誤解を招く数字
財務省の発表(2019・5・10)によると、昨年度末の国の借金が、「1103兆円」だそうである。文字変換が「1103腸炎」となったが、本当に腸炎になるほどショックを受ける。
それもそのはず、日本の国家予算は100兆円を超えているのに、収入は税収で62兆円余、税外収入を合わせても70兆円に満たない。残りの32兆円は借金(国債)に頼っているのが現状である。
これでは、だれが考えても巨額の赤字は減らない。減らないどころか増加の一途である。「1103兆円」と聞いてもピンとこないので、国民一人当たり「〇〇〇万円」と報道されることが多い。今回は「874万円」である。
「このままでは、日本の財政は破綻するので、税金を上げ、介護保険料も上げ、公共料金も上げなければならない。したがって年金は手取りが減っても仕方ない。あきらめてくれ、日本の子供たちの将来のためだ! ギリシャのような債務不履行だけは避けなければならないのだ。」
という声が聞こえる。誰が叫んでいるかはご想像にお任せしたい。
本当にそうだろうか。
そもそも国の借金とは、国民の借金ではない。私たちは住宅ローンや車のローンなどで銀行に借金をしているが、国に借金をした覚えはない。
国の借金とは、国民が借りているものではなく、政府が借りているお金のことである。では誰に借りているかと言えば、私たち国民から借りているのである。
何故なら、国債の大半は、国内の金融機関が買っているが、そのお金は私たち国民や企業の「預貯金」が充てられているからである。
つまり、国の借金は「国民から借りている」のが正解である。
「国民一人当たり〇〇〇万円」と聞くと、まるで私たち国民が借金をして、返済義務を負っているかのような錯覚をしてしまう人も多いだろう。私たちは国に借金をしているどころか、金融機関を通じて国にお金を貸しているのである。
もし国債の満期が来て、国民に返済できなければ、政府は紙幣を増刷すれば問題ない。国債の多くを海外で売ってきたギリシャとは全く違う。だからギリシャのような債務不履行には絶対にならないだろう。
その証拠に、日本の国会議員は世界一高い歳費(年収)をもらっている。国の財政が破綻するなどという危機感を持っている議員はいるだろうか。このGW中に国費で外遊した国会議員(与野党とも)は何人いるのだろう。
こんな状況で、国の財政に危機感を抱いても仕方ないが、国会議員の資質には大いに危機感を抱いてしまう。
平成時代に国民にとって最も幸せなことは「戦争がなかった」ことであるが、最も不幸なことは「国会議員の劣化」と言わねばならない。
その国会議員を選んだのは国民であるから、国民が劣化したと(自虐的に)言うこともできる。「国民一人当たり874万円」と聞いて、何の疑問も持たないような国民はやはり劣化しているのだろうか。実は私もその一人だった。
誤解を招く数字だけが、劣化した国民に危機感をあおっている。
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