知られざる名曲 第267回 おとぎの絵本 Op.113 第1曲 / シューマン
ロベルト・シューマン(Robert Alexander Schumann, 1810 - 1856)の「おとぎの絵本」Op.113 第1曲(1851年作曲)は晩年の室内楽作品の1つで、ヴィオラとピアノのために書かれました。
この曲は、デュッセルドルフ管弦楽団のコンサートマスター、ヴァシレフスキ(1822 - 1896)に捧げられています。
ヴァシレフスキは、メンデルスゾーンやシューマンのもとで学んだヴァイオリニストで、シューマンの死まで傍にいたのち、最初のシューマンの伝記本を書いたと言われています。
画像 ACワークス
この曲が作られた デュッセルドルフ時代(1850年 - 1854年)のシューマンは、創作意欲はあったものの、精神を病んで ライン川に投身自殺を図りました。救助されたシューマンはボン近郊のエンデニヒの療養所に収容され、2年後の1856年7月に46歳で生涯を閉じました。
死の直前、シューマンの妻 クララ・シューマンが書いた日記( 1854年2月)には、
「かわいそうなロベルト、ひどく辛いらしい。彼にはどんな音も音楽に聞こえてしまうのだ。……これが止まらなければ気が狂ってしまうと何度も訴えている。巨大な管弦楽のようなものが聞こえ、それが終わるかと思えば、また次の音楽が彼の幻想の中に聞こえてくるという具合で、幻聴はひどい状態に達している」とあります。
しかしこの音楽は安らぎに満ち、すでにシューマンの精神は天国の花園にいたようです。
■ おとぎの絵本 Op.113 第1曲 / シューマン
読書家だった シューマンが絶えず読んだ ジャン・パウルの全集の次のような部分にアンダーラインを引いています。
「花は生きていて眠るからには、きっと子供や動物と同じように夢を見る。結局、生物はすべて夢を見るのだ」
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