■ ロシアの音楽といえばチャイコフスキー
ロシア五輪委員会(ROC)は、今回の北京冬季オリンピックで6個の金メダルを獲得しました。
そして、昨年の東京オリンピックでは20個の金メダルを獲得しています。
しかし表彰式に国歌は流れず、代わりにロシアが誇る作曲家 チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番が使われました。
女子団体総合決勝で金メダルを獲得したROC 写真【時事通信社】
ロシアはドーピングの不祥事から、ロシア連邦として参加することが許されず、ロシア五輪委員会(ROC)として参加しています。したがって、ロシア国歌を演奏することも、ロシア国旗を掲げることも禁止されているのです。
国歌の代わりにチャイコフスキーのピアノ協奏曲を使うということは、まさにチャイコフスキーはロシアを代表する作曲家だといえるからです。
実際に、2014年のソチオリンピックでは、開会式にチャイコフスキーのバレエ「白鳥の湖」「くるみ割り人形」、閉会式のフィナーレにピアノ協奏曲1番が使われました。※この時点ではドーピング問題はありません。
すなわち、ドーピング問題があるなしに関わらず、ロシアを代表する音楽はチャイコフスキーと言えるのです。
モスクワ音楽院とチャイコフスキー像
■ チャイコフスキーの音楽の源泉はウクライナにあった
もう10年ほど前ですが、あるホールのロビーで音楽評論家の 奥田佳道氏と立ち話をしたことがあります。
氏はチャイコフスキーのメロディの美しさは、ウクライナの民族音楽の影響が大きいと言っていました。
事実、チャイコフスキーの交響曲2番やバレエ音楽、ピアノ協奏曲1番など多くはウクライナの民謡から着想を得て作曲されています。
チャイコフスキーの祖父の故郷はウクライナで、妹も住んでいました。チャイコフスキー自身もウクライナ滞在中に30曲もの作品を作っています。彼に取っては心のふるさとだったかも知れません。

画像 ウクライナ キエフ市街の街並み ACワークス(株)
■ ロシアとウクライナは深く結ばれている
ロシアの音楽はチャイコフスキーに代表され、そのチャイコフスキーの音楽の源泉がウクライナにあるとすれば、ロシアとウクライナは音楽という芸術を通して深く結ばれていることになります。
ウクライナは世界的な音楽家が多く、ピアニストで日本でも人気のホロヴィッツ(キエフ音楽院卒)は、主にアメリカで活動しましたが、祖国モスクワでのコンサートでモスクワ市民から大絶賛されました。そしてもう一人、リヒテル(モスクワ音楽院卒)もソ連時代を代表する世界的ピアニストですが、二人はともに ウクライナ出身です。
クラシック音楽を通じ、歴史的に深く結びつきのあるロシアとウクライナ両国。
今回の軍事衝突を、チャイコフスキーやウクライナ出身の芸術家たちはどんな思いで見ているのでしょう。