ひまわりは枯れてこそ実を結ぶ(本の紹介No,034)
■ 白寿(99歳)の画家
安全な道には驚きはない。
画家の堀文子氏は、42歳でご主人を亡くされ、47歳で初の個展を開催、49歳で自然豊かな大磯町に転居、56歳で多摩美術大学教授に就任、61歳で軽井沢にアトリエを開き、69歳で単身イタリアへ、5年間滞在後、アマゾン、メキシコ(77歳)、ぺルー(80歳)、そして81歳でヒマラヤ山麓を取材旅行されました。
86歳で雑誌「サライ」に連載開始、97歳兵庫県立美術館、99歳神奈川県立現代美術館で展覧会、来月(2018年7月)100歳を迎える 現役の日本画家であります。
大正7年生まれの堀さんは、関東大震災、二・二六事件、太平洋戦争を体験されましたが、時代に翻弄されることなく、自然を師として学び、刻々に移ろう命の不思議を描き続けて来られました。
貪(むさぼ)らず奢(おご)らず命を全うする草木を見つめ、生きる者の心得をどれ程学んだことか。
ひまわりは枯れてこそ実を結ぶ 堀文子(小学館2017・11・27発売)
私はその日その日の現在(いま)に熱中し
無欲脱俗(むよくだつぞく)を忘れず
何物にも執着せず
私流の生き方を求めて歩き続けて参りました。
これが私の生きた道です。 (本文より)
死は終わりではなく次の生命の始まり。
ひまわりの畠の終焉は、その時の私の何かを変える程の衝撃だった。ひまわりは頭に黒い種をみのらせ、生涯の栄光の時を迎えていたのだ。
大地を見つめる顔は敗北ではなく、そのやせた姿にも解脱の風格があった。その顔一杯の種は、次の生命を宿し充実していた。 (本文より)
人生に日々感動を求め、あえて困難な道を選び、放浪を楽しみ、死は終わりではなく次の生命の始まりだとの境地に至った作者。
私の母も生きていたら99歳。喜びと悲しみが交錯したその人生にそっと手を合わせました。
■ 堀文子氏は 2019年2月5日にお亡くなりになりました(没年100歳)。ご冥福をお祈りいたします。
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