある私立音楽学校 パーセルスクールに留学、その後キングス・カレッジ・ロンドンで現代音楽を学び、世界的クラシックレーベルDECCAからアルバムを出しました。
そのようなクラシック音楽を基盤とした作曲家兼ピアニストですが、クラシカルな風味とリリカルな曲想が特徴で、カーネギーホールを始め世界中(日本含む)でコンサートも行われ、多くの音楽ファンを魅了しました。日本では、一世を風靡した韓国ドラマ「冬のソナタ」の挿入曲を作ったことでも知られています。
作曲家 イルマのデビュー20 周年を迎え、彼の代表作「River Flows In You」は新しくオーケストラに編曲されました。
共演しているのは韓国交響楽団です。
オーケストラアレンジによって、セミクラシックのような親しみを感じますが、日本音楽コンクールピアノ部門第1位(第84回)の黒岩 航紀さんは、「クラシック奏者に通ずる音楽要素を感じる」と述べ、自身のレパートリーとしてYouTube配信されています。
https://www.youtube.com/watch?v=iEvLPDhuKrU
■ River Flows In You(川はあなたの中に流れる) / Yiruma(イルマ)
曲が始まると、その場の空気が変わるのが分かります。
この川の流れが世界を浄化し、コロナの先に希望の灯りが見えるようです。
もう少し頑張りましょう。
- 知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ 1
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- 知られざる名曲の宝庫を開ける 番外編
- 知られざる名曲を考察する