新型コロナウイルス終息後の日本 ~仕事から国民生活、意識まで~
世界を襲った新型コロナウイルス。まだ終息はしないものの、このパンデミックで世界は大きく変わろうとしています。
日本も例外ではありません。この惨禍を教訓に、日本の課題と将来像について、8つの分野に分けて考えてみました。
1.医療分野
国民医療費が年間43兆円(2018年度)の日本では、当然のことながら最高の医療が受けられるはずです。しかし世界各国と比較して分かったことは、ICU(集中治療室)の不足、検査機器、呼吸器の不足、専門医やスタッフの不足、輸入に頼るマスクや防護服の現状でした。
医療大国日本は、正確に言うと「医療費大国 日本」でした。これは、すぐ病院や薬に頼る国民性にも原因がありますが、こと感染症に至っては、やはり検査体制の拡充、専門医の育成、ICUやベッド数の確保、マスク・防護服の自給体制、さらに危機管理対応のトップリーダーの擁立が喫緊の課題です。
コロナの医療現場では、感染リスクのある中多くの医療従事者の懸命な治療が行われました。一方で感染を恐れて患者の受け入れを拒否する医療機関もありました。満足な医療機器や防護服が無ければ当然ともいえます。保健所などの行政も医療機関も大混乱したことは事実です。
それでも死者数が大幅に抑えられたのは不幸中の幸いでした。改めて医療関係者に感謝です。
厚生労働省や内閣の中に、今回のパンデミック対応の検証委員会を作り、日本の弱点が露呈した「感染症」への万全の対策を講じるべきです。医療費ばかり掛かって病人の減らない日本から、国民の命を最優先し、「健康長寿の日本」に変わることが求められています。
<a href="https://www.photo-ac.com/profile/1098708">makotomo</a>さんによる<a href="https://www.photo-ac.com/">写真AC</a>からの写真
2.仕事(働き方)
緊急事態宣言で外出自粛が叫ばれ、突然在宅で仕事をすることになった労働者は困惑したと思います。政府は「働き方改革」(2018年法案公布)を打ち出しましたが、中小企業などへは浸透していませんでした。しかし今回のコロナで、大都市を中心にほとんどの企業で(否応なしに)在宅勤務が普及することになりました。テレワークやWEB会議、時間差通勤などが導入され、結果として通勤混雑は緩和され、今まで通勤に要したエネルギー(時間、体力)は節約されました。今後、在宅勤務だけでオフィスを構えない会社が現れたり、それこそ不要不急の社内会議などは無くなるでしょう。「従来型の仕事」の無駄が、かなり浮き彫りになったと思います。
今後、コロナを契機に「在宅勤務」は相当普及すると思います。日本だけの「印鑑社会」からも脱却できるでしょう。政府の「働き方改革」は図らずも進展することになりそうです。そして通勤地獄が緩和される日も近いと思われます。
しかし、在宅時間が増えることで家庭内トラブル(最悪の場合DV)が起きたり、オフィスに出社しないことで人間関係が希薄になったり、在宅での勤務状況を監視するシステムが強化されたり、良いことばかりではなさそうです。
3.I T (information technology)分野
コンピューターやデータ通信が飛躍的に発達した今日に於いて、今回ほどI T が活躍したことはありませんでした。外出自粛で「STAYHOME」を余儀なくさせられた国民は、オンラインによる社会生活を模索しました。
オンライン後進国だった日本ですが、オンライン会議、オンライン授業、オンライン診療からオンライン飲み会やオンライン結婚式まで多種多様なオンライン生活が実現しました。いつもなら連休で里帰りする子供たちも、オンライン里帰りで「おじいちゃん、おばあちゃん」と会うことが出来ました。
劇場やコンサートホールからライブ配信をする試みも多く行われました。音楽やバレエを自宅で楽しんでもらう試みです。さらに演奏の機会を失った音楽家が、自宅からリモートで参加する動画配信も人気を博しました。I Tは私たちの日常を変え、これからの可能性を無限に広げました。今後オンライン技術は3Dやバーチャル機能の充実で、よりリアルで実用的なレベルになるでしょう。オンラインによる新しい産業が生まれ、既存の産業と融合して世の中の利便性は飛躍的に向上すると思います。
<a href="https://www.photo-ac.com/profile/2258030">こうまる</a>さんによる<a href="https://www.photo-ac.com/">写真AC</a>からの写真
4.教育、カルチャー
学校が長期間休みになり教育現場は混乱し、親も子も先生も大きな試練に直面しました。共働き家庭は母親が休職して子供の面倒を見ることになったり祖父母に頼んだりと対応に苦慮しました。今更ながら、子供を預かってくれる学校は地域になくてはならないものです。
小学校では家庭学習が中心になり、高校、大学ではオンライン授業が行われました。同様に学習塾やカルチャーセンターなども急遽オンラインに切り替えましたが厳しい運営を強いられています。また、非常勤の講師や給食業者など、多くの関係者も収入が激減しました。
そして学校側(教師)も、生徒・保護者も手探りの状態が続きました。さらに、相方向のオンラインが実施できない教育現場が多く存在しました。
教育文化という大切な分野が、意外にも災害に弱く未整備であったことが判明したことで、今後は非常時の教育の在り方が検討されるでしょう。一方で、家庭学習の重要性も見直され、不登校への代替案としても注目されると思います。
尚、この際「9月新学期制」の議論が高まりつつあります。世界標準に合わせるチャンスだからですが、賛否両論あり不透明です。個人的には賛成ですが、拙速に進めるのではなく、準備期間を経て来年9月を目指すべきと考えます。
5.政治、経済
言うまでもなく、今回のコロナの対策で、安部政権は大きく支持率を落としました。一次二次合わせて何と8年8か月にも及ぶ「安部一強」の長期政権は、次第に「虚偽・隠蔽」「忖度」にまみれ、戦後最悪の政治の劣化を招きました。森友加計桜と疑惑のオンパレードだった安倍政権ですが、最近の検察庁法改正案に至っては、芸能人など抗議のツイートが500万件に達したそうです。この反応は過剰としても、この時期に不要不急の法律をごり押ししようとする政権運営は、イエスマンばかりの内閣(各大臣)と暗躍する官邸官僚、何も発言しなくなった自公の国会議員、パフォーマンスばかりの立憲民主など野党議員で、国政が著しく劣化したからです。
劣化した政治家では有効なコロナ対策が打てないことは当然です。感染症の「専門家会議」の決定を重視するばかりで、政治的判断は遅れました。しかし、その劣化した政治家を選んだのは国民でした。
お人好しの日本国民も今度ばかりは怒っています。緊急事態宣言下に歌舞伎町の風俗店に通っていた立憲民主のT議員は言語道断にしても、歳費2割カット(1年間限定)を決めた国会に批判が噴出しています。唯一、 日本維新の会だけは「とても国民の理解が得られない」として反対しましたが、他の野党が情けない限りです。一番不可解なのは、月額100万円の文書通信交通滞在費(領収書不要)です。外出自粛、会合自粛で、どうして交通費や滞在費が要るのでしょうか。
そのような不条理に、国民はデモのような抗議行動ではなく、SNSで批判するようになりました。とても紳士的です。テレビのワイドショーも今回の政府の支援策には辛口ですが、フラストレーションの溜まった視聴者に迎合して視聴率を稼ぐ商魂も垣間見えます。また、テレビの報道は、ほとんどが週刊誌かスポーツ紙の焼き直しです。政治の劣化にはメディアの責任も多分にあると思います。
以上の観点から、次期衆議院選挙(来年夏までにある?)では、無党派層の投票行動が注目されます。二大政党なら、当然安倍政権は大敗し政権交代が実現しますが、日本の野党はバラバラです。野党第1党に求心力はありません。結局は自公政権が続くでしょう。
今の与党が、国民の窮状に寄り添い、国民の不安を払拭する政治に大変身するか、若しくは野党が大結集して、(国民の信頼を失った)自公政権に立ち向かう構図を作るか、そのどちらかが実現すれば、日本は救われます。それには大阪府の吉村知事のような信頼のおけるトップリーダーが必要です。
─そんな空論を言っても仕方ありませんが、与野党ともに国の政治の現状はあまりにもお粗末です─
尚、政治決断による大胆な財政出動がない限り、安倍政権が期待するような経済のV字回復はあり得ません。当ブログが再三提起している「消費税減税」を断行すれば、消費は拡大するでしょう。次回総選挙では、国民に寄り添い、国民の痛みの分かる政治家を選んで下さい。
画像出典 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57502890R00C20A4000000/
6.国民生活
観光業や飲食業をはじめ、あらゆる業種・あらゆる世代の人々が苦境に立たされています。中小零細企業、その従業員、個人事業主、日払い・パート、フリーランスなどの中には明日の生活も見込めない人もいると思います。非正規雇用者の割合が多い日本の雇用構造も問題でした。一方でアパートやテナントオーナーなど家主も、賃料が入らなくなり苦境に陥ります。今後、リーマンショック時を超える経営破綻と自殺者が出ると言われています。10万円で命がつながるなら一日も早い給付が必要です。
一方で給料が1円も減らない公務員や大企業の社員もいます。来月(2020/6月)300万円ものボーナスが(税金から)支給される国会議員もいます。日本の格差社会はますます進行するでしょう。経済の悪化に伴い社会保障費は増大し、社会秩序は乱れ治安も悪化するでしょう。
コロナが終息すれば、自粛していた反動で一気に旅行や外食に人が押しかけ、観光地や商店は息を吹き返しますが、一時的な回復に過ぎません。米国に対し日本の財政出動が少額であるため円高が進行して企業業績は悪化、失業者は年内に100万人を超え、オリンピックが終わるころには日本は大不況に陥るかも知れませんが、安倍さんは退陣していて知らんぷりでしょう。
政治への信頼が大きく損なわれた今日において、将来への不安が解消されない限り、国民は消費に回るべきお金を貯蓄や保険商品に当てることになり、生活の向上は期待出来ません。「足るを知る」窮乏生活の中で、ささやかな幸せを見つけましょう。
7.自然、環境、意識
IEA(国際エネルギー機関)によると、2020年の世界のCO2排出量は8%減少する見込みです。この減少量は過去最大であり、リーマンショック時の6倍に当たるそうです。温暖化ガスの減少は日本ではあまり報道されませんが、自然環境は相当改善されています。この機会に、環境への関心は高まると思います。引き続き太陽光などのクリーンエネルギーへの転換が促進されることを期待します。また人間の繁栄を優先させた環境破壊にも歯止めがかかると思います。
コロナが終わったら、元の汚染された地球に戻らないよう注視したいと思います。コロナ危機を契機に世界の首脳が連携を深めることが重要だと思います。
同時に、中国は野生動物の密漁や食用を直ちに止めるべきです。武漢市を中心に感染が拡大したCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)は、野生のコウモリが感染源である可能性が指摘されていますが、コウモリから人間にウイルスを媒介した動物が何だったのかは、まだ判明していません。狭い空間に何種類もの動物を詰め込めば、それだけウイルスの感染経路が増え、ウイルスが突然変異を起こす可能性も高くなります。「動物由来感染症」は種の境界を越えて感染し、まだ免疫をもたない人間にとってはとりわけ危険な感染症です。中国と仲の良いWHOテドロス事務局長が中国政府に働きかけることが一番です。
コロナは人々の意識をも変えました。
1.長引く自粛規制で、人と人とのコミュニケーションの大切さに気付きました。2.家族の在り方や家庭の大事さも分りました。3.学校で友達や先生と会える喜びを感じました。同時に勉学の大切さも再認識しました。4.日常の何でもない有り難味が分かりました(水道から水が出る、自由に外出できるなど)。5.通勤や通学に要する時間・エネルギーについて考えました。6.テレビやインターネットのある便利な生活に助けられました(情報収集、オンライン、ライブ配信など)。7.時間の有効利用やストレス発散法を考えました。8.政治に関心を持ちました。9.世界と日本を比較できました(良い点・悪い点)世界はコロナによって試されているのです。10.私たちが住む地球について考えました。
逆に、家庭内トラブルや「自粛警察」と呼ばれる他者への攻撃、差別、偏見、必要以上の恐怖心など、マイナス意識も芽生えました。
8.その他
ネット通販やドライブスルーなど非接触型のビジネスモデルが今まで以上に隆盛して、デパートやスーパー、個人商店と、客の争奪戦になるでしょう。また、ピザなどに限られていたデリバリーがあらゆる飲食店で始まるでしょう。お持ち帰り(弁当など)も飲食業の経営を支える大事な商品になるでしょう。
今回品切れしたマスクは、新しくファッション性のあるマスクとして生まれ変わると思います。考えてもみれば、顔の半分を覆うマスクにファッション性が無かったことが不思議でした。小池都知事のように、マスクもお洒落のアイテムとして身に着ける人が増えると思います。
それにしても、布マスク配布に数百億円かけた政府は恥ずかしい限りです。あしなが育英会は、外出自粛で募金活動が出来ず、2億円の金に困窮しています。布マスクに掛けた税金がいかに無駄であったか、責任の所在は分かりませんが猛省を促します。
尚今回、長期間の自粛要請に応じた日本人の国民性は称賛に値します。しかしごく一部の人は要請を無視しました。そのため、特措法に罰則規定を盛り込むよう法律を改正するべきでしょう。ただ、規制と補償はセットで行われるべきなので慎重な議論が必要です。
最後に、当ブログが度々指摘したように、テレビなどのメディアが過度に不安を煽るような報道を繰り返したことで、病原菌の感染より早く、恐怖心の感染が拡がりました。パンデミックのストーリーをメディアが演出しているほどでした。未知のウイルスですから注意喚起は必要ですが、過剰にネガティブな情報だけを流すことは賛同できません。情報を受け取る側の私たちの問題として、広範な情報ソースから取捨選択することが求められます。
■ あとがき
日本政府のコロナの対応に批判が集中していますが、日本の死者数はかなり低く抑えられています。この点は評価できるでしょう。PCR検査体制の不備から不安は広がりましたが、結果的には、公衆衛生の行き届いた日本において国民の献身的な協力もあり、爆発的な感染には至りませんでした。
確かに、スピード感のない政府の対応、悪評3点セット、有能な司令塔が不在などの問題はありますが、全国民に一律10万円給付や、助成金の拡充など、今のところ精一杯の施策は実行しています。国民も良く頑張り(自粛)ました。
※10万円給付で、安倍政権の支持率は5.1ポイント上がっています(2020・5・9~10 FNN世論調査)
テレビのワイドショーや、週刊誌、スポーツ紙、一部メディアは批判するばかりですが、もう少し冷静に考える余裕も必要です。
ただ、国民の痛みの分からない国会議員や官僚がいることも事実で、これからの補償・支援策がとても心配です。与野党を超えてこの難局に臨んでほしいと思います。特に野党に気迫がほしいと思います。私たちも、その一挙手一投足を注視してまいりましょう。
https://news.aperza.jp/%E5%AE%87%E5%AE%99%E8%88%B9%E5%9C%B0%E7%90%83%E5%8F%B7/
コロナウイルスがもたらした世界的な災厄から、人類は何を学ぶべきでしょう。新しい地球の時代、新しい令和の日本のあるべき姿が見えて来るのではないでしょうか。人類が戦争から学んだように、このコロナ惨禍から学ぶべきこともあるはずです。
※参考資料 News week 日本版 2020・2・26 他
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