音楽評論家 遠山一行氏亡くなる
音楽関係者の訃報が続きます。
遠山一行(かずゆき)氏と言えば、アンチカラヤンで有名でした。
カラヤンの大衆迎合的な音楽を批判し、フルトヴェングラーの言葉を借り、「芸術は非大衆的なものだ。」 として、芸術が商業主義に陥るのを嫌いました。
「すべての人にベートーヴェンを!」 と言ったカラヤンを、遠山氏は許せませんでした。遠山氏から見たら、ベートーヴェンはそんな安っぽい音楽ではなかったのです。
常に芸術の価値を高めようとした遠山氏にとって、万人受けするカラヤンの音楽は芸術とは言えず、単なるムードミュージックにしか聴こえませんでした。
しかし、カラヤンのお蔭で、クラシック音楽は世界中に広がりました。完璧なまでに美しい彼の演奏は、多くのファンを魅了したのです。
芸術の本質とは? 芸術の価値とは? 難しい問題です。
確かに、ベートーヴェンには普遍的な芸術が認められますが、そもそもベートーヴェンこそが、芸術を大衆化した革命的音楽家でした。それまでの貴族の為のクラシック音楽を、一般大衆のために解放したのです。
遠山氏の芸術観は理解できますが、一方で、芸術の大衆化も歓迎すべきことです。
誰にも理解されない孤高の芸術。分かる人には分かる高尚な芸術。誰にでも分かる大衆化した芸術。
誰にでも分かる芸術は、もはや芸術とは呼べないのでしょうか。
遠山氏の訃報に接したことで、芸術の在り方について、あらためて考える機会に恵まれました。
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