塗り替わったクラシック名曲の作曲家
1751年の今日(1月17日)イタリアの作曲家 アルビノーニが、79歳で他界しています。
代表作は言うまでもなく、「オルガンと弦楽のためのアダージョ ト短調」 。
世界中で愛されている名曲、「アルビノーニのアダージョ」 です。
しかし、この曲の作曲者がアルビノーニでないことが近年分かってきました。
そこで、自分の勉強も兼ねて、同様の事例をまとめてみました。
アルビノーニ
■ アルビノーニのアダージョ (アルビノーニ ➡ レモ・ジャゾット)
実際には、20世紀のイタリアの音楽学者 レモ・ジャゾット(Remo Giazotto, 1910- 98)の曲であることが判明しています。
映画音楽やドラマのテーマ曲、ポピュラー音楽にも使用され、アルビノーニの名を世界に広めました。この美しい曲が、別人が書いたと知った時はショックでした。
■ カッチーニのアヴェマリア (カッチーニ ➡ ヴァヴィロフ)
実際には、1970年頃 ソ連の音楽家 ウラディーミル・ヴァヴィロフ(Vladimir Vavilov 1925-73) によって作曲されたことが判明しています。
バロック時代の様式とは全く異なる音楽ですが、一般的にはバロック期のカッチーニ作曲と誤認されています。多くのCD、楽譜、YouTube などの表記もカッチーニのままです。
■ ハイドンのセレナーデ (ハイドン ➡ ロマン・ホフシュテッター)
実際には、ハイドンと同時代のドイツの修道士 ロマン・ホフシュテッターの作品であることが判明しました。誰もが知っているこの名曲は、長い間ハイドンと思われていました。
ロマン・ホフシュテッターは、ハイドンの熱心な信奉者だったそうです。
■ おもちゃの交響曲 (ハイドン ➡ レオポルト・モーツァルト ➡ エトムント・アンゲラー)
実際には、オーストリア出身の作曲家で神父の エトムント・アンゲラーが1770年頃に作曲したとされます。
まだ多くの人は、モーツァルトの父、レオポルト・モーツァルトが作曲したと思っています。
■ モーツァルトの子守歌 (モーツァルト ➡ ベルンハルト・フリース)
実際には、モーツァルトと同時代の医師 ベルンハルト・フリースの作品です。
長年にわたり、作品番号 K(ケッヘル)350 が付けられ、モーツァルトの作品とされてきましたが、近年の研究により判明。 K番号も訂正されました
尚、フリースは、モーツァルトが死亡した翌日に服毒自殺したと言われています。 | |
享年は25歳でした。 |
フリース作曲は徐々に知られてきましたが、慣例ではモーツァルトとされる場合が多いようです。
作曲家の名前が塗り替わった名曲の中で、現在判明しているものを挙げてみましたが、まだグレーゾーンな曲が多く存在します。特にバロックから古典時代は資料も乏しく、検証に時間もかかるようです。
最近では、あのバッハの「無伴奏チェロ組曲」が、バッハの2番目の妻 アンナ・マグダレーナが書いたのではないか、という説がクローズアップされてきました。
※参考サイト NHKBS ミセス・バッハ~バロックの名曲は夫人によって書かれた~(リンク切れはご容赦下さい)
今後研究が進むと、グレーゾーンの中から 「本当の作曲家」 が判明するかも知れません。興味はありますが、ショックは受けたくはありません。
「そっとしておいてくれ・・」 と、266年前の今日亡くなった アルビノーニが訴えているのが聞こえるようです。
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