合唱団 CORMI デビューコンサートを聴く
世界的に活躍する ソプラノ歌手 飯田みち代さんが立ち上げた新しい合唱団 「CORMI」 の第1回演奏会に出掛けました。
あまり馴染みのない現代作曲家の作品にもかかわらず会場は満席で、開演前から熱気に包まれていました。 未知の曲、未知の合唱団への期待の高まりでしょうか。
オルバーン・ジェルジュ(1947-) ミサ曲 第11番 (改訂版日本初演)
カール・ジェンキンス(1944-) レクイエム
ソプラノ 飯田みち代 メゾソプラノ 三輪陽子 尺八 平野倜山 ソプラノ(童声) 酒井千代音
指揮/井崎正浩 名古屋室内管弦楽団 (2016・10・23 ザ・コンサートホール)
オルバーンのミサ曲は、現代音楽とはいえ古典的な調性で書かれており、弦楽合奏を伴う合唱は生き生きとした表情を見せ、随所に新鮮な響きや新しい発想を感じましたが、とても聴き易く、初めて聴くこの曲にすっかり魅せられてしまいました。
特に、弦のピッツィカートに乗って歌われる 第4曲ベネディクトスは、ソプラノソロによって極めて美しく歌われ、心が洗われる思いでした。 そして、アニュスデイでは劇的に盛り上がって、「アーメン(Amen)」 と唱され、この魅力に満ちたミサ曲は終曲しました。
ジェンキンスのレクイエムは、今までに全く聴いたことのない未体験ゾーンの音楽でした。
指揮者の井崎氏の解説によれば、「厳格でアカデミックな音楽、ジャズ風のリズム、民族音楽的あるいはポップ調なメロディなどが混在し、むしろここではクラシックというひとつのジャンル(型)に収められるものではない・・・」 とあります。
事実、合唱、ソロ、児童ソロ、弦楽器、ホルン、打楽器、ハープ、さらに尺八を加えた特異な構成と、多様な音楽ジャンル、歌詞に日本の「辞世の句」を採用している点は、新しい音楽世界観の創造といってもよく、聴き手に強烈な印象を与える作品と言えます。
第2曲ディエス・イレの高揚感、第3曲以後たびたび奏される尺八の日本的風情、琥珀色をした絶品のソプラノソロ、メゾの豊潤な歌唱、どこまでも伸びやかなコーラス、ハープの洒落た音律、独特のリズム、ビートなど・・・
「宗教音楽という衣を着たクロスオーヴァー的な音楽」(井崎氏解説)が、一流の演奏によって、世に出されたコンサートでした。
日本では無名に近い オルバーンとジェンキンスの宗教音楽を2曲、深い感銘をもって聴き終えました。
アンコールは、消え入るように終わった「家路」と、対照的に大いに盛り上がった 「ディエス・イレ」 の2曲、あらためて合唱団のレベルの高さを感じました。
鳴りやまぬ拍手の嵐・・・興奮気味の客席からは、大きな歓声と惜しみない拍手が送られていました。
世界に通用する合唱団が誕生した瞬間に立ち会えた聴衆は幸運でした。演奏者の並々ならぬ熱い思いが結実したコンサートでした。本日のすべての演奏者に敬意と謝意を表したいと思います。
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