知られざる名曲 第82回 ディドの嘆き/パーセル(ストコフスキー篇)
今回は、英国のバロック時代の作曲家 ヘンリー・パーセル(Henry Purcell、1659 - 1695)を取り上げます。
彼は若くして音楽の才能に恵まれ、18歳で王室の専属作曲家(兼指揮者)に就任するほか、ウェストミンスター寺院のオルガニストに任命され、充実した人生でしたが、36歳で亡くなっています(死因不明)。
生涯に残した曲はおよそ800曲、今回ご紹介する オペラ「ディドとエネアス(全3幕)」(Dido and Aeneas,Z.626)は、演奏時間1時間ほどの短いオペラですが、バロック期のオペラの最高傑作として評価の高い作品です。
パーセルが眠っているウエストミンスター寺院 ACワークス(株)
オペラ「ディドとエネアス」は、カルタゴの女王ディドと、トロイの王子エネアスの悲恋の物語です。
愛を誓った ディドとエネアスでしたが、魔女の策略により引き裂かれてしまう二人。
エネアスに裏切られたと嘆くディドは、「Remember me(私のことだけは忘れないで)」と、深い失意のうちに自らの命を絶ちます。
このアリアを、音の魔術師と呼ばれた レオポルド・ストコフスキー( 1882-1977)が、オーケストラ曲に編曲しました。どうぞお聴き下さい。
尚、動画中にぼんやりと現れるのは、トロイの王子エネアスです。
■ 第82回 ディドの嘆き/パーセル(ストコフスキー篇)
この上なく悲しい曲ですが、この上なく「美しい」曲です。
人は何故、悲しい曲を「美しい」と思うのでしょうか。
以前、「はかないものは美しい。」と言いましたが、「悲しい曲も美しい」のです。
誰でも、辛い思い出が多ければ多いほど、心のセンサーは感傷的になりますが、一方で自分を慰める思考が芽生えます。
その思考が癒しとなり、かえって心の平安を導き出すのではないでしょうか。
悲しみは辛いことですが、思いっ切り感傷に浸ることで、いつしか癒され、浄化されていくと思います。
そのことが本能的に分かっているからこそ、人は「悲しい曲を美しい」と感じるのだろうと思います。
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