音楽産業の多様化と行方
個人的見解に過ぎませんが、日本の音楽産業の将来について考えてみました。※当ブログの性格上、ややクラシック音楽寄りのスタンスになります、ご了承下さい。
きっかけは、日本コロムビアの上場廃止のニュース(フェイスの子会社になり 2017年8月1日付で東証1部上場廃止予定)です。日本コロムビアは日本最古のレコード会社です。
確かに音楽産業のバロメーターである CD(12cm) の生産数量は年々減少し、10年前の半分ほどです。生産しても売れない状況が続いています。
(社)日本レコード協会 「日本のレコード産業 2017」 2017・4・5発表資料より(クリックで拡大します)
私もCDを以前ほど買わなくなりました。クラシックに限って言えば、新譜に魅力がありません。普段はYouTubeやストリーミング(ナクソス)でも十分楽しめます。
たまに買おうとすると、CD店にもメーカーにも在庫がありません。したがって、ネットで輸入盤を安く買っています。安く早く確実に入手できます。
CDショップも減っています。寂しい限りです。日本のCDは価格が高いので違法コピーも後を絶ちません。このままでは、CDは過去の遺物になってしまうでしょう。
同 「日本のレコード産業 2017」 資料より (クリックで拡大します)
ただ相変わらず、握手券などを封入したアイドル歌手のCDはそこそこ売れているようです。逆に、おまけ付きでCDを売る商法がなかったら、CDは誰も買わなくなるでしょう。「おまけ」 に支えられた現状は残念です。
CD全体の売り上げは低迷していますが、一方でコンサート(ライブ演奏)は日本中で連日のように開催されています。主催者はコンサートホール(会場)を押さえるのに四苦八苦の状況です。
コンサートの市場規模は動員数の増加に伴い大幅にUPしています。
ぴあ総研 「2016ライブエンタテイメント白書」 2016・9・28発表資料より(クリックで拡大します)
2015年度のコンサート観客動員数は、4486万人。国民の3人に1人は何らかの音楽コンサートに足を運んだ計算になります。また、市場規模は5000億円を超えました。
このことは、音楽の楽しみ方が変わりつつあることを示唆しています。音楽産業の構造が、コンサート中心になれば、それはそれで悪いことではありません。
少子高齢化で、子供の音楽人口は減っていますが、大人は増えています。さらに、従来の聴くだけの受動的な音楽から、自ら演奏して音楽を楽しむ能動的な音楽体験が増えています。定年後の合唱活動などが顕著な例です。
J-POPやアイドル系、ビジュアル系のコンサート・ライブも、会場が一体となって盛り上がる点では参加型と言えます。
生の音楽を楽しむ人に加え、生の音楽に参加する人が増えているのです。そのことが、コンサート人口の増加に拍車をかけています。
また、減少している子供の世界では、ピアノなどの音楽コンクールが盛んです。Nコンなどの合唱コンクールや吹奏楽コンクールも盛んです。コンクールは音楽産業の一角を占めています。ここでは、より質の高い音楽を求める流れがあります。コンクールの隆盛もコンサート人口の増加に一役買っています。
以上の観点から、CDの売り上げだけが、音楽産業のバロメーターとは言えなくなりました。音楽産業は時代と共に多様化しています。
スマホに音楽をダウンロードしたり、ストリーミングで再生したり、映画館でライブビューイングを楽しんだり、シネマコンサート(コンサート会場で映画を映す)、音楽フェス(大規模な音楽イベント)に出掛けたり、カラオケやサークル活動に精を出したりと多岐にわたります。
ライフスタイルの多様化が、そのまま音楽産業の多様化につながっていると思われます。
この先、音楽産業はどのように発展していくのでしょうか。人工知能(AI)が作曲する時代です。ロボットが演奏する時代です。プロジェクションマッピングなどの新技術も導入されています。初音ミクのようなバーチャルシンガーも現れました。
先端技術が導入された音楽と、生の演奏に回帰する音楽。その両者が交差し共存する音楽の先にあるものは何でしょう。
音楽産業の未来を考えることで、都市と地方の文化的格差を無くしたり、クラシック音楽の衰退に歯止めをかけたり、紅白歌合戦やレコード大賞の在り方を考えたり、日本の音楽文化全体を見渡すことが出来ます。
議論を深め、日本の音楽産業の発展を見守りたいと思います。
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