クラシック名曲「酷評」辞典 上下 (本の紹介 No.44)
世にも珍しい「クラシック音楽作品の酷評」ばかり集めた禁断の書が発売されました。(2021・4・10 発行)
上下巻、びっしり掲載された「罵詈雑言」の数々。当時の欧米の批評家たちは、作曲者に対しこんな辛辣なことを平気で言ってのけたのです。
近年読んだ本で最も面白い本でした。(と言っても、余りに分量が多く、すべて読み切れていませんが・・)
やり玉に挙がったクラシック作曲家は43人。
正統的で秩序正しい作曲家ではなく、伝統に縛られない新しい作曲技法や発想力に富んだ作品を書いた人たちです。
ベートーヴェンやドビュッシー、R・シュトラウス、ワーグナーなど・・・
ストラヴィンスキーの「春の祭典」は、「春の災典」と言われ、日本で人気の「蝶々夫人」も犬の遠吠えのようだと酷評されました。
そして、中でも一番批判が集中したのは、やはりシェーンベルクでした。
ある批評家は、1912年2月7日の専門誌に、「シェーンベルクの音楽には、喜びや光のような、生きる喜びを与えてくれるものが何もない!このように退屈で気が滅入るシェーンベルクが将来の表現の主流になるとしたら、われわれの子孫はなんと哀れなのだろう!・・・」と述べています。
この批評は当たっています。偉大な作曲家は20世紀の半ば以降生まれていません。音楽年表もショスタコーヴィチが最後です。現在のクラシック音楽は、この批評家が100年前に予言した通り「不毛の時代」にあるのです。
過激な本ですが、読者はそれぞれの感想を持つと思います。果たして「名曲」なのか「迷曲」なのか、「それ以下」なのか。
本当に興味の尽きない本でした。
クラシック名曲「酷評」辞典 上/下 編集 ニコラス・スロニムスキー(訳 藤村奈緒美)YAMAHA 各1900円(別)
■ 当ブログ記事
知られざるクラシック名曲の宝庫を開ける
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