ブラームスが聴いた 「六段の調(しらべ)」
明治の半ば、ウィーンの日本公邸で、あの大作曲家ブラームスが、日本の筝曲 「六段の調(しらべ)」(八橋検校曲) を実際に聴いたと言う事実は、あまり知られていません。
1985年(昭和60年)、ウィーン楽友協会に眠る ブラームスの遺品の中から、この時ブラームスが書き込んだ 「六段の調」 の実物の楽譜が発見され、研究者によって、この驚きの事実が発表されました。
130年ほど前、間違いなくブラームスは、日本の 「六段の調」 を聴いていたのです!
文化勲章受章者で日本画の 守屋多々志(もりやただし 大垣市出身)画伯は、この史実をもとに、1992年に絵画 「ウィーンに六段の調(しらべ)」 を制作、発表しました。
「ウィーンに六段の調」 (守屋多々志美術館所蔵 美術館公式サイト)
口髭を蓄えたブラームスが、戸田公使の極子(きわこ)夫人の演奏に耳を傾ける姿が描かれています。 極子夫人は、岩倉具視の次女で、山田流の琴の名手でした。
今回、守屋多々志美術館と宗次ホールの提携企画として、当時を忠実に再現したコンサートが開かれました。
♪ ウィーンに六段の調 ~ブラームスが聴いた箏の音~ 2016・5・29 宗次ホール
筝 細井美欧 語り 六嶋由美子
ヴァイオリン 天野千恵 チェロ 瀧上久美子 ピアノ 河村義子
筝の細井さんは、絵画の夫人と同じ鹿鳴館時代の衣装を身にまとい、絵画から飛び出したかのような錯覚を覚えました。絵画の極子夫人そっくりです。
六嶋さんの、明瞭で表情に富んだ 「語り」 で物語は進行しましたが、「六段」 「みだれ」 の本格的な演奏はもちろん、ブラームスの傑作 「ヴァイオリンソナタ第1番 雨の歌 第1楽章」、「ピアノ三重奏曲第1番 第1楽章」 など、質の高い演奏を聴かせていただきました。
アンコールでは、満員の客席の手拍子も加わって盛り上がり、このコンサートは終演しました。 美術館とのコラボ、とても意義のある企画(レクチャーコンサート)だったと思います。
このように、音楽の都ウィーンを舞台に、ブラームスと日本の筝曲との出会いがあったわけですが、日本の伝統音楽が、その後のブラームスの作風に何らかの影響を与えたことは間違いないと思います。
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