是か非か? 問われる 「 本 de ドミノ 」
7月に開館する 岐阜市立中央図書館(ぎふメディアコスモス内)のオープニングイベント 「本 de ドミノ (本でドミノ)」 が、日本中から注目を集めている。
「 本 de ドミノ 」 は、市民から寄贈された古本1万冊で ドミノ倒しを行い、ギネスに挑戦しようという企画である。
画像出典 http://hondedomino.galaxy.bindcloud.jp/
このオープニング企画に対し、全国から賛否両論の声が上がっている。
公立図書館のオープニングに、本を並べてドミノ倒しをするというのは、誰が考えても抵抗がある。
その証拠に、ヤフーの意識調査では、賛成32,9%に対し、反対が56,1%と、反対意見が過半数を上回っている。 ( 6月4日現在 回答は約2万票 ) ネット調査は、どうしても高齢者の意見が反映されにくいので、実際の反対はもっと多いかも知れない。
実行委員会(40代~50代の会社経営者らで結成)は、ドミノ倒しに使われる本は、すべて不用になった古本だと言うが、寄贈を募ってまで古本を使うということは、さすがに新品の本を使うには 「ためらい」 があるからではないか。
古本なら、多少粗末に扱っても許されるのだろうか? 古本は価値が無いとは誰も言い切れないし、不用な本と言っても、人によっては捜し求めていた 「貴重な本」 の場合もある。
要は、本をドミノの代わりに使ってバタバタと倒して遊ぶ行為が問われている。たとえギネスの世界記録が達成出来ても、あまり名誉な事とは言えないだろう。 もともとギネスは話題性が重視される記録なので、名誉など存在しないかも知れないが・・・
2013年、シアトルの公共図書館が実施した「本のドミノ倒し」 のYoutube 動画を見る限り、本は倒れるだけでなく、数十センチの高さから落とされたり、かなり粗末に扱われていて、あまり気分が良いものではない。https://www.youtube.com/watch?v=Np450xMSncE
あらゆる物が、大量に生産され、大量に消費され、大量に廃棄される今日の社会に於いては、本も例外ではなく、単なる 「モノ」 でしかない。新刊本は何と年間8万点にも及ぶ。
物が無い時代に育った団塊の世代(60代)や高齢者は、紙や鉛筆は貴重だった。習字の練習は、古い新聞紙を半紙サイズに切って使った。鉛筆は短くなっても使い切ったものだ。
そして、知識を得る手段は、教科書や学校の図書室、情報は新聞とラジオの時代だった。
テレビとネット社会が到来して、知識や情報も 「モノ」 として大量にあふれるようになった。相対的に本の価値は下がったと見るべきだろう。 でなければ、今回のドミノ倒しなど考えられない。
そうした時代の変化の中で、今回のイベントは、賛否両論の意見を創出して、話題を作った点は成功したと言える。 新聞やテレビ、ネットで話題になれば、この図書館の知名度が全国的にアップしたことは確かである。
今後も、賛否は平行線のまま、新図書館はオープンすることになるだろう。 今回の企画が評価されるか、汚点を残すかは、オープンした新図書館の運営次第かも知れない。館長の手腕と、職員の誠実な対応が期待される。 地域の文化の拠点として、市民に愛される図書館になってほしい。
それまでは、「是か非か?」 の答えは保留にしておこうと思う。
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