モンセラート・カバリェの思い出
スペインの世界的ソプラノ歌手モンセラート・カバリェさんが他界されました。
追悼の意を込めて、彼女の日本公演の思い出を書くことにしました。先ずはNHKイタリア歌劇団公演についてです。
■ NHKイタリア歌劇団日本公演(1956年~1976年)
NHKが招聘した「イタリア歌劇団」の日本公演は、戦後のわが国のオペラ芸術の発展とファンの育成に多大の貢献を果たしました。
クラシックファン垂涎の世界の超一流のオペラ歌手が、この日本の舞台で熱唱したのです。日本初演のオペラも数多くありました。
あの、デル・モナコもテバルディも、シミオナートやタリアヴィーニ、ベルゴンツィ、プロッティ、スコット、コッソット、クラウス、ギャウロフ、パヴァロッティ、ドミンゴ、カレーラス、カバリエなど、世界のオペラ界に燦然と輝く名歌手たちが続々と来日したのです。
これはNHKの偉業と云っても良いでしょう。
1973年に今のNHKホールがオープンして以来、私もこのオペラ公演を聴く機会に恵まれました。もう40年以上も前のことです。
当時はまだチケットのオンライン販売がなく、すべてNHKの窓口でしか入手出来ませんでしたので、徹夜でNHK名古屋放送局の窓口に並んで貴重なチケットを手に入れました。チケットはS席で当時10000円だったと記憶しています。
中でも、モンセラート・カバリェさんが主役の、「アドリアーナ・ルクヴルール(チレア作曲)1976年NHKホール」 は忘れられません。 (日本初演)
モンセラート・カバリェ NHK映像より
■ 大番狂わせ!カバリェ体調不良で代役に
モンセラート・カバリェの歌う第1幕のアリア「私は神のいやしいしもべ です」は本当に感動的でした。会場に響き渡る豊満な声量、驚くほど繊細なPianissimo、かすかに陰りのある魅力的な声質、人間の声がこれほど深く神秘的なものかと驚愕して聴き入りました。
ところがその後、カバリェは体調不良で舞台を降板してしまったのです。公演中に舞台の幕が下ろされることは滅多にありません。オペラはいったん休憩して、ガブリエッラ・ノヴィエッリが代役を演じることになりました。残念ですが、このようなアクシデントは生演奏では避けられません。
その夜は友人の音大生の寮に泊めてもらいましたが、数時間前に聴いたカバリェの声が耳から離れなくてどうしても眠れませんでした。
■ モンセラート・カバリェの死
2018年10月6日、カバリェさんは85歳の生涯を閉じました。
あの日聴いた 「アドリアーナ・ルクヴルール」で共演したテノールのホセ・カレーラス氏は「彼女は素晴らしい声域と完璧なテクニックとをあわせ持っていた。ソプラノ歌手すべてを思い出しても、カバリェのような歌い手はいなかった」 と述べました。
また、スペインのペドロ・サンチェス首相やスペイン王室も最大限の弔意を表しています。
どうか安らかにお眠りください。今も貴女の声が聴こえています・・・
Ecco: respiro appena ....
semplicemente
lo son l'umile ancella
del Genio creator:
lei m'offre la favella,
io la diffondo ai cor ...
Del verso io son l'accento,
l'eco del dramma uman,
il fragile strumento
vassallo della man ...
Mite, gioconda, atroce,
mi chiamo Fedeltà:
un soffio è la mia voce,
che al novo dì morrà ...
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