自筆譜の発見の意味するところ
AFP(9・24配信)によると、モーツァルトのピアノソナタで最も有名な「ピアノソナタ第11番イ長調K331」の自筆譜が発見されたそうです。
詳しい経緯は分かりませんが、この自筆譜はハンガリーの国立セーチェーニ図書館で公開されます。
国立セーチェーニ図書館公式サイトよりhttp://translate.google.co.jp/translate?hl=ja&sl=hu&u=http://www.oszk.hu/&prev=/search%3Fq%3DOrsz%25C3%25A1gos%2BSz%25C3%25A9ch%25C3%25A9nyi%2BK%25C3%25B6nyvt%25C3%25A1r%26hl%3Dja%26rlz%3D1T4GGNI_jaJP565JP565
230年の時を経て、あの有名な「トルコ行進曲付」ソナタのモーツァルト直筆の楽譜の発見は、音楽界にとってBIGニュースではないでしょうか。
何故なら、この発見によって今後ソナタK331の楽譜が改訂される可能性があるからです。
この楽譜は、1784年ウィーンの出版社アルターリア(Artaria)から初版が発行されていますが、今後は研究者によって自筆譜との詳細な比較が行われるはずです。
実際、1990年に自筆譜が発見された「ピアノソナタ第14番ハ短調K457」では、従来の出版譜と詳細に比較した結果、テンポ、強弱記号、奏法記号などに差異があり、その後に改訂されています。
しかし、モーツァルト研究は現在も進行中であり、さまざまな楽譜版が存在するのも事実で、今回の発見でK331の楽譜が大きく変わることはないと思います。ただ、初版譜に明らかな誤植が認められた場合は改訂される可能性はあります。
むしろ、現代の出版社は、自筆譜より、モーツァルト存命中の初版譜を尊重する傾向にあります。ある研究者によれば、初版譜は、自筆譜より少し易しくしてある場合もあるそうです。時代背景や出版社の販売戦略もあったかも知れません。
それより興味深いのは、今回発見された自筆楽譜の行き先です。博物館や図書館に所蔵されるのなら良いですが、1990年発見のソナタK457の自筆譜は、サザビーズのオークションで88万ポンド(2億円余)で落札されています。
最も有名なK331ですから、もしオークションに出せば、相当な高額になることは間違いありません。
ただ、後日の報道によれば、発見された自筆譜は、(もちろんですが)全曲ではありません。1楽章と2楽章のごく一部ということです。あまり興味本位になるのはやめたほうが良さそうです。
ちなみに、ベートーヴェン第九の初版筆写スコア(自筆譜ではありません)は、190万ポンド(3億6500万円)で匿名氏によって落札されています。
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