追憶の「雨だれ」、情感の「風」
集中豪雨は困りますが、しっとり降る雨は情感にあふれています。
そして日本には、雨にちなんだ名曲がたくさんありますが、いつも当ブログを応援してくれている S・M さんの リクエストもあり、今回は唱歌「雨だれ」と、童謡「風」をご紹介します。(私も勉強になりました。この場を借りて御礼申し上げます)
■ 雨だれ
作詞:岩佐 東一郎 作曲:メーヤー
雨だれが 落ちている
まどのそとの のきばから
見ていると きれいだな
すいしょう玉だね
雨だれの 音がする
目をばつぶり 耳すまし
きいていると 樂しいな
ピアノひく 音だね
<a href="https://www.photo-ac.com/profile/1911827">ポポマルチ</a>さんによる<a href="https://www.photo-ac.com/">写真AC</a>からの写真
軒端(のきば)から落ちる雨の粒は、キラキラと水晶の玉のように映ったのでしょう。
そして雨だれの音が、ピアノを奏でるように聞こえたのでしょう。
五感で感じる「雨だれ」。
その純真無垢な詩に心が洗われる思いがします。
終戦間もない世の中でしたが、子供たちの明るい歌声が聞こえてくるようです。
唱歌「雨だれ」は、昭和22年(1947)の教科書「五年生の音楽」に掲載されました。
戦後の音楽教育は歌(歌唱)が中心でしたが、メロディはもちろん、子供たちの美しい感性を引き出すような、素直で明るい「詩(歌詞)」が選ばれました。
作詞の岩佐 東一郎は、詩人・俳人として活躍し、たくさんの作詞を手がけました。ベートーヴェン第九交響曲「喜びの歌」の作詞「晴れたる青空ただよう雲よ~」は特に有名で、今でも歌われています。
(※作曲者メーヤーの詳細な記述は見つかりませんでした。当時は海外の曲(民謡など)が多く教科書に採用されていたようです)
雨だれ、昔この歌を歌ったことのある人は、懐かしく当時を思い出されたことでしょう。
口ずさんでみましょう~ きっと懐かしさで胸がいっぱいになるでしょう。
歌には在りし日の「追憶」と「情感」がただよいます。
さて、もう一曲は (^^♪
■ 風
作詞:クリスティナ=ロセッティ(西條八十訳詩) 作曲:草川信
誰が風を 見たでせう(見たでしょう)
僕もあなたも 見やしない
けれど木の葉を 顫(ふる)わせて
風は通りぬけてゆく
誰が風を 見たでせう(見たでしょう)
あなたも僕も 見やしない
けれど樹立(こだち)が 頭をさげて
風は通りすぎてゆく
<a href="https://www.photo-ac.com/profile/1947778">雄太</a>さんによる<a href="https://www.photo-ac.com/">写真AC</a>からの写真
何とさわやかな感性でしょう。
童謡とはいえ、西條八十にかかると、こんなにも美しい映像が浮かび上がるのです。
原詩は、イギリスの女流詩人 クリスティナ・ジョージナ・ロゼッティによるものです。この詩に魅せられた西條八十が訳詩しましたが、「who has seen the wind?」を、「誰が風を見たでせう?」と、歴史的仮名遣(れきしてきかなづかい) で訳しています。歴史的仮名遣は、戦後に現代仮名遣いになり、日本独特の情緒は薄らいでしまいました。
作曲の草川信は、この曲に「初秋の朝に葉から葉へと渡って行くそよ風と、そよ風の囁(ささやき)」を込めたと言います。
※草川信は、「夕焼け小焼け」の作曲で有名です。
歌には在りし日の「追憶」と「情感」がただよいます。
「そよ風」の囁き(ささやき)を込めた音楽を味わいたいと思います。
■ 音源(ご参考)
記事にご興味を持たれた方は、下記 YouTube をご覧ください。
ただし残念ながら、「雨だれ」は音源が見つかりませんでした。
(いつか、S・M さんの演奏でYouTubeにアップしたいと考えています)
<a href="https://www.photo-ac.com/profile/209618">ryomaypapa</a>さんによる<a href="https://www.photo-ac.com/">写真AC</a>からの写真
■ 当ブログ 雨にちなんだ心の名曲ベスト10
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