羊と鋼の森 = ピアノ 書名の発想力
2016年の本屋大賞が発表され、宮下奈都氏(1967年-)の 「羊と鋼(はがね)の森」 (文藝春秋) が大賞に輝きました。
「本屋大賞」 は本屋の店員さんが、「一番売りたい本」 を選ぶもので、「売り場からベストセラーを作る」 として13年前に誕生した文学賞です。
今年も全国435書店が投票して、又吉直樹氏の 「火花」 などノミネート10作品から大賞を選出しました。過去の受賞作品の多くが映画化(※)、ドラマ化されています。
大賞作品 「羊と鋼の森」 は、ピアノ調律師を志す青年の成長過程を描いた小説で、その美しい文章力が評価されたようです。
それにしても、書名 (タイトル) が良く考えられています。
「羊(ひつじ)」 とは、羊毛で出来た 「 ピアノハンマーのフェルト」 のことです。 また、「鋼(はがね)」 とは鋼線を使用している 「ピアノ線」 のことです。
ピアノは言うまでもなく、そのフェルトがピアノ線を打弦して音が出る仕組みになっています。
「森」 というのは、88本のハンマー(フェルト)と、約230本のピアノ線からなる 「ピアノ」 の内部を表しています。特にアップライトピアノの場合、多くのピアノ線を 「木」 に見立てて 「森」 と表現したのでしょう。
後日、この本を読んだところ、著者はグランドピアノの内部を想定しているようでした。
また、ピアノには 「響板」 などに多くの 「木材」 が使われており、その意味でも 「森」 と呼ぶのに相応しいかも知れません。
しかし、ピアノを 「羊と鋼の森」 と表現した豊かな発想力には驚きました。
そう考えると、調律師は生い茂る森の中の案内人であり、樹木のドクターであり、調和のとれた森の自然を、自らの感性で創出する 「芸術家」 と言えるのではないでしょうか。
※ 2018年に東宝配給で映画
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