震災3年半 見えない未来を一枚の絵画に託す
吉田調書の誤報をめぐって朝日新聞トップが謝罪した。
従軍慰安婦の吉田証言が虚偽として、記事を取り消したことについても、遅きに失したと謝罪した。 謝罪についてジャーナリストの池上彰氏は評価している。
二人の吉田なる人物にかかわる報道によって、朝日の権威も信用も地に落ちた。 朝日の歴代の社長や幹部はこの事態をどう見ているのか。 特に慰安婦問題は事件をねつ造し、日本の国益に計り知れない損害を与えた。現トップが謝罪して済むレベルではない。
時期を同じくして、吉田調書と吉田証言の問題があるが、震災3年半の節目にあたり、ここでは原発事故に焦点を当てたい。
吉田所長の調書公開により、原発事故当時の生々しい状況が見えてきたが、この公開も遅きに失した感がある。すでに国会の事故調査委の最終報告は終わっている。
事故調査委は、福島第1原発の事故は人災だったと報告している。それなのに、一体誰が責任を取ったのか? 東電幹部も、原子力安全保安院も、原発を推進した自民党も、当時の政権も、誰も責任を取っていない。そのことの方が重要に思える。
東電の吉田所長も以前は原発の地震・津波対策の責任者(原子力設備管理部長)だった。報道によると、2008年3月時点で、社内チームが最大で15,7メートルの津波が予想されると試算したにもかかわらず、対策を先延ばししている。
この期に及んで、調書の公開はどれほどの意味があるのだろう。すべては遅きに失したと言うよりほかない。
震災から3年半、未だ24万6千人(原発関連は12万人余)が故郷を追われ避難生活を強いられている現状の中で、最も大事な原発事故の収束が遅れている。汚染水の垂れ流しは止めることが出来ない。除染も進まない。
また、震災関連の自殺者は、内閣府の調査によると福島県で56人、宮崎で37人、岩手で30人となっている。先日も原発事故に関係した自殺が裁判所に認定され4900万円の支払いが命じられた。
人的被害ばかりではない。中間貯蔵施設の建設には、1兆数千億円掛かる。今後の除染にはざっと5兆円掛かるという。 そして廃炉には少なくとも40年は掛かるらしいが、その間の費用は別途必要になる。まさに天文学的数字である。
湯水のごとく税金が投入されるだろう。復興特別税の徴収は今後25年間、住民税の加算は10年間続く。電気料金も上がるだろう。それでも足らない。原子力発電が安いなどという虚言は絶対に通用しない。
しかし、川内原発の再稼働はゴーサインが出た。万一事故が起きても誰も責任は取らないから、今回のように税金を上げれば済むだけの話だ。
一方で、経団連は企業献金の復活を目指している。企業と政治家の癒着を無くそうと、政党交付金制度が出来たのに、献金が復活したら、政党は二重取りとなる。本来なら、政党交付金(税金)は廃止すべきだろう。今後を注視したい。
このように、素人評論家の私がちょっと考えただけども問題が山積のように思える。一体日本はどこへ向かっているのか。
特定秘密保護法、集団的自衛権、消費増税、原発再稼働などと、世論調査の民意が反映されないまま政治が進んでいる。ネガティブに考えたくないが、日本の未来に明るい光はあるのだろうか。
森本草介 画 「 未来 」 ( 画集 「光の方へ」より )
震災の日、写実画家の森本氏は、千葉のアトリエで大きな揺れに見舞われた。不思議にもこの絵が無傷のまま残ったという。だから、「未来」と名付けた。
静寂の中にたたずむ女性の姿に、安らぎが漂う。視線の先には平和への揺るぎない信念を感じる。 気高い美しさだ。
せめても、この一枚の絵画の中に明るい未来を見出して、現実から逃避することにした。
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