シルバー社会のコンサート(ホール)の在り方
日本の高齢化が急速に進んでいる。 若者のクラシック音楽離れが著しい。
先日、あるコンサートホールの階段状の通路で、年配の男性が足がよろけて転ばれるというアクシデントがあった。 また、ある会場では、バッハのマタイ受難曲の演奏中に、一階席のご高齢の紳士が突然気分が悪くなり、係員に抱えられて退場される場面があった。
今、特に地方都市のクラシックコンサートは、60代以上の高齢者が多くを占める異常事態が起こっている。 休憩時間には、男性用トイレの前にも列が出来ることがあるが、これは、お客の高齢化による、まさに珍(ちん)現象と言えるだろう。
トイレの前に行列ができるくらいならまだ良いが、トイレから戻ってきたら自分の席が分からなくなってしまいキョロキョロ探す年配者もいる。
私は、このような光景を見るにつけ、これからのシルバー社会のコンサートやコンサートホールの在り方を考えるようになった。
そもそも、コンサートホールの客席はバリアフリーになっていない。通路は必ずと言ってよい程、階段状またはスロープになっている。 もちろん、舞台(ステージ)を見るには、その形状が最も都合が良いからである。
しかし、前述のような足のおぼつかない高齢者にとっては、歩きにくいし危険な場所でもある。 いっそのこと、車いすの方が安全と思えるが、車いすに乗るほどでもない足の不自由な人が大部分を占めているのではないか。 そこで、ホール側の対策として、私は①通路に手すりを付けることを提案したい。そのためには、通路の幅を今の1,5倍位に広げる必要があるが、多少ホールの定員を減らしても、手すりを付けることが最も効果的だと思う。 また主催者は、チケットを販売する際にも、②シルバー席を用意することが望まれる。シルバー席は客席前方などの平らな通路に設定し、そのことは予めパンフレットなどで周知を図る。 そして会場には、③ボランティアスタッフを配置し、高齢者が安全にコンサートが楽しめるよう、マンツーマンで対応(介添え)する。 さらに、④突然の発作や急病に対応できるよう、医者か看護師を常駐させる。地域の医師会などと連携し、どのコンサートにも必ず医師を常駐させるようにすれば、演奏中の思わぬアクシデントに慌てる必要もない。 また、時々見かける⑤「母子室」は、コンサートの内容によっては、「シルバー室」として活用する。健康に自信のない人でもコンサートを楽しんでもらうためには、このような配慮も欠かせないと思う。 今後ますます高齢化が進むと、⑥コンサートの開催曜日、コンサートの開演時間、コンサート自体の長さ、休憩時間の頻度や長さなども検討しなければならなくなる。また、お茶のペットボトルくらいはホール内へ持ち込みOKとしたほうが良い。そして、プログラムは活字が大きく見やすいものが良いだろう。 今日のコンサートが、シルバー世代で成り立っている以上、上記のような様々な見直しは近い将来必ず考えるときが来るだろう。 シルバー割引も良いが、チケット代を安くするだけがサービスではない。 コンサートの主催者やホール関係者には、今までコンサートを支えてくれた高齢者に敬意を表して、いくつになっても安心安全でコンサートを楽しんでもらえるように心を込めたサービスをお願いしたいと思う。 あるホール内の階段
« その歌声に、世界は息を飲んだ-。 | トップページ | 春に想う虚子の句 »
「音楽」カテゴリの記事
- 知られざる名曲 第278回 ノクターン9番 / フィールド (2024.12.03)
- 知られざる名曲 第277回 ラルゴ / ヴェラチーニ(2024.11.29)
- 知られざる名曲 第276回 ラドロー / ジェームズ・ホーナー(2024.11.24)
- 知られざる名曲 第275回 ロマンス (遺作) / スクリャービン(2024.11.22)
- 知られざる名曲 第274回 ヴァイオリン協奏曲第5番 イ短調 MS 78 第2楽章 / パガニーニ(2024.11.19)