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    師匠である 安田朴童先生、馬淵仙園先生のお手本を見て書かせていただいています。少しですが自己流の書もあります。 まだまだ未熟ですが、精進して参りますので、ご支援の程お願い致します。

左上の ▶ 再生ボタンを押して下さい。バッハ、イタリア協奏曲が流れます。もう一度押せば止まります。

壺中日月長とは

  • ある町に住む薬売りの老人(実は仙人)は、店先にぶらさがっている壺に時々身を隠してしまいます。 壺の中は別天地。時は悠々と流れ、豊かで充実した人生がありました。 人は、心の持ち方で、このような境涯に達することが出来るのでしょうか。 定年後は、「何をしてもいい自由」と、「何もしなくてもいい自由」 を得たのですが、私も壺中日月長の心境で、悠々としながらも豊かで充実したセカンドライフを目指したいと思います。 このブログは、そんな日々の出来事や思いを書き留めたいと始めました。
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2021年6月 6日 (日)

知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ 2

知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ2


第1回~50回までに続き、シリーズ2として「知られざる名曲」にスポットを当ててまいります。
どうぞご期待下さい。

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第51回  知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける

第51回は ハリウッド映画のレジェンド、ジョン・ウィリアムズ(John Williams)が、満を持して登場致します。


彼は、アカデミー賞5回、グラミー賞25回、ゴールデン・グローブ賞4回など、幾多の受賞歴に輝く映画音楽界の巨匠(作曲、指揮者、ピアニスト)です。(受賞歴は2020年5月現在)

ニューヨーク州生まれ、ロサンゼルス移住後は名門UCLAに進み、その頃作曲を学び、さらにジュリアード音楽院でピアノを学びました。

「スター・ウォーズ」、「ハリー・ポッターと賢者の石」などの映画音楽とは別に、
ロサンゼルス五輪のための《オリンピック・ファンファーレとテーマ》、小澤征爾ホール(タングルウッド )落成記念のための《チェロ協奏曲》をはじめ、《テューバ協奏曲》、《ホルン協奏曲》、《オーボエ協奏曲》などのクラシック作品も多く存在します。

これまでにボストン響、ニューヨーク・フィル、シカゴ響など全米主要オケのほぼすべてとロンドン響を指揮。2020年1月にはウィーン・フィルを初めて指揮し、ヨーロッパ大陸デビューを飾りました。


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今回は ジョン・ウィリアムズの数ある名曲の中から 映画「Seven Years in Tibet(セブン・イヤーズ・イン・チベット)」を聴いてみることにしました。

この映画は、第二次世界大戦中、捕虜となったオーストリア人登山家が脱走の末 チベットに辿り着き、その禁断の地でのダライ・ラマとの友情、魂の遍歴を描くヒューマンドラマです。

映画音楽と言っても、クラシックのチェロ協奏曲です。実際にサウンドトラック盤は、世界的なチェリスト “ヨーヨー・マ” が演奏しています。

■ Seven Years in Tibet / ジョン・ウィリアムズ 1932- )

前半、ドラマティックなオーケストレーションに圧倒されます。そして陰影のあるチェロが美しい~とても印象的です。

後半、音楽にチベット色が現れると、チェロが深い瞑想の世界に入り、静かにテーマが回想されて消えるように終わります。
余韻をたたえた最後の音に、拍手は数秒ありませんでした。

チェロのセシル・グリューブラーは、チューリッヒ芸術大学、ノルウェー音楽アカデミー出身の俊才。
彼女の深い音楽性に思わず手を合わせました。



参照 ジョン・ウイリアムズ公式サイト

https://www.universal-music.co.jp/john-williams/biography/





第52回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける

今回は、34歳の若さで亡くなった ロシアの作曲家 カリンニコフ (Kalinnikov  1866  - 1901) を取り上げます。

曲は、「交響曲第1番」。彼の代表作です。

「知られざる名曲」の決定版と言っても良いくらい素晴らしい曲です。少し長いので、先ずは第1楽章だけでもお聴き下さい。

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日本ではほとんど無名の作曲家 カリンニコフでしたが、1993年、NHK交響楽団の定期演奏会で、この交響曲第1番が演奏され、テレビの「N響アワー(教育テレビ)」で全国に放送されると、クラシックファンに浸透することになったのです。

その時の指揮者が、ロシア音楽界の巨匠 エフゲニー・スヴェトラーノフでした。(ソビエト国立交響楽団などと度々来日し、私も何度も聴く機会に恵まれました)

幸いなことにYouTube動画に、この時の名演が残っていました(再アップ)。


■ 交響曲第1番ト短調 ヴァシーリー・カリンニコフ( Vasily  Kalinnikov)



これは一度聴いたら忘れられないロマンあふれる名曲です。

病床で作曲されたにもかかわらず、希望に満ちた情熱と洗練された感性の発露は、感動以外の何物でもありません。






第53回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける

涼しい谷間で
水車が回る
そこに住んでいた
あの人はもういない

In einem kühlen Grunde,
Da geht ein Mühlenrad,
Mein' Liebste ist verschwunden,
Die dort gewohnet hat.

という歌詞で始まる グリュック作曲、アイヒェンドルフ詩の歌曲があります。
今日の「知られざる名曲」は、このロマンティックなドイツの歌曲にしました。

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画像 ACワークス(株)


ヨハン・フリードリヒ・グリュック( Glück 1793 - 1840)は、ドイツの作曲家ですが、牧師でもありました。地元の修道院で音楽への愛情を見出したとされています。
※同じドイツのオペラ作曲家グルック( Gluck, 1714 - 1787)とは違います。

また、詩人のアイヒェンドルフは、今日でも賞賛されている最も重要なドイツの作家の一人に数えられています。特に自然と牧歌的な描写は、その背後に、地球、自然、魂の解釈のための比喩的象徴主義の複雑なネットワークがあると言われています。


■ 涼しき谷間に(In einem kühlen Grunde) フリードリヒ・グリュック(Friedrich Glück)



歌っているのは、2012年にプロのオペラ歌手4人で結成された男性ボーカル カルテット “カントソノール”( cantoSonor  http://www.cantosonor.eu/  )です。

不実の愛に苦悩する青年の嘆きを、やわらかなハーモニーに包んで慰めるかのように歌います。



♬音楽で癒されよう

知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ






第54回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

武満徹(たけみつとおる 1930-1996)と言えば、日本を代表する現代音楽作曲家です。
代表作は「ノヴェンバー・ステップス 」( 1967年)、ニューヨークフィルで初演され、彼は国際的な名声を得ることになりました。

この作品は、文部科学省の学習指導要領で、中学の「鑑賞共通教材」に指定されていましたので、学校の授業で無理やり聴かされた方も多いと思います。

どんな感想を持たれたか知りませんが、武満徹が好きになった人はいるのでしょうか?
日本の伝統楽器 “尺八” や “琵琶” を用いたことは意義がありますが、それなら、宮城道雄の「春の海」(尺八と琴)を聴いた方がよほど分かり易く旋律もきれいです。

今回は分かり易いと言う意味で、武満徹が音楽を担当した 
テレビドラマ主題曲「波の盆」を選びました。この曲を聴けば、きっと武満が好きになると思います。音楽は本来そうあるべきだと思います。

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波の盆 あらすじ(Wikipediaより)

1983年夏、ハワイ・マウイ島。長年連れ添った妻に先立たれた日系一世の老人・山波公作は、仕事を引退して毎日追憶に耽る日々を過ごしていた。そんなある日、遠い昔に勘当した四男・作太郎の娘・美沙が、亡くなった妻に宛てた手紙を携えて日本からやってきた。孫が訪ねてくれた嬉しさの反面、祖国を裏切って米軍に協力した作太郎へのわだかまりがある公作は、美沙に対して心を開くことができない。そんな公作に、思い出の中の妻・ミサが優しく語りかけてくる。


■ 「波の盆」  武満徹(Toru Takemitsu)

武満は、静かな海の向こうにある「彼岸の世界」を見ている・・・

私事ながら、この曲を聴くとほぼ30年前、サイトウ・キネン・フェスティバル(松本)のロビーで偶然お見掛けした武満さんを思い出します。周りの喧騒の中、彼は遠くを眺め一人ぽつんと佇んでいらっしゃいました。そして、その日から4年後65歳で「彼岸の世界」へ旅立たれたのです。

ドラマのサウンドトラックを担当した指揮者の岩城宏之氏も、後に札幌交響楽団と録音を行った指揮者の尾高忠明氏も、指揮をしながらその美しさに涙をこらえたという逸話が残っています。






第55回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


今回は、フランスの作曲家 ミシェル・コロンビエ(1939 - 2004)の作品を選びました。日本ではあまり知られていません。

彼は、映画音楽、ジャズ、フュージョンなどの ポピュラー音楽を手掛ける傍ら、プロデューサー、作曲家、編曲家、指揮者、ピアニスト、キーボーディストとして多彩な活躍をしていました。

コロンビエの音楽性から感じ取れる「クラシカル」な雰囲気は多方面で認められ、バレエ界の巨匠 モーリス・ベジャールの作品「現在のためのミサ (Messe Pour Le Temps Present)」にも関わるなど、フランスのアーティストとの制作活動に生涯を捧げました。

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今回の演奏は、クリスティーナ・レイコ・クーパーさん、アメリカのチェリストです。
父親はピアニストでパシフィック大学の教授、母親はヴァイオリニストの池内睦子(American Symphonyのコンサートマスター) です。

クーパーさんは、日本の作曲家 池内友次郎の孫娘であり、俳人高浜虚子の曾孫娘です。

彼女は、ウォルトディズニーコンサートホールなどの会場でソロアーティストと演奏するなど世界の有名ホールで活躍し、トロント交響楽団、上海交響楽団、読売日本交響楽団などのオーケストラと共演しました。

その深い精神性をお楽しみ下さい。

■ エマニュエル(Emanuel)/ミシェル・コロンビエ(Michel Colombier)



作曲者のコロンビエは、最愛の息子を5歳で亡くしました(病死)。
この曲は息子を偲んで書かれました。

題名の エマニュエル(Emanuel)は、その子の名前です。





第56回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

須賀田礒太郎(すがた いそたろう、明治40年生まれ)は、数奇な運命をたどった日本の作曲家です。

祖父が生糸の取引などで莫大な財をなし、裕福な家庭で何不自由なく育った須賀田は幼少から音楽と美術に興味を持ちました。

しかし昭和2年、須賀田は当時不治の病と言われた 肺結核に掛かります。
病状安定後は、 山田耕筰、信時潔両氏にドイツ・ロマン派の作曲理論の指導を仰ぐなど、日本の音楽界の重鎮に師事しました。

太平洋戦争開戦の昭和16年、須賀田はJOAK(NHKのコールサイン)から戦死者葬送のための音楽の作曲を委嘱され、「葬送曲・追想」が作曲されましたが、この曲は後に、山本五十六の国葬の際演奏されました。

30曲に及ぶ管弦楽、室内楽、歌曲、ピアノ曲などの作品を書きましたが、病状の悪化とともに死期が近いことを悟った 須賀田は、その全ての作品をトランクに収め、45年の生涯を閉じました。

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須賀田の死後、彼の名は音楽界から完全に忘れ去られていましたが、

1999年5月、当時須賀田が住んでいた住居の 古びた蔵から大きなトランクが発見され、トランクを開けた瞬間、今まで闇の中で熟成されてきた須賀田礒太郎という名の作曲家の思いのたけが、50年の時を超えて大空に舞いあがったのです。(Wikipediaより)


■  東洋の舞姫/須賀田礒太郎(1907 - 1952)

私がこの曲を初めてNaxoso(ナクソス)のCD(2007年1月 発売)で聴いた時は、
その躍動感に満ちた音楽と
オリエンタルな旋律が耳から離れませんでした。

日本の名曲にもかかわらず、このYouTube動画がまだ120回しか再生されていないことはとても残念です。




♬音楽で癒されよう

知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ

 

参考資料 Wikipediaより
画像   ACワークス(株)






第57回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


今回は、芥川 也寸志(あくたがわ やすし、1925 - 1989)にスポットを当てることにしました。

文豪 芥川龍之介を父に持ち、長兄は俳優 芥川比呂志、次兄は 芥川多加志。結婚を3度しましたが、2度目の妻は女優の草笛光子さんです。

父 龍之介は1927年に自死しましたが、也寸志は父の遺品であるSPレコードを愛聴し、とりわけ ロシアの作曲家ストラヴィンスキーに傾倒したと言われています。

代表作は「交響三章」「交響管弦楽のための音楽」「弦楽のための三楽章」などですが、映画音楽・放送音楽の分野でも「八甲田山」「八つ墓村(野村芳太郎監督)」「赤穂浪士のテーマ」などが知られています。

尚、第1回日本アカデミー賞(1978)で「八甲田山」と「八つ墓村」が最優秀音楽賞と優秀音楽賞を受賞しています。

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数々の功績で日本の音楽界をけん引した芥川も、1989年1月31日入院先にて帰らぬ人となりました(享年63歳)。

最後の言葉は「ブラームスの1番を聴かせてくれないか…あの曲の最後の音はどうなったかなあ」だったそうです。
芥川らしいカッコ良い言葉ですが、ブラ1の最後の音は渾身の一撃です。

ブラームス交響曲第1番 最終楽章コーダ 2分30秒 youtube


さて、今回ご紹介する芥川の1曲は、映画「八墓村」の音楽です。

素晴らしい日本の映像と共にお聴き下さい。

■ 八つ墓村より/芥川也寸志



芥川の表現した 美しい自然、移り行く季節の中にある「日本人の心」。

もう忘れかけていた「日本人の心」、郷愁が胸にこみ上げます。

そして、今日の日本を嘆くのは私だけでしょうか。


写真 岡山ライフマガジン ノプラ
解説 Wikipediaより一部転記






第58回  知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


ロシアの作曲家 スヴィリードフ (Sviridov 1915 - 1998) の2度目の登場です。

※ 最初の記事 「知られざる名曲 第4回 ロマンス/スヴィリードフ」


今回取り上げる名曲は、ロシア近代文学の創始者 プーシキン の恋愛小説「吹雪」を基にした映画より「ワルツ」です。

不朽の名作「戦争と平和」(原作トルストイ 1869)の ワンシーンの映像を見ながらご鑑賞下さい。

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レオニード・パステルナーク 戦争と平和へのイラスト(1893)


尚、動画の「戦争と平和」は、2016年に英国BBCが制作したテレビドラマです。

ナターシャ役は、ディズニー映画「シンデレラ」で主演のリリー・ジェームズさん。


■  “ワルツ”(吹雪より)/ スヴィリードフ



このワルツは現代曲とはいえ、ドイツロマン派の作品のようです。流れるような旋律美が心地よい名曲です。

スヴィリードフ は、「冬がロシアが持つ自然と風土を最も鮮やかに表現する季節である」と述べて、何よりも冬を愛していました。

美しい極北の冬を音楽的に描いたのです。この「ワルツ」にも淡く切ない陽ざしが感じられますが、明るさはありません。



※お断り
実際の映画で、スヴィリードフの「ワルツ」が使われているわけではありません。

参考資料 Wikipediaより






第59回  知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


「荒城の月」の作曲者として誰もが知っている 瀧廉太郎。

日本を代表する西洋音楽黎明期の作曲家ですが、明治36年(1903)6月29日、23歳の短い生涯を閉じました。
もうすぐ命日の 瀧廉太郎が今回の主役です。

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Photo and Essay
http://capucino2.seesaa.net/article/387352226.html


今回選んだ曲はピアノ曲「憾(うらみ)」です。

この曲は、肺結核が悪化して死期が近いことを悟った 廉太郎の最後の作品と言われ、亡くなる4か月前に作曲されました。

まさに 作曲家 瀧廉太郎の「白鳥の歌」(※)です。

(※)「白鳥の歌」とは、ヨーロッパの伝承で、白鳥は死ぬ時に一番美しい声で鳴くと言われている。 「白鳥の歌」とはつまり、人が亡くなる直前に人生で最高の作品を残すことを指す。 



廉太郎の生い立ちや曲については、動画にテロップが流れますのでご参照下さい。


■   「憾(うらみ)」/ 滝 廉太郎(1879 - 1903)



「憾」とは、「遺憾に思う」の「憾」であり、「
残念に思う、物足りなく思う」という意です。(怨みとは違います)

全編に流れる悲愴感は、廉太郎の 計り知れない「無念さ」を表しています。真に迫る演奏です。






第60回  知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


米国の作曲家 サミュエル・バーバー(Samuel Barber、1910- 1981)の代表作「弦楽のためのアダージョ」は、ご存じの方も多いと思います。

この曲が有名になったのは、ジョン・F・ケネディの葬儀で使用されてからと言われていますが、バーバー自身は生前「葬式のために作った曲ではない」と不満を述べていました。

しかし、心に染み入る悲しくも重厚な弦楽合奏曲は、葬送や慰霊祭などの定番として使われるようになり、日本でも昭和天皇の崩御の際に、NHK交響楽団によって演奏されました。

また、アメリカ同時多発テロの慰霊祭、東日本大震災後の復興コンサート(2011年3月26日)でも演奏されました。(Wikipediaより一部転記)


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今回の「アニュス・デイ」(Agnus Dei、神の子羊)」は、この「弦楽のためのアダージョ」を 無伴奏(アカペラ)混声合唱曲に編曲したものです。

合唱版は演奏機会も少なく、「知られざる名曲」に加えさせていただきました。
肉声で聴くと、より一層心に沁みると思います。


■  アニュス・デイ(神の子羊) / サミュエル・バーバー



神の子羊、世の罪を除きたもう主よ、われらをあわれみ給え。
神の子羊、世の罪を除きたもう主よ、われらをあわれみ給え。
神の子羊、世の罪を除きたもう主よ、われらに平安を与え給え。

~未曾有のコロナ災厄に覆われた世界~

われらに平安を与え給え。



※神の子羊は、イエス・キリストのことを指す表現のひとつ






第61回  知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける


「四季」で有名な ヴィヴァルディ1678 - 1741) ですが、彼が活躍したバロック時代にはクラリネットはありませんでした。

したがって、クラリネット協奏曲というタイトルは正確ではありません。クラリネットを使って協奏曲風にアレンジした楽曲という意味です。

原曲は ヴィヴァルディの歌劇『館のオットーネ』です。この音源は世界初録音となります。

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当「知られざる名曲」シリーズは、YouTube動画を使わせていただいています。

聴覚 + 視覚 の相乗効果で、より豊かな音楽体験ができるからです。

今回はビジュアル的にも、クラリネットの魔術師 マーティン・フロスト(1970年 - 、スウェーデン)の「動」と「静」のハーモニーが見所です。


■  クラリネット協奏曲 No.1
(聖アンジェロ)Ⅲ/ヴィヴァルディ



目の覚めるような印象的な音楽で始まり、次第に高揚して流麗を極めます。

後半は、スローモーションのような踊り子の美しいフォルムに、一瞬時を忘れてしまいます。

わずか2分36秒の動画に、「動」と「静」のストーリーを感じていただけましたでしょうか。



画像 ACワークス(株)






第62回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


エンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone, 1928- 2020) と言えば、「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」(1960年代)などのマカロニウエスタンで、世界的に有名になったイタリアの映画音楽の大家です。彼なしにイタリア映画を語ることは出来ません。

その後も「ミッション」「ニュー・シネマ・パラダイス」「海の上のピアニスト」など多くの映画音楽を手がけ、アカデミー賞にも輝きました。

モリコーネの父親は、彼に楽譜を読んだり、いくつかの楽器を演奏したりすることを教えました。彼は6歳のときに最初の作品を書き、12歳で音楽院に入り、作曲、合唱音楽、トランペットを学びました。(1954年 サンタ・チェチーリア音楽院 卒)

彼はただの優れた映画音楽家ではありません。彼は優れた作曲家です。
ジュゼッペトルナトーレ(イタリアの映画監督)

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クラシック曲(バロック~現代)、映画音楽、イージーリスニング、またはヒーリングミュージックの間には大きな壁はありません。

当サイトの考えでは、クラシック的な確かな手法で書かれた作品であれば、「知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける」としてご紹介して参ります。

実際に、クラシック古典曲の中にも「革新的な曲」はありますし、逆に映画音楽や近現代のクラシック曲にも「古典的な曲」は多く存在します。

要は、旋律が美しい曲、心に響く曲、印象的で忘れられない曲が、「名曲」の基準です。さらにビジュアルも加味して選曲しています。

その観点から今回の名曲を選びました。


■  The Lady Caliph”La Califfa” ラ・カリファ)/エンニオ・モリコーネ



このイタリア映画(1971年制作)は、何故か日本未公開です。テーマ曲は、サラ・ブライトマンもイタリア語で「LaCaliffa」として歌っているようですが、日本ではあまり知られていません。まさに「知られざる名曲」です。

演奏は、ローマシンフォニエッタ(Roma Sinfonietta)、チェロ独奏は世界的なチェリスト ヨーヨー・マ(Yo-Yo Ma)です。

脳にメモリーされた過去の想い出がスクリーン(脳裏)に映され、その時の感情が蘇り、そして傷口が癒されていく・・・なんの副反応も無い「音楽」と言う秘薬の効用です。






第63回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


今回は、日本における西洋音楽の草分け的作曲家 橋本國彦(はしもと くにひこ、1904 - 1949)に焦点を当ててみたいと思います。

早くから音楽の才能に芽生えた橋本は、大正12年に東京音楽学校(現:東京芸術大学)に入学。ヴァイオリン、指揮法、作曲を学び、ウィーンに留学します。

帰国後は、作曲家・編曲家として活躍。教師としても優れており、1933年(昭和8年)母校の教授に就任。門下には、矢代秋雄を筆頭に芥川也寸志、團伊玖磨、清水脩、大中恩、高橋悠治、畑中良輔、黛敏郎、指揮者の朝比奈隆ら錚々たる音楽家がいます。

特筆すべきは、日本ビクターの専属アーティストとして、1943年、日本人として初めてベートーヴェンの第九(第四楽章のみ)を指揮して商業録音したことです。

↓ 太平洋戦争下の録音です。よくこの時代に録音できたと思います。訳詞(日本語)は大変興味あるものです。

日本人初の第九レコード《歓喜の頌》
https://www.youtube.com/watch?v=Fs4xVjzpE6k

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さて今回の曲は、花柳寿美(初代花柳寿美 岐阜県出身)の委嘱で 日本舞踊家のために橋本が作曲したバレエ音楽です。

台本は羽衣伝説に基づくもので、海岸で漁夫が天女の羽衣を発見したあと、それを取り戻そうとする天女による踊り、羽衣を受け取った天女の昇天を描いています。「漁夫たちの踊り」は全7曲中3曲目。


■   バレエ音楽「天女と漁夫」より「漁夫たちの踊り」/ 橋本國彦(1932年作曲)



橋本の瑞々しい感性が紡ぐ伝統的な「日本の風土」と「日本人の心情」。

軍事色が増す世相の中で作曲されましたが、作品には連綿とした日本情緒が余すところなく表現されています。

戦後まもなく(1949年)彼は44歳で帰天しました。






第64回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

本日の主役はイタリアの作曲家 ピエトロ・モルラッキ( Pietro Morlacchi )です。

しかし、モルラッキについては生没年も含め詳しい経歴は分かっていません。

ただ、フルートの名手として 名門ミラノ・スカラ座管弦楽団の首席フルート奏者を務める傍ら、フルート曲を多く作曲したということです。


今回ご紹介するフルート曲「スイスの羊飼い」は、彼がヴェルディ音楽院(ミラノ)に1843年から1850年まで在籍して、ラッボーニ教授(Giuseppe Rabboni=イタリア・ロマン派フルート音楽の基礎を築いた ) に学んでいた頃に作曲されました。

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この曲は、アルプスに抱かれたスイスの高原に吹く風のような牧歌的な主題が魅力です。

そして
華やかな変奏が技巧的に展開されます。


演奏は、
サー・ジェームズ・ゴールウェイ(Sir James Galway,OBE,1939- )。
アイルランド系イギリス人のフルート奏者・指揮者です


「黄金のフルートをもつ男」(Man with the Golden Flute)の通称で知られますが、ソリストとして数々の名声を獲得し、現在最高のフルート奏者の一人です

エリザベス2世より1979年に大英帝国勲章を、2001年にはナイトの称号を授かっています。(Wikipediaより)


■   スイスの羊飼い(Il Pastore Svizzero)ピエトロ・モルラッキ 




フルートの名手ならではの歌心と技巧の妙。フルートの温かい音色に癒されます。

名曲+名演奏の極みです。


写真 ACワークス(株)






第65回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
 

トゥオネラの白鳥(シベリウス)は、「知られざる名曲」ではありません。

多くの人は、この曲の存在を知っています。題名も聞いたたことがあるでしょう。

しかし、意外と聴く機会が少ない曲でもあります。私も久しぶりに聴いて、その美しさにあらためて感動しました。

有名な曲にも、しばらく聴かないうちに記憶の隅に追いやられてしまった楽曲があるのです。
少なくとも私はそうでした。

自戒の意味も込めて、今回は敢えて「トゥオネラの白鳥」を、「知られざる名曲」として、スポットを当てることにしました。

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画像出典 https://www.youtube.com/watch?v=wkF501ctVDE

シベリウス( Jean Sibelius、1865 - 1957)は、後期ロマン派から近代にかけて活躍したフィンランドの作曲家、ヴァイオリニストです。

トゥオネラ川とは、冥界との境を流れる川で、音楽はその川に浮かぶ幻想的な白鳥の姿を描いています。

白鳥を題材にしたクラシック曲は多く、サン=サーンス「白鳥」や、チャイコフスキー「白鳥の湖」など、いづれも名曲の誉れ高い作品です。
この「トゥオネラの白鳥」は、神秘的な美しさが特長です。


■ トゥオネラの白鳥
(レンミンカイネン組曲より) / ジャン・シベリウス



8分ほどの曲ですが、この映像は最後の2分43秒(ハイライト)です。

ベルリン・​フィルハーモニー管弦楽団 ドミニク・ウォレンウェーバー (Dominik Wollenweber) の、情感豊かなイングリッシュ・ホルン(コール・アングレ)がとても印象的です。






第66回 知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける


”ブラジルのショパン”とも呼ばれる エルネスト・ジュリオ・ナザレー (Ernesto Júlio Nazareth , 1863 - 1934)。

今回は、ブラジルのピアニスト・作曲家 ナザレーの「コンフィデンシャス(打ち明け)」をご紹介します。

その曲想は “郷愁” に満ちていますが、ブラジルではこの分野の音楽を「サウダージ」と呼び、特に人気があります。
※サウダージ saudade は、ポルトガル語で、郷愁、憧憬、思慕、切なさ、哀愁などの意。

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ショパンを愛する母親からピアノの手ほどきを受け、類い稀な音楽的才能が認められたナザレーは、一生をリオ・デ・ジャネイロで過ごし、およそ300曲のピアノ小品を作曲しました。

ピアノ以外の音楽教育は学ばなかったため、残された作品はサロン小品と声楽曲ばかりであり、作曲技法も必ずしも洗練されていません。

しかしながら、民衆音楽の影響のもとに切り開いた独自の素朴な詩境は、のちにヴィラ=ロボスから、「ブラジルの魂」と称賛されました。


■ 非業の死
ナザレーは、1920年代に聴覚異常を来たし始め、最晩年まで悪化する一方だった。娘と妻の相次ぐ死によりトラウマが引き起こされ、心の病も重くなるばかりだった。1933年に精神病院に収容されたが、翌年に脱走して行方不明となり、懸命の捜索の結果、やがて森の中の滝で(滝壺の中とも滝のほとりとも伝えられる)、変死体となって発見された。検死結果によると溺死であったという。(Wikipediaより)

コンフィデンシャス (打ち明け Confidências)/ エルネスト・ナザレー



少し陰のあるイ短調のワルツですが、優しく語り掛けるようなメロディがとても魅力的な小品です。

素敵なピアノ演奏は、この曲が入ったCDが、2016年『レコード芸術』特選盤他に輝いた 下山静香さんによるものです。






第67回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


今回は初めて マーチ(行進曲)を取り上げます。

数あるマーチの中から、ウクライナ出身のソビエト連邦の作曲家で指揮者の イサーク・オシポヴィチ・ドゥナエフスキー(Isaak Osipovich Dunayevsky、1900 - 1955)の「コンサートマーチ」を選びました。


ドゥナエフスキーは多作で、Wikipediaによると、生涯に14のオペレッタ、3つのバレエ、3つのカンタータ、80の合唱曲、80の歌曲、88の劇音楽、42の映画音楽、43の軽音楽オーケストラのための作品、12のジャズオーケストラのための作品、52の管弦楽団のための作品、47のピアノ曲他があるといいます。

彼はソ連で最初にジャズを取り入れた作曲家の1人で、メロディアスで覚えやすい旋律を多用し成功を収めましたが、1955年 モスクワで心臓発作のため亡くなりました(享年55歳)。


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演奏は、作曲者イサーク・ドゥナエフスキー自身のものです。すなわち自作自演です。

※お断り
元々は、ミハイル・プレトニョフ(1957- )指揮・ロシア・ナショナル管弦楽団の演奏を張り付けておりましたが、リンク切れのため、ドゥナエフスキーの動画に替えました。テンポは速めですが快活な演奏です。

■  コンサート・マーチ(Concert March)/イサーク・ドゥナエフスキー(Isaak  Dunayevsky)

言うまでもなく、マーチは人が行進するための音楽です。
右、左、右、左、足の動きに合わせた 2拍子の軽快な音楽がマーチです。

古くは、オスマントルコの軍楽隊から、結婚行進曲、葬送行進曲、そして軍艦行進曲などの軍歌、スポーツショー行進曲、はたまた三百六十五歩のマーチから ミッキーマウスマーチやアンパンマンマーチまで、私たちに最も馴染みのある音楽です。

この「コンサートマーチ」は 、クラシックのコンサート用に書かれたもので、多彩な音楽的要素が含まれていますが、理屈抜きで楽しむのがマーチだと思います。






第68回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


今回は、髙田三郎先生(たかた さぶろう、1913年 大正2年 - 2000年 平成12年)の日本歌曲をご紹介します。

※髙田三郎先生とお呼びするのは、私が先生の代表作「水のいのち」や「心の四季」を合唱団で歌ったことがあるからです。(その時の指導者 恩田忠彦先生は、髙田三郎先生の音楽をこよなく愛し、二人は良く手紙や音源のやり取りをされていたことを覚えています)

声楽の好きな方ならご存じかも知れませんが、先生の作品の中でもとりわけ心を揺さぶられる名曲が 日本歌曲「くちなし」です。

歌詞は、高野喜久雄さん(たかの きくお、1927 - 2006)、日本の詩人ですが、著名な数学者でもあります。

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くちなし

荒れていた庭 片隅に
亡き父が植えたくちなし
年ごとに かおり高く
花はふえ
今年は十九の実がついた

くちなしの木に
くちなしの花が咲き
実がついた
ただ それだけのことなのに
ふるえる
ふるえるわたしのこころ

「ごらん くちなしの実を ごらん
熟しても 口を開かぬ くちなしの実だ」
とある日の 父のことば
父の祈り

くちなしの実よ
くちなしの実のように
待ちこがれつつ
ひたすらに こがれ生きよ
と父はいう
今も どこかで父はいう

高野喜久雄・詩

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■  歌曲「 くちなし」/ 髙田三郎 

動画 歌詞付き


ひたすらに こがれ生きよ

と父はいう
今も どこかで父はいう


■ ご参考 当ブログ 2014・6・16

一日遅れの父の日に


■ 男性の歌唱による「くちなし」

https://www.youtube.com/watch?v=YfIE8OIZOVM

 

写真 ACワークス(株)






第69回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

2004年韓国映画 「ブラザーフッド ~Epilogue~」を選びました。

作曲は、イ・ドンジュン( 이동준、1967- )、大韓民国の作曲家、音楽監督です。 主に、映画・ドラマ・ミュージカル、広告音楽など多方面で活発な音楽活動を展開しています。
尚、韓国出身の作曲家は、当「知られざる名曲」シリーズ2人目となります。

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この映画は、朝鮮戦争の勃発で韓国軍に強制徴兵された2人の兄弟の物語を描いたものです。

今回は、フルオーケストラのYouTube動画を見つけました。

演奏:指揮は叙勲 / 管弦楽 ソウルグランド・フィルハーモニー管弦楽団 
余談ですが、指揮者がどことなく日本の音楽家 黛敏郎に似ています。


■  映画「ブラザーフッド ~Epilogue~」 / イ・ドンジュン



ピアノがとても効果的に使われています。

イージーリスニングのような心地よい音楽です。

 

 

 


第70回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


作曲家 マーラーは、天国を見ています。それは、この「交響曲第5番 アダージェット 」を聴けば分かります。

実はもう一人、天国を見てきた作曲家がいます。

このシリーズ2回目の登場、ジョン・バリーです。
(※1回目の登場 第22回 映画「ある日どこかで」(Somewhere in Time) ジョン・バリー )

今回は、ジョン・バリーが音楽を担当したアメリカ映画「ダンス・ウィズ・ウルブズ」をご紹介します。


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「ダンス・ウィズ・ウルブズ」(Dances with Wolves)は、南北戦争時代のフロンティアを舞台に、スー族の女性と愛し合いインディアンと共に生きた元北軍中尉の、数奇な運命と大自然との交感を壮大なスケールで描いたアメリカ映画(1990年)です。

監督・主演・製作はケビン・コスナー。第63回アカデミー作品賞ならびに第48回ゴールデングローブ作品賞受賞作品です。


■  ダンス・ウィズ・ウルブズ/ ジョン・バリー



この音楽には天国的な美しさがあります。

現代人が一番求めている「心の平安」を感じる音楽です。






第71回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

今回は、現代のギリシャの作曲家 スタマティス・スパヌーダキス(Stamatis Spanoudakis 1948-  ) を選びました。日本では全く知られていない作曲家です。

彼はドイツのバイエルンにある州立音楽院でクラシックを学ぶ一方、ビザンチン音楽を研究しました。

ビザンチン音楽とは、ビザンチン帝国(395年~ 東ローマ帝国)に於いて発達した音楽のことで、主として僧院に伝わる聖歌を指します。
古典時代およびヘブライ音楽の芸術的・技術的産物の上に成立し、単旋律,全音階,自由リズムである点などグレゴリオ聖歌と多くの共通点があります。(Wikipedia参照)

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今回、演奏の舞台になったのは、アテネのアクロポリス南西麓にある屋外音楽堂「ヘロディス・アッティコス音楽堂」です。(上記写真)
何と1860年も前の音楽ホールです。日本では飛鳥時代より以前になりますので、弥生時代の頃でしょうか。

演奏は、作曲者自身の指揮による タマロ弦楽オーケストラ(Tamalo string orchestra)。しっとりとした演奏です。


■  海のアダージョ(Sea adagio)/スパヌーダキス(Spanoudakis)



音楽は打ち寄せる波に似ています。

波が砂浜を洗うように、音楽が私たちの心の汚れを洗い落としてくれるのです。






第72回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


もう20年くらい前に、ふと買ったCD「心の旅人」(ビクター)。

その15曲目「あなたに惹かれて」という曲が入っていました。
聴いてみると、そのあまりの美しさにすっかり魅了されました。その時の感動は今も覚えています。

「あなたに惹かれて」という曲に私自身が強く惹かれたのです。

曲を作ったのは アンドレ・ギャニオン
(André Gagnon)というカナダの作曲家でした。ご存じの方もあると思います。

あらためて
Wikipediaで調べてみると、

彼は19人兄弟の末っ子として生まれる。4歳の時に教会で聴いた音楽を、自宅のピアノで弾いたことをきっかけにピアノを始める。6歳ですでに作曲を始め、10歳でコンサートを開きデビューした。

そしてモントリオールにある音楽学校でピアノ、和声、作曲、音楽理論を学んだ後、クラシックを学ぶためパリへ留学する。

留学中にポピュラー音楽に出会ったことで強い衝撃を受け、クラシックとポピュラーの架け橋になる音楽活動を志す。1967年にモントリオール交響楽団で自ら企画したコンサートにピアニストとして参加、その地位を確立する。

まさにクラシックとポピュラーの架け橋になる 名曲をたくさん書きましたが、この曲は明らかにクラシック色が強い曲です。

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CD「心の旅人」ジャケット

アンドレ・ギャニオンは、昨年(2020年)暮れに84歳で亡くなりましたが、その音楽は今も世界中で愛されています。

この「知られざる名曲」でご紹介出来ることは幸せの一言に尽きます。

■   チェロとピアノのためのソナタ(あなたに惹かれて)/アンドレ・ギャニオン(1936-2020)



憂いを含んだ音楽です。

惹かれあうピアノとチェロ、しかし憂いが漂います。

人生と一緒ですね。





第73回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

今回は、日本の作曲家 横山菁児(よこやま せいじ、1935-2017)の2度目(1度目はココ )の登場になります。

映画「三国志」は、1992年から1994年に公開されたシナノ企画製作、東映配給の日本のアニメ映画三部作です。当時15億円の制作費と10年の歳月をかけて製作されました。

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三国志の舞台 武漢 https://m.chinatrip.jp/wuhan/service/opwh03/

「三国志」とは、中国の後漢末期から三国時代にかけて群雄割拠していた時代(180年頃 - 280年頃)の興亡史であり、魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく)の三国が争覇した、三国時代の歴史書でもあります。

■ アニメ映画「三国志・英雄たちの夜明け」/ 横山菁児

雄大な音楽です。滔々と流れる大河のような曲ですが、今回はピアノバージョンでお聴き下さい。

どこか懐かしく、悲しく、宿命の中に生きる人々に思いを寄せるような温かさも感じます。

しかし何と言っても、メロディラインが美しく耳から離れません。






第74回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

長引くコロナが世界中に暗い影を落としています。
気分は沈みがちですが、この曲を聴くと慰められると思います。辛いのは自分一人ではありません。

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今回は、ソビエト連邦時代の作曲家 ショスタコーヴィチ(Shostakovich, 1906 - 1975)の「2本のチェロのためのプレリュード(前奏曲)」をお聴き下さい。ショスタコーヴィチは2度目の登場です。※1度目はここ

コロナ禍でも芸術の灯を絶やすことなく、自宅から音楽とバレエを配信している楽しい YouTube動画を見つけました。


■  2本のチェロのためのプレリュード/ショスタコーヴィチ



「なに? あんた!? なんでここにいるのよ。」  「まっ、いいか。」






第75回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

クラシックの重要なジャンルに歌曲があります。

ドイツ歌曲(ドイツリート)、イタリア歌曲、フランス歌曲。
シューベルトの「冬の旅」など、西洋の歌曲には日本で親しまれている名曲がたくさんあります。

しかし、日本歌曲にスポットが当たることは少なく、隠れた名曲が多く存在します。特に日本の歌曲は心を揺さぶるような「詩」が素晴らしいと思います。

今回は、前回の 「くちなし(髙田三郎)」 に続き、「鴎(かもめ)」を取り上げます(木下牧子 曲/三好達治 詩)。

先ずはお聴き下さい。テノール独唱は、シルバー世代に人気のコーラスグループ「フォレスタ」の中心メンバーの一人 榛葉樹人(しんば しげと)さんです。誠実な歌唱が魅力です。


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画像 ACワークス(株)

■ 「鴎(かもめ)」/木下牧子(1956 - )曲、三好達治 (1900-1964)


「鴎(かもめ)」 

ついに自由は彼らのものだ
彼ら空で恋をして
雲を彼らの臥所とする
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ
太陽を東の壁にかけ
海が夜明けの食堂だ
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ
太陽を西の窓にかけ
海が日暮れの舞踏室だ
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ
彼ら自身が彼らの故郷
彼ら自身が彼らの墳墓
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ
一つの星をすみかとし
一つの言葉でことたりる
ついに自由は彼らのものだ

ついに自由は彼らのものだ
朝やけを朝の歌とし
夕やけを夕べの歌とす
ついに自由は彼らのものだ


三好達治 著 詩集「砂の砦」より



戦後生まれなのに、夏になると終戦記念日を思い出します。

暗い悲しい太平洋戦争末期、兵力不足からついに学生まで徴兵され、戦地に赴きました(学徒出陣)。

詩人の三好達治は、終戦後の昭和21年、戦死した学生たちをカモメにたとえ、彼らの魂が解放され自由に大空を飛び回っている様子を表し、深い鎮魂の意味を込めてこの詩を作ったと言われています。

作曲の木下牧子も何度も繰り返される「ついに自由は彼らのものだ」のフレーズに、強い祈りを感じると述べています。

しかし、失われた尊い命は帰ってきません。

靖国で英霊として祀られても、
カモメになって自由を得たと言われても、空しく聞こえるだけで悲しみは増すばかりです。

愛する者を失った悲しみは到底癒されるものではありません。戦争は大きな過ちです。

この歌曲は不朽の名作と言えますが、詩を深く味わうほど、私は複雑な気持ちになるのです。

 

※ご参考①
当ブログ記事  鴎(かもめ)

※ご参考②
当ブログ記事  小雪に思う「海に出て木枯らし帰るところなし」山口誓子






第76回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


ヴァイオリンの名曲と言えば、「タイスの瞑想曲」(マスネ(仏)曲1894年初演)がとても有名です。

※ 当サイトが世界一素晴らしい演奏だと思う タイスの瞑想曲 YouTubeです。ご参考に。


■ 実に120年ぶりのヴァイオリンの名曲

その「タイスの瞑想曲」に匹敵する名曲が今回ご紹介する「Sometimes When It Rains」( Secret Garden、2005年アルバム)です。

タイスの瞑想曲から120年経った現代に、ヴァイオリンの名曲「Sometimes When It Rains」が誕生したのです。

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この曲は、すでにご存じの方もあると思いますが、私は数年前に、あるヨガスタジオで(瞑想タイムに)聴いて、すっかりファンになりました。

作ったのは、Secret Garden(シークレット・ガーデン)という二人組の音楽家です。

作曲担当は、ノルウェー出身のラルフ・ラヴランドさん、ヴァイオリン演奏は、アイルランド出身のフィンヌーラ・シェリーさん。

二人は、前衛的な現代音楽ではなく、懐古的な新古典派音楽の作風で、癒しを求める現代人に圧倒的な支持を得ました。


■  Sometimes When It Rains / Secret Garden



「Sometimes When It Rains」、 タイトルからすると雨にちなんだ曲のようですが、音楽には光があふれています。


ライブ演奏は
https://www.youtube.com/watch?v=zuvJITliywA

当ブログ関連記事
雨にちなんだ心の名曲ベスト10






第77回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

ダーヴィト・ポッパー(David Popper、1843 - 1913)は、オーストリア=ハンガリー二重帝国時代(オーストリア帝国とハンガリー王国からなる帝国・期間1867-1918)のチェロ奏者・作曲家。ユダヤ系チェコ人です。

プラハで音楽教師の家庭に生まれ、プラハ音楽院で学び、20歳の頃にはヨーロッパ各地で演奏をして注目を集めました。
やがてウィーン宮廷歌劇場の首席チェリストに就任します。

そのうち毎日ピットで演奏するのに嫌気がさしたのか、退団してソリストとなり演奏旅行をします。ブラームスのピアノトリオ第1番の改訂版初演では、あのブラームスと共演しています。

ポッパーは偉大なチェロ奏者、作曲家として活躍しましたが、現在演奏されるのは、この「演奏会用ポロネーズ」などの、サロン的な小品に限られています。

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プラハ音楽院 https://prazskakonzervator.cz/budovy-a-prostory/


演奏は、弦楽アンサンブル “LGT Young Soloists(LGT ヤングソリスト)。

14〜23歳の才能あふれる若いソリストで構成され、15か国以上のミュージシャンが集まっています。ソリストの Vilém Vlček さんはじめ若々しいエネルギーを感じます。

■  演奏会用ポロネーズ・Op.14 / ポッパー



拍子のリズムを踏み鳴らして踊るポロネーズは、 ポーランドで生まれた民族舞曲です。

ポッパーの親しみ易い旋律と歯切れの良い音楽が、気分を爽快にしてくれるでしょう。

軽快でシャープな演奏ですが、途中ほのぼのとした情感が漂います。






第78回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

テレビで見た「東京2020」の開会式の音楽。
入場行進に、ドラゴンクエストなどのゲーム音楽が使われたり、クライマックスの聖火入場シーンに、ラヴェルのボレロ が使われていて、大いに失望しました! 曲が悪いと言っているわけではありません。

これだけの大イベントに既成の曲ばかり使う見識のなさに、「ガッカリ」して同時に日本人として「恥ずかしく」思った次第です。しかも、ボレロは日本の曲ではありません。
もし既成曲なら、日本にも世界に通用する曲はたくさんありますが、本来なら、この「東京2020オリンピック」のために新しい曲を作るべきでした。何年も準備して「これだけか!」と思うと、本当に残念です。


さて気を取り直して、今回の曲は世界的なミュージカルの作曲家 アンドリュー・ロイド・ウェバー (Andrew Lloyd Webber, 1948 -  )の「Pie Jesu(ピエ・イエズ)」です。

ロイド・ウェバーは、ミュージカル「キャッツ」や「オペラ座の怪人」で有名ですが、9歳で作曲を始めるなど音楽の才能に目覚め、やがてロンドンの王立音楽大学に進みクラシックを勉強しました。パガニーニの変奏曲や、レクイエムも作曲しています。

The Phantom of the Opera

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ロイド・ウェバーのお父さんは、ウエストミンスター寺院のオルガニストで宗教音楽の作曲家でしたが、1982年に亡くなりました。
その追悼のためにロイド・ウェーバーが書いた「レクイエム」の一曲が「Pie Jesu(ピエ・イエズ)」です。

Pie Jesu, pie Jesu, pie Jesu, pie Jesu
慈悲深いイエス
Qui tollis peccata mundi
世界の罪を取り除く主よ
Dona eis requiem, dona eis requiem
彼らに休息を与えたまえ

■  Pie Jesu(ピエ・イエズ)/ アンドリュー・ロイド・ウェバー



清らかな歌唱は、ドイツ出身のスロバキア人でソプラノ歌手の パトリツィア・ヤネチコヴァ(1998年生まれ)さん、今注目の美人オペラ歌手です。天は二物を与えたのです。







第79回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


さりげなく現れ、私たちに微笑む音楽
一編の詩のように私たちに何かを残してくれた音楽・・・
私は、去っていく音楽に酔いしれた

その余韻はあまりに美しい

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北欧ノルウェーの19世紀の作曲家、ヨハン・ハルヴォルセン(Johan Halvorsen, 1864 - 1935)が今回の主役です。

彼は、ヘンデルのハープシコード組曲 第7番 HWV432の第6曲「パッサカリア」の変奏曲として、この曲を世に出しましたが、オリジナル色が強く、ハルヴォルセンの「パッサカリア」と言っても良いほどです。

※パッサカリア とは、17世紀のスペイン、イタリアで流行した舞曲。バロック時代に純器楽曲としてしだいに様式化された。遅い三拍子で、4~8小節の主題(多くの場合短調)が全曲を通じて反復される変奏曲形式をとる。(コトバンクより)


■ 第79回 パッサカリア(Passacaglia)/ ヘンデル ・ ハルヴォルセン

ピアノの音は、桜の花びらのようです。
咲いたらすぐ散ってしまう桜の花びらのようです

そうピアノの音はすぐ消えてしまいます。
はかないものは美しい。

この曲はそんな曲に聴こえるのです。






第80回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

ニーノ・ロータ、エンニオ・モリコーネ亡き後、イタリアを代表する作曲家として注目を集める人物と言えば、 ニコラ・ピオヴァーニ (Nicola Piovani  1946-  ローマ生まれ)です。

彼は、ミラノのヴェルディ音楽院を卒業後、ギリシャの作曲家マノス・ハジキダス(アカデミー主題歌賞“日曜はダメよ”を作った人です)に師事、室内楽などクラシック作品を作りながら、映画音楽・ライトミュージックの分野で活躍しています。

今回は、ニコラ・ピオヴァーニ が作曲した映画「Life is beautiful」(人生は美しい 1999年イタリア映画)の音楽を選びました。

この映画は、第二次世界大戦下のユダヤ人迫害を、ユダヤ系イタリア人の親子の視点から描いたもので、第51回カンヌ国際映画祭で審査員グランプリ、第71回米国アカデミー賞で主演男優賞、作曲賞、外国語映画賞を受賞しています。

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今回の演奏は、スペインの一流アーティストで構成された人道支援団体「 “Voces para la Paz”  平和の声」が、マドリード市内の公園で行った即興のコンサートを収録した楽しいYouTube動画です。

■ ライフ・イズ・ビューティフル/ ニコラ・ピオヴァーニ



親しみ易く大衆的な音楽です。

かつて音楽は貴族などの特権階級のためにありました。
特にクラシックは格調の高い音楽が多く、それはそれで魅力的で大切な音楽文化です。
20世紀に入り文化は多様化し、クラシック音楽は大衆に近づきました。これも素晴らしいことです。

要は、私たちもクラシック音楽に近づき、作曲家も私たちに近づくことでクラシック音楽の世界は拡がります。
もし「知られざる名曲シリーズ」が、その一助になれば幸いです。






第81回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

この曲は、題名は知らなくても何処かで聴いたことがあるような懐かしい曲です。

作曲したのは、セザール・フランク(César Franck、1822 - 1890)、ベルギー出身ですが、フランスで活躍した作曲家・オルガニスト です。

フランクは、無欲で善良、つまりトルストイの描くところの聖者のような人物だったとされ、つましい生活を送りました。

フランクの無私の人間性について、フランク伝(ダンディ著)によれば、「彼の作曲の動機は、栄光でもなく金でもなく、安易な成功でもなかった。彼の目的は、芸術を手がかりに自らの思考と感情を表現しようとすることだった。そして、何よりも真の意味で彼は謙虚な人だった」、と表されています。

フランクの生涯は、オルガニストとして評価はされたものの、決して脚光を浴びることはありませんでした。

しかし、フランクの死後、彼の名声は急速に高まり始め、多くの作品が絶賛されるようになりました。
そして1922年、フランク生誕100周年の記念コンサートにはエリザベート王妃が臨席し、自国が生んだ「フランス近代音楽の父」に敬意を表したと言われています。

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Panis Angelicus

Panis angelicus
fit panis hominum;
Dat panis coelicus
figuris terminum:
O res mirabilis!
Manducat Dominum
Pauper, servus et humilis.

天使の糧(パン)は人々の糧となり
天上のパンは形あるものとなった
何と驚くべきことだ!
憐れな者、僕(しもべ)、卑しき者たちに
天は自らを糧として与えられた

■  天使の糧(天使のパン)Panis Angelicus /セザール・フランク



心洗われる讃美歌、歌っているのは、シセル(Sissel、1969年6月24日 - )さん。ノルウェー出身の国民的歌手で来日経験もあります。
演奏は、タバナクル合唱団と同オーケストラ。とても豪華なステージです。



※参考資料 Wikipedia、「セザール・フランクの生涯と作品」 Tomoyuki Sawado (Sonetto Classics)及び 世界の民謡・童謡サイト

※写真   ACワークス(株)






第82回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

今回は、英国のバロック時代の作曲家 ヘンリー・パーセル(Henry Purcell、1659 - 1695)を取り上げます。

彼は若くして音楽の才能に恵まれ、18歳で王室の専属作曲家(兼指揮者)に就任するほか、ウェストミンスター寺院のオルガニストに任命され、充実した人生でしたが、36歳で亡くなっています(死因不明)。

生涯に残した曲はおよそ800曲、今回ご紹介する オペラ「ディドとエネアス(全3幕)」(Dido and Aeneas,Z.626)は、演奏時間1時間ほどの短いオペラですが、バロック期のオペラの最高傑作として評価の高い作品です。 

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パーセルが眠っているウエストミンスター寺院 ACワークス(株)

オペラ「ディドとエネアス」は、カルタゴの女王ディドと、トロイの王子エネアスの悲恋の物語です。

愛を誓った ディドとエネアスでしたが、魔女の策略により引き裂かれてしまう二人。
エネアスに裏切られたと嘆くディドは、「Remember me(私のことだけは忘れないで)」と、深い失意のうちに自らの命を絶ちます。

このアリアを、音の魔術師と呼ばれた レオポルド・ストコフスキー( 1882-1977)が、オーケストラ曲に編曲しました。どうぞお聴き下さい。
尚、動画中にぼんやりと現れるのは、トロイの王子エネアスです。


■   ディドの嘆き/パーセル(ストコフスキー篇)



この上なく悲しい曲ですが、この上なく「美しい」曲です。

人は何故、悲しい曲を「美しい」と思うのでしょうか。
以前、「はかないものは美しい。」と言いましたが、「悲しい曲も美しい」のです。

誰でも、辛い思い出が多ければ多いほど、心のセンサーは感傷的になりますが、一方で自分を慰める思考が芽生えます。
その思考が癒しとなり、かえって心の平安を導き出すのではないでしょうか。

悲しみは辛いことですが、思いっ切り感傷に浸ることで、いつしか癒され、浄化されていくと思います。
そのことが本能的に分かっているからこそ、人は「悲しい曲を美しい」と感じるのだろうと思います。






第83回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


クラシックファンであっても、室内楽を好んで聴く人は少数派ではないかと思います。特に 弦楽四重奏曲は、難しいと言うイメージが先行します。


※例えば、7楽章まである ベートーヴェンの弦楽四重奏第14番などは、演奏時間も長く(およそ40分)、どうしても敬遠されがちです。

今回は、敢えて 弦楽四重奏曲にスポットを当て、私たちの食べず嫌いを無くす「きっかけ」にしたいと考えました。この曲を聴いたら、室内楽の魅力、とりわけ 弦楽四重奏の良さを分かっていただけると思います。

その曲は、
プッチーニ (Giacomo  Puccini、1858 - 1924)の作った 弦楽四重奏曲「菊の花(Crisantemi)」です。

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プッチーニは、「トスカ」や「蝶々夫人」などのオペラが有名なイタリアの作曲家ですが、こんな美しい室内楽も残していました。

この小品は、当時プッチーニの友人でパトロンでもあった サヴォイ公国の アマデオ1世(元スペイン国王 44歳で急逝)を偲んで書かれたものです。

嬰ハ短調の哀切極まる音楽ですが、気品に満ちた美しい曲です。

演奏は、数々の国際コンクールで活躍している エンソ弦楽四重奏団(
Enso String Quartet ニューヨーク)です。


■ 弦楽四重奏曲「菊の花嬰ハ短調 / ジャコモ・プッチーニ



ところで、菊(キク)は天皇家の紋章であり、日本国のパスポートの表紙にも描かれているなど、日本の国章とも言えますが、もともとは外来種(中国)で、日本に伝来したのは平安時代だそうです。

ヨーロッパで広まり出したのは、幕末の頃、日本からイギリスに持ち込まれたのが始まりで、ちょうどプッチーニの時代と重なります。

菊は故人を偲ぶ花とされ、今では日本だけでなく、中国や韓国、フランス、ポーランドなど世界各国で白い菊が、献花や墓参の際に用いられるようになりました。


 

 


第84回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

2014年2月5日の記事音楽界に衝撃走る 佐村河内氏の告白」以来、当ブログは事件の真相に迫ろうと75本の記事をアップして、佐村河内氏と新垣氏を追いかけてきましたが、あれから7年以上過ぎ、あらためてCDで「交響曲1番(HIROSHIMA)」を聴くと、ちょうど8年前(2013年7月11日)コンサートホールで聴いた感動が蘇ってきました。

広島、長崎に原爆が投下されたこの時期、この曲を風化させないためにも、今回の「知られざる名曲」は、交響曲第1番 第3楽章(佐村河内守・新垣隆)に決めました。事件の騒動と作品自体の完成度は関係がないと考えます。

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画像 Japan Billboard https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/13734/2

佐村河内 守(さむらごうち まもる、1963 - )は、広島県出身の作曲家。
NHKスペシャル「魂の旋律 〜音を失った作曲家」で脚光を浴び、「交響曲第1番」のCD売上がオリコン週間総合チャートで2位を獲得、クラシックCDでは異例の販売枚数10万枚を記録しました。

その後、「交響曲第1番HIROSHIMA」全国ツアーが開始、全国30か所、各地の12のオーケストラが演奏することになりますが、ゴーストライター問題が発覚、2014年3月7日、佐村河内による謝罪の記者会見が行わました。(Wikipedia参照)


新垣 隆(にいがき たかし、1970 - )は、日本の作曲家、ピアニスト。
現在は、桐朋学園大学音楽学部講師、桐朋学園大学院大学音楽研究科特任教授、大阪音楽大学短期大学部客員教授、株式会社カンパニーイースト所属。

2014年2月5日、18年にわたり佐村河内守氏のゴーストライターを務めていたことを公表しましたが、代作の実態については「佐村河内氏は実質的にはプロデューサーだった。彼のアイデアを実現するため、私は協力をした」、「彼が依頼し、私が譜面を作って渡すという、そのやり取りだけの関係」、「彼と私の情熱が非常に共感し合えた時もあったと思う」などと語っています。(Wikipediaより)

二人は18年間 音楽的に信頼関係にあり、数々の作品を世に出したわけですが、その頂点とも言える作品が「交響曲第1番HIROSHIMA」でした。


一時間以上の大曲(全曲演奏 YouTube動画 )なので、今回は終楽章(第3楽章)終結部の「天昇コラール」と呼ばれる感動的な音楽をお聴き下さい。

■   交響曲第1番 第3楽章より「天昇コラール」/佐村河内守・新垣隆



拍手は鳴りやまず、聴衆の多くは涙しました。

全曲演奏 YouTube動画のフィナーレを、ボリュームを上げて是非ご覧ください。


※当ブログ参考記事 映画「FAKE」を観る






第85回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

広島、長崎、終戦、お盆、8月は「祈り」の月です。そう言えば日航ジャンボ機事故も8月でした。
「祈り」にちなんで、今回はミサ曲を聴くことにしました。

ミサ曲「おお、大いなる神秘よ(O Magnum Mysterium)」、イエス・キリスト誕生の秘跡を描いた聖歌です。

作曲はオラ・イェイロ(Ola Gjeilo、1978年 - )。
ノルウェー出身、アメリカ・マンハッタン在住の作曲家、ピアニストです。名前を初めて聞いた方も多いと思います。

彼は5歳のときにピアノと作曲を始め、早くから音楽の才能に恵まれました。やがてノルウェー国立音楽院にてクラシック音楽を学び、その後イギリスの王立音楽院、アメリカの名門ジュリアード音楽院へと移り作曲の修士号を得ました。
クラシック音楽が主であり、賛美歌など宗教的な題材をモチーフにした楽曲が多いのが特徴です。(一部Wikipediaより)

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「おお、大いなる神秘よ(O Magnum Mysterium)」

おお、大いなる神秘よ
驚くべき秘蹟よ
動物達は主が生まれたのを見た
飼葉桶(かいばおけ)に横たわっている主を

「馬小屋の扉を開けたら、幼子キリストの周りは柔かく優しい光に包まれている。

そうろくの炎が穏やかに揺らめく。その周りでマリアと動物達がこの秘蹟に賛嘆している。」


演奏は、スロヴェニアフィルハーモニック合唱団。
指揮 ジェリカ・ブコベック氏、 ヴァイオリン独奏は アナ・ドルジャン氏です。

■  おお、大いなる神秘よ/オラ・イェイロ



静寂の中でキリストの誕生の喜びと聖母マリアへの讃美が歌われます。

私達は歌詞と音楽でその情景を思い浮かべることが出来ます。
キリストやマリアの美しい魂を感じ取ることが出来ます。






第86回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

日本で2015年公開された ディズニー映画「シンデレラ」を 劇場でご覧になった方も多いと思います。

その劇中使用曲「愛のワルツ (La Valse de L'Amour)」は、スコットランド出身の作曲家 パトリック・ドイル(Patrick Doyle 1953-  )が作曲しました。

彼はクラシック音楽を王立音楽院(ロイヤルコンセルヴァトワール)で学び、のちに音楽院のフェロー(大学教員)になりますが、映画音楽やテレビ音楽、劇音楽など多方面でその才能を発揮させます。

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幸せあふれる ウェディングダンスの YouTube動画でお聴き下さい。

ロケーションが素晴らしく、振り付けが夢のように美しく、特上のワルツです。


■  愛のワルツ (La Valse de L'Amour) /パトリック・ドイル



音楽は優雅そのものです。






第87回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

どうしても忘れてはいけない日本の音楽家がいます。

その名は、貴志 康一(きし こういち、1909 - 1937)。吹田市出身の作曲家、指揮者、ヴァイオリニストです。

■ 名家出身、夭折の天才音楽家 貴志康一

祖父は貴志 彌右衛門氏、松花堂弁当の考案者で知られています。祖父はとても信心深く、京都妙心寺・徳雲院を修復して、貴志家の菩提寺としました。

父は東京帝国大学卒業後、教育の振興に熱心で、私立甲南高等女学校の創設に関わり名誉教授をつとめました。また茶道について研究した文化雑誌「徳雲」を発行して、知識人や文化人と親交を深めました。父は商人であり学者でもあり、芸術・文化への理解が深かったことが康一を音楽家に導いたといえます。

母は、琴やヴァイオリンを習う才女でしたが、実家である西尾家は吹田市にあり、代々天皇家に献上米を納めてきた豪農・庄屋の旧家です。
西尾家住宅は、文化的価値が高く評価され、現在は文化遺産として「吹田市文化創造交流館」となり、一般公開されています。

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甲南学園 甲南高等学校・中学校 サイトより

このような名家に生まれた貴志康一は、16歳でヴァイオリニストとしてデビュー、ジュネーヴ音楽院に入学しました。
19歳より、ベルリン高等音楽学校で学び、その後、1710年製のストラディヴァリウス(※)を購入しました。

当時の時価で6万円、現在の貨幣価値に換算すると1~2億円もするストラディヴァリウス。このヴァイオリンは、19世紀初めにはイギリスの国王ジョージ3世が所有していた貴重なものでした。

恵まれた環境で育った康一は、三度の留学を果たし、1932~35年のベルリン滞在時に作曲家・指揮者として活躍し、ドイツテレフンケン社に自作作品19曲を貴志自身の指揮でベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と録音しました。この頃、巨匠フルトヴェングラーとも親交があったことは良く知られています。

1935年に帰国した後は、新交響楽団(現NHK交響楽団)で、日本初の暗譜指揮による「第九」演奏を行うなど指揮者として活躍するものの、1年後に虫垂炎をこじらせ、1937年、腹膜炎の為、28歳の若さで亡くなりました。

没後も、湯川秀樹のノーベル物理学賞受賞の後の晩餐会の時に、貴志康一の楽曲「竹取物語」が使われたと言われています。

■  ヴァイオリン曲「月」/ 貴志康一
Koichi Kishi - Six Compositions for Violin and Piano - 1. "Tsuki" (Moon) (1933)

演奏は、小栗まち絵(ヴァイオリン)さん、戎洋子(ピアノ)さん。

この曲を聴くと、貴志康一がいかに才能豊かで並外れた音楽家であったかが分かると思います。
この機会に、是非↓もお聴き下さい。

月:貴志康一 マンドリン演奏(嶋直樹編)

小松/都響:貴志康一:交響曲「仏陀」


■ 資料参照
Wikipedia、大阪市都島区ホームページ






第88回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

メンデルスゾーン(Mendelssohn 1809 - 1847) 作曲の「無言歌」全48曲。
ドイツロマン派の中でも穏やかで優美な曲想が人気のピアノ小品集です。一番有名な曲は、春の歌  です。誰もが聴いたことがあるでしょう。

しかし全48曲を通して聴く機会は少なく、意外と知られていない曲も存在します。
今回は、その中から「ヴェネツィアの舟歌 op.30-6」を選んでみました。

48曲すべてに表題が付いていますが、実はメンデルスゾーン自身が付けた表題は5曲しかありません。
「ヴェネツィアの舟歌」は、そのうちの1曲です。

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演奏は、特にメンデルスゾーンの演奏で評価の高い イタリア出身のピアニスト ロベルト・プロッセダ(1945- )さんです。

使用されているピアノは、イタリア製の「ファツィオリ( Fazioli社 1981創業)」です。近年、ショパンコンクールを始め、著名な国際ピアノコンクールで公式ピアノに選定されています。

■  ヴェネツィアの舟歌 op.30-6/メンデルスゾーン

この演奏には詩情を感じます。とても繊細で美しいピアノです。
リスナーの皆様はどうお感じになったでしょうか。

舟歌は、ショパンやチャイコフスキーにもありますが、どの曲も素晴らしく情感に溢れています。



写真 ACワークス(株)






第89回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

今回は、アルヴォ・ペルトの稀有な音楽作品「鏡の中の鏡」(Spiegel in Spiegel 1978年) にスポットを当てます。

アルヴォ・ペルト(Arvo Pärt, 1935年9月11日 - )は、エストニア生まれの作曲家で現在85歳、この作品は彼が43歳の時に作られました。
現代の作品ですが、現代音楽とは明らかに一線を画した清澄な音楽が展開します。


■「鏡の中の鏡」と言うことは、鏡の中に鏡が何重にも映っていて「無限の画像」を生成する様子を指しています。
同名の文学作品に、やはり鏡の世界を描いた、 ミヒャエル・エンデ(Ende,Michael 独1929 - 1995 ) の「鏡の中の鏡ー迷宮」があります。
読者をめくるめく意識の迷宮へと導きながら人間存在の神秘と不可思議さを映し出す名作と言われています。

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画像 鏡の中の鏡展(2006年、名古屋市内) https://atsunao.exblog.jp/4053531/


音楽は、4分の6拍子、ピアノによる上昇する4分音符の分散和音が延々と続き、弦楽器の旋律は弱音の持続音で行きつ戻りつ、上昇と下降を繰り返します。そして、ピアノ左手の低い減衰音と、夜空に閃光が走るような高音の減衰音。

音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽で、ミニマル・ミュージック (Minimal Music)と呼ぶそうですが、聴き手は不思議な音楽空間をしばし彷徨って深遠なる意識の世界を垣間見るのです。


■ 「
鏡の中の鏡」/ アルヴォ・ペルト



ある批評家は、この作品を「沈潜する静謐な音楽」と言いましたが、まさにArvo Pärt の美学の結晶です。


■ 参照
Wikipedia、エディクラシック記事https://edyclassic.com/1616/






第90回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

エルネスト・コルタサール(Ernesto Cortazar  1940–2004)は、メキシコの作曲家、編曲者、ピアニストで、メキシコ作曲家協会の創設者で初代会長でした。(父親 エルネスト・コルタサールも作曲家)

13歳のとき、彼は自動車事故で両親を亡くしましたが、その後音楽の勉強を終え、早くも17歳で映画音楽の仕事(作曲)に就きました。
成人期のほとんどをロサンゼルスで過ごしましたが、晩年メキシコに戻り、63歳で癌により他界しました。生涯に作った映画音楽は500本を超えます。

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センチメンタルなイージーリスニングとは違って、この音楽には、人生の喜びや悲しみにそっと寄り添うような無上の愛を感じます。
作曲家には神が宿る瞬間があるのでしょうか。

 

■  Autumn Rose(秋の薔薇)/エルネスト・コルタサールⅡ



風がそよぐようなピアノのタッチが印象的です。

そのピアノのメロディラインを、ほんの少し遅れて弦楽器が優しくなぞっています。

人生のワンシーンを映像化してくれる音楽です。



■ 参照 Wikipedia 写真 ACワークス(株)






第91回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

シューベルト( Schubert、1797 - 1828)の とっておきの歌曲「君はわが憩い(Du Bist die Ruh)Op. 59-3, D. 776 )」をご紹介したいと思います。

原曲はもちろん素晴らしいのですが、今回はチェロ版にアレンジしたものを選んでみました。

チェロ:キアン・ソルターニ(1992-) さん、ピアノ:アーロン・ピルサン (1995-)さん。ともに20代の実力派アーティストです。

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Du bist die Ruh, D 776

Du bist die Ruh,
Der Friede mild,
Die Sehnsucht du,
Und was sie stillt.

君こそは憩い、
そして 平和な安らぎです
また 憧れであり、
憧れを癒す人でもあるのです

■  君はわが憩い(Du Bist die Ruh, D. 776)/シューベルト



この演奏が気に入った方は、ぜひ原曲の歌曲をお聴き下さい。

↓ 私も、これほど深く崇高な音楽に出会えたことに感謝しながら聴きたいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=IY-j9-DjVqk






第92回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

このシリーズ2回目の登場となる 芥川也寸志(1925-1989)は、1954年、当時国交がなかったソ連に密入国しました。明らかな不法行為です。(晩年の芥川の紳士的な風貌からは想像できない行動でした)

しかし芥川は、ソ連政府から歓迎を受け、ソ連を代表する ショスタコーヴィチや ハチャトゥリアン、カバレフスキーと親交を深めることになります。

もともと芥川は父(龍之介)の遺品であるSPレコードを愛聴し、とりわけストラヴィンスキーに傾倒したとされますが、ロシア音楽に興味があったからこそ、単身で密入国したのではないでしょうか。

今回ご紹介する「交響管弦楽のための音楽」(1950年)も、ショスタコーヴィチから影響を受けた作品と言われています。

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この作品は、NHK放送25周年記念事業の懸賞応募作として作曲されましたが、審査の結果、團伊玖磨の交響曲第1番とともに特賞入賞し、芥川也寸志の出世作となりました。


テレビのCMにも使われており、どこかで聴いたことがあるかも知れませんが、音楽の持つエネルギーは、やはり若い芥川の面目躍如たる作品です。

演奏は、東京都交響楽団/沼尻竜典(指揮)

■ 第92回 交響管弦楽のための音楽~第二楽章/芥川也寸志

ボリュームを上げてお聴き下さい。迫力が伝わります。


■ ご参考 全編日本情緒があふれる名曲
知られざる名曲 第57回 八つ墓村より/芥川也寸志







第93回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

今回は、ドイツ出身の作曲家で映画音楽でも有名な ハンス・ジマー(Hans Zimmer, 1957 - )の音楽を選びました。

彼は、西ドイツ(当時)のフランクフルトで生まれ、幼い頃は自宅でピアノを学びましたが、10代でイギリス・ロンドンに移住し、キーボードとシンセサイザーの演奏者となりました。
そして、エンニオ・モリコーネの映画音楽に強く影響を受け、映画音楽作曲家を志し成功を収めました。

1994年の映画「ライオンキング」で第67回アカデミー賞を受賞したほか、「クリムゾン・タイド (1995) 」、「ダークナイト (2008) 」で グラミー賞、「グラディエーター  (2000) 」で ゴールデングローブ賞など、4つのグラミー賞、2つのゴールデングローブ賞に輝きました。

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2006年のアメリカ映画「ダヴィンチコード」の中の一曲が、「聖杯の騎士(Chevaliers de Sangreal)」です。

ジマーは、単にBGMとしての映画音楽の役割を、これまで以上に演出効果の一部として音楽に担わせることに成功して大きな評価を受けましたが、まさにこの曲もドラマティックに映画を盛り上げることに成功しています。

■  聖杯の騎士/ハンス・ジマー

チューブラーベル(コンサートチャイム)が鳴らす 鐘の音がとても効果的です。

そして、次第に高揚感を増す音楽につい引き込まれてしまいます。


尚、Wikipediaによると、指揮の サラ・ヒックスは日系アメリカ人。ヴァイオリストとピアニストとして訓練を受け、ハーバード大学で音楽の学士号を、カーティス音楽研究所で指揮の芸術学位を取得しているそうです。

余談ですが、世界ランキング1位のハーバード大学に音楽学部があることはご存じでしょうか。実は、1855年から現在まで続く、アメリカで最も古い音楽学部の一つです。
ホール、音楽図書館、、ワールド・ミュージック・アーカイブス、視聴覚設備、高性能の電子音楽スタジオ、民族音楽ラボ、古楽器ルーム、室内楽専用リハーサル室、全室ピアノ付の練習室などが完備されています。

ハーバード大学に限らず、マサチューセッツ工科大学、イェール大学、ペンシルべニア大学など一流大学にも必ずと言って良いほど音楽学科あるいは付属の音楽学校があります。(ピティナ記事参照)






第94回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

ドイツの詩人ゲーテの「若きウェルテルの悩み」。1774年に刊行されて以来、現在も世界中で広く読まれている小説です。

この小説をもとに、フランス人の作曲家マスネが作ったのが、今回ご紹介する オペラ「ウェルテル」です。

マスネと言えば、オペラ「タイス」の劇中で演奏される「タイスの瞑想曲」が有名ですが、オペラアリアにも情熱的でロマンティックな名曲を遺しました。

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『若きウェルテルの悩み』初版本 Wikipediaより

■ あらすじ

ウェルテルは魅力的な女性シャルロッテに出会い、熱烈な恋に落ちますが、ウェルテルの愛したシャルロッテには既に婚約者がいました。

彼女は予定通り婚約者と結婚します。しかし、ウェルテルはどうしてもシャルロッテのことが忘れられずクリスマスイブに彼女に会いに行きます。彼女の心は揺れるのです。

そして、ウェルテルが溢れる胸の内を情熱的な歌で伝えると、こらえきれずシャルロッテは抱き合ってしまいます。実は一目会った時からシャルロッテも好きだったのです。

しかし、理性を取り戻したシャルロッテは妻としての立場を守り通します。だめ! もう二度とお目にかかりません。」

絶望したウェルテルは、「喪に服せ、おお自然よ!」と叫びつつその場を去り、深夜12時の鐘とともに拳銃で自らの命を絶つのでした。


■ 「春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか」/マスネ Massenet, 1842 - 1912)
オペラ「ウェルテル」第3幕 オシアンの歌(通称)



切々たる歌唱は、フランスを代表するテノール歌手 バンジャマン・ベルネーム(1985- )

見知らぬ少女から、車の窓をノックされて我に返る主人公を見事に演じていますが、この見知らぬ少女こそ 優しい「春風」だったのです。
「春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか」、この曲のタイトルです。


コンサート形式のYouTube動画は ↓
https://www.youtube.com/watch?v=Uw8bhAnNObo



 


第95回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


今回は、あまり聞きなれない作曲家 ガエターノ・プニャーニ(Gaetano Pugnani, 1731 - 1798 )の ヴァイオリン曲「ラルゴ・エスプレッシーヴォ」を聴いてみましょう。


彼はイタリアはトリノ生まれ、すでに10歳でトリノの由緒あるオペラハウス(レージョ歌劇場・開場は1740年)のヴァイオリン奏者として演奏していたとされ、その俊才ぶりを発揮していました。

ヴァイオリン曲以外にも、器楽、室内楽、声楽、オペラなどを作曲する傍ら、ヴァイオリン奏者、指揮者、軍楽隊楽長を務めました。(一部Wikipediaより)

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画像 ACワークス(株)

■ 映像美

最近のYouTube動画は、映像が美しいものが多く、音楽と融合したかのようなアカデミックな作品が楽しめます。

今回の動画も、冒頭から名画「オフィーリア(ハイザー作 独1857-1921)」が挿入され。格調高い作品に仕上がっています。

尚、演奏は西崎崇子氏(Vn)、テレンス・デニス氏(Pf)です。

■  ラルゴ・エスプレッシーヴォ/プニャーニ
Violin Sonata in D major, Op. 8, No. 3より



この動画をアップロードされた方のセンスを感じます。






第96回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

フェレール・フェラン(Ferrer Ferran) 1966年 -  )は、スペインの作曲家、指揮者、 ピアニストです。
日本では主に吹奏楽の作曲家として知られています。

そう、今回は初めて吹奏楽を選んでみました。

フェランは、1966年にバレンシアで生まれ、15歳でピアノと打楽器の学位を取得し、室内楽と伴奏法のディプロマを得たのち、ロンドンの王立音楽大学やハンガリーでも学び、その後スペイン各地でリサイタルや室内楽のコンサート、国内のオーケストラとの協演を行い、作曲家、ピアニスト、指揮者として活躍しています。 

彼の好きな作曲家は、レナード・バーンスタインだそうです。

「レナードはすべてでした。彼は素晴らしい作曲家、素晴らしいピアニスト、そして素晴らしい指揮者である以外に、素晴らしい心と魂を持っていました。」

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■ パフォーマンス

最近、吹奏楽や合唱のステージでは、演奏者がパフォーマンスをすることがあります。
演奏中に、曲に合わせて身体を動かしたり、手拍子を打ったりして客席にアピールするのです。

視覚に訴えることで、より音楽を理解できたり、何より楽しく音楽を鑑賞することが出来きます。もちろん演奏者も楽しんでいます。

ステージと客席の一体感を出す意味で、これらのパフォーマンスはとても効果的です。

 

■ 夜明けの閃光(バンドのためのシンフォニックワルツ)/ フェレール・フェラン



作曲者 フェレール・フェラン自身の指揮でお聴き下さい。

だんだん面白くなっていきますよ。

~そして、スタンディングオベーションです。


同じ曲、同じ指揮で、客席と一体になった面白動画は ↓
https://www.youtube.com/watch?v=9q88zz9mxA4







第97回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 

ジョン・ウィリアムズ(John Williams 1932 -  )は2回目の登場です。

今回は、映画『スター・ウォーズ/クローンの攻撃』から、アクロス・ザ・スターズ「愛のテーマ」です。

この映画は、スター・ウォーズシリーズ 5作目(2002年アメリカ、ジョージ・ルーカス監督、興行収入93億5千万円)の大ヒット作です。
(一部Wikipedia参照)


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もともとこの曲は、ジョン・ウィリアムズが 親友であるヴァイオリンのスーパースター、アンネ=ゾフィー・ムターのために新たに編曲し直し、自ら指揮もおこなって、ハリウッドで録音されたものです。

「今回アンネ=ゾフィーとの録音作業をとおして、私はまさにインスピレーションそのものを与えられました。彼女はこれらのテーマ曲に、生き生きとした命をもたらしたのです。それは、曲を書いた私にとって 大いなる喜びでした」 ─ジョン・ウィリアムズ─


ヴァイオリン:アンネ=ゾフィー・ムター(Anne-Sophie Mutter)
オーケストラ:ロサンゼルス・レコーディング・アーツ・オーケストラ
指揮:ジョン・ウィリアムズ

■ アクロス・ザ・スターズ「愛のテーマ」/ ジョン・ウィリアムズ



なにも言えないほど美しい。

新鮮で生命力にあふれ。

幻想的映像、神性の宿る音楽、これは後世に残るアート作品と言える。







第98回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


コントラバスは縁の下の力持ちです。いつもアンサンブルを支える大切な楽器です。

クラシックコンサートで、コントラバスをソロで聴く機会はほとんどありません。

でも、そんなコントラバスが主役の曲も存在します。
今回はその中から、ジョヴァンニ・ボッテジーニ(Giovanni Bottesini, 1821 - 1889)の「コントラバス協奏曲 第2番 ロ短調」を選びました。

是非、コントラバスの落ち着いた渋い音色に浸って下さい。

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■ コントラバスのパガニーニ

ボッテジーニは、イタリアの作曲家、指揮者、 そして著名なコントラバス奏者として活躍しました。

ヴェネツィアの劇場で首席コントラバス奏者を務めたあと ソロ活動に転じ、ニューオーリンズ、ニューヨーク、ロンドン、ウィーン、サンクトペテルブルクなど各地で演奏活動を行い、コントラバスを巧みに操る腕前は評判となり、その卓越した技巧から「コントラバスのパガニーニ」と言われるほどでした。

また、オペラ指揮者としても活躍し、ヴェルディの名作『アイーダ』の世界初演(於カイロ、1871年)を指揮しました。

■  コントラバス協奏曲 第2番 ロ短調 / ボッテジーニ
Concerto For Double Bass In B Minor, No. 2



技巧的なところもありますが、全体的にはイタリアらしい「旋律美と歌心」が満載の素晴らしいコンチェルトに仕上がっています。


※記事 Wikipedia参照
 画像 ACワークス(株)







第99回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


フランス近代音楽を代表する作曲家 モーリス・ラヴェル( Maurice Ravel 1875 - 1937)。

ラヴェルは「ボレロ」でとても有名ですが、それ以外の曲は意外と知られていません。

実は、『スペイン狂詩曲』やバレエ音楽『ダフニスとクロエ』などの管弦楽曲から、ピアノ、声楽、室内楽、協奏曲、オペラまであらゆるジャンルのクラシック作品を書きました。もっと日本でも知られて良い作品がたくさんあります。

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今回は、是非聴いていただきたい作品「序奏とアレグロ」を選びました。この曲の主役はハープですが、フルート、クラリネットおよび弦楽四重奏が加わった七重奏曲となります。

ラヴェルも初登場ですが、ハープにスポットを当てた曲も当シリーズ初めてとなります。

そしてボレロは、ラヴェルが50歳を過ぎた晩年の作品になりますが、この「序奏とアレグロ」はラヴェル30歳の豊かな感性が表出した作品です。

■  序奏とアレグロ / モーリス・ラヴェル
Ravel Introduction and Allegro for Harp, Flute, Clarinet and String Quartet



大人のフランス映画のような官能的な音楽から始まります。

まさにラヴェルの真骨頂と言えますが、洗練された曲想、お洒落で高雅、印象派の絵画のような色彩感(※)など、若いラヴェルの繊細な感性が随所に散らばっています。


(※)一般的に印象派(マネ、モネ、ルノアール など)の自然描写では、光の効果を描く観点から、「黒」はパレットから除外しています。ラヴェルの色彩感も同様に光を意識したものです。一方、東洋には墨の文化があり、「黒」の美しさを生かした芸術があります。







第100回   知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける 


■ 女性の作曲家


女性の作曲家が非常に少ないのが クラシック音楽の世界です。

思い当たるのは、「乙女の祈り」を作ったポーランドの作曲家、バダジェフスカ (1834 or 1838–1861) と、シューマンの奥さんだった クララ・シューマンくらいではないでしょうか。

しかし近年では女性の作曲家も増えています。政治の世界と似ているかも知れません。

今回は、その中から ウクライナ出身のロシア人作曲家 アッラ・パブロヴァ(Alla Pavlova 、1952-)さんを選びました。現在はニューヨーク在住の注目の作曲家です。


パブロヴァの作品は、ロマンティックな雰囲気、心地よいメロディアスな音楽が特長です。

その中から今回は、ピアノと弦楽器のためのエレジー(Elegy for Piano and Strings. 1998)を選曲しました。


■  ピアノと弦楽器のためのエレジー/ アッラ・パヴロヴァ

心が休まる音楽です。何かから解放されて 慰められる音楽です。

必ずひとりで聴いて下さい。



■ 仏教哲学「八正道」の精神を表現

パヴロヴァは 交響曲4番で、チベットの神話上の王国「シャンバラ」を題材にしたスピリチュアルな音楽も手掛けました。

とても魅力的な作品です。八つの聖なる道「八正道」の精神をロシア人作曲家が学んでいたとは驚きです。

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アッラ・パヴロヴァ:交響曲第4番 “シャンバラへの道”(Alla Pavlova: Symphony No. 4 "Path to Shambala" 2002年)
 ↓
https://www.youtube.com/watch?v=L3NW6jPawow







 

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