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  • ある町に住む薬売りの老人(実は仙人)は、店先にぶらさがっている壺に時々身を隠してしまいます。 壺の中は別天地。時は悠々と流れ、豊かで充実した人生がありました。 人は、心の持ち方で、このような境涯に達することが出来るのでしょうか。 定年後は、「何をしてもいい自由」と、「何もしなくてもいい自由」 を得たのですが、私も壺中日月長の心境で、悠々としながらも豊かで充実したセカンドライフを目指したいと思います。 このブログは、そんな日々の出来事や思いを書き留めたいと始めました。
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2021年7月20日 (火)

知られざる名曲 第75回 鴎(かもめ)/木下牧子

クラシックの重要なジャンルに歌曲があります。

ドイツ歌曲(ドイツリート)、イタリア歌曲、フランス歌曲。
シューベルトの「冬の旅」など、西洋の歌曲には日本で親しまれている名曲がたくさんあります。

しかし、日本歌曲にスポットが当たることは少なく、隠れた名曲が多く存在します。特に日本の歌曲は心を揺さぶるような「詩」が素晴らしいと思います。

今回は、前回の 「くちなし(髙田三郎)」 に続き、「鴎(かもめ)」を取り上げます(木下牧子 曲/三好達治 詩)。

先ずはお聴き下さい。テノール独唱は、シルバー世代に人気のコーラスグループ「フォレスタ」の中心メンバーの一人 榛葉樹人(しんば しげと)さんです。誠実な歌唱が魅力です。


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画像 ACワークス(株)

■ 第75回 「鴎(かもめ)」/木下牧子(1956 - )曲、三好達治 (1900-1964)


「鴎(かもめ)」 

ついに自由は彼らのものだ
彼ら空で恋をして
雲を彼らの臥所とする
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ
太陽を東の壁にかけ
海が夜明けの食堂だ
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ
太陽を西の窓にかけ
海が日暮れの舞踏室だ
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ
彼ら自身が彼らの故郷
彼ら自身が彼らの墳墓
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ
一つの星をすみかとし
一つの言葉でことたりる
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ
朝やけを朝の歌とし
夕やけを夕べの歌とす
ついに自由は彼らのものだ


三好達治 著 詩集「砂の砦」より



戦後生まれなのに、夏になると終戦記念日を思い出します。

暗い悲しい太平洋戦争末期、兵力不足からついに学生まで徴兵され、戦地に赴きました(学徒出陣)。

詩人の三好達治は、終戦後の昭和21年、戦死した学生たちをカモメにたとえ、彼らの魂が解放され自由に大空を飛び回っている様子を表し、深い鎮魂の意味を込めてこの詩を作ったと言われています。

作曲の木下牧子も何度も繰り返される「ついに自由は彼らのものだ」のフレーズに、強い祈りを感じると述べています。

しかし、失われた尊い命は帰ってきません。

靖国で英霊として祀られても、
カモメになって自由を得たと言われても、空しく聞こえるだけで悲しみは増すばかりです。

愛する者を失った悲しみは到底癒されるものではありません。戦争は大きな過ちです。

この歌曲は不朽の名作と言えますが、詩を深く味わうほど、私は複雑な気持ちになるのです。



※ご参考①
当ブログ記事  鴎(かもめ)

※ご参考②
当ブログ記事  小雪に思う「海に出て木枯らし帰るところなし」山口誓子

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