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  • ある町に住む薬売りの老人(実は仙人)は、店先にぶらさがっている壺に時々身を隠してしまいます。 壺の中は別天地。時は悠々と流れ、豊かで充実した人生がありました。 人は、心の持ち方で、このような境涯に達することが出来るのでしょうか。 定年後は、「何をしてもいい自由」と、「何もしなくてもいい自由」 を得たのですが、私も壺中日月長の心境で、悠々としながらも豊かで充実したセカンドライフを目指したいと思います。 このブログは、そんな日々の出来事や思いを書き留めたいと始めました。
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2014年2月17日 (月)

円熟のピアノと、若き俊才を聴く

マリア・ジョアン・ピリスのピアノ、ロビン・ティチアーティ指揮のスコティッシュ・チェンバー・オーケストラを聴いてきました。(このオケは初めて聴きました。)

1曲目、「フィンガルの洞窟」は、20歳のメンデルゾーンがスコットランド旅行中にインスピレーションを得て作られた曲です。揺れ動く弦楽器の波間に現れた「神秘的ともいえるフィンガルの洞窟」。 とても描写的な音楽で、光景が目に浮かびます。ワーグナーが彼を「音の風景画家」と称賛したことがありましたが、まさに描写音楽に素晴らしい才能を発揮したようです。ちなみにメンデルスゾーンは、水彩画も得意で、多くの作品が残っています。

さて、ノータクト(指揮棒を持たない)のティチアーティは、細部まで行き届いた指揮で、音楽に流れがあり、生き生きとした表情も感じました。 編成は40人ほどと小さいですが、その分、軽快でまとまりの良い演奏でした。さすが本場の演奏でしょうか。若き俊才は、団員の音楽性を引き出しながら、一体感を演出し、一方でしなやかな感性が全面に出た秀演だったと思います。

余談ですが、この「フィンガルの洞窟」は、10分ほどの小品ですがメンデルスゾーンの最高傑作ではないかと思います。見事なオーケスレーション(管弦楽法)で表現された音楽は、その洞窟を目の前で見ているかのような感動を呼び起こしてくれます。そして、メンデルスゾーンの共通点は曲の冒頭の入り方に作為性がなくとても自然なことです。Vn協奏曲やピアノトリオを聴けば、その空気に溶け込むような冒頭部分に驚きます。

シューマンのピアノ協奏曲、冒頭は、ピリスの「ややシャープさを欠く演奏」に戸惑いましたが、ピリスも70歳? ティチアーティとは親子以上の差です。次第にオケがピリスに合わせるようになり、2楽章はピアノとオケの対話が十分楽しめました。1楽章のカデンツァは堂々とした演奏でした。また、3楽章も多少のミスタッチが気になりましたが、全体的には温かく優しい演奏に聴こえました。

ところで、この日のピアノは、YAMAHAでしたが、、音が柔らかで温かみがあり、ピリスが好むところです。世界最高水準のピアノです。ただ、フォルテッシモの鳴りが今一つ弱いのです。決して悪い意味ではありませんが、私はいつもそう感じます。国際コンクールのガラコンサートなどでも、やはりS社のピアノと比べて音が飛ばないのは残念でなりません。繊細な音色と、強靭な音量は両立しないかも知れませんね・・・。生演奏の宿命でしょうか、CDではこのような不満を感じることはありません。

尚、ピリスのアンコールは、シューマンの予言の鳥、私にはそっけない演奏に聴こえました。

最後に、ベートーヴェンの「運命」。最近は意外と生で聴くことが少ないですね。今回の演奏はやはり編成が小さい分、軽快でスピード感があり、ちょうど軽自動車のスポーツカーみたいな印象を受けました。今日の重厚な「運命」に慣れていると迫力不足ですが、この響きは当時に近いはずです。ユニークな解釈も見られましたが、若々しい演奏を楽しく聴かせていただきました。ただ、最後のティンパニ、どう見ても不可解な終わり方でした。

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余談ですが、会場は8割以上の入り、相変わらず中高年が目立ちますが、ちらほら学生や親に連れられた子供の姿もありました。1階席前から3列目付近に子供さん(ご姉妹?)がおとなしく座っているのを発見、感心しましたが、よく見ると二人ともスマホ(ゲーム機?)に夢中のようです。その画面の明かりが、上の階の席に光って見えます。別に迷惑ではありません。これも時代の流れでしょうか。

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