「飛翔 はばたく若き才能」 を聴く
才能豊かな若き音楽家のコンチェルトを聴いてきた。
いわゆるコンチェルトの名曲ばかり4曲、とても充実したコンサートだった。
1.モーツァルト ピアノ協奏曲第23番イ長調 K488 中学生の浅野由紀さんは、ステージ上の表情は硬かったものの、音楽はとてもしなやかで情感にあふれている。特に第2楽章は出色の出来だった。とりわけ旋律がきれいな第2楽章、浅野さんの奏でる音の粒が、まるで心に染み込んでいくかのような美しい演奏だった。 この少女の計り知れない音楽性に大いに期待したい。ただ、ハンカチの多用は、見た目もそうだが、音楽の流れを止めるので注意が必要だろう。
2.モーツァルト ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K466 音大3年在学中の松原瑠芙菜さんは、落ち着いた雰囲気で登場したが、多彩な表現力と確かなテクニックが光る。特に第1楽章のカデンツァは、実によく弾き込まれた感があり、聴衆のみならず楽団員も惹きつけるほどの力演だった。全体にややおとなしいが、音楽は自然で虚飾を排し、むしろ内面に迫るものがあった。 指揮は小柄な田中祐子氏、陰影のあるドラマティックな棒だった。
3.ショパン ピアノ協奏曲第1番ホ短調 Op.11 笑顔のきれいな川上真璃さんは、はつらつとしたスケールの大きい演奏を披露した。 ピアノ協奏曲の中でも人気の曲だが、技術的にも音楽的にも難易度は高い。しかし彼女のピアノは弾く喜びが前面に出て、生き生きとした表情に溢れ、聴衆を魅了する。 誰もが幸せな気分になれるような好演だった。難を言えば、田中祐子氏の棒が、やや健康的すぎて格調の高さに欠けたことかも知れない。
4.メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲ホ短調 Op.64 唯一ヴァイオリンで出演した現役音大生の徳田真侑さんは、名曲で知られるこの曲を、豊かな音量と高度なテクニック、繊細な音楽性で完璧に弾き切った。 なにしろ美音である。何物にも代えがたいピュアな美音と、歌心のある音楽が会場を包んだ。 これほどの完成度なら世界に通用するのも当然である。強く印象に残った。
徳田真侑さん関連記事 弦の彩(いろどり)を聴く→https://manriki358.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post.html
この曲で初めて指揮の田中祐子氏の全身が見えたが、棒は見やすく、音楽的センスを感じる素晴らしい指揮者だと思う。 すでにオファーが殺到しているようだが、次回はオーケストラ曲を聴いてみたい。
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