ロマンと癒しのピアノ
先日(2015/2/22)、ピアニスト佐藤由美のチャリティピアノリサイタルがありました。地元でホームレスなどの支援活動をされている「のわみ相談所」「NPO のわみサポートセンター」の主催です。
会場(一宮市民会館大ホール)は、佐藤さんのファン、後援会、知人などで、広い一階席がほぼ埋まっていました。
にこやかに登場した佐藤さん、簡単に曲のレクチャーをしてくれました。とてもリラックスした様子で自然に話をされるところに好感が持てました。
実は前日に、あるフルートアンサンブルを聴いてきましたが、やはりトークが素晴らしく、楽しい気分になれます。これからのアーティストは、演奏だけでなく、いろいろな才能が要求されますから大変だと思いました。
さて演奏の方は、1曲目がシューベルトの即興曲Op142-3でした。ご存知の方も多い名曲です。プログラムのスタートに相応しい優雅な小品です。すらすらと流れるように歌うピアノ、もう佐藤由美の世界が始まったようです。
次は有名なベートーヴェンの月光ソナタ、第1楽章を気持ち良く聴いているうちに、脳内にアルファー波が満たされ、ウトウトしてしまいました。 コンサートでは、まゝあることです(安心して聴いている場合のみ)。 そして、3楽章もよどみなく綺麗に演奏してしまうところが佐藤さんの真の実力だと思います。テクニックの難しさが演奏の表面に全く感じられないのです。
グリーグのペールギュント第1組曲は、もとの管弦楽曲を、グリーグ自身がピアノ用に編曲したものです。このホールのピアノは少しおとなしいので、どうしてもオーケストラの迫力や色彩感が表現しきれません。 相当苦労されたと思いますが、アニトラの踊りは最もピアノになじんで違和感なく聴かせていただきました。
メインのシューマン謝肉祭Op.9は、独自の標題のついた21曲からなる作品ですが、多分に詩的で変化に富んだ、まさにカーニバルのような多彩な曲です。
ある人が、おもちゃ箱のような作品と評した通り、ややまとまりがない、不安定な要素もあり、全曲を通してどのように弾くか、ピアニストの腕の見せ所になっています。
佐藤さんは、標題をいくつかレクチャーしたうえで、お客さんがイメージし易いよう表情豊かに演奏してくれました。 多感な青年シューマンと佐藤由美がどこかでリンクしたかのような錯覚におちいるほど、ロマン溢れる音楽に聞こえました。
どれも独創性のある曲ですが、タイトルを見ながら聴くと何となく理解出来るのは不思議です。特に14曲の 「発見 」( または 再会 ) は、めぐり会った喜びが、軽快なタッチと美しい旋律から、客席にも伝わるステキな演奏でした。
疲れも見せず、アンコール2曲。 「トロイメライ」 を聴いて、ますますアルファー波が充填され、大いに癒されました。
ロマンと癒しのピアニストを聴いた感想でした。益々のご活躍期待申し上げます。
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