第17回ショパンコンクール入賞者ガラ・コンサートを聴く
結果発表から3か月、日本でも入賞者ガラ・コンサートツアーが始まりました。(1・23岩手、1・24大阪、1・26新潟、1・27愛知、1・28~29東京、1・31札幌)
入賞者6人全員が一堂に集まり演奏を披露しますが、各会場ごとにプログラムが違っていますので、ファンなら全ての会場に足を運びたいところでしょう。
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■ 6人中5人が、ヤマハを弾く (1・27愛知県芸術劇場コンサートホール)
1位のチョ・ソンジン氏以外は、ヤマハ(CFX)を弾きました。ヤマハはショパンコンクールを担当した調律師 花岡昌範氏が姿を見せていました。ヤマハの並々ならぬ意気込みが感じられます。
当日のプログラムは下記の通りですが、ショパンのピアノ協奏曲が1番、2番とも聴けるのは珍しいことです。 また、開演18:45、終演21:35と長時間のコンサートでした。
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■ あふれる音楽、ケイト・リウ(リュウ)の幻想ポロネーズ
見かけはごく普通の女性ですが、音が鳴った瞬間、彼女の世界が広がります。音楽が自然で作為はなく、豊かな曲想があふれ出て尽きることはありません。まだ21歳の若さですが、あらゆる音楽を内包しており、悟りの境地のような、瞑想にも似た深遠な音楽性を感じました。
ドミトリー・シシキン氏のしなやかなスケルツォ、最年少イーケ・(トニー)ヤン氏の美的な舟歌、エリック・ルー氏の絶品とも言える雨だれ前奏曲、シャルル・リシャール=アムラン氏は、本選で弾いた2番のコンチェルトを、自由かつ堂々と演奏しました。包み込むような安心感と、ストレートに訴えかける音楽が、とても魅力的なピアニストです。
ここまで5人がヤマハを弾きましたが、やはりCFXは高音の伸びと言い、低音の豊かな響きと言い、文句なく最高のコンディションに調整されていました。
スタインウェイは残念ながら(私の席からは)、音に厚みが無く、透明感はあるものの、音量にも乏しく、かつての王者の貫禄は感じられませんでした。ただ聴く位置(席)によっては違う印象だったかも知れませんので、何卒ご了承下さい。
■ チョ・ソンジン氏の協奏曲1番
長いオーケストラの前奏、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団(ヤツェク・カスプシック指揮)の演奏は、水を得た魚のように表情豊かでした(2番は慎重な演奏でしたが)。チョ氏も、このオケにだいぶ慣れてきた感じです。
どこか優等生的に見えるチョ・ソンジン氏は、力強さとデリケートな感性を併せ持つ成熟したピアニストです。この日も、オーケストラを引っ張るほどの、堂々とした見事な演奏でしたが、緩徐楽章(2楽章)の澄んだ透明感が忘れられません。
まだまだ伸びしろがある将来性抜群のピアニストです。アンコールは、期待に応えて「英雄ポロネーズ」でした。やや乱れた箇所もあったものの、スケールの大きな伸び伸びした演奏は弾く喜びに満ちたものでした。
今回の6人のみならず、ショパンコンクールに挑戦した全ての若きピアニストの次なるステージを期待して、会場を後にしました。
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