ある仙人との思い出
私が退職して半年ほど経ったある日、その仙人から「お茶を飲みに行こう」とお誘いがありました。私は喜んでご一緒しました。
何度もお茶をご一緒するうちに、次は「日帰り温泉に行こう」ということになりました。
初めて出掛けた温泉は山里の自然の中にありました。仙人は露天風呂を案内してくれましたが、その時の開放的な気分は忘れられない思い出になりました。
その日を境に、毎週のように仙人との温泉行脚が始まりました。「今日は○○温泉に行こう」と、仙人は色んな温泉を案内してくれました。
温泉の帰りは決まって食事をご一緒しました。どの食事の店でも、仙人は「先生」と呼ばれていました。そして、どの店にも仙人専用のビール用グラスが置いてありました。
仙人は、そのグラスでビールを美味しそうに飲みました。ビールが大好きでしたが、エビスビール以外は飲みませんでした。
県内外の美術館や音楽祭に足を運ぶこともありました。また、演劇を見に行くこともありました。仙人は文化全般に通じ、高い見識をお持ちでした。道すがら仙人から聞いた話は私の財産になりました。
その仙人が去る2月11日に亡くなられました・・・。
深い悲しみに襲われましたが、今は楽しい思い出だけがよみがえってきます。
戦後の文化の黎明期を支え、長きにわたり地元の文化発展に大きく貢献され、生涯文化と共に歩まれた足跡を偲び、衷心より哀悼の意を表するものです。ありがとうございました。
そうそう、その人は長いあごひげが仙人のような風貌でしたが、仙人に似合わず、ベレー帽と赤いダウンジャケットが良く似合いました。
最後に仙人が言いました。「みんなありがとう!僕はこれでおしまい。」
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