指揮台で倒れるということ
このほど、韓国を代表する 大邱(てぐ)市立交響楽団の定期演奏会で、アンコール 「愛の挨拶」 演奏中に、常任指揮者の ジュリアン・コバチェフ氏(60)が、心臓マヒで突然倒れるという出来事があった。
聴衆の中にいた数人の医師がステージに駆け付け、心肺蘇生を行った。また、同じく聴衆の中にいた消防官が、市民会館内に備え付けられていた自動体外式除細動(AED)で応急処置を行った。その直後に救急車が到着し、コバチェフ氏は病院に搬送された。倒れてからわずか16分で、このような迅速な処置が行われた。
昨年4月に大邱市立交響楽団の常任指揮者兼音楽監督に就任したコバチェフ氏はブルガリア出身で、世界的な指揮者の故ヘルベルト・フォン・カラヤンの弟子だった。
現在コバチェフ氏は順調に回復しているという。 (以上、記事・写真は chosun Online 6/1より)
最近は、AEDなどの救命装置が普及して、突然の事態にも対応できるようになったが、昔から、音楽家が演奏中に心臓病などで倒れるという事故はかなり多い。
実際に、イタリアの指揮者 ジュゼッペ・シノーポリ氏は、ベルリンで、「アイーダ」 第三幕上演中に心筋梗塞で倒れ、54歳で急逝している。
指揮者に限らず、オペラ歌手やヴァイオにニストが演奏中に亡くなるケースも多い。
大事には至らなかったものの、日本でも、元ソニー社長で音楽家の大賀典雄氏が、北京でオーケストラの指揮中に倒れ、長期療養生活を余儀なくさせられたことがある。
あの指揮者フルトヴェングラー氏も、ウィーンフィルとの第九リハーサル中に倒れている。
ある指揮者が、「 死ぬときは、指揮台で倒れて、そのままあの世にいきたい。」 と話していたことを思い出した。
果たして、音楽家はステージの上で演奏中に死にたいのだろうか? 多くの聴衆に囲まれて、大好きな音楽の演奏中に死を迎えたいのだろうか。
ちょっと格好つけ過ぎのような気がするが、それが本望なら、そういう死に方もありかも知れない。
以前当ブログで、フィナーレ (FINALE マウリシオ・カーゲルMauricio Kagel 作曲) と言う曲を紹介させていただいたが、この映像を見る限り、指揮台で倒れることは演技力も必要になるようだ。
誰もが、理想の死に方を考えるが、その時がいつ来るのか、どんな死に方をするのか、 「神のみぞ知る」 のは言うまでもない。
↓実際に指揮者が倒れる前代未聞の画像 (指揮 飯森範親/山形交響楽団)
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