知られざる名曲 第63回 漁夫たちの踊り/橋本國彦
今回は、日本における西洋音楽の草分け的作曲家 橋本國彦(はしもと くにひこ、1904 - 1949)に焦点を当ててみたいと思います。
早くから音楽の才能に芽生えた橋本は、大正12年に東京音楽学校(現:東京芸術大学)に入学。ヴァイオリン、指揮法、作曲を学び、ウィーンに留学します。
帰国後は、作曲家・編曲家として活躍。教師としても優れており、1933年(昭和8年)母校の教授に就任。門下には、矢代秋雄を筆頭に芥川也寸志、團伊玖磨、清水脩、大中恩、高橋悠治、畑中良輔、黛敏郎、指揮者の朝比奈隆ら錚々たる音楽家がいます。
特筆すべきは、日本ビクターの専属アーティストとして、1943年、日本人として初めてベートーヴェンの第九(第四楽章のみ)を指揮して商業録音したことです。
↓ 太平洋戦争下の録音です。よくこの時代に録音できたと思います。訳詞(日本語)は大変興味あるものです。
日本人初の第九レコード《歓喜の頌》
https://www.youtube.com/watch?v=Fs4xVjzpE6k
さて今回の曲は、花柳寿美(初代花柳寿美 岐阜県出身)の委嘱で 日本舞踊家のために橋本が作曲したバレエ音楽です。
台本は羽衣伝説に基づくもので、海岸で漁夫が天女の羽衣を発見したあと、それを取り戻そうとする天女による踊り、羽衣を受け取った天女の昇天を描いています。「漁夫たちの踊り」は全7曲中3曲目。
■ 第63回 バレエ音楽「天女と漁夫」より「漁夫たちの踊り」/ 橋本國彦(1932年作曲)
橋本の瑞々しい感性が紡ぐ伝統的な「日本の風土」と「日本人の心情」。
軍事色が増す世相の中で作曲されましたが、作品には連綿とした日本情緒が余すところなく表現されています。
戦後まもなく(1949年)彼は44歳で帰天しました。
今までご紹介した記事を、第1回から順に並べて見やすくした「知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ」を、アーカイブとして公開(順次更新)しております。是非ご参照下さい。
知られざるクラシック名曲の宝庫を開けるシリーズ
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