知られざる名曲 第253回 蝉しぐれ / 岩代太郎
久しぶりに日本の作曲家にスポットを当てました。この情緒連綿とした音楽は、岩代太郎(1965 - )の作品です。
※岩代太郎は当シリーズ2度目の登場
彼は、中学3年生の夏から本格的に作曲とピアノのレッスンを始め、1989年に東京藝術大学音楽学部作曲科を首席卒業、以後、多彩なジャンルで活動しており、特に近年では映画音楽を数多く手掛けています。(Wikipediaより)
映画「蝉しぐれ」は、第29回 日本アカデミー賞 優秀音楽賞(2005年)を受賞しています。
当「知られざる名曲」シリーズでは、海外作品を中心に、数々の映画音楽をご紹介してきました。
それは、「映画音楽」にクラシック系の「現代音楽」にはない大衆性があるからです。旋律が美しく、親しみやすく、忘れられない名曲が多く存在するからです。音楽は聴衆に受け入れられて始めて存在するものです。
現代音楽は人間の内面に迫ろうとして、余りに複雑化し、今までの調性音楽を否定したり、不協和音の多用によって既成の音楽様式を破壊したのです。騒音化した現代音楽は、聴衆から支持されなくなりました。
ですから、多くの現代作曲家は映画音楽に活路を見出したと言えます。
■ 蝉しぐれ(映画音楽)/ 岩代太郎
クラシック音楽は芸術性が高く、映画音楽は商業主義で、報酬目当てに作曲をするから、映画音楽には高い芸術性はないとする意見もありますが、私はそうは思いません。
クラシック様式で書かれた映画音楽にも高い芸術性があります。もしベートーヴェンの時代に「映画」があったら、ベートーヴェンも映画音楽を書いたと思います。クラシック音楽と映画音楽に優劣はありません。
古典派やロマン派の作曲家は、芸術を重んじて無報酬で貧乏だった。 映画音楽の作曲家は商売で作曲するからお金持ち。などと言うことはありません。
モーツァルトは、王族、貴族からの注文に応じて報酬を得ていました。ベートーヴェンも献呈先からの報酬は1曲 500 フロリン(約 500 万円)と言われています。つまり、お金のために作曲していた側面もあるのです。生きるためには当然です。
その他、クラシック作曲家は、パトロンからの報酬、入場料、ピアノ講師など副業による収入もありました。この構図は、今日の音楽界とあまり変わりません。
当「知られざる名曲」シリーズは、これからも名曲を求めて長い旅をしてまいりますが、主にバロックから後期ロマン派、近現代までの名曲を探訪すると共に、映画音楽のジャンルにさらなる名曲を求めて行く所存です。
また、映画音楽の先には近年若者に人気の「ゲーム音楽」も視野に入れて、クラシックスタイルによる隠れた名曲を発掘してまいります。ご期待下さい。
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