天に一人を増しぬ
去る7月18日に105歳で亡くなった日野原重明さんの追悼記事を見つけました。 (読売新聞 2017年9月5日付朝刊)
生前、日野原さんと親交が深かった上智大学グリーフケア研究所特任所長の高木慶子さん(80)のお話しが紹介されていました。
日野原さんは、数年前に長年連れ添った奥様(静子さん享年93歳)を亡くされてから、しばらく奥様のことを話すことはありませんでしたが、最近やっと、亡くなった奥様のことを語るようになったと言います。
「最愛の人を亡くした悲嘆に触れられたくないという時期を乗り越えたんですね」 と高木さんは話します。
そして、日野原さんの心情が、講演テーマ 「妻・静子を喪(うしな)いて」 の中に良く表れていると説きます。
「家には一人を減じたり、さはれ天に一人を増しぬ」
日野原さんはこの講演の中でこの詩を紹介し、最愛の人を亡くすことは悲しいことですが、天国で自分を待つ人が一人増えたんだ、と思えば悲しみは癒されると、心情を吐露しました。
「天に一人を増しぬ」 セラ・ゲラルデナ・ストック作 植村正久訳
家には一人を減じたり、
楽しき団欒(まどい)は破れたり。
愛する顔 平常(いつも)の席に見えぬぞ悲しき。
さはれ天に一人を増しぬ、
清められ救われ全(まつと)うせられしもの一人を。 (詩の一部)
この世の別れは悲しいことですが、天国で待つ人が一人増えたと思えば、悲しみは乗り越えられるかも知れません。
「家には一人を減じたり、さはれ天に一人を増しぬ」
日野原さんの奥様は、天国で日野原さんを温かく迎えてくれたことでしょう。あらためてご冥福を祈ります。
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