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    師匠である 安田朴童先生、馬淵仙園先生のお手本を見て書かせていただいています。少しですが自己流の書もあります。 まだまだ未熟ですが、精進して参りますので、ご支援の程お願い致します。

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壺中日月長とは

  • ある町に住む薬売りの老人(実は仙人)は、店先にぶらさがっている壺に時々身を隠してしまいます。 壺の中は別天地。時は悠々と流れ、豊かで充実した人生がありました。 人は、心の持ち方で、このような境涯に達することが出来るのでしょうか。 定年後は、「何をしてもいい自由」と、「何もしなくてもいい自由」 を得たのですが、私も壺中日月長の心境で、悠々としながらも豊かで充実したセカンドライフを目指したいと思います。 このブログは、そんな日々の出来事や思いを書き留めたいと始めました。
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カテゴリー「アクセス記念 ブログ記事」の16件の記事

2021年1月 8日 (金)

2021年、ノーミートは人類の救世主となるか

世界最大のバーガーチェーン 「マクドナルド」は、2021年からノーミート(代替肉)によるハンバーガーを発売すると発表し、今後、100%植物原料のメニュー「マックプラント(McPlant)」を展開するとしました。

すでに 日本生まれのバーガーチェーン 「モスバーガー」は、2020年5月より、野菜と穀物だけで作られた代替肉バーガー「グリーンバーガー(MOS PLANT-BASED GREEN BURGER)」を発売。
同じく日本のバーガーキングが、2020年12月から100%植物性パテのバーガー「プラントベースドワッパー」を販売開始しています。

マクドナルドの参入で「ノーミート」の市場が一気に広がると思われます。

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画像出典 https://satominoda.com/mcplant/

「ノーミート」の市場が広がる背景には何があるのでしょう。

 人類の食料は枯渇寸前

国連食糧農業機関(FAO)は、魚などの水産資源はすでに90%が枯渇していると発表しました。これは長年の乱獲と海水の汚染、気候変動によるものです。
日本でも、昨年(2020)サンマが不漁によって高騰し、一尾6千円を付けてニュースになったことは記憶に新しいところです。

また、アメリカの科学雑誌『サイエンス』に発表された論文では、このままの規模で魚の乱獲と水質汚染が進んだ場合、2048年には食用可能な魚介類のほとんどが絶滅してしまうと警告しています。

このような事態は、もちろん魚だけではありません。
農産物から乳製品、家畜などの食用肉に至るまですべての食料に及ぶのです。

日本のテレビ番組では、相変わらず「大食い競争」をやっていますが、本当にノー天気(能天気)と言わねばなりません。
もちろんタレントさんは悪くありませんし、まさか大食い競争で食料が枯渇することはありませんが、実はそんな場合ではないのです。

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食料が枯渇する原因は色々ありますが、最大の原因は、この100年、世界の人口が急激に増加したことによります。

■ 地球の人口爆発が飢餓を招く

国連の推定では19世紀末に16億人だった世界の人口は、1998年には60億人にまで急増、現在(2020年)は77億9500万人となっています。わずか100年余りで約5倍、60憶人も増えたことになります。

人口が5倍になったら、農作物や海産物、食肉などの生産量を増やして5倍にすればよいだけのことですが、もう資源が限界に近づいているのです。大地も水も大気も急激な人口増加について行けません。

ある研究者は、一日に3回食べるのを止めて1回にすれば良いと言い出しました。それほど事態は深刻なのです。近い将来、腹いっぱい食べれない時代がやってくるかも知れないのです。(すでに世界の飢餓人口は8億2100万人に達しています。ユニセフ2018年発表)

国連が発表した世界の食料安全保障と栄養の現状に関する最新の年次報告書は、2014年以降、世界の飢餓人口の増加が続き、過去5年間で、数千万人が慢性的な栄養不良になり、世界中の人々がさまざまな形態の栄養不良に苦しんでいます。2020年7月13日 (ローマ発)

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地球上の食料が不足する中、さまざまな代替食品の研究開発が始まり、すでに一部が市場に出回るようになりました。

ただ、日本では代替食品の仲間である「コピー食品」が従来から発売されており、認識にズレが生じています。
本物に似せて作られた食品を、「コピー食品」と言いますが、このレポートのテーマである「代替食品」との違いを少し整理しておきましょう。


■ コピー食品と代替食品の違い

正月の人気番組に「芸能人格付チェック」というのがあります。例えば、本物の「タラバガニ」と、「カニかまぼこ」を食べさせて、どちらが本物かを当てるゲームですが、これが意外と当たらないから不思議です。もしかすると私たちは、コピー食品を口にしていても気づかずにいるかも知れません。ご存じカップヌードルの小さな肉片も、人工肉(大豆由来)の一種です。

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カニかまぼこ写真 Wikipediaより

世の中にはコピー食品があふれています。鰻(うなぎ)もどき、カニもどき、イクラもどき、こんにゃくレバーなどはスーパーでも売られているコピー食品です。
尚、「コピー食品」も「代替食品」も同じ人工食品ですが、コピー食品は食糧難に対応して作られたものばかりではありません。高級食材より安価にしたり、その食品そっくりに作った遊び心のある食品もあり、別名「フェイク食品」とも言います。

一方、「代替食品」は、菜食主義者やアレルギー体質への配慮※、健康リスクの排除、環境への配慮、資源の確保、家畜の伝染病対策、さらに前述の「急激な人口増加」への対応が考えられ、食糧難への解決策として注目されているのです。

※その意味で、近年需要の高まっている「豆乳」や「米粉パン」なども代替食品の一部です。


以上、人類はかつてないほどの食料危機に直面していること。その原因は地球の人口増加にあること。そして多くのコピー食品、代替食品が出回っていることがお分かりいただけたと思います。

それではもう一度「代替肉」に話を戻します。


■ 代替肉のメリットは多い

環境問題の改善

牛を育てる牧場を確保するために森林を伐採する必要がなくなる。
牛1頭が年間に消費する水4万1700リットルが節約できる=水資源の確保。
・牛が排出する大量のメタンガス(温室効果ガス)がなくなる。

牛は、CO2の28倍ものメタンガスを大量に排出しており、現在地球から排出されている温室効果ガスの15%はこの家畜産業が原因だとされています。
畜産業がこのまま拡大し続けるなら2030年には気温1.5度上昇するのに必要な二酸化炭素の49%を畜産業が排出することになるとも言われています。(DOI 2019.12.11)

また、牛丼1杯には水2000リットル、ハンバーガー1個には水1000リットルが使われています。牛を飼育するには(灌漑用水も含め)大量の水が必要なのです。

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国連食糧農業機関(FAO)は、動物を育てて食料にすることは地球温暖化や大気・水質汚染など、世界的な環境問題の原因になっていると指摘しています。


健康志向に役立つ

・心臓病、糖尿病、がん(特に大腸がん)のリスクが減少する。
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)のリスクが減少する。

世界保健機関(WHO)は、動物の肉を発がん性物質に指定していますが、同時に心臓病や糖尿病のリスクを高め、健康に悪影響を与えると指摘しています。

加工肉に関して言えば、120万人を対象とした研究で、日常的に食べることで心疾患リスクが最大42%高まると示され、毎日50gの加工肉を食べると、大腸ガンのリスクが18%上昇するとしています。また、赤肉に関しても、毎日食べることで、4年以内の糖尿病発症リスクが30%上昇するとも示されています。

尚、加工肉や赤肉の発癌作用は、肉を焼いた際に発生する発ガン性物質、PAH(多環芳香族炭化水素)が主に起因すると考えられています。


動物の犠牲を減らす

・多くの動物たちを殺さなくてもよくなる。

推計では、一年間に肉牛3億440万頭、乳牛2億8000万頭、豚14憶9000万頭、肉用鶏666億羽、採卵用鶏78憶4000羽が殺され、人間の食べものになっています。(2017年度※)
実に地球の人口の10倍以上の動物たちが人間の犠牲になっているのです。

しかもこの推計値は「牛、豚、鶏」のみで、「羊(マトンやラム)」のように日本でもジンギスカン料理として食べられている食肉、さらにジビエ料理にある野生動物「鹿、イノシシ」、エビやカニ、クジラを含む魚介類、七面鳥・カモなどの鳥類、スッポンなどの爬虫類も含んでいません。人間は食べることに余りにも貪欲な生物なのです。

動物の犠牲は、その他にも狂牛病 鳥インフル 豚コレラなどの家畜の伝染病で、日本だけでも毎年のように数万から数百万の数の動物が殺処分になっています。なんの罪もない動物たちが殺されて土に埋められるニュースを見て心を痛める人も多いのではないでしょうか。

動物愛護と倫理上の観点からも、これ以上の動物の犠牲はあってはならないと思います。

ベジタリアン対策

・ベジタリアン(
菜食主義者)にとって、ノーミートは朗報である。

健康倫理宗教等の理由から、動物性食品の一部または全部を避ける食生活を行う人を、一般的にベジタリアン(菜食主義者)と呼びます。(wikipedia)

日本でも禅宗の影響で動物性の材料を一切用いない「精進料理」が発達しましたが、世界には宗教上の理由でノーミートを実践している人も多く、ヒンドゥー教ジャイナ教が多いインドでは、実に国民の30~40%がベジタリアンだそうです。(ちなみに日本は4.7%)

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※尚、菜食主義者(ベジタリアン)と区別して「完全菜食主義者」の人をビーガン(ヴィーガンvegan)と言いますが、ビーガンは肉や魚のほかに卵・乳製品も食べません。
日本ベジタリアン協会はビーガンを「動物に苦しみを与えることへの嫌悪から動物性のもの(革製品や毛皮も含む)を利用しない人」と定義しています。

米国は430万人のベジタリアンと370万人のビーガンが存在しており、今回のマクドナルドの決定も、その人たちを意識した事業展開と思われます。


━ 有名なベジタリアン(参考) ━

十一代目 市川海老蔵イルカサンプラザ中野くん錦戸亮 関ジャニ∞藤子不二雄A宮沢賢治横峯さくらフジ子・ヘミング財津和夫志茂田景樹松井玲奈SKE48

トーマス・エジソンジェームズ・キャメロンマイケル・ジャクソンスティーブ・ジョブズベンジャミン・フランクリンマドンナカール・ルイススティーヴィー・ワンダーアルバート・アインシュタインジョージ・バーナード・ショー 、レフ・トルストイアドルフ・ヒトラーアンソニー・ホプキンスポール・マッカートニー


 代替肉の安全性問題とデメリットについて

・食品添加物遺伝子組み換えの問題

食品添加物は、ミートの「風味や香り」を作り出すために不可欠で、業界も使用を認めています。たとえ少量であっても代替肉が日常的に食されるようになれば、食品添加物の摂取量も増えることになり、私たちの健康面への影響が懸念されます。

遺伝子組み換えについても、アメリカの非営利組織「食品安全センター」が、FDA※に対し「インポッシブルフーズ」の代替肉が、遺伝子操作された酵母の試験を受けることなく認可されたことに異議を申し立てています。


※「インポッシブルフーズ」とはGoogle社やビル・ゲイツ氏なども出資している代替肉企業
※FDAとは、Food and Drug Administrationの略。 アメリカ食品医薬品局。日本の厚生労働局にあたる公的機関。

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代替肉の安全性は、今後さらに検証が進み明らかになると思いますが、確かに添加物が多いことで自然食品や健康食品とは呼べないものの、本物の肉を超えるほどの健康リスクは見つからないのも事実です。

ただ、もう一つの大きなデメリットは畜産業への影響です。


・畜産・食肉業界への影響

食肉産業、とりわけ畜産農家の人たちは、代替肉によってこれまで携わってきた仕事が失われることになりかねません。家畜産業に携わる人は世界に数億人いるとの推計もあります。

具体的に影響の大きい国は、生産量上位の米国、ブラジル、中国、アルゼンチン、オーストラリア。そして輸出量上位の、ブラジル(208万トン)、オーストラリア(166万トン)、インド(156万トン)です。例えば、牛肉の輸出大国 オーストラリアは生産量の65%を、日本を含む 100カ国以上に輸出しており、代替肉が普及すれば、大きく国益を損なうばかりか貿易問題に発展する恐れもあります。

・地域特産のブランド牛に影響

また日本では、「松阪牛、近江牛、神戸牛」など各地のブランド牛によって地域振興が成り立っており、代替肉の普及次第ではその地域が経済的な打撃を受けることになります。

同時に、ステーキハウスや焼き肉専門店などの経営が圧迫されることも考えられます。

それでは、代替肉にはどんな未来が待ち受けているのでしょうか。

 代替肉の未来

コロナウィルス(Covid-19)は畜産システムの脆弱性を露呈しました。アメリカの多くの屠殺場ではクラスターが発生し、食肉処理や加工ができなくなりました。食肉の流通が止まったことで、代替肉の需要が急拡大したとのことです。

もしかすると、代替肉が注目されるきっかけはコロナウイルスだったかも知れませんが、
やはり「環境面」、「健康面」、「倫理面」が代替肉普及の大きな要素だと思います。

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すでに、日本を含む世界 250以上の大手企業、非営利団体、研究機関が、クリーンミートや植物性の代替肉の開発、投資、販売を行うようになっていますが、(2019年時点)、世界的な経営コンサルティング会社ATカーニーの分析は、2040年には「肉」市場における代替肉の占める割合は60%になるだろうと予測しています。現在の畜産由来の肉は実に40%にまで低下することになります。

2019年、世界経済フォーラムはダボス会議の前に代替肉についての報告書を出し、肉に替わるタンパク質は食品汚染のリスクが無く、温室効果ガス排出量の大幅な削減につながる可能性があるとして今後の増加する人口のタンパク質需要を満たすためにはタンパク質システムの変革が必要だろうと言っています。

これは、100億人の食を支えるために必要であるばかりか、人類の健康維持のためにも、地球の環境保全のためにも避けて通れない道かも知れません。

シンクタンクのRethinkXは、レポート「Rethinking Food and Agriculture 2020-2030の中で、牛乳の需要については2035年までに90%減少し、他の畜産物も同様の道をたどと発表しています

さら社会科学者のJacy Reeseは、培養肉などの代替技術の登場により、すべての畜産は2100年までに終了するとまで予測しています。


※培養肉とは、従来の食肉の代わりとなる「代替肉」のひとつで、動物の細胞を体外で組織培養することによって得られた肉のことです。厳密な衛生管理が可能、食用動物を肥育するのと比べて地球環境への負荷が低いなどの利点がありますが、高価であることが培養肉の課題でもあります。
(日清食品サイトhttps://www.nissin.com/jp/sustainability/feature/cultured-meat/、およびWikipediaより)


 日本の現状 

ここ数年、日本でも代替肉への取り組みが始まっています。
日清食品、日本ハム、ネクストミーツを始め、丸大食品伊藤ハム、ヱスビー食品、大塚食品、味の素、ハウス食品、グリコなどの食品メーカーから、総合商社、ベンチャー企業、イビデンなどの他業種からの参入も含め、多くの企業が事業展開を始めています。

日清食品ホールディングスは第21回日経フォーラム「世界経営者会議」で、カップヌードルは「今後全ての素材を植物由来に置き換えていく」とし、エビなど肉以外の動物性食材についても植物性のものに切り替えていくという方針を示しました。
また日本ハムも、植物性の材料を使う「植物肉」市場に参入すると表明しました。

そして2020年1月には、培養肉普及を目的とした企業連合(日清食品ホールディングス、日本ハム、ハウス食品グループ本社などの食品大手、開発研究機関などからなる)が設立されました。


日清食品の挑戦

日清食品では、2017年の8月から東京大学と「培養ステーキ肉」の共同研究を開始。肉厚なステーキ肉を実現するという、前人未到の挑戦をしています。

同社は、「培養ステーキ肉」の基礎技術を2024年度中に確立することを目指しており、肉本来の味や食感を忠実に再現する研究を進めています。これは、ハンバーガーに入れる代替肉とは少し次元が違うようです。

また、「培養肉」の技術は牛肉に限らず、マグロやウナギなど枯渇する資源への適用も可能で、大きな期待が寄せられています。

 

■ あとがき

以上、調べれば調べるほど「ノーミート」時代の到来を予感させる記事になりました。

今日の世界は、多くの動物を殺して食用にしている一方で、食べ残しを大量に廃棄しています。また、国家間の貧富の差から飢餓に苦しむ人が8億人も存在しているのです。

私たちは、この事実を重く受け止めなくてはなりません。
目前に迫った100億人の食料危機、悪化するばかりの地球環境、健康リスクの増大。

2021年、ノーミートは人類の救世主となるか
そのことを真剣に考える一年がスタートしました。

令和3年 丑年(うしどし)
(2021年 正月特別記事 壺中日月長)

 

 

※ NPOアニマルライツセンター サイトhttps://www.hopeforanimals.org/meat-free-monday/554/
より一部転記しました

※ 日清食品サイト
https://www.nissin.com/jp/sustainability/feature/cultured-meat/

※本文中の写真 「写真AC」フリー写真のダウンロードサイトより

2021年1月 5日 (火)

アクセス 555555回 御礼

年が明けて、1月5日

当ブログのアクセス回数が、555555回になりました。

555555

弱小ブログですが、これからもお引き立てお願いいたします。


壺中日月長 感謝九拝



━ ご参考 ━

■ アクセスランキング

2019年6月26日 (水)

自治会再生への道

自治会はどこへ行くのか

地域の自治会長を拝命して5年が経ち、慣れない自治会活動も何とかこなせるようになりました。
そしてこの度、72の自治会の集合体である「自治会連合会」の副会長をお引き受けすることになり、及ばずながらその責任を果たすべく更なる精進を重ねる所存です。

しかし、自治会を取り巻く環境は年を追うごとに悪化しており、この機会に自分の考えを整理する必要に迫られ、ブログの場を借りてレポートすることに致しました。


第1章 
崩壊する自治会

■ 世帯数の減少と、深刻な加入率の低下

近年の少子高齢化により、地域の世帯数は減少しています。高齢夫婦だけの世帯や一人暮らしの世帯も多く、空き家も目立つようになりました。また古くからあった個人商店の多くが商売をやめたことにより地域の活力は低下しています。

さらに、当市の自治会への加入率は、この13年で約10%減少して、今や61,3%(平成30年度)になりました。(ちなみに、平成の初めは80%を超えていました)もちろん任意団体である自治会への加入義務はありません。このまま行けば、あと10年で加入世帯が50%を切る深刻な事態になりかねません。

もし、住民の半分しか入っていないような自治会なら、その存在意義は無いに等しいでしょう。

加入者が少なければ、運営するための資金(自治会費)は集まらず、自治会長などの人材を集めることも出来ません。すなわち、資金不足と人手(担い手)不足の両面から、自治会の存続は難しくなると思われます。

世帯数の減少と、加入率の低下がこのまま続けば「自治会の崩壊」は避けられません。
そのカウントダウンはすでに始まっています。

■ 自治会加入のメリットとは

このような危機的状況の中、自治会を存続させるには、加入率を上げるしか手はありません。世帯数を増やすことは今の日本では考えられないからです。

加入率を上げるためには、自治会に加入するメリットを再構築する必要がありますが、これは容易なことではないと思います。各世帯が年間に収める自治会費(町内会費)は8千円から1万2千円(推定)、この額に見合ったメリットはあるのでしょうか。むしろ地域の行事への参加や公園の清掃作業など面倒なことが増えるだけかも知れません。
※自治会費(町内会費)といっても、実際に「自治会連合会」に上納するお金は3割程度(2500円)で、あとは町内の新年総会(お日待ち)などに使われます。

地域とのつながりや災害時の連携をメリットだという人もいますが、個人主義とプライバシー尊重の社会では、あえて隣(となり)近所との付き合いを好まない人もいるのです。また災害時には人命第一の観点から、自治会加入の有無にかかわらず懸命な救助活動が行われます。当然ですが自治会員だけが優先して救助されることはあり得ません。また避難施設や支援物資なども平等に提供されます。

ただ、東日本大震災などの経験から、災害時の初期の避難誘導や安否確認は、自治会組織に入っていたほうがスムースだったと報告されています。その観点から、自治会とは別に自主防災組織や緊急連絡網などを整備する動きは加速しています。自治会加入のメリットが防災以外に見当たらないとすれば、自治会加入の実質的なメリットは残念ながらありません。

■ 加入者の本音

何もメリットがないのに自治会に入っている人は、親の代から引き継いで加入している人が大半です。実際、新しくできたマンションなどの住人は加入しないケースが増えています(入居者が単身世帯ではその傾向はより顕著だと思います)。

そして、古くからの住人は、言わば町内のしがらみ・慣習にしたがって加入しているだけです。それでも子供が小さいうちは子供会や学校行事を通じ自治会に入っていますが、子供が大きくなれば脱会したいのが本音ではないでしょうか。

加入していると、さまざまな当番や役割が回ってきますし、出たくもない行事に参加しなければなりません。自治会費を払った上に、ボランティア(無償奉仕)で仕事を割り当てられたり、地域の行事に駆り出されたりと負担は増えるばかりです。

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第2章 自治会の現状と役割

住民から見るとメリットの少ない自治会ですが、行政からすると大変便利な組織といえます。

■ 自治会は行政の下請けか

自治会が行う活動には、行政の要請を受けて行う受託的活動と本来の自主的活動があります。
自治会が行政に代わって行う受託的活動は、月2回の広報誌の戸別配布をはじめ、敬老会、成人式、防災訓練などがあります(当市の場合)。

その他にも、①交通安全(交差点や通学路)、②防犯(見守り隊、防犯灯、青色パトロールなど)、③都市美化(公園清掃など)、④ゴミ出し分別回収、⑤高齢者のケア、⑥生涯学習、⑦福祉介護(民生委員・福祉委員)、⑧教育(学校行事との連携)⑨まちづくり、⑩各種団体との連携(※消防団・水防団・社会福祉協議会・老人会・婦人会・青少年育成・子供会・PTAなど)なども自治会の大切な活動です。
①~⑩の活動を通じ、自治会は行政の補完的役割を担っています。

自治会が独自に行う活動は、年1回の町内総会(お日待ち)と、文化(文化祭・各種講座)、体育振興(市民運動会・スポーツ大会)、地域振興(祭り・盆踊りなどのイベント)、神社祭礼(氏神・秋葉神社)に限られています。

このように、本来なら行政が行うべき公共サービスも自治会なしでは成り立ちません。これが、自治会が行政の下請けだと言われる所以です。(※行政側は自治会を“パートナー”と言っています)

■ 自治会の収支

上記のような自治会が担っている活動に掛かる事業費は全て自治会が負担しています。すなわち、自治会に加入している61,3%の住民の自治会費(町内会費の一部)から捻出されます。さらに自治会では日本赤十字社や社会福祉協議会に対し拠出金を出しています。県に対しても共同募金として一定の金額を納めています。献身的ともいえる自治会の姿が見えてきましたが、これでは収支が合いません。

さすがに行政からは自治会に対し、ある程度の交付金(補助金)が支払われます。前述の広報誌戸別配布手数料や資源分別回収奨励金、防災や美化に関する推進費、さらに成人式、敬老会の運営費などです。
この交付金や補助金で、自治会の収支は何とか赤字を免れています。

ただ、自治会では金銭面の負担だけではなく、これらの業務に関わる人的負担が大きな要素を占めています。もし自治会のような担い手がなければ、業務代行サービスや警備会社など外部に委託しなければならず、莫大な経費が掛かることでしょう。

したがって、自治会の収支は住民の自治会費(町内会費)と行政の交付金で成り立っていますが、「人的貢献」という多くの善意のボランティアがあることを忘れてはなりません。


第3章 自治会の隠れた目的

前述の通り、自治会活動は多くの住民の人的貢献、すなわち奉仕活動で成り立っています。近年は60歳、65歳を過ぎても会社などで働いている人が多く、自治会の活動を支える人は高齢化しています。

自治会長や班長、会計などの役職は、ほとんどが順番制(又はくじ引き)で決められますが、すんなり決まることはまずありません。このような役が回ってくることを嫌って自治会に加入しない人も多いと思います。では、自治会の目的はどこにあるのでしょうか。

実は、サービスを受ける側(住民)から考えると、自治会の存続は難しいのですが、サービスを行う側、すなわち自治会の担い手(自治会役員)から考えると、自治会組織は大いに「生きがい」を感じるステージ(舞台)でもあります。

■ 生きがいの創出

高齢化社会に突入した日本では、現役を引退した人の多くは、仕事という「生きがい」を失い、一時的に当惑することになります。ある人は趣味の世界に入ったり、教養を高めるため講座を受講したりします。ですから巷のカルチャー教室は高齢者であふれています。アウトドアやスポーツ、旅行、サークル活動も盛んですが、地域のボランティア活動に精を出す人も多く存在します。この点に着目すれば、自治会は「生きがい」を創出できる絶好のステージ(舞台)だといえるでしょう。

自治会を存続させる鍵は、現役を引退した優秀な人材をいかに自治会に集めるかに掛かっています。引退後の第二の人生を「自治会」という地域密着型の組織で活かしてもらおうという考え方です。誰もやりたがらない大変な仕事ですが、それだけに住民から感謝され、ある意味「やりがい=生きがい」を感じる意義のある仕事(活動)です。

自治会の、隠れた目的は、担い手の「生きがい」創出にあると考えます。

■ 地域の接着剤

しかし、自治会が一部の担い手(役員)の「生きがい」のためにあるとすれば、自治会費を納めている一般の加入者(住民)はどう思うでしょうか。これは複雑な問題です。一つ間違えば、自治会役員と住民の間に溝が出来てしまいます。また、役員同士でも「やりがい」をめぐって温度差があるとすれば信頼関係は築けません。やりたくて役員を引き受けた人と、仕方なく役員になった人では考え方が180度違います。その溝を埋めない限り自治会の運営はスムースに行かないでしょう。

このような「溝」を埋める手段として、地域のイベントがあります。運動会や夏祭りなどを通して、地域が一体となり住民同士のコミュニケーションが図れます。すべての人に何らかの役割を持ってもらうことにより、連帯感も生まれるでしょう。このような「ご近所」とのつながりが、災害時に大いに役立つことになります。理想は、自治会活動が地域の接着剤になって、住民の「きずな」や住民同士の「助け合い」に結びつくことですが、現状の自治会には「制度疲労」ともいうべき様々な障害があることは前述の通りです。

■ 模索が続く自治会

世帯数の減少、加入率の低下、資金不足、高齢化、担い手の不足、個人主義、年代格差などがある中、行政から膨大な仕事を担わされている「自治会」は、すでに制度そのものが限界にきていると言っても過言ではありません。

自治会のスリム化(行政に任せる)、自治会のIT化(SNSの活用、回覧板の廃止など)、自治会のNPO化(事業の展開、ボランティアから脱却)など自治会再生に向けた模索は続いています。しかし、任意団体である 自治会組織のままでは、抜本的な解決に向けての動きは難しいと思います。

この際、新たな組織として再出発することが最も早い解決策ではないでしょうか。そこで登場したのが、次章の「まちづくり協議会」です。

 

第5章 「まちづくり協議会」は救世主となるか

人口減少時代に突入した日本では、行政のスリム化は避けて通れない重要課題です。行政主導の自治活動から、自立自助のまちづくりに転換することが政府(総務省)の方針です。今まで行政が行ってきた住民サービスの多くを、その地域の住民が自ら行うように転換すれば、行政の役割は軽減され、担当職員も減らせます。その地域に見合ったきめ細かいまちづくりが可能になるばかりか、行政のスリム化も達成できます。その意味で、総務省は「協働によるまちづくり」を提唱し、条例も整備しています。

当市でも「住民自治基本条例」を平成19年3月に制定し、市民と行政の「協働のまちづくり」を通じた住民主体による、新しい市民社会の構築を目指しています。 これが「まちづくり協議会」です。

まちづくり協議会の構成は、その地域の各種団体、すなわち、自治会、福祉関係、防災、防犯、交通安全、学校、PTA、公民館、女性団体、スポーツ団体、子供会、赤十字、老人会、イベント実行委員会、商店街、ボランティア団体など多種多様です。

これらの団体を横断的に取りまとめ、地域の問題解決と住み易い環境づくりを話し合う場が「まちづくり協議会」です。それぞれの団体が有機的にネットワークを築き、情報を共有し、参画意識を持って活動・運営する会が「まちづくり協議会」です。自治会より活動範囲が広く、団体同士が協力・協調し合い、高い理念を持って運営に当たる組織が「まちづくり協議会」です。

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当市のまちづくり協議会のイメージ

まちづくり協議会は全国的に広がりつつあり各地で発足していますが、まだ軌道に乗っているところは少ないと思われます。それは、自治会との関係が曖昧で、活動の分担や境界線がハッキリしないことによります。「自治会」の名称が「まちづくり協議会」に代わっただけだと言う人もいるほどですが、実際に「何をどうやるのか」手探りの運営が続いています。

しかし、従来型の自治会が行き詰まり、崩壊寸前の自治会の現状を見ると、大きな変革がどうしても必要です。たとえ手探りでも一歩を踏み出す勇気も必要です。

自治会再生への道は前途に広がっていますが、それは自治会自体を見直すとともに、「まちづくり協議会」の主要な構成団体として生まれ変わる道です。紆余曲折はあっても英知を結集すれば必ず道は開けると思います。

以上、長文にお付き合いくださりありがとうございました。(この記事は、今後、加筆修正することがございます。)

 

 

 

2019年3月 7日 (木)

模索するクラシック音楽シーン(40万PV記念)

クラシック音楽の世界はどこへ行くのでしょう。

当ブログでも指摘しているように、現代音楽は、残念ながら聴衆に受け入れがたい音楽として存在しています。

理屈抜きに、その音楽が「心地よくない」からです。実際、コンサートで現代音楽がプログラミングされることは稀で、あったとしても客足が伸びないのが現状です。

現代音楽の失敗で、クラシックコンサートは、200年(※)も前の古典、ロマン派の作品を聴くことが中心になりました。 ※正確には約100年~300年

コンサートホールでは、今日もバッハ、ベートーヴェン、モーツァルト、ショパン、ブラームス、チャイコフスキーなどの大昔の作品が繰り返し演奏されているのです。

そのコンサートの数は異常で、大都市圏を除けば、完全に供給過剰です。

当然、コンサート主催者や演奏家は、集客を第一に考え、今までにない新しい発想のコンサートや、話題性のあるコンサートを企画します。

クラシックコンサートの需要を新たに喚起するには、新しい切り口が必要だからです。クラシック音楽を模索する流れの数々に独自にスポットを当ててみました。

先ず、最初の流れが、「復古的演奏スタイル」でした。

 

■ 復古的演奏スタイル

作曲当時の編成(規模)、当時の楽器(オリジナル楽器)、当時の奏法・ピッチ、原典版の楽譜を使い、できるだけ当時の音楽を忠実に再現しようとする演奏手法です。

研究は古くからありますが、1970年代に登場した、アカデミー室内管弦楽団(Academy

of St. Martin-in-the-Fields ネヴィル・マリナー創設)は、古楽奏法を取り入れた新解釈が大きな話題となりました。(ヴィヴァルディの「四季」は衝撃的でした)

その後、ブリュッヘンの18世紀オーケストラなど、オリジナル楽器によるオーケストラが続々と誕生しました。そしてバロックのみならずベートーヴェンなどの古典派作品も復古演奏されるようになったのです。

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しかし、そのような新しい試みも五十年も経つと定着し、今では当たり前になってしまいました。そこで最近登場したのが、クラシック界の革命児テオドール・クルレンツィスです。

 

■ 現代感覚的演奏スタイル ~従来のクラシック音楽はつまらない~

伝統や芸術性を重んじる今日のクラシックコンサートの中にあって、クルレンツィスは、圧倒的に欠落してしていた「現代感覚」という新風を演奏に活かすことに着目しました。

本来は現代音楽(作曲)が担うはずの現代に生きるクラシック音楽を、彼は演奏で表現することに成功したのです。

現代社会にマッチしたスピード感、生命力、創造力をフル動員した新感覚の音楽。

クラシック音楽が低迷する中、この新しい試みは世界中で多くの音楽ファンの共感を呼ぶこととなり、この度(2019年)初来日も実現しました。

 

既成概念にとらわれない新感覚の演奏スタイルは、今後広がりを見せると思います。第2第3のクルレンツィスが現れることが、クラシック界の活性化につながることは間違いありません。

1.伝統的でアカデミックな演奏スタイル
2.復古的演奏スタイル          
3.新感覚の現代的演奏スタイル


今後の大きな流れを上記の三つとするならば、その支流もまた何本もあり、クラシック音楽シーンの在り方を模索しています。

 

次に、無限の可能性を秘めたその支流のいくつかを考察します。

 

■ 人工知能(A I )、人工生命(アンドロイド)の芸術分野参入

昨秋、人工知能(A I)が描いた肖像画が、4千9百万円で落札されました。そして、A I が作詞作曲する時代です。芸術分野にまで進出したA I に、いずれ芸術家は職を奪われるかも知れません。

そんな中、人工生命を搭載したアンドロイド(オルタ3)がオーケストラを指揮しました。(2019・2・28)

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出典https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1172248.html

 

オルタ3は、人工知能とは違い、自律的に行動します。人とアンドロイドによる新たなエンタテインメントの可能性が広がります。最新のテクノロジーがクラシック界の起爆剤になるのでしょうか。

 

■ 全く新しい発想とは

デア・リング東京オーケストラの挑戦!

このオーケストラはかつてない独創的な配置が特徴で、メンバー全員が客席(聴衆)の方を向いて座っています(写真)。

通常のオーケストラの配置は、指揮者を囲むように半楕円形に並んでいます。

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出典https://finenf.jimdo.com/n-fオフィシャルサイト/

この革新的な配置は、ひとえに演奏の響きを重視するために考えられたといいます。いい響きを生み出すために、長年にわたり試行錯誤を繰り返してきた結果だそうです。

指揮をする西脇義訓氏は、「指揮者を見てそのタクトに合わせてみんなと同じ演奏をするのではなく、自分の音がホールにどのように響いていくかを注意深く聴くことが重要なんです。」と語っています。

そして、ホールをひとつの楽器としてとらえ、ホール全体に音楽が響いていく空間力を意識することが重要だと説きます。

デア・リング東京オーケストラの挑戦を、期待を込めて見守りたいと思います。

 

◆ 参加型クラシックの拡大

36年も続いている「1万人の第九」をはじめ、参加型のコンサートはクラシック普及の大きな原動力になっています。

定年後始めたアマチュア合唱団のメンバーが、プロのオーケストラをバックにクラシックの大曲に挑む姿は歓迎すべきことです。

また最近では、公共施設やショッピングセンターで「第九」などのクラシック曲を演奏する「フラッシュモブ」が日本でも見られるようになりました。その場に居合わせた人々も自然に音楽を楽しんでもらおうという試みです。https://www.youtube.com/watch?v=kocZG5erhTE

一方、お客さんに演奏以外で参加してもらうクラシックコンサートも増えています。お客の作った「詩」や「写真」とコラボしたコンサートです。(宗次ホール)

さまざまな形で参加し、クラシック音楽を能動的に楽しむ人が増えることは成熟した文化の表われです。


◆ 大型化するクラシックのライブ演奏

言うまでもなく、クラシックコンサートは音楽(多目的)ホールで行う生(ライブ)演奏を指します。

しかし、近年日本でもコンサートホールの枠にはまらない大規模ライブ、野外コンサート、音楽祭が増えています。

ピアノ界の貴公子「清塚信也」の初の武道館ライブが8月(2019)に行われますが、1万人規模の観客動員が実現すれば、クラシックの新しいページが開かれることになるでしょう。

 

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もちろん、従来からあるオペラの野外公演、各地で開催されている「○○音楽祭」なども含め、日本のクラシック音楽シーンが西洋化していることは悪いことではありません。

さらに、ご存じ「ラフォルジュルネ」は、一時は日本4都市で開催され、多くのクラシックファンの獲得に成功しました。

参加型クラシック、大型化するクラシックは、広く市民に受け入れられつつありますが、ややクラシックの専門性が薄れ、イベントやパフォーマンスの一面が強調されることはやむを得ないかも知れません。


◆ 映画とクラシックの融合

映画館で上映(デジタル配信)される臨場感あふれるオペラの「METライブビューイング」は、今や世界70か国2200館に広がっています。

他にも、英国ロイヤル・オペラ・ハウスの「シネマシーズン」など、映画館で本場のクラシックを破格の値段で堪能できるとあって、日本でも固定客が増えています。

一方、コンサートホールで生のオーケストラと大型スクリーンを使った「シネマコンサート」が人気を呼んでいます。迫力のオーケストラ演奏をバックに映画を鑑賞するという究極の贅沢が本物志向のお客に支持されています。

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映画館で上映されるライブ感覚のオペラやバレエ。 コンサートホールで上映されるオーケストラ演奏付きの映画。まさに映画とクラシック音楽の融合が進んでいます。

 

◆ その他

・電子楽譜(タブレット)による次世代型オーケストラコンサート
・家庭やオフィスへ演奏家が訪問する「出前コンサート」

硬派弦楽アンサンブル「石田組」などの個性派の台頭
・「クラシック遊ぶ音楽実験室」をテーマに活動するスギテツ(デュオ)の登場

・ショパン全212曲を18時間連続で演奏(ピアニスト横山幸雄)ギネス世界記録
プロジェクションマッピングによるクラシック音楽の演出

・ビジュアル系・アイドル系クラシック奏者の活躍
・クラシックを題材にした小説(蜜蜂と遠雷)、コミック(のだめ)などの映画化

・定額制でコンサート行き放題の登場
 など、クラシック音楽の切り口は無数にあります。

 


■ 模索するクラシック音楽シーン

上記も含め、様々な取り組みが今後のクラシック音楽シーンを塗り替えていくことになると思います。ご紹介した事例はごく一部に過ぎません。

新しい発想や着眼、独創性、個性・差別化、市民参加、融合・コラボ、ビジュアル、テクノロジーがキーワードです。クラシック音楽は多様化して、時代のライフスタイルに合ったそれぞれの道を歩むことになるでしょう。

クラシック音楽シーンの模索はまだまだ続きます。

 

2017年4月 6日 (木)

宗次氏に学ぶ 華麗なる加齢(30万PV記念)

当ブログ 「壺中日月長」 へのアクセス数が、おかげさまで開設以来30万回を超えました。

他愛もない日々の出来事や、自己満足に過ぎない趣味の世界を記事にしてまいりましたが、この3年半に当ブログを訪問されたすべての皆様に感謝申し上げます。

昨秋、高齢者の仲間入りをしたものの、まだまだ精神的にも未熟な自分を反省し、これからも精進を重ねる所存です。引き続き当ブログをお引き立て下さいますようお願いいたします。


さて、人は加齢と共に衰えていくものです。頭は次第にボケて、身体は言うことを聞いてくれなくなります
。 この世に生を受けた以上 「生老病死」 は避けて通れません。

先日、かつての仕事仲間との飲み会がありました。それぞれ思い思いに人生の晩年を過ごしていますが、共通していることは年齢を意識しないで 「前向きに生きている」 という姿です。

北海道でペンション経営を始めた人、日本中を車で(ワゴン車に寝泊まりしながら)旅行している人、自分の土地を耕して百姓(農家)になった人、経験を生かして地元で起業した人、などなど。

私も趣味の世界を広げながら、地元のボランティアに精を出し、人とのつながりを大切に日々を楽しんでいますが、自分が描く理想の晩年には程遠い状態です。

■ 宗次氏の華麗(カレー)なる加齢

そんな中、名古屋の 「宗次ホール」 が開館10周年を迎えたというニュースを耳にしました。

ご存知の通り、宗次ホールは、カレーチェーン 「CoCo壱番屋」 を創業した宗次徳二氏が、2007年3月に私財を投じてオープンさせた音楽専用ホールです。

400回を超えるコンサートを主催して、クラシックを中心とした音楽を地域に普及させると同時に、演奏家を育て支援して、広く文化に貢献しているホールです。

ホール入り口でいつも温かくお客を迎える宗次氏の笑顔が、私たちの心を和ませてくれます。ですから、この会場にはいつも温かい空気が流れていて、嫌なピリピリ感も、よそよそしさもありません。

良質な音楽は演奏者と聴衆の両者が共鳴して作られるものですから、会場の雰囲気は極めて大切です。

文化を創造し、文化を育成し、文化を普及させるという三拍子揃った文化の拠点。音楽文化を通して社会を明るくしたいという切なる願い。

まさに、この10年間、年齢を重ねてこられた宗次氏の思いが大きく結実したホールと言えるでしょう。

このような年の取り方を、「華麗なる加齢」 と表現しても良いのではないでしょうか。ただ、宗次氏の場合は 「カレーなる加齢」 と言った方が語呂が良いようです。

■ 華麗なる加齢を目指して

宗次氏には遠く及びませんが、私たちも人生の黄昏時に向けて、光を放つ存在でありたいと思います。自己の思いを実現する 「華麗なる加齢」 を目指したいものです。

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この度の30万回アクセスを機に、この数年間を反省し、理想の晩年の在り方を模索し、その実践に向けて邁進したいと考えております。

そのためには、氾濫する情報の中で本物を見極める力を養うことが極めて重要だと思います。 スタートラインに立つ上で、情報の取捨選択と、心の断捨離が大きな課題だと考えます

新年度に当たり、この1年を 「華麗なる加齢」 のスタートの年として精進いたします。ご支援、お力添えをお願いいたします。

 

2015年8月22日 (土)

安保法案と安倍再選の行方(10万PV記念)

参議院で審議が再開された安保法制。

もし、会期内に参院で議決されなければ、60日ルールによって、今国会で「可決成立」することは言うまでもありません。

しかし、禁じ手の60日ルールを使って採決(衆院再可決)に踏み切れば、世論は黙っていないでしょう。たちまち、内閣支持率は大幅低下し、安倍首相の退陣が現実のものとなります。

安倍首相サイドとしては、支持率低下は何としても阻止しなければなりません。

そこで、譲歩できるものは譲歩して、ひとまず点数稼ぎをすることにしました。それが、「新国立競技場の白紙撤回」 と、「70年談話」、「辺野古話し合い」 です。 この三つで、現状の支持率は何とかキープ出来ました。

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安倍首相 懸命の譲歩 

その1 新国立競技場の白紙撤回

利権の象徴だった競技場を白紙に戻して、「国民の声」に耳を傾けることにしました。総理の主導力に一定の評価はありましたが、五輪は大きくつまずき、税金60億円が無駄になりました。そして、文科省やJSCの信頼は失墜しました。


その2 戦後70年談話

4つのキーワードを全て入れ、対外的にも国内的にもギリギリ合格点の談話を発表しました。主語がないと批判する人がいますが、よく読むとキチンと書かれています。首相が支持率低下を気にして、自説を曲げたことは明白ですが、談話自体は評価しても良いのではないでしょうか。 

事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。植民地支配から永遠に訣別(けつべつ)し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。先の大戦への深い悔悟の念と共に、我が国は、そう誓いました。(談話の一部)


その3 辺野古移設工事の一時中断

打開策がないまま対立が深まっている 沖縄県と政府(国)。これまで強硬な姿勢が目立った政府が、ここへ来て、話し合いのテーブルに付くと言ってきました。そのため辺野古工事も一時中断すると言うのです。 これ以上現地の世論を刺激しないで、支持率維持を図った方が得策と考えたのでしょうか。しかし一時的なポーズに過ぎないと思います。


※このように あの手この手で支持率低下を防ごうとしましたが、相次ぐ総理周辺からの失言問題が後を絶ちません。↓


ここから、安倍政権マイナス要因について


安倍首相の足を引っ張る身内の失言

その1 マスコミを懲らしめろ!

自民党の大西議員が、広告料をなくして 「マスコミを懲らしめる」 そのために経団連に働きかけるなどと発言。言論弾圧,取られかねない問題発言に、党内から批判も出る始末です。当然です。


その2 法的安定性は関係ない!

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磯崎首相補佐官が、安保法案と憲法との整合性をめぐって発言しましたが、つい本音が出たのではと野党から猛反発。 「法的安定性は関係ない」 は今年の 「流行語大賞」 に選ばれるのではないでしょうか。


その3 「だって戦争に行きたくないじゃん」 は利己的 発言

自民党の若手 武藤議員が、ツイッターで、法案反対の学生グループ 「SEALDs」 に対し、 「利己的個人主義」 に基づいた主張だと批判。 その後、未公開株問題で自民党を離党しましたが、身内の公明党は 「離党だけ」 で済むものではないと苦言を呈しました。

「だって戦争に行きたくないじゃん」 も、今年の「流行語大賞」に選ばれるでしょう。

「ナチスに学べ」発言の麻生副総裁は、武藤議員に「自分の気持ちを発言するのは、法案が通ってからで十分間に合う」 と注意していますが、見当違いも甚だしいと思います。

また、自民党の三原じゅん子議員が、日本の侵略戦争のスローガンだった 「八紘一宇」 と言う言葉を使ったことも問題視されましたが、最近この手の失言・問題発言が多過ぎると思います。だから、賢い議員は沈黙を守っているのかも知れません。

ただ、政権与党の発言であっても、自由な言論は保証されるべきなので、過度のアレルギー反応にならないよう注意も必要です。



さらに、安倍政権の足を引っ張る疑惑のエンブレム騒動

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■ 疑惑の五輪エンブレム

東京五輪のイメージを地に落としたエンブレムの盗作疑惑。 次々と発覚する 「別の盗作」 と、「新たな疑惑」 。 海外からも批判の声が・・もうこれは 「日本の恥」 としか言いようがありません。

部下に責任を転嫁するなど、佐野氏の呆れた釈明がネットなどでバッシングされている一方で、親戚が日本スポーツ振興センター (JSC) に勤務、兄弟が官僚という佐野氏、コネクションも疑われているようです。救いようがありませんね。

もう 「辞退」 してもらう以外に道は無いでしょう。 そうしないと、国民はこのエンブレムを見るたびに嫌な気分になってしまいます。

ただ、この件で東京五輪には再度ケチが付くことになり、安倍政権の支持率低下は免れないことになりそうです。

※このブログ記事で、エンブレムのロイヤリティ200億円程度が、佐野氏側に入るとの見解を述べましたが、エンブレムの著作権は組織委員会にあり、ライセンス料は同委員会に帰属します。 謹んで訂正し、お詫び申し上げます。(当該部分は削除致しました)

◆その後、エンブレムは白紙撤回されました。

■ アベノミクスの限界

大規模な金融緩和策で誘導した円安、公的資金を投入してつり上げた株価、公共事業のバラまきによる雇用対策。

しかし、賃金は物価上昇に及ばず生活は楽になりません。輸入原材料のアップで苦しい経営を強いられる中小企業。格差は広がるばかりです。

第3の矢 「成長戦略」 が見えないまま、あと1年半後(2017/4月)には、消費増税(10%)が決まっています。消費が落ち込むことは避けられない情勢です。

残念ながら、アベノミクスは政府が言うように成功しているのか疑わしい状況になってきました。 この後に国民を待ち受けるのは、インフレと増税、格差社会、そして軍事立国を目指す日本、だとしたら・・・


■ 原発再稼働

世論の反対を無視して再稼働した「川内原発」。早速トラブル発生でニュースになっていますが、重大事故の責任の所在が不明なまま、今後次々と予定されている再稼働。 福島の事故が全く収束していない段階で再稼働を急ぐ必要があるとは思えません。

国民世論と乖離した政策は、政権運営にマイナスに働くことは言うまでもありません。


■ 公明党の造反(=起死回生のチャンス)

支持母体の創価学会は、創設者の牧口氏が、戦時中に治安維持法などの罪で不当に逮捕され、獄中死した経緯から、絶対平和主義の宗教団体として今日に至っています。

自民党に加担して、安保法案を通すようなことになれば、その平和主義が揺らいでしまいます。

本音を言うと、今回ばかりは安保法案に賛成できませんが、公明党は相変わらず自民党にすり寄っています。 ついに公明党と創価学会の 「立ち位置」 が違ってきました。

公明党は、自民党にすり寄ることで政権に参加してきましたが、その引き換えに主体性を失ってしまいました。 もし、公明党が野党だったら、安保法案に賛成したでしょうか。自民党と一体化して平和主義を放棄した公明党は、あとで大きな代償を払わねばなりません。

20近くある閣僚のポストで、公明党に割り当てられているのは、たった一つです。公明党の貢献に比してあまりにも少なく、ほとんどは自民党が独占しています。公明党は自民党に足元を見られているのではないでしょうか。利用されているだけの存在です。

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憲法違反の疑いが濃厚の 「安保法案」 に対し、反対に転じることは容易なことです。支持母体との関係を最優先すべきですから当然の帰結と言えるでしょう。公明党支持者(創価学会員)は理解を示すと思います。

支持率低下でやがて危険水域に入ることが必至の 「安倍自民党丸」 と運命を共にするのが得策とは思えません。 結党の精神に帰って、自民党との腐れ縁を断ち切る勇気も必要です。

公明党の政権からの離反は、実は 「起死回生」 の大チャンスです。 今こそ公明党という公党の存在意義を示す時です。安保法案に反対する半数以上の国民を味方に付ける最後のチャンスです。

 

安倍政権プラス要因について

■ 非力な野党

そもそも今日の一強多弱の政治体制は、民主党政権が国民の期待を裏切ったことから始まりました。特に、シロアリ退治をすると言っていた野田首相(当時)が、増税を断行したことで、一気に不信感は高まり、結果として自民党が政権に返り咲いた訳です。自民党が勝ったのではなく、民主党がボロ負けしたのです。責任は主権者たる国民にもありますが、野党は離合集散を繰り返すばかりで有権者の信頼を失ったままです。

今回の安保法制も、もし、60日ルールを発動するようなことになったら、参院の野党議員は全員が辞職するくらいの意気込みを示してほしいと思います。二院制が無視されたのですから、職を賭して抵抗するのが筋というものです。その覚悟なくして法案阻止は難しいでしょう。でも正直言って期待はしていません。

国民の反対の声をバックにすれば、法案は廃案に追い込めるなどと甘いことを言っていたら、永久に政権を奪還することは出来ません。 残念ながら、今の野党にそんな気概は感じられません。

■ 株価の急騰

2万円を切ってしまった日経平均株価ですが、大幅に上昇するようなことがあれば、やはり消費に好影響が出るでしょう。結果として経済は好転しますからアベノミクスの評価は上がります。世界的な金余り状態は続いている訳ですから、要は日本に資金が流れる条件整備が必要だと思います。


■ 拉致問題、急転直下の解決

難航する拉致問題が、もし解決する方向に向かえば、安倍内閣の支持率は上がるでしょう。 もしも、水面下での交渉が続いていて、かつての小泉さんのように、安倍首相が直接乗り込んで拉致被害者を連れて帰ることが出来たら、安倍長期政権が実現することは間違いありません。


■ 紛争、テロ事件の勃発

絶対あってはならないことですが、万一、重大な紛争またはテロが発生し、邦人が巻き込まれるような事態が起きれば、安保法制の反対派は減るでしょう。 9・11を思い出して下さい。あの事件は米国の防衛費増額に正当性を与えることになりました。世論は誘導されやすいものです。



以上、安保法案の行方と、安倍政権の今後について多岐にわたり考察してきましたが、9月末の任期満了に伴う自民党総裁選は、どうやら安倍首相の無投票再選の可能性が濃厚の情勢です。


すなわち、現実には 「安保法案」 は可決成立し、安倍さんは自民党総裁(首相)に再選されるということです。


プラス要因、マイナス要因の作用によって、結果は流動的ですが、戦後70年の本年、日本の進路に暗雲が立ち込めていることは憂慮される事態です。

 

2015年3月16日 (月)

クラシック音楽衰退の原因と対策(4万回 PV記念)

 原因その1 現代音楽の失敗 失われた100年

調性の制約を排し、中心音を持たない「無調音楽」を草案し「12音技法」に進化させた 現代音楽の旗手シェーンベルクこそが、クラシック音楽を衰退させた張本人ではないかと考えます。
弟子のウェーベルンもベルクも、影響を受けたジョンケージも同罪でしょう。また現代音楽を芸術と称した評論家や知識人も結果として同罪と言えます。

当初「無調音楽」は20世紀の前衛音楽として認められ「これこそが芸術」などと、もてはやされました。現代音楽の登場で、それまで脈々と受け継がれてきた伝統的なクラシック音楽は絶滅の危機に瀕しました。

しかし、メロディもハーモニーもリズムも否定され、騒音化した現代音楽は、聴衆から次第に見放されるようになりました。そして時が経つと、現代音楽が演奏会で取り上げられることはほとんど無くなりました。

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今日の演奏会は、モーツァルトやベートーヴェンからロマン派に至る100年から200年、それ以前の音楽を繰り返し演奏しているだけになりました。

もはや音楽を聴くと言うより、演奏の違いを聴くのがクラシックコンサートの聴き方になってしまったのです

それもこれも現代音楽に魅力的な曲が無いからです。
まさに現代音楽作曲家の技法の間違いであり、その後の怠慢であり、その責任は重大と言わねばなりません。


言ってみれば、今日のクラシックコンサートは、懐メロばかりで成り立っているのです
現代音楽の失敗が、今日のクラシック音楽衰退の最大の原因だと断言して良いと思います。

 

  対策

 

1.現代音楽は21世紀初頭までで終息させ、その後からは「親ロマン派」(一例)として新しい調性音楽のジャンルを創設する。

2.新たに5分程度の短時間に収まるクラシック作品の形態を普及させる。

3.国内外の作曲コンクールは、すべて「調性音楽」で作曲するよう改正する。

現代音楽の方向性が無調などの前衛音楽に走ったのは、余りにも過去の作品が偉大で、モーツァルトやベートーヴェンを超えられないからだとする意見がありますが、そうではありません。別に超える必要もありませんし、これからも立派な作品は数多く生まれるはずです。

実際に、20世紀に作られた作品の中にも19世紀の伝統を受け継いだものは名曲として演奏されています。(シベリウス、ホルスト、エルガーなど)これらを「親ロマン派」と呼んでも良いと思います。

また、5分で完結するクラシック曲は、例えばNHK大河ドラマのテーマ曲などに見られますが、忙しい現代人のクラシック入門には最適です。さらに、そうした小品を並べたコンサートがあっても良いでしょう。

5分間クラシックの普及は、21世紀のクラシック音楽普及の切り札になると思います。そして、権威のある作曲コンクールは、「調性音楽」で作るよう参加要項を改訂します。

 

♪参考曲 ペトリス・ヴァスクス(1946~ ) 天にましますわれらの父よ 

https://www.youtube.com/watch?v=lsJ3lFo6v40 戦後生まれの作曲家でも、こんなに美しい音楽を書くのです。


 原因その2 社会構造の変化

長引く不況の中で、各自治体は財政難から文化予算を削減してきました。福祉や教育、医療に比べれば、文化は後回しになっても仕方がないと言う訳です。また、多くの民間企業では収益が悪化し、文化事業に寄付をする余裕がなくなりました。

世間では格差社会が進行中です。ニートや非正規雇用者が減少しない中、高齢化が急速に進み、年金収入だけで生活する高齢者も増加しています。ですから、一部の富裕層を除き、行政も若者も年寄りもお金に余裕がないのが現実と言えるのです。

そのような社会環境下で、音楽事業者の経営も厳しいものがありますが、お客から見ても高額な入場料は大きな負担となっています。

特に若い世代は、生活も趣味も多様化する中で、ネットやスマホなどの費用負担が大きいうえに、音楽配信の利用者も増え、生演奏のクラシックコンサートに高いチケット代を払う必然性は薄れています。

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また、世界のグローバル化に伴い24時間、秒単位で目まぐるしく変化する現代社会では、落ち着いてクラシック音楽を聴く「心のゆとり」がなくなっているのも事実です。

これらの急激な社会構造の変化が、クラシック衰退の第二の原因ではないでしょうか。

 

 対策

1.国の文化予算を増やす。文化の振興に年間350億円は少ない。

2.クラシック普及専門の国立のオーケストラを作り、全国に良質な音楽を提供する

3.すでに手遅れだが、若者のクラシック離れの対策を講じる。

4.シルバー層に対応したコンサートの在り方を検討し実行する。

日本の文化予算は総予算96兆円の 0.11%で、諸外国と比べても文化国家とは言えません。一般家庭なら30万円の給料をもらっても、330円しか文化にお金を使わないということです。

国の援助が期待できないのなら、音楽界の自助努力も必要ですが、(二重取りしている)政党助成金に320億円もの大金を使うなら、その分を回していただきたいと思います

また、オスプレイ1機分の120億円で、念願だった国立のオーケストラ(ちなみにNHK交響楽団の年間予算は31億円)を創設して、クラシック普及のため地方を中心に安価で良質なコンサートを提供できる体制を作ります。(準国立のN響はいままで通り東京中心で活動すれば良いでしょう。)

若者のクラシック離れは完全に手遅れですが、今後、学校教育のカリキュラムを改善する(後述)などの有効な対策を講じれば歯止めが掛かるでしょう。

最近、広がりつつある「プロジェクションマッピング」と、コンサートとの融合は、今後の展開次第では、広範な世代にクラシックを普及させるのに一役買うことが期待できます。

また、高齢化しているクラシックファンに対し最大限配慮することで、シルバー 層の取り込みを図ります。シルバー社会のコンサート(ホール)の在り方

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コンサートホールでのプロジェクションマッピング


 原因その3 テレビに占拠された思考 ブームに左右される人々

クラシック音楽は、一部の病的なマニアを除けば、若い頃からずっと聴いてきた高齢者のファンと、テレビなどのメディアに影響を受けた一時的な音楽ファンで成り立っています。もちろん、吹奏楽や学生オケでクラシック曲に親しんできた人、楽器や声楽を習っている人もコンサートに出掛けますが、ごく少数だと思います。

最近のクラシックコンサートを見て感じるのは、テレビの影響力が絶大であると言うことです。

「現代のベートーヴェン」佐村河内氏の作ったとされた交響曲は、テレビのドキュメンタリー番組がきっかけでCD18万枚、全国コンサートツアーという大ブームを作りました。 また、盲目のピアニスト 辻井伸行氏についても、彼が11歳の時からテレビ朝日が取材を続けていました。フジコ・ヘミング氏も、NHKの番組がきっかけで大きな反響を呼び、その後、CD「奇跡のカンパネラ」は30万枚のセールスを記録しました。記憶に新しい「のだめカンタービレ」もテレビドラマがブームに火を付けたのです。

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考えてみれば、私たちはテレビ出現以来、テレビの中のスターを追い掛け、テレビの話題に夢中になり、テレビ絶対主義ともいうべき「テレビ信仰」に陥っているような気がします。

テレビの情報に洗脳され、テレビに思考が占拠されたことで、話題性を追い掛けるだけの一時的なクラシックファンが大量に作られました。もちろん、そのこと自体は悪いことではありません。問題なのは、そのブームの陰に隠れてしまう音楽家もいるという事実です。

実力があっても話題性に乏しい音楽家に、スポットライトが当たることはありません。テレビがスターを誕生させた裏側で埋もれていく音楽家も多いのではないでしょうか。

一方、話題性が優先するだけの音楽界(ファン)の基盤は常に不安定で、ブームに左右されるクラシックの将来も不安定です。聴く耳を持ったファンが少ないことは、クラシックの将来を危ういものにしているのです。

クラシック衰退の第三の原因は、ブームを演出したテレビ局と、ブームに左右されたファンの存在です。

 

 対策

1.テレビ絶対主義からの脱却。

2.一流の演奏家のコンサートを多く聴く。

今日のテレビ社会に於いて、テレビの影響から逃れることは困難です。出来るだけテレビを見ないようにするか、テレビの情報を鵜呑みにしないで疑ってかかることです。新聞やネットからも情報を集め、多面的に判断して下さい。

そして、お金と労力を惜しまず、一流のクラシックコンサートに足を運んで下さい。いつか自分なりに「本物」と「そうで無い物」の区別がつくようになると思います。耳の肥えた聴衆が増えることで、演奏家も成長できるのです。実は、クラシックを衰退させないカギは私たち聴く側が握っているのです。

 

 原因その4 文科省の過ち 中学に於ける鑑賞時間の減少

最も多感な中学生に取って、クラシック音楽の鑑賞時間ほど大切なものはありません。現在の年配のクラシックファンは、中学時代の鑑賞時間にレコードを聴いて、クラシックに興味を持った人が多くいます。

ところが、文科省は学習指導要領の改正によって、音楽の授業時数を大幅に縮小させました。もちろん、週5日制の導入や、外国語の強化などが背景にありましたが、年間70時数(1時数=45分)あった音楽の時間を35時数(例 中2)に半減させたのです。教育現場では、ただでさえ少ない授業時数の中で、慣れない和楽器の指導や、校内合唱コンクールの練習に時間が取られ、鑑賞時間がほとんど取れないのが現状のようです。

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学校教育の中で、クラシック音楽を鑑賞する時間が取れなければ、家庭にその環境を求めるべきとの声もありますが、そもそも家庭でクラシックを聴く環境が無いから学校で鑑賞してきたのです。今さら家庭に依存するには無理があります。 

結果として、今の中学生は学校でも家庭でもクラシック音楽を聴く機会が極端に少ないのです。これは情操面から見ても本当に不幸なことと言わねばなりません。

感受性豊かな中学生時代に、クラシック音楽に触れる機会をほとんど無くしてしまった教育制度がクラシック衰退の一因であることは明らかです。

 

 対策

1.文科省の新学習指導要領を改定して、中学音楽の鑑賞時間を増やす(年間70時数に戻す)。

2.各中学校にサークル活動として、ジュニアオーケストラを結成する。

3.PTAなどが助成して、一流のクラシック演奏を聴く機会を作る。

若者のクラシック離れの主原因は、中学の鑑賞時間の大幅削減だと思われます。若い世代がクラシックを聴かなければ、早晩クラシックコンサートは成り立たなくなります。もう時間がありません。音響設備の良い環境でCDを聴かせてあげて下さい。DVDなどの映像も効果的です。その際、間違っても感想文などは強制しないで下さい。そして、音楽室に楽聖の古い肖像画を掛けるのは止めて下さい。

日本古来の伝統音楽も大事ですが、先ず今は西洋音楽に焦点を当てて下さい。また、合唱や吹奏楽も良いですが、出来れば希望者を募り、オーケストラを結成して下さい。ジュニアオケは青少年の情操に最適です。保護者も含めてクラシック音楽への興味付けになるでしょう。

さらに、すでに実施されていますが、PTAが中心となり、生の演奏を聴く機会を設けて下さい。その際は一流が条件です。子供たちは一流の音楽にしか反応しません。下手な演奏はかえってクラシック嫌いを招き逆効果です。

 

 原因その5 漂流する音楽家の卵 音大の功罪

日本では、戦後の高度成長期に、電気オルガンやピアノが飛ぶように売れ、音楽教室に通う子供が急増しました。親は自分が叶わなかった夢を子供に託し、ピアノやヴァイオリンを習わせました。

音大や音楽科の設立が相次ぎ、優秀な生徒を数多く輩出するに至りました。世界に通用する日本人音楽家も生まれました。このことは、日本の音楽教育の水準の高さを証明しており、音大の功績は大なるものがありました。医大を出てやがて医者になるように、音大を出て音楽教師や音楽家になるのは当たり前の時代でした。

しかし、出生率の低下で子供の数が減ると同時に、習い事は多様化し、子供の個性が重視される世の中になると、音楽を習う生徒は減り続け、音大の経営を脅かすようになりました。

また、音大を卒業しても音楽家はおろか、講師にもなれないほど音楽の世界は縮小してしまいました。もう社会に音楽の受け皿がないのです。

音大を卒業して、ユニクロに就職したなどと言う例がある一方で、音楽の道を捨て切れない卒業生が年々増え続けています。その多くは自宅で教えたり出張レッスンをしたり、結婚式場でバイトをしたりと細々と生計を立てているのです。

音楽だけでは食べていけないのでプロとは言えず、かと言って専門教育を受けているのでアマチュアとも違います。世にいうセミプロというカテゴリーになりますが、このような音楽家の卵を大量に生み出してしまった音大はどう責任を感じているのでしょう。

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ある有名音大の卒業生の進路(2013年) まだ3割が音楽関係に就職している

 

音大の行き詰まりが、音楽への夢を遠ざけ、クラシック音楽を勉強する意欲を無くした一面は否定できません。クラシック音楽衰退の第五番目の原因は、漂流する卒業生を大量に生み出した音大にありそうです。

 対策

1.音大は音楽家を養成する以上は就職に責任を持ち、音楽市場の拡大に努める。

2.学生には、音楽と同時に社会性が身に着くよう教育する。また卒業生の追跡調査を実施する。

3.音楽市場拡大のため、出版社、レコードメーカー、ホール事業者、音楽事務所などと協力体制を構築する

日本の少子化が、音大の経営を圧迫した最大の原因です。出生数は、もう40年以上も減少し続けているのに、音大は有効な対策を講じてきませんでした。

一部の国公立の音大を除き、多くの音大では生徒の獲得に必死になるばかりで、入口(入学生)の対策には懸命でしたが、出口(卒業生)の対策を怠ってきました。自立出来ずに「漂流する卒業生」は年々増加しています。

今、音大に求められているのは、卒業生の受け皿となる「音楽市場の拡大」です具体的には、地域と連携した音楽イベント、成人や高齢者向けのコンサート企画、
TV局とタイアップしたオーディション番組の制作、新しい音楽ジャンルの研究、音大直営の音楽制作会社の設立、音楽ソフトの開発、音楽検定の再構築、音楽療法の研究、音大施設の開放・貸出し、など思いつくだけでも多数あります。もちろん、すでに実施されているものも多々あり「言われなくても分かっている。」とお叱りを受けそうですが、それでも,もし一考に値するものがありましたらご検討下さい。


◎あとがき

今日のクラシック音楽界が抱えている問題、とりわけ「クラシック音楽の衰退」について、以前から漠然と考えていた私見をこの機会にまとめてみました。

読み返してみると、かなり独善的で偏った部分もあり、実現不可能な提案も多く含まれますが、その点は個人的見解に過ぎませんので、何卒ご容赦いただきたいと思います。

ただ、聴衆が高齢化している現実を目の当たりにすると、あと数十年で、クラシックのコンサートは成り立たなくなるのではないかと不安になります。特に地方では深刻な問題です。

実は、世界有数のクラシック音楽市場である東京でさえ、クラシック人口を減らさないよう、行政や企業、音楽団体などが、さまざまな取り組みを行っています。(そのことは改めて触れさせていただきます。)

手遅れにならないよう、音楽関係者の英知を結集して、その対策を講じていかなくてはなりません。その意味で、当ブログの問題提起と対策が、少しでもご参考になれば幸いです。

 

ご参考 音楽産業の多様化と行方

 

2015年3月13日 (金)

まもなくアップ アクセス4万回記念記事

気が付いて見れば、カウンターが40000回を回っていました。ブログ開設以来、およそ1年半ですが、多くの方に読んでいただき感激です。

音楽、絵画、書、本、俳句、詩歌、映画、健康、男の料理、政治、平和、精神世界そして、佐村河内事件など、私的な観点から気ままに書いた当ブログですが、これからもお引き立てお願いいたします。


アップが少し遅くなりましたが、まもなく 「クラシック音楽衰退の原因と対策」 と題した記事を公開させていただきます。


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手を伸ばせば、春があります。

2014年10月24日 (金)

10年後(2025年)を空想する (3万回PV記念)

誰もが驚いた3Dプリンター。実用化へ大きく前進したIPS細胞。突然ベールを脱いだ次世代の量子コンピューター。 そして、起こるはずの無かった原発事故。はたまた全国を席巻する「ゆるきゃら」ブーム。

1年先すら予想出来ない今日、まして素人に10年先など予想出来るものではない。もしかしたら、タイムマシンや、テレポーテーションが実現しているかも知れない。また、宇宙人とのコンタクトが始まっているかも知れない。

そこで、10年後の日本を予想ではなく、空想してみることで、少し頭の体操をすることにした。日頃の考えを思ったまま記事にしたので、自分が読んでも荒唐無稽な箇所もある。あくまでも空想なのでご容赦いただき、しばしお付き合い下されば幸いです。

 
■ 空想の10年後 キーワードはロボット

ソフトバンクが来年2月に発売するパーソナルロボット「Pepper」。198000円という価格設定は、2015年がロボット普及元年になることを意味している。


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先ず、私たちの身近な生活はどう変わるのか。


【家庭】遂に登場、クッキングロボット

戦後、家事労働を軽くした最大の発明は、電気洗濯機ではないだろうか。他にも冷蔵庫、炊飯器や瞬間湯沸かし器、掃除機、電子レンジ、食器洗い機など、多くの製品が開発され家事の負担は激減した。この時点で、便利にするための機械はすでに出尽くしてしまった感があるが、2025年、遂に究極の家事ロボット「クッキングロボット」が登場する。

朝、野菜、肉などの材料をセットすれば、帰宅時間に合わせて料理が完成している。留守中は防犯ロボットとして家を守り、ペットのえさやりや、宅配便の受け取りもこなす。帰宅すると「お帰りなさい~」と明るく出迎える。ただ、このロボット君、掃除は苦手なので、進化した次世代の「おそうじロボ ルンバXⅡ」に任せる。ルンバは業務用にも進出し、ビル掃除に活躍するだろう。

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家事から完全に解放された主婦は、社会進出して経済発展に一役買うが、自立したことで離婚率はさらに上昇する多様な人型ロボットが開発され、家庭にはロボット亭主、ロボット妻も登場して、生涯結婚しない若者が増える。

団欒の中心のTVは、100インチのフィルム式壁掛け型が主流になるだろう。自宅で映画を楽しむ人が増え、映画館は衰退するが、バーチャル、体感、マルチスクリーンなどミニテーマパーク化した一部の映画館は生き残るだろう。

高効率の液晶パネルや、窓に貼る液晶フィルムの開発で、省スペース型の太陽光発電が可能になる。駐車場の屋根程度の面積で、家庭の電気を作ることが出来るので、多くの家庭で電気代がゼロになるだろう。

また、健康志向の高まりと食品の高騰から、家庭用のカプセル式野菜生産機「植物工房」(仮称)が爆発的に売れる。その他にも、水を使わない洗濯機(したがって乾燥しなくてよい)が遂に完成して、節水にも一役買うことに。

2010012911031304_13 現在の野菜栽培機

以上、10年後、家庭に起きる変化は想像を超えたものになると思う。

 
【車】ガソリン車は姿を消す

ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車(FCV)、ソーラー自動車が主流になり、とうとうガソリン車は姿を消すだろう。特に究極のクリーンエンジンといわれる燃料電池車は、政府主導で水素ステーションなどのインフラ整備が進み、一気にシェアを拡大する。

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オートマチックドライブ(自動運転)が一部の高速道路で試験走行される。その結果、先行して高速道路で自動運転システムが実現するだろう。

トラックなど大型車は、装備が義務付けられた「自動ブレーキ装置」のお蔭で追突事故が激減する。

また、ワゴンタイプのマイカーには、防災対応の装備がオプションで可能になる。キャンピングカーほどの設備はないが、簡易トイレやベッド、電子レンジを備えたワゴン車が万一の大災害に個人用仮設住宅として威力を発揮することになる。

災害時に排気口が自動で閉まるなど、水に強い防水仕様の車が広く販売され、押し流されても一定時間沈まないことで、多くの人命が救われることに。


【経済】コーヒーは一杯1500円、空気を売る新ビジネスが誕生

一強多弱の政治体制の中で、現在のアベノミクスは強引な手法で、デフレ脱却に成功する。経済は上向くだろう。

しかし、インフレは進行し、非正規労働者や年金生活者の生活は困窮し、格差は広がる。人口減と高齢化で労働人口は不足するが、産業用ロボットが大幅に投入され、労働力をカバーすることになる。結果的には生産性は向上し、工業立国が復活する。

ディスカバリー日本Ⅱのキャッチフレーズのもと、海外からの旅行客は年間3000万人に達する。お台場の国際カジノも大繁盛、多くの観光客誘致に成功する。この頃、1000円硬貨が発行される。

一方、生活困窮者は都会を脱出し、田舎で自給自足の生活を送るようになるだろう。物価の安い海外への移住も合わせると、人口の1割近い1000万人が都会を離れるか、日本を捨てて生活するようになる。しかし、このような人口の移動は経済に好循環をもたらす一面もある。

サラリーマンは、成果主義による年俸制が浸透し、過酷な労働を強いられる。勝ち組、負け組がハッキリして、社会は二分される。労働賃金の格差はそのまま格差社会につながる。ストレスも蔓延するだろう。

経済に大いに関係のある100円ショップはインフレの影響で成り立たなくなる。店内の価格構成は、100円商品は1割程度、平均では300円程度となり、もはや100円ショップとは言えなくなるので、100YENの看板は外して、ダイソーショップとか、セリアショップに名称が変わるだろう。100円回転寿司も同じで、ファミレス化してメニューを増やし生き残る。

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「水」ビジネス時代は続くが、新たに「空気」ビジネスが誕生する。高濃度の酸素発生装置や、缶詰に入った「アマゾン川の空気」が家庭向けに発売され、療養中の高齢者や都心の富裕層に売れるだろう。

また、諸外国に比べあまりに法外な葬式費用は、斎場の乱立によって是正され、同時に香典という風習は姿を消すことになる。風習と言えば年賀状も減少し、会社関係や高齢者のみによって継続される。

 
【政治】民主党は消滅する 女性初の首相が誕生するも短命に終わる

二度も野党を経験した自民党は、巧みな政権運営で盤石の体制を築く。民主党は分裂し、大多数は自民党に吸収される。一方、共産党と社民党は合体し、野党や公明党の一部も取り込んで一大勢力に発展する。

すなわち10年後の政治構造は、自民対社共となり、戦後の大勢に戻ってしまう。ゴチャゴチャある今の政党は、自民か社共に二分される。右か左かの危険な構造が緊張感を生み、意外にも政治は安定して腐敗や癒着は一掃される

また、女性初の総理大臣が遂に誕生する。その人はN氏またはO氏であるが、議員定数の大幅削減を断行した後、年金改悪や消費増税で国民の反感を買い短命政権で終わる。

一方、北朝鮮による拉致問題は、南北朝鮮の統一が実現し、一気に解決に向かう。これにより民主化が遅れた中国は、アジアの中で孤立するだろう。

 
【自衛隊】戦争する自衛隊、隊員募集は困難に

集団的自衛権の行使容認で、事実上平和憲法の失われた日本では、自衛隊の戦闘地域への海外派兵も視野に入れなければならない。自衛隊の募集は難しくなり、徴兵制度の導入議論が本格化する。また、法律を改正して日本国籍以外でも自衛隊に入れるようにする。さらに、自衛隊を「自衛軍」に名称変更する動きが出てくる。

世界の紛争は無くならない。国連は各国の利害が対立し、機能不全のまま難民だけが増え続けるだろう。難民救助の目的で、自衛隊の医療部隊と、その護衛部隊が派遣される。
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一方、自然災害の多い日本では、自衛隊の存在は大きい。災害現場ではNASAの技術を使った生体反応探査ロボが活躍し、パワースーツを着た隊員が瓦礫除去に当たる。また、発生初期の台風を消滅させようと、自衛隊機がフィリッピン沖で特殊な物質(積乱雲を抑制する)を散布するが、周辺国の反発を買う。

 

【犯罪】監視社会の到来、コンピューターの犯罪

格差社会の広がりは犯罪の増加を招く。犯罪は凶悪化するが、犯人逮捕の決め手は防犯カメラの普及である。監視カメラ大国イギリスを模範に日本でも急速に防犯カメラの設置が進む。

各家のインターホンは24時間録画式になり近隣に目を光らす。全ての自販機はカメラ内蔵式になる。全ての児童のランドセルにも小型カメラが内蔵される。バス、トラック、タクシー、マイカーにはドライブレコーダーが義務付けられ、全てのエレベーター、全ての商店のレジスターにもカメラが装備される。

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そしてズーム機能、夜間対応などカメラの性能も飛躍的に向上させる。プライバシーの問題が浮上するが、犯罪抑止のためにはやむを得ないと国民は理解を示す。

防犯カメラの映像(顔)から、犯人を割り出すため、近い将来、運転免許証の顔写真が警察のデータベースに保存され、容疑者の照会に利用される。さすがに反対意見もあるが、すでに個人のプライバシーなど無いに等しい時代なので容認される。いずれは、公務員や企業の身分証明書なども警察にコピーされることになる。犯罪の抑止と引き換えに恐るべき監視社会が到来するだろう。

また、集団登下校の常態化と防犯カメラの設置効果で、子供の誘拐事件は激減する。欧州で始まっているICチップを体内に埋め込む案は検討されたが見送られることに。

一方、資産家や要人、その家族を狙った凶悪な誘拐事件が多発する。振り込め詐欺は高齢者への周知徹底と刑罰強化(死刑又は終身刑)で姿を消すことになるだろう。

コンピューターが犯罪に加担するケースが初めて発生する。行政機関や大手企業のコンピューターから大量の顧客情報が流出するが、これは、ある犯人がコンピューターを(破壊すると)脅し、その結果コンピューターが情報を漏らすプログラムを勝手に作り発生した史上初の事件となる。自身(マシン)の保身のため嘘をつくコンピューターはあったが、法律を犯すに至ったことで社会は大きなショックを受ける。

ハイテク捜査が進む一方で、警察に透視やテレパシーといった能力を活用する部署が出来るが、運用は秘密裏に行われる。

 
【医療】ヒーリングサロンが町中に

年間40兆円、医療費の抑制は急務である。その柱として期待されるのが、医療用ロボットの開発と医療現場への導入である。10年後は多くの先進医療の現場で医療用ロボットが投入され、「神の手」ならぬ「ロボの手」が大活躍することになる

 増え続けるがん患者に対し、やっと歯止めが掛かる。東大医科研の免疫細胞療法が承認され、副作用のないワクチンによる治療が一般的となる。他にも世界中で開発が進む新薬の効果で、がんは不治の病から脱出できる。

さらに、代替医療や漢方が注目され、統合医療として認知されるだろう。山間地の農家は漢方の薬草栽培で大きな収入を得る。

また、若者を中心にヒーリング療法が急速に広まり、各地にヒーリングサロンが誕生する。特に、うつ病などの精神疾患に効果が期待される。科学の発達と同時に精神世界を信じる人も激増し、現代医学に限界を感じる人たちが、ヒーリング療法や免疫療法に走る場面もありそうだ。

そして、何といってもIPS細胞などの再生医療が実用段階に入り、多くの医療分野で著しい成果が出るだろう。IPS技術で人工血液ができれば、献血は必要無くなるだろう

しかし多くの病気が克服される一方で、原因不明の難病や感染症が新たに出現して医療関係者を悩ませることに。鳥インフル、エボラに加え、新種のインフルエンザにより先進国も含め世界中で数百万人規模の死者が出る。日本では大規模な検疫施設が運用され水際作戦は成功する。大気汚染の著しい中国では、肺疾患が激増し訴訟騒ぎとなり、政権を揺るがす。

全世界のネット中毒やデジタル依存症患者は10億人に達し、WHOは憂慮を表明する。専門医による診療が行われ、日本では保険も適用される。また、一定時間経過するとネット接続が一時的にに遮断される機器も発売される。各国政府は従量制の料金体系に戻すよう勧告するが、市民は猛反発する。

予防医学と免疫療法、がん新薬、ヒーリング、そして再生医療、医療ロボットが10年後の医療のキーワードである。

尚、予防医学の観点から推奨されたスポーツは、東京オリンピックを契機に国民的盛り上がりを見せる。スポーツの各シーンではロボットが導入され、テニスロボや剣道ロボ、ロボットコーチが活躍する。

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現在ブームのジョギングやマラソンは効果が無いことが判明し、その地位をサイクリングに譲る。一方、免疫医学の観点から「笑い」の効用が医学的に認められる。日本の落語や吉本喜劇は思わぬ脚光を浴び、海外の医療機関に招かれる。

 

【新聞】発行部数の激減で存続の危機

現在、日本の報道の自由度は世界ランキング50位。そんな不名誉な評価を挽回するのは難しい。残念ながら自浄能力が無いに等しい報道機関。これでは発行部数は減るばかりだ。

一般のニュース、天気予報、株式欄、スポーツ記事に関しては新聞の価値はゼロに等しい。TV欄なども必要ない。どの情報もテレビかパソコンがあれば十分である。社説と文化欄など一部に限って新聞の存在価値がある。したがって、新聞は電子化が進み、読みたいジャンルを切り売りして配信し、読者はスマホやPCで見るというスタイルが一般化する。

テレビが出来てもラジオが無くならなかったように、新聞は生き残る。チラシ広告を見る主婦や、暇を持て余す高齢者に売れるだろう。しかし新聞業界の縮小は避けて通れない。新聞各社は、リストラ、合理化、企業合併などで当面は乗り切ることになる。

個人的には活字文化である新聞の衰退は避けたいので、自由な報道、ジャーナリズムの復活に期待したい

音楽・美術】ロボット作曲家の登場、バーチャル美術館の誕生

音楽の分野では、遂に完璧な作曲ロボットが登場する。このロボットは、何百通りものパターン(音楽的要素)を入力すれば、思い通りの曲を仕上げてくれる。ちょうど佐村河内氏と新垣氏の関係のようだ。もちろん、楽譜も書いてくれる。才能のない作曲家は廃業することになるだろう。ただし著作権は全てこのロボットの製作会社に帰属する

絶対に間違えないロボットピアニストが作られ、実際にリサイタルも開催される。このロボットは声楽や合唱の伴奏にも広く使われる。

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若者のクラシック音楽離れは進み、特に地方のホールは65歳以上の高齢者が聴衆の9割を占める。したがって、ホールを高齢者向けにバリアフリー化したり、階段に手すりを付けたり、医師を配置したりと対応が急務となる。シルバー社会のコンサート(ホール)の在り方

一方、文科省は若者のクラシック離れが深刻なことから、教育現場でのクラシック音楽重視の方針を打ち出す。結果、小、中学校では音楽鑑賞の時間が大幅に増える。

また美術の分野では、日本のハイテク技術を生かして、東京に世界初のバーチャル美術館が誕生する。館内は4つのエリアに分かれ、ヨーロッパ、アメリカ、中近東、アジア各地の美術館、博物館が精巧に再現される。Googleのバーチャル美術館と違い、建物内を歩いて見学する。展示物は映像と3Dで再現される。美術品は原寸サイズで表示され、色調はもちろん全てが本物と見分けがつかない程に。居ながらにして世界の超一級品を鑑賞できる施設だ。大塚国際美術館のバーチャル版といえる。

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余暇時間の増大によって、芸術の振興に拍車が掛かり、多くの国民が豊かな情操を身に着けることになるが、その副産物として、いじめ、児童虐待は減少する。結局のところ、いじめや虐待はすさんだ社会の縮図なので、社会が健全化して情操が育まれれば、自然と減少するはずである。

 
【旅行】宇宙旅行が100万円で実現

JTBなど旅行各社の通常パンフレットに、宇宙旅行が載ることに。現在2500万円の料金は100万円ほどまで大幅に下がり、誰もが夢の宇宙旅行を楽しめ時代が到来する。

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これまで以上に体験型のツアーが人気で、潜水艦を使った深海体験、長期の離島体験、不謹慎とも思えるが、火山体験、地震体験、台風体験ツアーなど新しい旅行が登場する。

日本だけで3700万人に達する高齢者。年寄り向けのツアーは全盛時代を迎える。世界中の観光地は老人で溢れ、バリアフリー化、休憩施設やトイレの増設、ツアー専属医師の配置など対応が追い付かない。

飛行機や新幹線では、小型の接客ロボットが導入される。また、リアルタイム翻訳機の普及で、言葉の壁は無くなり、誰もが安心して海外旅行が楽しめるようになる。反面、英会話教室などが影響を受ける。

 
【ペット】ペットGメンと、ペット型ロボットの社会貢献

高齢者の増加に伴いペットを飼う人はさらに増加する。ペット可のマンション、アパートは半数に達し、住民トラブルも激増する。公共施設、スーパー、飲食店はもちろん、一部の交通機関でもペットの同伴は可能になる。

ペットのための公園、介護老犬ホーム、総合病院、ホスピス、死後も霊園や永代供養など、まさにペット天国の反面、ペットへの苦情、虐待が社会問題化して、厚生労働省内にペットGメンが発足する。このGメンは各都道府県に配置され、指導取締りにあたる。

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また、人工知能を備えたペット型ロボットが多種類発売され、ペットショップやスーパーにもコーナーが出来る。ペット型ロボットは子供からお年寄りまで多くの国民に愛される。特に高齢者はペットと会話することで認知症の予防になる

■ 本棚の隅にあった文春新書の「10年後の日本」。(2006年発行)

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読み返してみて驚いた。今日の日本をものの見事に予測している。

格差社会、治安悪化、消費税二ケタ化、がんの急増、年金崩壊、代理母の功罪、切迫する大震災、恐怖の感染症、北のミサイル脅威など、残念ながらそのほとんどが当たっている。

特に東海地震が起きれば、中電浜岡原発で放射能漏れの大事故が起こる可能性が書かれている。地域は違うものの、あまりにも予想は的中している。すでにこの時点で、日本の原発は地震に弱いという認識があったかも知れない。

 
■ ご参考までに

1901(明治34)年の新聞に書かれていた100年後の世界 

 海外の友人と話ができる
いながらにして遠距離のカラー写真が手に入る
・野獣が絶滅する
・サハラ砂漠が緑化して文明がアジア・アフリカに移る
7日で世界一周ができるようになる
空中軍隊や空中砲台ができる
・蚊やノミが滅亡する
機械で温度を調節した空気を送り出す
電気の力で野菜が成長する
遠くの人間と話ができる
写真電話(テレビ電話)ができる
写真電話で買い物ができる
電気が燃料になる
葉巻型の列車が東京・神戸間を二時間半で走る
・鉄道網が世界中に張られる
・台風を一ヶ月以上前に予測して大砲で破壊できる
人の身長が180センチ以上になる
・医術が進歩し薬が廃止され、電気で無痛に手術できるようになる
馬車がなくなり、自転車と自動車が普及する
・動物と会話でき、犬が人間のお使いをする
無教育な人間がいなくなり、幼稚園が廃止され、男女ともに大学を出る
・琵琶湖の水で起こした電気を国内に輸送する

                       ※青字は実現済み

 

 あとがき

未来は言うまでもなく現代の延長線上にあります。ですから、現代の事象を注意深く観察すれば、未来は多少なりとも予測できます。

かし、今回のような素人の考察では予測は困難です。ですから居直って空想と致しました。空想しながら楽しい時を過ごすことが出来ました。良いことは全て当たって欲しいと思います。「心の時代」と言われて久しいですが、一向に心は充足しません。来る10年後が平和で豊かな社会になることを切に願うばかりです。

 

 

2014年10月20日 (月)

あと数日で、アクセス3万回記事をアップします

人間は、どうして仲良くできないんだろう?

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僕たちは仲良しだよ。

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あたしたちも仲良しだよ。

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いじめ件数20万件(H24年の認知件数)、家庭内暴力、児童虐待は増加の一途。

一方、離婚件数は23万件(H25年厚労省推計)。

海外では、紛争24か国以上、難民は過去最高の5720万人(UNHCR最新データ)。



不信と対立の構図は続く・・・




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いい加減にせいっ!




3万回の記事は、10年後の日本を予想(空想)します。 10年後、日本はどんな国になっているのでしょう? 

信頼と協調の日々は訪れるでしょうか?

そして、誰もが豊かさを実感できる国、平和を享受することができる国になっているのでしょうか? 

素人が勝手に予想(空想)した未来です。項目もランダムです。軽く読み流して下さい。