文化は国境を越える/オバマとの面会の意味
2016年、アメリカのオバマ大統領は日本とキューバを訪問しました。その時実現した面会シーンは世界中に報道され大きな感動を呼びました。
~ 日本でのシーン ~
今年5月、広島から世界に配信された「オバマ大統領と森重昭さん(79)の抱擁の瞬間」。
被爆者である 森さんは、40年間 たった一人で 「被爆死した米兵捕虜」 の調査を行ってきた人です。
■ 森さんは、ヤマハの社員でした。
当時8歳の森さんは、爆心地から2,5Kmで被爆しました。言語に絶する体験を経て、30歳で 「ヤマハ」 に入社しましたが、休日を利用して膨大な資料を調査し、関係者を訪ね、被爆死した12名の米兵捕虜を突き止めたのです。
ヤマハ在職中に、「世の中が平和でなければ音楽は栄えない。」 と実感し、「平和」への思いを強く持たれるようになったそうです。
生き残った者の使命として真実を後世に伝え、人種を越えて平和を希求してこられた森重昭さん。 その奥様(ソプラノ歌手)もまた、平和への祈りを歌い続けてみえます。
※ 参考 ヤマハ社内報 「Symphonia」
~ キューバでのシーン ~
昨年4月、米国とキューバは54年ぶりに国交を回復しました。
中米パナマでの首脳会談に続き、今年(2016年)3月には、88年ぶりに米国大統領がキューバを訪問し、両国の新たな時代の幕が開けました。
この時、ラウル・カストロ氏と共にオバマ氏を出迎えたのが、キューバを象徴するバレリーナでキューバ国立バレエ団芸術監督のアリシア・アロンソ(95)さんでした。
アリシアさんは、20世紀バレエ界において最も偉大な人物の一人ですが、若い頃に渡米して、アメリカン・バレエ・シアターで活躍していました。
■ 盲目のバレリーナと、映画 「ホライズン」
視力を失いながらも踊り続け、バレエ界で最高位の“プリマ・バレリーナ・アッソルータ”の称号を得た伝説のバレリーナ、アリシアさん。
オバマ大統領も敬意をもって面談したことでしょう。
この度、困難を乗り越えて挑戦を続けた盲目のバレリーナの驚くべき人生が映画化されました。
映画 「ホライズン」 (原題"Horizontes") 2016年11月12日(土) ~ 全国ロードショー
人種を越えて「平和」 を渇望した被爆者の森重昭さん、失明しても希望を失わずバレエ界の頂点に立ったアリシアさん。
その二人と、オバマ大統領との面談は何を意味するのでしょうか。
戦争やテロを抑止するものは、決して軍備増強や核兵器開発ではありません。真に人類に和解をもたらす力は、芸術の普遍性と崇高さにあると思います。
対立からは何も生まれません。芸術という媒体を通して 「心を通わせる」 ことが、国境を越え、「平和に至る道」 の第一歩だと信じます。
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