2023年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

開設以来のバックナンバー

書の作品

  • Img_20190628_0001_new
    師匠である 安田朴童先生、馬淵仙園先生のお手本を見て書かせていただいています。少しですが自己流の書もあります。 まだまだ未熟ですが、精進して参りますので、ご支援の程お願い致します。

左上の ▶ 再生ボタンを押して下さい。バッハ、イタリア協奏曲が流れます。もう一度押せば止まります。

壺中日月長とは

  • ある町に住む薬売りの老人(実は仙人)は、店先にぶらさがっている壺に時々身を隠してしまいます。 壺の中は別天地。時は悠々と流れ、豊かで充実した人生がありました。 人は、心の持ち方で、このような境涯に達することが出来るのでしょうか。 定年後は、「何をしてもいい自由」と、「何もしなくてもいい自由」 を得たのですが、私も壺中日月長の心境で、悠々としながらも豊かで充実したセカンドライフを目指したいと思います。 このブログは、そんな日々の出来事や思いを書き留めたいと始めました。
フォト
無料ブログはココログ

2023年12月 7日 (木)

知られざる名曲 第228回 「ルイス・アロンソの結婚式」間奏曲 / ヒメネス

今回はスペインの作曲家 ジェロニモ・ヒメネス(Gerónimo Giménez 、1854 - 1923)にスポットを当てます。

彼は17世紀にセビリアで生まれたスペインの伝統的な舞台芸術「サルスエラ」の作曲家として名声を博しました。

「サルスエラ」は、スペインの叙情的オペラ音楽といわれますが、オペラではなく大衆エンターティンメント音楽劇です。サルスエラ宮殿で上演されたことから「サルスエラ」と呼ばれています。

イタリアオペラと違う点は、スペインが舞台である点、悲劇ではなく喜劇である点、上演時間が短い点(1幕もの)、歌があまり技巧的でない点などです。それだけ大衆に親しまれてきました。

25432037_s
画像 ACワークス(株)

■「ルイス・アロンソの結婚式」あらすじ

舞台は1840年、街で最も有名なダンス教師ルイス・アロンソ(50過ぎの気のいいおじさん)の結婚式が行われようとしていた。ルイス・アロンソは自分よりずっと若い女性と結婚することになっている。ただ、その女性には彼氏(元カレ)がいる。

何と結婚式当日に、元カレが牛を連れて式場に乱入! ちょっと脅かしてやるつもりだったのですが、客は一斉に避難し、式場は大騒ぎになります。

ルイス・アロンソは、花嫁を置いて逃げ出しますが、ケガをするやら、面目を失うやら、踏んだり蹴ったりとなります。

■ 「ルイス・アロンソの結婚式」間奏曲 / ヒメネス

演奏は、パブロ・エラス=カサド 指揮 / フランクフルト放送交響楽団 

 

■ ご参考

知られざる名曲「くちづけの伝説」間奏曲

2023年12月 3日 (日)

知られざる名曲 第227回 輝ける日々テーマ曲 / 羅 大佑(ルオ・ダーヨウ)

日本では無名の台湾の音楽家 羅 大佑(ルオ・ダーヨウ 1954 - )が作曲した、台湾映画「輝ける日々(闪亮的日子)」のテーマ音楽を合唱バージョンでお楽しみいただきます。

28120342_s
画像 ACワークス(株)

羅大佑は、医師の家庭に生まれました。父親は彼が医師になることを望んでいましたが、彼は音楽も好きで、5 歳でピアノを習い始めました。

成長した彼は、学生時代に皮膚科を選択しました。父親から音楽をやることは許可されていましたが、医師としてのキャリアを諦めることはできなかったらしくその後、羅大佑は父親の希望により中国医科大学医学部に入学しました。

大学卒業後、台北の病院の放射線科に勤務しましたが、一方で 羅大佑は作曲や歌も勉強しました。しかし、医師も音楽家も高度な専門職であり、音楽をやりながら医師になることは不可能だと彼は考えるに至りました。
最終的に、彼は医師をやめて音楽家になることを決意したのでした。音楽への愛を捨てきれなかったのです。
それは、この曲を聴けば分かります。


■ 輝ける日々テーマ曲 / 羅 大佑(ルオ・ダーヨウ)



しっとりとした美しい作品です。
合唱ファンなら、歌ってみたくなる曲ではないでしょうか。

演奏は、海南リスニング合唱団、海南リンクストリングオーケストラ

2023年12月 1日 (金)

有名クラシック曲 極上編 No.2 ノクターン20番ハ短調遺作 / ショパン 

この曲は、もちろん原曲はピアノ曲ですが、今回はヴァイオリンでお聴き下さい。

韓国のヴァイオリニスト ハンス・ジン(Soojin Han 한수진 1986- )の、全身全霊を傾けた極上の演奏です。

26331110_s
画像 ACワークス(株)

曲の説明は省き、ヴァイオリン演奏の ハンス・ジン氏について解説します。


韓国出身のハンス・ジンは、生まれながらにして左耳が聴こえませんでした。

実はこれは遺伝性の難聴で、彼女の母も祖父も難聴だったようです。

それでも、父親が英国で博士号取得を目指していたため、彼女は英国に移住しました。そして幼少時に母が演奏するバイオリンを聞いて音楽に目覚め、5歳でピアノを始め、7歳でバイオリンを習い始めました。

その後は、世界的なヴァイオリニスト ユーディ・メニューイン(Yehudi Menuhin)の音楽学校のオーディションに合格。英国最古のパーセル音楽学校に転校。わずか12歳でロンドンのウィグモアホールでコンサートを行い、15歳でヴィェニャフスキ国際コンクールに最年少参加して韓国人初の2位を受賞しました。

この頃、指揮者チョン・ミョンフンから"天からの才能"と絶賛されました(以後6回共演)。

成人して、オックスフォード大学で音楽学(musicology) を修了し、名門英国王立音楽大学(Royal College of Music)を経て、クローネバグアカデミー(ドイツ)トップパフォーマー課程を卒業しました。


■ ノクターン20番ハ短調遺作 / ショパン



ピアノは、韓国生まれの リー・シヒョン(Sihyun Lee 이시현 1991- )。

2023年11月28日 (火)

知られざる名曲 第226回 レクイエム / コズロフスキー

「3大レクイエム」とは、モーツァルト、フォーレ、ヴェルディのレクイエムを指します。
もし、4大レクイエムなら、ブラームスを加えたいところです。この4曲は演奏機会も多いと思います。

多くの著名な作曲家が「死者のためのミサ曲(レクイエム)」を作曲しましたが、今回は非常にマイナーな "ヨゼフ・コズロフスキー Józef Kozłowski 1757- 1831)" のレクイエムにスポットを当てます。彼は、ロシアで大きな名声を博したポーランド出身の作曲家です。 

コズロフスキーは、ポーランド国王スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキ(1798年没)の死を悼んで この"レクイエム変ホ短調”を作曲し、1798年2月25日にサンクトペテルブルクで初演されました。そして、最後に演奏されたのは 1804 年と記録されています。

その後演奏されることもなく、1825年にはロシア皇帝アレクサンドル 1 世の葬儀のために改定(第2版)されましたが、最後に演奏されて200年間、眠ったまま放置されてきました。

そして、1988年にウラジーミル・イェシポフ指揮 ソビエト国立文化省交響楽団(現ロシア国立交響楽団)/  国立モスクワ合唱団で約200年ぶりに演奏されました。ただこの時の版はオリジナルではありません。

しかし、モーツァルトのレクイエムに匹敵する古典期の名曲であることが判明して、完全なオリジナル版での再演が待たれることになりました。

5150147_s
画像 ACワークス(株)

近年、このレクイエムの再演と出版を目指して大きな動きがあり、専門家などによる懸命な調査と詳細なスコアの編纂作業を経て、コズロフスキーのレクイエムは、オリジナルスコアに忠実な形で蘇ることに成功し、このほどシンガポール交響楽団(指揮 ハンス・グラフ)、シンガポール交響楽団青少年合唱団によってアジア初演という快挙を成し遂げたのです。

現在このオリジナル版で レクイエムの全曲を聴くことは出来ません。
シンガポール交響楽団のメンバーに入会して、月額いくらか会費を払えば聴くことが出来るようです。

■ レクイエム 変ホ短調より " ディエス・イレ” 抜粋 / ヨゼフ・コズロフスキー




■ ご参考 全曲 https://www.youtube.com/watch?v=Ik8ktuRwIRo
イェシポフ指揮 ソビエト国立文化省交響楽団(現ロシア国立交響楽団)/  国立モスクワ合唱団

この曲を聴いたら、あまりの完成度の高さに圧倒されると思います。


2023年11月23日 (木)

知られざる名曲 第225回 微風 / 佐藤聰明

今回は、人気のヴァイオリニスト ヒラリー・ハーンが演奏する「微風」を選びました。

作曲は、佐藤聰明(さとうそうめい 1947 - )です。

Wikipediaによると、彼は宮城県仙台市出身。作曲を独学で学ぶ。

作品はアメリカ、ヨーロッパ、環太平洋諸国で幅広く演奏されており、ことにアメリカでは個展が音楽祭等で十数回にわたって催されている。

多くの作品がCD、レコード化されており、1988年、CD作品集「LITANIA[1]」がニューヨークタイムズの年間ベスト・レコードに選ばれ、全米公共放送の第二位にランキングされた。1980年に文化庁芸術祭賞。


245599
画像 ACワークス(株)

ヒラリー・ハーンの今年(2023年)の日本ツアーで、この作品はアンコール曲でした。

もしかすると聴かれた方もあるかも知れませんが、清澄で美しい曲です。
当「知られざる名曲」シリーズでご紹介出来ることはとても光栄です。

■ 微風 / 佐藤聰明



演奏:ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)Hilary Hahn, コリー・スマイス(ピアノ)Cory Smythe, 





2023年11月20日 (月)

知られざる名曲 第224回 ニューホライゾン / グイド・ディーテレン

いつものようにYouTube動画を見ていて偶然見つけたこの動画。何か掘り出し物を発見したような感動を覚えています。

聞き慣れない グイド・ディーテレン (Guido Dieteren 1974- )は、オランダの作曲家、指揮者、ヴァイオリニスト、音楽監督、プロデューサー、そして彼のオーケストラであるグイドズ・オーケストラの創設者です。

何と、父親、祖父、曽祖父が指揮者という家系に生まれ、彼は幼少よりクラシック音楽の猛勉強を始めたといいます。

6歳のときヘーレン音楽学校でヴァイオリンのレッスンを受け始め、15 歳のとき、ジャンヌ ダルク大学に通い、マーストリヒトで中等教育と音楽院の複合コースを学び、 18歳でVWO(オランダの大学進学準備学校 )の卒業証書を取得して修了しました 。

その頃から国内外で数多くのマスタークラスにも参加しましたが、その後ソプラノ歌手のウェンディ・コッケルコーレンと結婚します。

25245905_s
画像 デ・キューケンホフ公園 ACワークス(株)

 

指揮者、ヴァイオリニスト、ソリストとしてさまざまなオーケストラと共演してキャリアを重ね、ヨーロッパ、北アメリカをツアーしました。

そして、音楽会社BMG、ソニー、ユニバーサル、ストレングホルト、ザ エンターテイメント グループ、公共放送局トロス、オムロプ MAXなどのために CD やイベントをプロデュースしました。

華々しい活躍の中で作られた「ニューホライゾン(ホライゾンは地平線の意)」は、明るい希望に満ちた輝かしい音楽です。 

■ ニューホライゾン(New Horizon) / グイド・ディーテレン (Guido Dieteren)


オランダと言えばチューリップ。

この美しい庭園は、デ・キューケンホフ公園と呼ばれ、オランダのリッセに位置する世界最大の花の公園です。

マエストロ グイド & ヨーロピアン ポップ オーケストラの新しい自作曲「ニュー ホライズン」に相応しい映像です。

2023年11月17日 (金)

知られざる名曲 第223回 バチンの少年(Chiquilin de Bachin) / ピアソラ

皆さま良くご存じ、アルゼンチン生まれの作曲家 ピアソラ(Ástor Pantaleón Piazzolla , 1921 - 1992) 当シリーズ2度目の登場です。


タンゴのビートは2拍子が基本ですが、移民を受け入れてきたアルゼンチンには、ヨーロッパから3拍子のワルツのリズムも入ってきました。

したがって、3拍子(ワルツのリズム)のタンゴも存在します。

ワルツのリズムで有名なタンゴが、今回のピアソラ曲「バチンの少年(Chiquilin de Bachin)」ということになります。

5127425_s
画像 ACワークス(株)

この作品は、ブエノスアイレスの芸術地区のレストラン「バチン」でバラを売って生計を立てるストリートチルドレンの物語を語っています。

バラの花を売る貧しい少年たちに ピアソラは、話かけたり 小遣いをやったりすることもあったようです。

詩人のオラシオ・フェレールは、そんな貧しくても懸命に生きる少年たちのために詩を書きました。その詩に、即興で曲を付けたのが ピアソラの「バチンの少年」です。今回はピアノ、ヴァイオリン、チェロのアレンジ版でお聴き下さい。 


■ バチンの少年(Chiquilin de Bachin) / ピアソラ



この愛情にあふれた音楽は何でしょう~ ピアソラを通じて天から贈られた珠玉の一曲です。

私たち大人が聴くべき一曲です。

守るべき子供たちが犠牲になっていく毎日。考えさせられる一曲です。

2023年11月12日 (日)

知られざる名曲 第222回 悲しみのワルツ / オスカル・ネドバル

チェコスロバキアの作曲家 オスカル・ネドバル(Oskar Nedbal, 1874 – 1930)の ノスタルジックな名曲「悲しみのワルツ(Valsetriste)」にスポットを当てました。

ネドバルは、ドヴォルザークに作曲を習った数少ない音楽家です。しかし作風はドヴォルザークの民族主義というよりも伝統的なウィーン楽派に近く、洗練されたドイツ古典音楽を思わせます。

23327499_s
画像 ACワークス(株)

■ 人生の明暗

彼は チェコ四重奏団のヴィオラ奏者として国際的なプロの音楽キャリアを築いていました。また、トーンキュンストラー管弦楽団の指揮者としてウィーンで活躍しました。

さらに、数多くの優れた海外の劇場や交響楽団(チェコ・フィルハーモニー管弦楽団を含む)と共演し、すぐに世界的な名声を獲得しました。同時に室内楽(歌曲、ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための作品)から舞台作品(バレエ、オペレッタ)まで多くの作品を遺しました。

1923年から、彼はスロバキア国立劇場の音楽監督となり、同劇場の芸術レベルを大幅に向上させました。


しかし、ネドバルは個人的な借金が膨れ上がり、 1930年12月24日 Xmasイヴに ザグレブのオペラハウスの窓から飛び降り命を絶ったのでした。

■ 悲しみのワルツ / オスカル・ネドバル



演奏は、ヴァーツラフ・ノイマン指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団




2023年11月 9日 (木)

知られざる名曲 第221回 Song From A Secret Garden / ロルフ・ラヴランド

この曲は、世界的に大人気の音楽ユニット「シークレット・ガーデン」のデビューアルバムにある作品です。

「Song From A Secret Garden」(訳すと、秘密の花園の歌)は、シークレット・ガーデンのひとり、ノルウェー出身の ロルフ・ラヴランドによって作曲されました。

彼はクリスティアンサン音楽学校で学び、後にオスロのノルウェー音楽院で博士号を取得しています。

作品は、新古典主義の音楽カテゴリーに分類されますが、非常にロマン的で旋律も美しく、どちらかと言うとクラシック的イージーリスニング(癒し系音楽)と言えると思います。

28150307_s
画像 ACワークス(株)

 

ピアノ演奏は、牛牛/ニュウニュウ(NiuNiu)

1997年中国福建省厦門(アモイ)の音楽一家に生まれる。3歳で才能の片鱗を見せ始め、音楽教師の父より手ほどきを受ける。2003年8月、6歳になった直後にデビューコンサートを行い、モーツァルトのピアノ・ソナタやショパンのエチュードを演奏。8歳で上海音楽院に史上最年少で入学。その後ニューイングランド音楽院等を経て、2018年ジュリアード音楽院(米国)卒業。

 

フルート演奏は、Cocomi/ここみ

2001年東京都出身。日本のフルート奏者、モデル。本名は木村 心美(きむら ここみ)。両親は木村拓哉と工藤静香
2023年桐朋学園大学音楽学部カレッジ・ディプロマ・コース修了。その後ソリスト・ディプロマ・コースを専攻。

2022年12月26日、デビュー・リサイタル「de l’amour」を東京・紀尾井ホールにて開催。同年12月、第73回NHK紅白歌合戦で母、工藤静香と共演した。

■ Song From A Secret Garden / ロルフ・ラヴランド (Arr. Niu Niu for Flute and Piano)

尚、シークレット・ガーデンは、すでに当シリーズで2度紹介していますので、ご参考にリンクを載せておきます。

知られざる名曲 第76回 Sometimes When It Rains / Secret Garden

知られざる名曲 番外編26 10月の栄光の日に/シークレット・ガーデン

 

2023年11月 6日 (月)

有名クラシック曲 極上編 No.1 愛のロマンス(禁じられた遊び) / ナルシソ・イエペス

■ 新シリーズ

「知られざる名曲」ばかり聴いていると、たまには「良く知られた名曲」も聴きたくなるものです。

今回、新シリーズとして、誰もが知っている「クラシックの有名曲」を改めてご紹介することにしました。

ただ、演奏が素晴らしいものを厳選して取り上げます。すなわち極上の演奏です。

名付けて、「有名クラシック曲 極上シリーズ」です。

記念すべき初回は、あの映画「禁じられた遊び、1952年 フランス 」のテーマ曲「愛のロマンス」です。

Maxresdefault_20231103102701

作曲の ナルシソ・イエペス(Narciso  Yepes、1927 - 1997)は、スペイン出身の作曲家、ギタリストです。
この曲を作った時、イエペスは24歳でした。

日本でも人気が高く、彼は17回も訪日しています。


どなたもご存じの名曲ですが、クラシックギターとチェロの絶妙な二重奏をお楽しみ下さい。

■ 愛のロマンス(禁じられた遊び) / ナルシソ・イエペス



ギター演奏は、スペイン出身の パブロ・サインス・ビジェガス(Pablo Sáinz Villegas 1977- )です。
数々のギター国際コンクールを制覇し、ドミンゴが、「真のギターの達人」と評しました。

チェロ演奏は、クロアチア出身のご存じ ステファン・ハウザー(HAUSER、1986- )です。

禁じられた遊びは、ギターソロ以外で聴くのは初めてでしたが、最上の音楽に出会ったような気分です。

2023年10月31日 (火)

知られざる名曲 番外編46 ふるさとの山に向ひて (混声四部合唱)/新井 満 

合唱曲には名曲が多くあります。合唱ファンの一人として、今回は日本の合唱曲「ふるさとの山に向ひて」を選びました。

石川啄木の有名な詩に、作曲家の 新井 満(あらい まん、1946 - 2021年)が曲をつけました。

3288325_s
画像 ACワークス(株)

ふるさとの山に向ひて言ふことなしふるさとの山はありがたきかな 

石川啄木 第一歌集『一握の砂』より

 

わずか26歳で生涯を閉じた詩人(歌人) 石川啄木の愛した ふるさとの山は、岩手県の最高峰「岩手山」であると言われています。

啄木は、北上川から望む「岩手山」の美しい景観を見たのでしょうか。

この曲を聴くと、心が洗われるような感動に包まれます。

■ ふるさとの山に向ひて (混声四部合唱)/新井 満


作曲の 新井 満氏は、大ヒット曲「千の風になって」の翻訳と作曲で知られる芥川賞作家です。


上智大学グリークラブ(男声合唱団)出身ですが、重病を患い生死の境目を彷徨ったため入院退部。
何とか治癒して生きる喜びを強く実感します。

それ以降、美しいものを発見して伝えることをライフワークとして生きていきたいと誓いました。
(Wikipediaより)

■ ご参考

↓ 国立台湾大学合唱団が日本語で歌った「千の風になって」

素晴らしいの一言です!


https://www.youtube.com/watch?v=WRK9lc_afY0


2023年10月29日 (日)

知られざる名曲 番外編45 弦楽四重奏曲第1番第3楽章 / コダーイ 

番外編が続きますがご了承下さい。

さて、クラシックのジャンルで、一番聴く機会が少ないのが室内楽ではないでしょうか。

例えば「ベートーヴェンの弦楽四重奏」などど聞くと、名前だけで聴く気がしない方も多いと思います。同じベートーヴェンの交響曲や協奏曲は、コンサートで良く演奏されますから、ファンの方も多いでしょう。

しかし、どうしても弦楽四重奏などの室内楽は地味で難しいといったイメージがあります。

ましてや今回の作曲者は、ハンガリーの作曲家で民族音楽学者の コダーイ・ゾルターン(Kodály Zoltán, 1882 - 1967)です。

コダーイの弦楽四重奏は、さすがに聴いたことのある人は少ないと思います。

27290826_s
画像 ACワークス(株)

最近のデジタル技術の進歩で、音楽をグラフィック映像(モーショングラフィックス )で観ることが可能になりました。

今回は、ピアノの音(粒)がキーボードの上にドロップする縦軸の動画を、横軸に動かすグラフィックス技術です。これをグラフィックスコアというそうです。

これは、音楽の構造を知る上でとても分かり易く視覚的にも楽しめます。難しく取っ付きにくい室内楽のイメージを変えてくれました。


■ 弦楽四重奏曲第1番第3楽章 / コダーイ



視覚的に見ると、メロディラインが各パートに受け継がれていく様子が良く分かります。

横軸で見ると、アレクサンダー弦楽四重奏団による演奏は、4人の息が驚くほどピッタリと合っています。

そして最大の発見は、コダーイの音楽が美しく表情豊かに響いていることです。

滅多に聴けない コダーイの弦楽四重奏曲第1番の第3楽章を聴きました。


これであなたも、クラシック通の仲間入りです。


2023年10月25日 (水)

知られざる名曲 番外編44 踊り(Danza)/ ロッシーニ 

持ち運びが容易な携帯用ピアノを弾いて、ロッシーニ(Rossini 1792-1868)のパターソング(早口で歌うこっけいな歌)を歌うのは、ドイツ出身のスロバキア人ソプラノ歌手 パトリツィア・ヤネチコヴァ(Patricia Janečková、1998-2023 )さんです。歌っている場所はキッチンのようです。

以前よりこの歌手に注目していて、このシリーズで動画をアップさせていただくつもりでしたが、 ヤネチコヴァさんは 残念ながら今月10月1日に亡くなりました。世界中のファンからお別れのメッセージが届いています。

まだ25歳の若さでした。今回は追悼の意味で、ヤネチコヴァさんにスポットを当てることにしましたが、敢えて番外編と致しました。

27849871_s
画像 ACワークス(株)

■ 訃報

報道によると、ヤネチコヴァさんは、2022年 自身のインスタグラムにおいて、乳がんを患っていることを明かし活動を休止していました。

その後、俳優のヴラスティミラ・ブルドゥ氏と結婚。演奏活動も少しずつ再開していましたが・・・ 本当に残念です。

自身のYoutubeチャンネルでは結婚式の写真が亡くなる前日にアップされ、祝福のコメントが多数寄せられた直後の訃報となりました。



■ 踊り(Danza)/ ロッシーニ



■ 歌詞の一部(Wikipediaより)

今、月は海の向こうにあります。

マンマ・ミーア、私たちは跳躍するよ!
踊るには美しい時間だ、
恋をしている人なら誰でも見逃せないだろう。
今、月は海の向こうにあります。
マンマ・ミーア、私たちは跳躍するよ!

すぐに私たちは踊ります、ぐるぐる、
お嬢さんたち、こちらに来てください、
美しくて遊び心のある若者が
皆と出番を持ちます。
天国で星が輝く限り、
そして月の光が輝くでしょう
最も美しい少年と少女は
一晩中踊ります。


天使の声 パトリツィア・ヤネチコヴァさんの お勧めの YouTube動画
Mozart Laudate Dominum,KV339

2023年10月21日 (土)

知られざる名曲 番外編43 ボエーム / シャルル・アズナブール

■ 噴出する音楽

この曲は シャンソンです。

クラシック音楽ではありませんが、クラシック界では21世紀を代表するチェリスト ゴーティエ・カピュソン(Gautier Capuçon, 1981- )と、ピアニスト ジェローム・デュクロ (Jérôme Ducros, 1974- ) の、まさに「燃焼する音楽」、「噴出する音楽」を聴いていただきたくて、番外編として取り上げました。

5012042_s
画像 ACワークス(株)

この曲を作曲した シャルル・アズナブールは、フランスが誇るシャンソン界のスーパースター。日本でも良く知られています。

貧しいながらも夢と愛に満ちていた画学生の青春時代。その失われた青春の日々に想いを馳せるメロディーがドラマチックです。
(現代ギターサイトより)


■ ボエーム / シャルル・アズナブール
ジェローム・デュクロ 編)

2023年10月16日 (月)

知られざる名曲 番外編42 ムーンライト・ラプソディ/ T.コンスタンチン

誰もがご存じの、ベートーヴェンの「月光ソナタ(1801年作曲)」が、200年の時を超えて生まれ変わりました!

確かに原曲は、あのベートーヴェン作曲のピアノソナタ第14番「月光」の第1楽章ですが、女性作曲家の タマラ・コンスタンチンは、チェロの新しい旋律を加えることで、お洒落でセンスの良い「新たな名曲」を誕生させたのです。

4268616_s
画像 ACワークス(株)

ジョージア(グルジア)で生まれ、幼いころからピアノを学んでいたというタマラ・コンスタンチン。
国立トビリシ音楽院を卒業するも、結局は音楽の道に進むことはなく、石油会社の幹部として忙しい日々を送っていました。

ある時、カナダで聴いた 現代曲(前衛音楽)があまりに酷い曲だったことから、コンスタンチンは現代音楽に失望します。

彼女は夫に冗談で「私ならもっと上手く曲が作れるのに!」と言いました、夫は「なら、やってみたまえ」と答えたと言います。人生で一小節も曲を書いたことはなかった彼女は作曲に挑戦することになりました。

これが彼女の作曲家人生のスタートです。

「現代の作曲家の中には、メロディーよりも構造の複雑さを重視する人もいます。もちろんそれは問題ありませんが、私には当てはまりません。私はメロディーが大好きなので、それを書かなければなりません。」コンスタンチン



■ ムーンライト・ラプソディ/ T.コンスタンチン


「自分の音楽を通じて、個人的な表現を共有し、他の人々に喜びをもたらすことは、私にとっての喜びでもあり、素晴らしいインスピレーションの源となります。」コンスタンチン

2023年10月13日 (金)

知られざる名曲 番外編41 前奏曲(プレリュード)ホ短調 / ショパン(フランショーム編)

ピアノの詩人 ショパン(1810-1849)は、ピアノの次にチェロが好きでした。

その理由は、彼の親友でチェリストであったオーギュスト・フランショーム(1808-1884)の存在が大きかったと言われています。

フランショームは、ショパンと10数年来の親交があり、その間ショパンの日常の雑務を手伝うなど、ショパンを支え続けてきた人物でした。

ショパンは、フランショームに感謝を込めて「チェロとピアノのためのソナタ ト短調 作品65」を献呈しましたが、この作品は1848年にショパン自身のピアノとフランショームのチェロにより初演されています。そしてこの演奏は、パリにおけるショパンの生涯最後の公開演奏となりました。
(Wikipedia参照)


さて、ショパンとフランショームの関係はこれ位にして‥‥

27852644_s
画像 ACワークス(株)

今回の知られざる名曲は、ショパンのピアノ曲「前奏曲ホ短調Op28-4」を、フランショームがチェロ用に編曲したものをお聴き下さい。

本来のピアノ曲でなく編曲版ですので、番外編とさせて頂きました。

以前当シリーズで、同じショパンの「練習曲 Op.25,No.7(グラズノフ編)」をご紹介しておりますのココで、ご参考にお聴き下さい。


■ 前奏曲(プレリュード)ホ短調 Op28-4  / ショパン


フランス系ベルギー人のチェリスト、カミーユ・トマ(Camille Thomas 1988- )は、フランショームの伝説的なチェロ、ストラディバリウス・フォイアマンを演奏しています。

2023年10月11日 (水)

知られざる名曲 第220回 うたかたの絆 / 岩代太郎

知られざる名曲 220回目は、日本の作曲家 岩代太郎(いわしろ たろう 東京都出身 1965-  )の映画音楽「うたかたの絆」にスポットを当てることにしました。

この音楽は、2005年に第29回日本アカデミー賞で優秀音楽賞を受賞しています。

■ あらすじ

時代は大正初期、まだ日本に華族や爵位の残る時代。

侯爵家の一人息子・松枝清顕(妻夫木聡)と伯爵家の一人娘・綾倉聡子(竹内結子)は、両思いの幼なじみである。

そんな中、聡子は宮家の子息に求婚される。それは断ることなど許されないものであった。

聡子は手紙を出し、清顕の気持ちを何度も確かめようとするが、不器用な愛情表現しかできない清顕はそれを読まずに突き放す態度をとってしまう。失望した聡子は宮家との縁談を受け入れる決意をする。

清顕はようやく聡子への深い愛に気づくが、それは皮肉にも聡子の結婚に勅許が下りた後であった。

1_20231011000601
画像 映画.com

しかし清顕は諦めきれず、聡子の愛を取り戻したいとひたすら願う。清顕への愛を諦めていた聡子も彼との密会を受け入れ、二人は激しく愛し合う。しかしそれはつかの間の禁断の愛であった。

やがて聡子は妊娠するが、お互いの両親に二人の秘密が知れ、聡子の中絶は隠密に処理された。聡子の苦しみは深く、奈良の門跡寺院で出家する。

出家した聡子に一目会おうと清顕は、春の雪の降る中、寺に行くが門前払いで会えない。なおも清顕は聡子との面会を希望するが、聡子はそれを拒絶する。そして、雪中で待ち続けたことが原因で、清顕は20歳の若さで亡くなる。


清顕が見ていた夢の中の蝶が滝の下で二羽飛んでいく。

(Wikipediaより一部転記)

原作は三島由紀夫の長編小説『豊饒の海』4部作の第1部にあたる同名小説『春の雪』。


■ うたかたの絆(映画「春の雪」より) / 岩代太郎



三島由紀夫の情念の世界を美しく表現した岩代太郎。

指揮は作曲者自身です。

岩代太郎は、1989年に東京藝大音楽学部作曲科を首席卒業、1991年に同大学院修士課程を首席修了の俊才。

以後、クラシックから映画音楽など多彩なジャンルで活躍中です。

 

2023年10月 3日 (火)

知られざる名曲 第219回 Waltz By The River / エレニ・カラインドルー

ギリシャの女性作曲家  エレニ・カラインドルー(Eleni Karaindrou 1941- ) の当シリーズ2度目の登場です。

タイトルは「Waltz By The River(川辺のワルツ)」。ヴァイオリンとギターによるノスタルジックな曲です。


彼女は、7歳のときに両親とともにアテネに移住しました。彼女の父親は数学者でアンペロキピの学校で教え始めましたが、母親は数か月後 (1948 年) 南北戦争中に亡くなりました。

その頃、エレニ・カインドロウさんは学校でピアノを見つけ、それが音楽への第一歩を踏み出すきっかけとなりました。彼女はピアノのレッスンを始め、10歳で最終的にギリシャ音楽院に入学し、そこで17年間滞在しました。

ギリシャ音楽院を経て、今度はアテネのカポディストリアン大学で歴史と考古学を学びました。

586469_s
画像 ACワークス(株)

さらに、スコラ カントルムでオーケストレーションと指揮を学び、パリの高等教育学校で民族音楽学を学びました。
彼女の作品は、映画音楽、劇場音楽、バレエ音楽など多彩です。

そして、24 歳で彼女はパリに定住し、フランス政府から奨学金を受けていました。
現在はギリシャに戻っています。


■ Waltz By The River(川辺のワルツ)/ エレニ・カラインドルー

ヴァイオリンの Mahsar Barzin さんは、イラン東アゼルバイジャン出身。端正な顔立ちのヴァイオリニストです。
ギターの Ali Amjadi さんは、クラシックギターの名手ですが、詳しい経歴は分かりません。

二人の演奏には何の飾り気もありません。素朴で静かな表情はただ音楽の本質を表しています。


※ご参考 
知られざる名曲 By the sea エレニ・カラインドルー

 

2023年9月30日 (土)

知られざる名曲 第218回  秘密諜報員 / フィリップ・グラス

以前 YouTube を見ていて偶然この曲に出会いました。

曲名が「秘密諜報員(The Secret Agent )」? 

このインパクトのある作品を、知られざる名曲に入れるかどうか迷ったのですが、どこかバッハの無伴奏チェロ組曲風の古典的な作風と、流動的な音楽と映像に新しいクラシック音楽の可能性を感じ、今回このシリーズに加えさせて頂くことにしました。是非お聴き下さい。

26151302_s
画像 ACワークス(株)

作曲家のフィリップ・グラス(Philip Glass 1937-   アメリカ合衆国 メリーランド州 ボルチモア出身)は、ユダヤ系一家に生まれ、子供の頃からピーボディ音楽院でフルートを習いました。

15歳でシカゴ大学に入学。卒業後、ジュリアード音楽院に進み、そこでは主に鍵盤楽器を弾くようになります。

卒業後フランスで、著名な音楽家 ナディア・ブーランジェに師事し、ラヴィ・シャンカール(インドのシタール奏者)と共に働いた後、宗教的な理由から北インドへ旅行し、そこでチベット難民と出会います。

1972年、グラスは仏教徒となり、ダライ・ラマ14世に面会しました。グラスはチベット問題に強い関心を持ち、チベット難民を強力に支援しています。(一部Wikipediaより)


作品は、交響曲(12曲)を始め、オペラ作品、協奏曲、室内楽、弦楽四重奏から映画音楽まで多岐に及びます。

■ 秘密諜報員 (アルバム ガラスの反射より)
/ フィリップ・グラス

演奏は、 コンフント・イベリコ・チェロ八重奏団[イベリア・チェロ八重奏団]。
ピアソラの演奏に定評があります。

2023年9月24日 (日)

知られざる名曲 第217回 マドリガル / ゴーベール

フルートの作曲家として知られる フランスの音楽家 ゴーベール(Philippe Gaubert、1879 - 1941)の洒落た小品を取り上げました。

ゴーベール少年は 南フランスのカオールで生まれ、 6 歳のときに両親とともにパリに移りました。彼の母親は家政婦でしたが、その働き先がパリ音楽院のフルート教授ポール・タファネル氏の家でした。

その縁もあって、ゴーベール少年は13歳で本格的にフルートを学ぶことになり、同年 名門パリ音楽院に入学しました。

22759880_s
画像 ACワークス(株)

彼は、ヨーロッパ史でいう戦間期の作曲家として 時代に翻弄されながらも、フランスで最も著名な音楽家の 1 人になりました。

パリ・オペラ座のフルート奏者として著名なキャリアを積んだ後、1​​919 年、40 歳で彼はフランス音楽界の中心に位置する 3 つの役職に任命されました。

  • パリ音楽院フルート教授(マルセル・モイーズの教師)
  • パリ・オペラ座の首席指揮者
  • パリ音楽院管弦楽団の首席指揮者 (Wikipediaより)


■ マドリガル( Madrigal pour flûte et piano)/ ゴーベール



明らかにフォーレやドビュッシーの影響を受けた音楽ですが、フルートの魅力を最大限に引き出した魅惑的な一曲です。

フルート演奏は、ミュンヘン国際音楽コンクールのフルート部門で第一位となった 韓国の キム・ユビン(Yubeen Kim)さん。

ピアノ演奏は、韓国出身の ソン・ヘリンさん。ソウル音楽大学を経て、ドイツに渡り ベルリン国立音楽大学卒業。国内外のコンクールで常に上位入賞を果たす実力派ピアニスト。

2023年9月17日 (日)

知られざる名曲 第216回 バンドネオン協奏曲第3楽章 / ロベルト・ディ・マリーノ

日本ではアルゼンチンタンゴのイメージが強いバンドネオンですが、ドイツ生まれのこの楽器は海外ではクラシック音楽にも使用されています。どこか哀愁を帯びた独特の音色が特長です。

そんなバンドネオンのための協奏曲。ピアソラの作品は聴いたことがありましたが、今回は イタリアの作曲家 ロベルト・ディ・マリーノ(Roberto Di Marino 1956- )の「バンドネオン協奏曲第3楽章」を選びました。実は私も初めて聴きました。

220360_s
画像 ACワークス(株)

彼は、トレント音楽院で、作曲、合唱音楽、合唱指揮、ジャズ、吹奏楽などを専攻しました。
また、国内外の作曲コンクールで優勝するなど、作曲・編曲分野で国際的に評価されています。

ロベルト・ディ・マリーノの作品の一部は、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーと日本のヴァイオリニスト古澤巌とで結成されたアンサンブルによって最近録音された3枚のCDに収録されています。

現在はヴェローナ音楽院で教鞭をとり、トレント近郊に住み、ほとんどの時間を作曲と編曲に費やしています。
※Roberto Di Marinoサイト参照


■ バンドネオン協奏曲第3楽章 / ロベルト・ディ・マリーノ



バンドネオン奏者のマリオ・ステファノ・ピエトロダルキ (Mario Stefano Pietrodarchi 1980- )は、イタリアのアテッサで生まれました。彼は 9 歳でアコーディオンを学び始め、その後バンドネオンに転向しました。

フェナローリ市立音楽学校で学び、ローマのサンタ・チェチーリア音楽院を優秀な成績で卒業。
そのエネルギーが充満した演奏スタイルと音楽性で、世界的バンドネオン奏者の一人として高い人気を得ています。


今回は特別に、この マリオ・ステファノ・ピエトロダルキさんの演奏をもう1曲お聴き下さい。まさに神が降臨した芸術性を感じます。

曲は、Martin Ulikhanyan の「Vocalise(ヴォカリーズ)」です。



バンドネオンの表現力に驚きました。バンドネオンはアルゼンチンタンゴだけの楽器ではないことを再認識した次第です。

2023年9月 8日 (金)

知られざる名曲 第215回 カンタービレ(サムソンとデリラ) / サン=サーンス

フランスを代表する作曲家 サン=サーンス(Saint-Saëns,1835-1921)の、当シリーズ初登場となります。

サン=サーンスは「動物の謝肉祭」で有名です。特にその中でチェロで演奏される「白鳥」は知らない人はいないでしょう。

今回は、オペラ「サムソンとデリラ」の第2幕で歌われるアリア「「あなたの声にわが心は開く」のチェロ編曲版です。

この曲は、オペラファンならご存じの方も多いと思いますが、チェロで聴くとまた違った魅力のある名品です。
深い味わいがたまらないと思います。


27639608_s
画像 ACワークス(株)

サン=サーンスの詳しい経歴は省略しますが、生後まもなく父は他界して、母親と叔母に育てられ、3歳で作曲を学び、7歳で高名な師匠についてさらに研鑽を積み神童ぶりを発揮し、何と13歳で名門パリ音楽院に入学しました。

やがてマドレーヌ寺院のオルガニストになったサン=サーンス。 リストは、彼こそが世界最高のオルガニストだと絶賛しました。

彼は、1875年に21歳年下の女性と結婚して2人の息子を授かりましたが、いずれも幼児期に死亡。そして結婚生活は破綻しました。

1877年、サン=サーンスはオペラによってより確固たる成功を手にしましたが、その作品こそが『サムソンとデリラ』でした。


■ カンタービレ(サムソンとデリラ) / サン=サーンス

チェロは ミッシャ・マイスキー(ラトビア)、ピアノは アリス=紗良・オット (ドイツ)さんです。
うっとりするような名演です。


余談ですが、

■ サン=サーンスも、アリス=紗良・オットも、名前の表記に「=」が付いています。他にも有名な作曲家の リムスキー=コルサコフがいます。

サン・サーンス ✖
サン=サーンス 〇

何故「・」ではなく「=」なのでしょう?

実は、外国人の名前の記述方法として「ブランク」の部分は「・」であらわし、「ハイフン」の部分は「=」であらわすという慣例があります。

例えば、Charles Camille Saint-Saëns は、シャルル・カミーユ・サン=サーンスと表記します。

外国人で、もともと名前に「ー(ハイフン)」が付いてる人は、日本語表記では「=(イコール)」となるのです。雑学でした。


2023年9月 5日 (火)

知られざる名曲 第214回 ラルゴ / ミューレ

イタリアの作曲家 ジュゼッペ・ミューレ (Giuseppe Mule 1885-1951)の美しい小品「ラルゴ」にスポットを当てました。

彼は、20歳でパレルモのベッリーニ音楽院でチェロの学位を取得し、その後 作曲の学位も取得しました。

1903年、学業を終える前に、チェロとピアノのための「ラルゴ」を作曲しました。

この曲は、イタリアの国営ラジオ放送のオープニング曲として使用されました。


Termini_imerese_pan
画像 Wikipediaより

ジュゼッペ・ミューレは、1922 年から1925 年までパレルモ音楽院の院長を務め、その後20年間 ローマのサンタチェチーリア音楽院 の院長も務めました。

彼は国家ファシスト音楽家シンジケートの全国書記であり、ファシスト政権の最も反動的な分野の指導者でした。20年間、彼はあらゆる手段を使ってモダニズムの前衛運動に激しく反対したとされます。

 

彼の作品には、多数の交響曲や室内楽、舞台音楽、7つのオペラ、5 つの映画音楽、オラトリオが含まれます。彼の作品はイタリア民俗主義が浸透したスタイルが特徴ですが、これには海外の資料によると賛否両論あるようです。今日では彼の作品が演奏されることは少ないようです。

しかし指揮者としても活躍して、イタリアで多くのキャリアを積み、同国の一流オーケストラと共演しました。


■ ラルゴ (Largo)/ ジュゼッペ・ミューレ

2023年8月25日 (金)

知られざる名曲 第213回 希望の種 / ステファン・シカール

私たちを至福の音楽の旅に誘う 作曲家 ステファン・シカール(Stephen Sicard (Logos) 仏 1964- )。詳しい経歴は分かりませんが、彼自身は独学で音楽を学んだとのことです。

ジャンルはやはり ヒーリングミュージック ですが、ステファン・シカールの音楽的魂は、大地と内なる存在の道を横断することで、インスピレーションの散歩を楽しんでいるのです。そこで彼は自然の精霊たちと出会うのです。

それは、すべての良心の目覚めを助けるこれらの新しい音楽的組成物の恩恵によって、あなたに提供される最も純粋な人生の贈り物でもあるのです。

27001831_s
画像 ACワークス(株)


自分自身の声を聞いてください

そして無限を見つめてください

時間と空間の

そこで僕らは星の歌を聴く

数字の声

地球の調和

(以上、ステファン・シカールのHPより抜粋)


■ 希望の種(
LES SEMENCES DE L' ESPOIR)/ ステファン・シカール



2023年8月21日 (月)

知られざる名曲 第212回 望郷のバラード / チプリアン・ポルムベスク

チプリアン・ポルムベスク(Ciprian・Porumbescu 1853 - 1883)は、ルーマニアの作曲家(生まれは隣国ウクライナ)です。全く聞き慣れない名前ですが、Wikipediaによると、当時ルーマニアでは人気のある作曲家だったそうです。

幼少の頃より楽才を現してウィーンに留学し、ブルックナーにも師事しました。

しかし、愛国者であったポルムベスクは、オーストリア-ハンガリー帝国に支配されていたルーマニア独立運動に参加して逮捕投獄されます。

曲は獄中で故郷を偲び、恋人に思いを馳せながら書き上げた哀切のメロディーであり、29歳の若さで薄倖の生涯を閉じた チプリアン・ポルムべスクの代表作になりました。※ブログ「日々遥か」2009・7・2記事参照

23925156_s
画像 ACワークス(株)

1992年、日本のヴァイオリニスト 天満敦子さんが ルーマニア公演をした際、この曲の存在を知って楽譜を日本に持ち帰り、それ以降日本各地で演奏されることになりました。天満敦子さんのファンなら聴いたことがあるかも知れません。


■ 望郷のバラード / チプリアン・ポルムベスク



切々たるソロヴァイオリンの感傷的な旋律が胸に迫ります。

2023年8月17日 (木)

知られざる名曲 第211回 スミルナのために / スパノウダキス 

スタマティス・スパノウダキス  (Stamatis Spanoudakis 1948- )は 現代ギリシャの古典作曲家です。ギリシャでは国民的作曲家ですが、日本での知名度はありません。

Wikipedia(海外版)によると、
彼は早い段階でクラシックギターを学び、その後ヴュルツブルク国立音楽院に通い、アテネではさらにクラシック音楽の研究を続けたそうです。そして、ビザンチン音楽(宮廷や宗教儀式のために作曲された歌と賛美歌)も勉強しました。

現在は、インストゥルメンタル、宗教音楽、映画音楽など多方面に活躍中です。

22045192_s
画像 ACワークス(株)

この作品は、1919年~1922年、ギリシアがトルコの スミルナ に侵攻した戦争を題材にしています。

最終的には、トルコが撃退に成功して スミルナ を奪回しましたが、3年に及ぶ戦争で双方に多大な犠牲者が出ました。今の国際社会と同じで、和平の道のりは遠かったようです。この戦争が日本の高校教科書に載っていたかは不明ですが、学ぶべき点はあったはずです。


■ スミルナのために / スパノウダキス

2023年8月16日 (水)

知られざる名曲 番外編40 鳥の歌 / パブロ・カザルス(カタロニア民謡)

「カタルーニャの鳥たちは、青い空に飛びあがると Peace (ピース)、Peace (ピース) といって鳴くのです。」

昨日(8月15日)は 終戦記念日でした。久しぶりにこの曲のCDを聴きました。


27343204_s
画像 ACワークス(株)


今、世界は混迷を極めています。

山火事などの自然災害、ウクライナの戦争、コロナ後遺症・・・

この曲を聴いて、世界平和を祈りたいと思います。


■ 鳥の歌 / パブロ・カザルス(カタロニア民謡)



知られざる名曲ではありませんが、今回は敢えて選曲いたしました。

2023年8月 8日 (火)

知られざる名曲 番外編39 エチュード Op.25,No.7 / ショパン(グラズノフ編) 

ショパン(Chopin 1810-1849)は、生涯に258曲作曲したとされます。
尚この曲は、短命だったショパン24歳の作品です。

ショパンはピアノの詩人と言われましたが、もちろん ピアノ曲は大人気で、幻想即興曲、別れの曲、ノクターン2番、革命エチュード、英雄ポロネーズ、子犬のワルツなどは、知らない人はいないと思います。

今回の エチュード(練習曲 嬰ハ短調) Op.25,No.7 は、ショパンの人気ランキングの ベスト50には入りません(※)が、その深い味わいは聴く人の心をとらえて離しません。
※ランキングは調査機関によって違います

この曲は、二つの旋律がオペラの二重唱のように寄り添う構成から、「恋の二重唱」と呼ばれることがあります。

また、練習曲ですが、特に左手の完璧な音とフレージングに焦点を当てていることから 左手で演奏されるメロディーラインのため、海外では、音域的に『チェロ(Cello)』の愛称で呼ばれることがあります。

26505608_s
画像 ACワークス(株)


ロシア帝国末期からソビエト連邦建国期の作曲家 グラズノフ(Glazunov 1865 - 1936) は、この作品を、チェロとピアノ演奏用に編曲しました。

その秀逸なアレンジによって 今では世界中のチェロ奏者によって演奏されています。


■ エチュード Op.25,No.7 / ショパン(グラズノフ編)



チェロは、アルゼンチンのソル・ガベッタさん。ピアノは、ロシアの ポリーナ・レスチェンコさん。二人は1981年生まれ(同い年)です。


この曲を聴いて 好きになった方は、原曲のピアノソロを聴いてみて下さい。

 ↓

https://www.youtube.com/watch?v=OpBdHWGoyug

2023年8月 7日 (月)

知られざる名曲 番外編38 般若心経(心の経典) / Tinna Tinh 

般若心経と音楽との融合と言えるのでしょうか。

今までにない不思議な感覚を覚えますが、聴いているうちに自然な音楽の流れを感じます。

もともと般若心経には、木魚はもちろん、拍子木や太鼓によってリズミカルに唱える宗派(寺院)もあります。

音楽的要素を持った読経なのかも知れません。

それでも流石に、ピアノやヴァイオリン、ドラムスまでフューチャーされた般若心経は初めてです。

3164365_s
画像 ACワークス(株)

■ 般若心経(心の経典)/ Tinna Tinh


この マントラミュージック とでも言うべき音楽を作ったのは、チェコ生まれの Tinna Tinh(1982-  )さん。

女優、モデル、脚本家、映画監督など活躍していましたが、現在は ベトナムに渡り真言密教系の修行中との事です(ホーチミン在住)。

 

2023年8月 2日 (水)

知られざる名曲 番外編37 ラ・サンタ・エスピナ / エンリック・モレラ

エンリック・モレラ(Enric Morera  1865 - 1942)は、スペイン カタルーニャ地方出身の作曲家です。

ラ・サンタ・エスピナ = 邦訳 聖なる棘 (とげ) とは、カタルーニャ地方に伝わる古代ギリシャを起源とする 伝統舞踊  ‶サルダナ” を代表する楽曲です。

スペインにはフラメンコ以外にも ‶サルダナ” と言う伝統的な踊りがあるのです。

25593126_s
画像 ACワークス(株)

日本では無名の エンリック・モレラですが、モダニズムの最も代表的な作曲家の一人であり、音楽史において最も重要な人物の一人でした。
彼は生涯に、オペラ、演劇作品、交響曲、協奏曲、合唱作品、サルダナなど、約 800 の作品を作曲しました。

しかしその多くは未だ出版されていません。ある意味忘れ去られた悲運の作曲家かも知れません。


■ ラ・サンタ・エスピナ(La Santa Espina)/ エンリック・モレラ



愛国的な賛歌です。聴衆の熱い思いが伝わります。

手拍子が、日本のそれと大きく違い、音楽的であるのが特長です。



«知られざる名曲 番外編36 2つの心の出会い / パベル・ルジツキー