ほのぼの一家の憲法改正ってなあに? 本の紹介(No.014)
ご存知、自民党憲法改正推進本部制作の 「憲法改正の広報マンガ」 ですが、是非お読み下さい。 (平成27年4月発行)
ここ から、全ページ( 68ページ ) が読めます。
率直に感想を言うと、なかなか良く描けています。普通に面白いマンガでした。
要は、GHQ 連合国軍総司令部 (General Headquarters) が、たった8日間で草案を作った 「押しつけの憲法」 を、もっと今の時代に合ったものに作り変えようという内容です。
■ 平和憲法のくだりでは、
「戦争を放棄すれば、戦争がないと思っとるのか?」 と、おじいちゃんが詰問する場面で、
「え? 違うの 」 と、驚く家族。
「じゃあ、もし明日どっかの国が攻めてきたらどうするんじゃ?」 と、おじいちゃんは続けます。
「え? え? じゃあどうなんの? 一方的にやられるってこと!?」 と、顔面蒼白になって震える嫁の姿。
■ ここで言いたいことは、
今のままでは、日本はどっかの国が攻めて来たら大変なので、憲法を変えて 「戦争が出来る国」 にしておこう。 と言うことでしょうか。
おじいちゃんは、さらに・・・
「敗戦した日本に、GHQが与えた憲法のままでは、いつまで経っても日本は敗戦国なんじゃ。」 とつぶやきます。
アメリカに 「押し付けられた憲法」 だと強調されています。
押し付けられたものが悪いなら、ペリー来航以来、洋服もコーヒーも、洋楽も野球も、すべて欧米から押し付けられたものでした。
日本中の米軍基地も、原発も、兵器も、旅客機も、医療も、保険も、米国債も、そして郊外型スーパーも、その多くは押し付けられたものです。
日米地位協定も、建設中の辺野古基地も、TPPも押し付けられたものといえるでしょう。
本当に、日本にとって不利益なものは何でしょう? よく考えてみる必要があります。
■ このマンガでは、(マンガの表紙にはほとんど登場していない) 92歳のおじいちゃんが、家族全員の考え方を巧みにリードしているのが特長です。少し無理があるように思いますが・・・
しかし、読まれた感想は人それぞれでしょう。 考え方は自由です。
■ ただ、現憲法の草案が、GHQ(アメリカ人)によって8日間で作られたという説明は事実と違うようです。
戦後の研究によると、当時、法学者であった 鈴木 安蔵(やすぞう)が、憲法研究会でまとめた 「憲法草案要綱」 が、GHQに大きな影響を与えたことが判明しています。
そして、Wikipediaによると、その研究会の中心人物だった鈴木は、日本国憲法の間接的起草者といわれていると書かれています。( Wikipedia 鈴木安蔵 )
その辺りのことは、映画「日本の空」に詳しく描かれています。(ご参考に)
色々と憲法の草案について調べていくと、ユダヤ人ピアニスト レオ・シロタ氏の娘で、GHQに所属していた ベアテ・シロタ・ゴートン(当時22歳)の存在も気になります。日本育ちの彼女は、社会保障と女性の権利の分野で、憲法草案に大きな役割を果たしましたが、その理念は今日も色褪せていません。 ( Wikipedia ベアテ・シロタ・ゴードン )
まだまだ調べてみる必要がありますが、調べれば調べるほど、このマンガには都合よく解釈されている箇所が多く、問題が多いように思います。
■ 押しつけの憲法でも、平和な 「いい国」
自民党の広報マンガが強調する 「押しつけの憲法」 で、日本は戦後70年平和を守ってきました。
仮に 「押しつけの憲法」 であったとしても、国民が平和であれば問題ありません。このマンガが危惧する「環境」や「災害」も現行法で対応してきました。 世界一 「治安」 の良い国も堅持してきました。 言論の自由も守られています。
マンガでは、最後のシーンで、昇る朝日を見て、「朝日が昇るぞ」 「日本っていい国よね」 と、言うセリフが印象的でしたが、その通り、日本は平和な 「いい国」 です。 実は、このマンガも認めているのです。
無理をして、憲法を変える必要があるのでしょうか。
本は紹介しましたが、その中身を鵜呑みにすることは危険だと思いました。
ただ、このマンガを読んで、憲法に関心を持つ人が増えたなら、このマンガが果たした役割は大きかったと思います。
今、一番大切なことは、自国の憲法に関心を持ち、議論を深めることです。そして、多様な意見に耳を傾け、文献を読み解き、将来あるかも知れない 「国民投票」 に向けて、自分なりの意見を持つことではないでしょうか。
そのような考えに至らしめた 「このマンガ」 の制作者に御礼申し上げます。
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