脈打つ躍動感 期待のオーケストラ
名古屋室内管弦楽団 第3回定期演奏会を聴きに出かけました。 (2015年・6・19(金) しらかわホール)
この室内管弦楽団は設立されたばかりの、フレッシュなオーケストラですが、前回の定演に引き続き、今回もとても素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
♪ 室内オケと言えば、20日 東京では、その名も 「トリトン晴れた海のオーケストラ」 という新しい室内管弦楽団の第1回演奏会が開かれたそうですが、やはり期待通りの質の高い演奏だったようです。
室内オケは重厚さには欠けますが、各パート個人の音楽が良く見えて、曲のディテールが鮮明になることは魅力です。 アンサンブルの妙が楽しめますが、その分、個人の技量が重要視されます。
1曲目は、ショパン ピアノ協奏曲第1番。 田中祐子氏の棒による オーケストラの長い序奏は、生き生きとした躍動感にあふれ軽やかでした。
全体として、田中祐子氏の指揮は、踊るように身体が揺れて、音楽も表情豊かに流れていきます。 全力疾走する姿は、音楽への真っ直ぐな愛情を感じさせてくれるもので好感が持てました。
ピアノは酒井有彩氏でしたが、プロフィールによると、海外も含め豊富なキャリアをお持ちの本格的なピアニストのようです。
しなやかなタッチから生まれるキラキラした音色と、低域から高域までバランスの取れた音感、自然な音楽の表情、感情を抑制した内面重視の音楽と、どれも素晴らしく、田中祐子氏の棒と良くマッチしていました。
ステージ上は、落ち着いた身のこなしが印象的な素敵なピアニストで、今後のご活躍が期待されます。
しらかわホール(693席)は広くないので、コンチェルトでも、ピアノの音が良く聴こえ嬉しいのですが、第2楽章は、どうしてもピアニッシモが出しにくく、オケの音量が大きく聴こえてしまいます。 ホールの宿命かも知れませんが課題でもあります。
後半のディーリアスは、デリケートな感性を感じましたが、このオケは、「静」 の音楽よりも 「動」 の音楽により存在感があるようです。
実際、メインプロのサンサーンス 「交響曲第2番イ短調」 は、エネルギッシュで鮮やかな色彩感のある秀演でした。 田中祐子氏の左手が、鋭く、各パートに支持を出しますが、オケの反応がキビキビとして視覚的にも楽しめました。 成長著しいこのオーケストラの将来がとても楽しみです。
さて、客層があまりに年配者が多く驚きました。 地方のクラシックコンサートは高齢者のお客さんで成り立っていますが、今回は特に目立ちました。 ステージと、客席のギャップに衝撃を覚えるほどでした。
せっかく良い音楽家が増えても、聴衆が育っていません。 当然ですが、音楽家だけではコンサートは成り立ちません。 若い世代に見捨てられたクラシック音楽に明日はあるのでしょうか・・・
♪ ご参照 当ブログ記事 クラシック音楽衰退の原因と対策
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